【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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249【途中迂回】いいこと思いついた

 

 

 何もなかった場所からいきなり声が聞こえたら、そりゃ誰だってビックリするだろう。

 

 おまけに……それが、誰が、どこから、どう見ても、日本人とは全くもって異なる背丈と外見的特徴の女の子であれば…………一般的な感覚を持ち合わせている春日井警部補は当然として、多少は神秘(ファンタジー)に理解のある名護谷河(なごやがわ)署長であっても、さすがに平然としていることは出来なかったようだ。

 

 

 

「えっ、と…………ご、ご紹介……します。おれの、あいえ……わたしの協力者で、異世界出身の(ゆう)…………えっと、異世界人……です」

 

「ニコラ、っていいまーす。よろしくね、ショチョーさん」

 

「…………これは……ご丁寧に」

 

「……先程わたしからお伝えした『異世界』にまつわる情報……その出所というか、情報を提供してくれた子……わたしの恩人、です」

 

「魔法とか使えるよ。信じられなかったら言ってね、見せたげるよ」

 

「それは…………それは……」

 

 

 まぁあれだけの情報を提供した以上、率直にいって『遅かれ早かれ』ではあったと思うのだが……これまで身内と鶴来(つるぎ)さん以外の人間(ヒト)に姿を晒したことの無い彼女が、いきなり人前に姿を現したとあっては――しかもこんなにふてぶてしくおやつを喰らい始めようとは――それなりに深い繋がりをもつおれであっても、さすがに焦らざるを得なかった。

 ……まったく、びっくりさせやがって。かわいい。……ちょっと見えそう。

 

 

(見たいならそう言ってくれればいいのに。奥まで見せたげるよ?)

 

(どこを!!? い、いいいいや!! べつにそんなそんなそんな)

 

「実際にこの目で見てしまっては……信じざるを得ませんね」

 

「見たの!!!?? …………アッ! すみませんなんでもないです! すみません!!」

 

「…………?? いえ、こちらこそ。失礼しました」

 

(くそわろた)

 

(おのれ)

 

 

 センシティブ妖精さんはあとではぶらしするとして……せっかく姿を現してくれたので、このまま事情聴取に協力して貰おうと思う。……まあそのつもりで出てきてくれたんだろうし。まぁはぶらしはするけど。

 えーっと、なんだっけ……あぁそうだ。協力とか報酬とかそんな感じの、ダイレクトにおれの利益となるようなお話をしてくれそうな雰囲気だった。

 

 

「そうそう。まぁそんなわけで……ショチョーさん、ノワのがんばりに報いてくれるんでしょ?」

 

「ええ、そうですね。名目上は『例外的獣害対策費用』という形式で考えています。管轄内にて発生した『例外的獣害』を()()()()()()()()()()へ委託、その駆除を依頼するための費用……という名目ですね」

 

「へぇー、すごい。ちゃんと考えてくれてるんだ。……で、幾らくらいになりそう?」

 

「そん、ッ!? いやいやいやいや!」

 

「ノワはこの通り、大変かわいいからね。引く手あまたで忙しいのさ。そんじょそこらの安月給で使えるとは思わないでほしいんだけど……」

 

「ラニちょっと失礼なこと言わないの!! すみません気にしないで下さい!! 報酬とか予算とか(そんなに)考えてませんから!!」

 

「ふふ。……『いらない』とは仰らないのですね」

 

「………………………えへへ」

 

 

 そりゃぶっちゃけ、頂けるものは頂きたいところだけど……しかし住んでいる街のおまわりさん、つまりは市の財政に吹っ掛けるのは、少々気が引ける。

 そう……そんな何千万とか、何百万とか、そこまで高い報酬がほしいわけじゃないのだが……かといってせっかくのチャンスを『いらない』と言えるほど、おれは聖人君子ではない。

 

 もともと『副業』にあたっている間は『本業』の業務ができないので、単純に収入が減るわけだ。

 そりゃあ『苗』の存在を――この世界の危機を――見過ごすことは、この『木乃若芽ちゃん』の気高い責任感が許さないわけだが……かといって『本業』を擲って、無給のまま奉仕活動を続けるというのも、それはそれとしてモチベーションが下がってしまう。

 

