【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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183【共演依頼】らにちゃんとうにちゃん

 

 

 実在エルフ配信者(キャスター)、おれこと木乃若芽(きのわかめ)は……焦っていた。

 

 そりゃあ自分だって配信者(キャスター)のはしくれ、元を辿れば仮想配信者(ユアキャス)を夢見てスタートした活動だ。当然コラボ企画とか(とつ)(とつ)されなんかも憧れはあったし……実体を得て『仮想(アンリアル)』ではなくなってしまった今となっても、それは変わらない。

 

 

 しかし……いざ実際に、そのチャンスが目の前に降ってきたとあっては。

 しかもそれが、業界トップクラスの事務所に所属する『売れっ子』からのアプローチとあっては。

 

 そういう専門的なノウハウを備えたマネージャーさんなんて付いてないおれにとっては……どういう段取りを取れば良いのかからして、全く未知の領域だった。

 

 

 

 

 

 

『…………え、すません。何て?』

 

「ラニに『にじキャラ』の『うにたそ』からコラボの打診が届いたの。どうすれば良い?」

 

『………………ぇえ……マジっすか』

 

「マジマジ。連絡用アドレスも記載されてた」

 

 

 というわけで、おれの『マネージャーさん(代わり)』のモリアキ氏に救難信号を打診する。

 おれ一人の知識では偏りや抜けがあるかもしれないし、別の視点からものごとを見ることができる第三者の意見は是非ともほしい。

 少なからず業界に精通している人材であれば……なおさらだ。

 

 

「とりあえず『おれ無名だけど事務所の許可は大丈夫なんですか?』と『コラボするとしたらどんな内容を考えてますか?』をめっちゃ(うやうや)しくした文面で返信しといたけど……大丈夫だった?」

 

『そっすね。大丈夫だと思います。あちらさん事務所の許可が出てるんであれば、だいぶ楽っすね。こっちから色々お伺い立てる必要も減ります。……前向きなんすね』

 

「そりゃねー。チャンスもチャンスだし、単純に『うにたそ』と共演できるって嬉しいことだし。……おれもがんばって応援するからね! ラニがんばってね!」

 

「えっ!? ボクなの!?」

 

「だってメッセージ届いたのラニだし、そもそもおれのプレイがうにたそのお眼鏡にかなうわけ無いし」

 

『んー……白谷さんの立ち絵でも用意しときます?』

 

「んーや……画角を、こう……ラニちゃんの顔だけ映して。クロマキって画面に入れようかなって」

 

『あぁ……手もとが映んなきゃセーフっすか』

 

「そうそう。そういうことだけど……ラニ、いけそう?」

 

「う、うん。……がんばるよ」

 

 

 とりあえずは、先方からの申し出であれば失礼には当たらないだろうこと。またコラボの詳細情報が得られたら共有して知恵を拝借すること。

 以上二点を再確認し、おれはモリアキとの通話を切った。

 

 それにしても……コラボだ。コラボなのだ。しかも相手は大御所だ。

 厳密に言えばコラボするのはラニちゃんなのだろうけど……それはそれとして、心が踊るところは変わらない。それこそ我が身であるかのように嬉しいのだ。

 

 

 

 

「……まぁ、ノワが乗り気ならボクは良いけどね。……それはそうと、明日の準備。ちゃんとできてる?」

 

「そこは大丈夫。ちゃーんとスライド作ってあるから。英文注釈もバッチグーよ」

 

「?? ばっ、ちぐ……? ま、まぁ…………大丈夫そうなら良かった」

 

 

 今日は木曜日なので、明日の夜は毎週恒例(にしたい)ライブ配信の予定だ。今回の内容は主に『ご報告』や『雑談』の予定となっている。

 おうちの裏庭の活用方法とか、おれたちに今後やってほしい企画とか……視聴者さん達からの意見を募ったり、出せる情報や写真を出したりして、和気あいあいと過ごせたらなぁとか考えている。

 三納オートサービスさんからは『月末の展示会は情報開示OK』との約束も貰ってるので、そこもお知らせできるだろうし……あとはいちおう、(シメ)民謡(おうた)も用意はしてあるので、視聴者さんに楽しんでもらえるようがんばりたい。

 

 

 というわけで、明日の夜は問題ない。

 

 なので今気になるところといえば、やはり…………噂をすればなんとやら、さっそくメッセージが返ってきましたね。

 

 

 

「お? 例の『うにたそ』から? 早いね。なんだって?」

 

「ちゃんとしたお名前は『村崎うに』ちゃんね。マネージャーさん交えて相談したいから、明日もしくは近日中に時間貰えないか、だって。……あした日中十五時くらいまでなら大丈夫かな。返信しちゃうよ?」

 

「ノワにお任せ。全肯定美少女妖精さんだからね、ボクは」

 

「めっちゃ心強い~~」

 

 

 最近のご時世ともなれば、ちょっとしたミーティングくらいであればネット通話で手軽に済ませることができる。

 むしろ仮想配信者(URーキャスター)のように『中の人』の神秘性を重要視する場合なんかは、逆に顔合わせしないで済むネット通話のほうが都合が良いこともある。

 そのあたりの裁量は人によって様々だが……『村崎うに』ちゃんの場合は、どっちかというと『楽だから』だろう。ネット通話を使用してのグループトークをご所望のようだった。

 

 それであれば、こちらも大した手間を要する必要もない。ミーティングの要請に対して『明日の日中であれば大丈夫です』と返信を返し、これで明日の行動予定がだいたい決まりつつあった。

 懸念であった先方とのミーティングも、ネット通話で行えるというのなら気が楽だ。

 

 あとはミーティングの時間次第だが、どっちみち在宅ワークな一日になりそうな予感。……まぁいいけどね、現おうちめっちゃ居心地良いし。

 

 

 

「よしじゃあ……お風呂はいって、今日はもう寝よっか。自分から『日中大丈夫です!』言っといて寝坊とかしたら目も当てられない」

 

「わぁいおふろ。ラニおふろ大好き」

 

「えっちなことするのは禁止だからね」

 

「そ、そんなあ」

 

 

 なぜか呆然としている妖精さんは置いといて。おれは下着と寝巻きを取り出しおふろの準備をすすめ、小脇に抱えて階段を下る。

 途中でキッチンに寄り道して、密封チャックつきのポリ袋を一枚拝借。うにちゃんからのメッセージの確認と返信対応ができるように、スマホを入れてお風呂に持ち込むのも忘れない。

 

 

 季節がら、まだまだ肌寒い日々が続いているが……少しずつ少しずつ毎日が充実していくのを、おれはとても嬉しく感じていた。

 

 あしたも良い一日でありますように。

 

 

 

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