【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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179【案件商談】手の内は知られている

 

 目の前にぶら下げられた、非常に魅力的きわまりない()

 ついついそこにばかり目がいってしまい、すぐにでも飛び付いてしまいたくなるのだが……そのためにはまず、しっかりと足場を確認しなければならないだろう。

 

 何ていったって――譲渡ではなく貸与とはいえ――あまりにも報酬が魅力的すぎる。

 おれはまだまだ開設ひと月程度の弱小配信者(キャスター)なので、正直おれ以外にも適役の……それこそキャンピングカー解説に手慣れた配信者(キャスター)さんなんか、けっこう居そうなものだと思うのだが。

 

 

 商談の相手である二社ともに、なかなかの歴史あるいは規模を誇る会社である。おれなんかを騙したところで特にメリットがあるようにも思えないが……それはそれとして、落とし穴が無いかどうかはしっかり確認しておくべきだ。

 

 

 

「……あの、企画内容は概ね大丈夫だと思います。年四回のイベントというのも……書面で頂いている、一月と三月と六月と十月の四つのイベントで良いんですよね?」

 

「はい。三月と十月の『浪越キャンピングカーフェア』が二回と、六月の『東京キャンピングカーフェス』……そして直近、今月末の『ジャパンキャンピングカーフェス2020』。以上の四つなのですが……今月末も、ご都合は大丈夫でしょうか?」

 

「ええと、はい。現状特に……というか、恥ずかしながらわたし自身、そこまで案件を頂いてはいませんので。個人での配信や撮影のスケジュールでしたら、充分に対応できます」

 

「助かります。正直今月末のは半ば諦めてましたので」

 

 

 メールのやり取りで頂いていた資料によると、この一月末に東京で執り行われる『ジャパンキャンピングカーフェス2020』はその開催時期もあり、規模も注目度も四つのなかで最も高いのだという。

 なので有名どころの配信者(キャスター)さんたちは、既に当日の別の予定が詰まってしまっていた……まあ恐らく、一般参加者として参加する予定なのだろう。

 

 加えて、おれにとっては魅力的に映った『バンコン車両の貸与と継続的な使用』……こちらも普通のひとにとっては、取り扱いに難儀するものなのだろう。

 駐車場も新たに確保しなければならないし、なにより使い慣れた愛車が既に存在しているのだ。人によっては愛車を貶されるように感じてしまい、心象を害してしまう恐れもある……かもしれない。

 

 つまりは、イベント当日のスケジュールが確保でき、継続的なモニター利用が見込める人物。ここを優先して探していたのだろうと、アタリが付けられる。

 

 

 だが……それにしたって、他に候補者はごまんと居るだろう。

 声を掛けてもらえたことは光栄なのだが……果たして、なぜおれを選んでくれたのか。そこのところは、是非聞かせてもらいたい。

 

 

 

「……すみません、ひとつお尋ねしたいのですが…………単刀直入にお訊きします。今回の案件、なぜわたしにお声かけ頂けたんでしょうか?」

 

「それにつきましては、私から」

 

 

 おそるおそる、抱えていた疑問を表するおれに、大田さんが手を挙げてくれた。

 彼の所属であるウィザーズアライアンス社……広告代理店とのことなので、おれを選んだ理由を説明できるとすれば、なるほど彼になるのだろう。

 自分自身の客観的な評価を聞ける、良い機会でもある。おれは居住まいを正し、彼の言葉に傾聴する。

 

 

「まず一点目。……ご気分を害されないで頂きたいのですが……『のわめでぃあ』様がまだチャンネル設立間もない、駆け出しの動画配信者(ユーキャスター)であったこと。またそれでいて、同時期に設立されたチャンネルの中でも、その成長率がひときわ抜きん出ていたこと。……多治見(たじみ)様との協議の上、広告費用等の兼ね合いもあったことから、いわゆる『ベテラン』域の配信者(キャスター)は除外致しました」

 

「……な、なるほど」

 

 

 可能な限り失礼がないように気を使ってくれているが……要するに、大御所だと相応の謝礼を用意しなきゃならないから。

 加えてイベント当日のスケジュールも押さえづらいので、最初から中堅~駆け出しの配信者(キャスター)に絞って候補を探していたらしい。

 

 

「続いて、二点目。昨今アウトドアやキャンプを題材とした漫画・アニメ等作品の台頭を受け、キャンピングカー市場としても新たな客層を開拓する必要性を強く感じたこと。そしてその『新たな客層』を獲得するにあたり、『のわめでぃあ』ひいては木乃(きの)若芽(わかめ)様の存在が適役であると判断したこと。……ですね」

 

「き、恐縮です」

 

 

 まあ……早い話が『オタク受けしそう』ってことだろう。確かにおれはエルフだし美幼女だし、漫画とかアニメとかに居そうなキャラクターではある。ていうかそういうつもりでつくったわけだし。

 サブカルチャーに造詣が深い視聴者さんも大勢居るだろうし、一般的な配信者(キャスター)に比べるとソッチの割合が多い自覚と、自負はある。

 

 なるほどつまり『仮想配信者(ユアキャス)上がりの動画配信者(ユーキャスター)』という、異色ともいえるおれの出自が(うま)いことハマった形となるのか。

 どちらにも馴染みきれない短所とばかり思っていたが……なかなかどうして、どう転ぶかはわからないもんだ。

 

 

 

「そして、三点目。……個人的に、この三点目が『決め手』と言っても過言では無い理由がございまして」

 

「…………そ、それは……?」

 

 

 落ちついた表情で、淡々と説明を進めてくれている大田さん……広告代理店のやり手営業マンらしく、無機質ともとれる冷静さで述べられる……『決め手』とは。

 

 

 

()()に、なんとか報いたいなぁと思いまして」

 

「「…………はい?」」

 

「候補者の一人として多治見様に布教しましたところ、大層気に入って下さいまして」

 

「「…………えっ?」」

 

「いやぁ……最初は半信半疑だったんですけどね。今となっちゃあウチの会社、取締役も含めて結構な数『視聴者』居るんですよね」

 

「なん……」「ほあっ……」

 

 

 

()()()()。機会があれば、ぜひ一席お願いしたいものです」

 

「うそぉーーーー!!!?」

 

 

 

 おれの……おれたちの、親愛なる視聴者諸君からの、とてもとても予想外だった企業案件。

 

 そ……そういうことも、あるのか。……あるのか?

 

 

 

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