 そんな中で、まさかの県から予算(ボーナス)を得るチャンスだ。そんな年間八桁円とか高望みはしないので……そう、お気持ちだけでもいただけるなら……それはとっても嬉しいなって。

 

 

 

「んう…………た、たとえばなんですけど……一回あたりおいくら万円、とか……そういうのは可能なんでしょうか?」

 

「そうですね。くだんの『例外的害獣』の出現頻度がどの程度なのか、そもそも今後も発生が続くのかも定かではない状況ですので……正直、一旦歩合制という形で様子をみさせて頂けるのなら有り難いです」

 

「あっ、じゃあそんな感じで…………とりあえず、一回十万円……なんちゃって」

 

「……は? あっ…………失礼。……いえ、その…………良いの、ですか?」

 

「えっ? えっと、アッ……た、高すぎ……でし、た?」

 

「…………いえ。……一般の有害鳥獣よりも繊細な対処を必要とすることを鑑みれば……むしろ安過ぎるくらいかと」

 

「えっ!? そうなんでしゅか!?」

 

 

 だ、だって……一回十万円だぞ。日給十万円ってだけでもびっくりなのに、頻度は不明とはいえ『苗』を一回もぎもぎすると十万円もらえるんだぞ。今まで無収入だった『副業』の報酬としては充分というか、むしろ破格じゃないか?

 と思っていたのだが……県や市の予算額というのは、おれたち一般市民の感覚とは大きく乖離しているらしい。

 

 ……あっ、当たり前か、ふつうは会社とかに依頼するくらいだもんな。

 

 

「今後の動向を窺いながら、適正な報酬を心掛け相場は随時ご相談させて戴きたいとは思いますが…………取り敢えずは桁を一つ増やしても通せると思うんだが、どうかな? 春日井警部補」

 

「えっ!? ひゃく、ま…………えっ!!?」

 

「……むしろあの危険に単身立ち向かうことを鑑みれば、それでもまだ安過ぎる嫌いはあるかと」

 

「というわけです。……まあ、あくまでも要観察ではありますが、当面の間はこの額で」

 

「いやいやいや! せめて! せめて半値に! 毎回七桁はおかしい!!」

 

「……ですが、あまり安値での委託となりますと…………例の()()()よりお叱りを頂戴する可能性が」

 

「んゥーーーー」

 

 

 だ、だめだ……やっぱ慣れない!

 

 ただでさえ収益化記念配信の直後、寄せられた応援(スパチャ)合計額を見てあんなに取り乱したくらいなのだ。

 そもそもこちとら、年末年始の案件による収入の時点でビビり散らしていた弱小一般市民やぞ。年収相当の金額が一ヶ月そこらで振り込まれて軽く錯乱するようなチキンなんだぞ。

 そんな……そんなクソザコナメクジが、一回出勤するごとに七桁円振り込まれるような『副業』に手を染めれば…………そう遠くない未来、高収入の『副業』にかまけて、たいせつな『本業』を蔑ろにしてしまいかねない。

 

 しかし名護谷河(なごやがわ)署長としても、聞いた感じ()()()()()から圧を掛けられているのだろう。あまり頭ごなしに断るのも申し訳ないというか……たぶん、有識者氏がおヘソをお曲げになられそうな気がする。

 いや、ありがたいんだけど…………ありがたいんだけど、もう少しこう何というか……手心というか……。

 

 

「じゃあさ、じゃあさ? お金以外の報酬で貰えば良いんじゃない? あのキャンピングカーみたいな」

 

「ホエ!? 何!? パトカーレンタルしようってこと!?」

 

「あの、さすがにそれは……」

 

「だだっ、大丈夫です! わかってますので!!」

 

「いや、あの…………うん、ボクの言い方が悪かったね。べつにクルマじゃなくてさぁ」

 

「ぇえ……おまわりさんから頂戴できるようなモノ、って……いったい何よ?」

 

「ふっふっふ。……ねぇノワ、じぶんの『本業』をお忘れじゃないかい?」

 

「ほん、ぎょう…………あっ、そういうことね! なるほど!!」

 

「そうそう! そういうことよ!」

 

 

 

「宣伝広報案件の優先受注権とか!?」

 

「女の子用のカッコイイ制服とか!!」

 

 

 

「えっ!?!?!?」

 

「えっ!!!?!?」

 

 

 






えっ!!?!、???!!?


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