【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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228【納車記念】たのしい作戦会議

 

 

 今でこそこんな可愛らしい身体だが……何度も念押ししているように、おれは三十代成人男性である。

 運転免許をちゃんと持っていることからも、おれがれっきとした大人であるということがご理解いただけることだろう。そして立派な大人であるのだから、当然お酒だって飲めるのだ。

 

 この身体になりたてのとき……コンビニでお酒を買おうとして、無情にも断られたときのことを思い出す。

 あのときは『大人である』と証明できる手段が無かったために涙を呑んだが……免許証を手に入れたおれにとっては、もう怖いものなど何も無い。

 お酒はもちろん、エロ本だって堂々と買えるのだ。おれはおとなですから。

 

 

 なので……つまりは、合法!

 

 

 

「こーゆー機会でもねーと堂々と飲めねーからなぁ……」

 

「でも免許証あるならお店でも出して貰えるんじゃないんすか?」

 

「そうなんだけどさ……そりゃ居酒屋とか行きたいけど、まわりのひと混乱するだろうし、実際めっちゃ目立つだろ? おれがまわりからどう見られんのか、だんだん理解(わか)ってきたし」

 

((理解(わか)ってないんだよなぁ……))

 

 

 酒飲みばかりが大勢ひしめく大人の空間に、見た目年齢十歳そこらで奇抜な髪色の幼女が居たら……そりゃあ良くも悪くも注目を浴びてしまうだろう。

 いくら法律的にセーフだとはいえ……食事中に盗み見されたり会話を盗聴されたり、盗撮されてネットに晒されたり背ビレ尾ヒレ付けられて噂話にされたり……といったことも充分に有り得る。

 つまりは、安心してお酒を楽しむことが出来ないのだ。……完全個室居酒屋とかなら、まあそこそこ安心できるのかもしれないが。

 

 

「おれみたいなヤツとか、そもそも異分子だろうし。今まで通りの生活送れるとは思ってないけど……」

 

「……そういえば、ノワ……あの二人組」

 

「うん。やっぱそうだよね。……おれの()()だと思う」

 

「……夕方にカチ合った、っていう……女の子二人組っすか」

 

「ずるいよなぁ……見た目は普通の日本人美少女って感じだったから、おれみたいにひそひそされないだろうし……」

 

「ぇえ……そこ?」

 

 

 『苗』による存在改変を受け、異能を行使できるよう身体そのものを作り替えられた存在。彼女たちが()()なった経緯は、おれたちには知る由もないのだが……その出自はまさしく、おれと同じといえるだろう。

 

 おれのような存在……非現実な異能力を操る『ファンタジー』な存在が、おれ以外にも存在していたのだ。

 

 

「まぁ、これまでも(フツノ)さまご一行っていう『例外』はあったみたいだけど……」

 

「コッチの世界、市井の民から『魔法使い』が生まれるのは、滅多に無いことなんだろ?」

 

「滅多に、っていうか……少なくとも平成以降は聞いたこと無いっすよ」

 

「昭和も大正も明治も居ないと思うけどね」

 

「江戸、は……ちょっと居そうっすね」

 

「なんかひっそり居そうだから困る。陰陽師とか祈祷師とか妖怪退治してそう」

 

 

 

 まぁ……とにかく。

 浪越銀行襲撃事件とか、空港島の濃霧事件とか、今回の白騎士竜巻事件とか……毎回テレビやネットニュースで有ること無いこと大騒ぎされるくらいには、この世界にとってファンタジー要素は『異端』であり『非日常』なのだ。

 

 

 

「おれ以外にも……何かのキャラクターになっちゃった人とか、居ないのかなぁ」

 

「ぇえ……つまりそれって『キャラになれない事実に絶望して自死を選ぶ』くらいの想い入れってことっすよね……ちょっと厳しいんじゃないっすか?」

 

「んー……そうだね。そこに加えて、別位相に潜む『種』が接触していることも必要かな。『種』そのものは動かないから、ヒトの方から接触するか……()()()に直接植え付けられるか」

 

「おれのときは……いちばん最初にばら蒔かれた『種』が直撃した、ってことみたいで」

 

「あー……現在は直接()()に行けるモノが居るんすね。じゃあ居る可能性少しは上がっちゃったり……」

 

「もしくは単純に……おれと同時期に生まれ変わって、今まで誰にも気づかれずにずーっと引きこもってるとか」

 

「居ないとは言い切れないね。実際、すてらちゃんとつくしちゃん……あの子らの存在だって、ボクらは全く知らなかった」

 

 

 おれ一人だけが選ばれ、おれ一人が反則(チート)的なスペックを獲得しているだなんて、そんな自惚れを抱くつもりは無い。

 あの女の子たちのように『力』を手にした人が今後現れないとも限らないし、おれたちが気付かないだけで既に居ないとも限らない。

 

 願わくば……仲間になってほしいとまでは言わないが、敵対しない存在であってほしい。

 

 

「まぁ事実がどうであれ……すてらちゃんみたいに派手な行動を起こしてくれない限りは」

 

「探しようがないもんなぁ…………あーもー! 心配するだけ無駄だ無駄! おれは飲むぞ!」

 

「もう飲んでるじゃないすか。しっかりして下さいよ。もう酔っ払っちゃったんすか?」

 

「はー? おれおとなだし。おとなは酒に強いんぬゃぞ? だから飲んでもいいんやぞ?」

 

「そうだね、ノワはオトナのレディだよ。ほらもっと飲んで飲んで」

 

「んふふふュ……んへへへ……えへひュへ」

 

「ちょっ…………白谷さん? ほどほどにね? これ明らかにデキあがっちゃってますよ?」

 

「大丈夫。いざとなったら【治療(キュラティオ)】で一発よ」

 

「ワァ魔法スゲェ!! 情緒もへったくれもありゃしねえ!!」

 

 

 モリアキとラニが仲良さそうに……とてもとても仲睦まじく笑いあっていることまでは、なんとか理解することができた。

 ひさしぶりの酒精に侵されたおれのあたまが認識できたのは、どうやらここまでのようだった。

 

 

 

 

 だからですね、あの、正直よく覚えてないんですが……

 

 

 おれ、何かやっちゃいました……?

 

 

 


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