【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

331 / 539
319【追加項目】業務引き継ぎの相談

 

 

「ごめんなさい、だらしないところ見せちゃって……」

 

呵ッ々(カッカ)!! 良い土産話に成ったではないか! 大神の(ヘソ)を拝んだ(ヒト)の子なぞ()()う居るまいよ』

 

「もぉ、布都(ふつの)ちゃん。……ごめんなさいね、せっかく来てくれたのに失礼な格好を……」

 

「「「いえいえいえ……!!」」」

 

「まぁ実際オレ見れてな(いた)ァ!!」

 

 

 

 ほんわかした穏やかな笑みを浮かべ、目の前でお上品にほほえむ、神官のような特徴的な衣服に身を包んだ女性。

 ……いや、なんていうか……もう色々とツッコミどころ満載なんですけど……とりあえず、こちらの『少女』にしか見えないお方こそ、この『囘珠宮(まわたまのみや)』の主であるモタマさまその(ひと)であるらしい。

 正式なお名前は『鼎恵(かなえ)百霊(もたま)世廻(よぐりの)(みこと)』。大願成就や商売繁盛や五穀豊穣などなど……恵みをもたらす系のご利益があるといわれている、万人に人気の神様だ。

 

 

 神様という存在の実力と横柄さを身をもって経験していたおれは、てっきりこちらの神様もそういう感じかと半ば諦めの姿勢だったのだが……急遽お目通しが叶ったモタマさまは、とても穏やかで優しげなお方だった。

 金鶏(キンケイ)さんのセールストークも、あれ本当のことだったんだな。ほんの少しお言葉を頂戴した限りだが……なるほど確かに、半端ない包容力を感じてしまう。……見た目は霧衣(きりえ)ちゃんくらいの少女なのに。

 

 

 

「……百霊(モタマ)様は、普段は『神域』深層にて、我らの身を案じて下さっております。こちらのような幾柱もの写身(うつしみ)に別れ、首都圏各地の結界起点を守り、人知れず我らの生活をお守り下さって居られるのです」

 

「う……写身(うつしみ)、なんですか?」

 

「ぇえ……この密度で……?」

 

写身(うつしみ)が増えれば、本神(ほんにん)への負担も増える。其故(それゆえ)百霊(こやつ)は神界へと引籠り、情報収集や指示の殆どを『勾玉』で行っている訳だ。(ワレ)(ソレ)を借りられれば……声だけ届けば、事は足りたのだがな』

 

 

 な、なるほど。普段はこの世に身体をもっていないから、姿を現したときには『すっぽんぽん』だった、と。

 普段であれば声のやり取りのみでコトは足りるし、わざわざこの世向けに身体を構築する必要もない。今回もそのつもりでフツノさまや金鶏(キンケイ)さんは『勾玉』での通話を試みたが、盛り上がったモタマさまが(てっきり身内と友人だけの場かと思い)姿を現してみれば……おれたちがいた、と。

 

 そこであわてて――正式な場よりは幾分ラフな格好だとはいえ――お召し物を繕い……『変なもの見せちゃって、ごめんなさいね』などとしょんぼりしているわけだ。

 

 ちょっとかわいすぎやしませんか、囘珠(まわたま)の神様。ちょっとお近づきになりたくなってきたのですが、やっぱ入信……あの、えっと、すみませんフツノさまその目をやめていただけますか口は笑ってても目は笑ってないですごめんなさい大丈夫ですわたしはこれからも浪越の民です。信じていただけますか。ありがとうございます。ありがとうございます。フツノさまは寛大で寛容で頼りになる偉大な神様です。

 

 

「だ、だってぇ! 布都(ふつの)ちゃんが囘珠(うち)に来るなんて珍しいし…………()()()()()()()なのかなぁ、って」

 

呵ッ々(カッカ)! 相変わらず察しが良い(ヤツ)よな、話が早い。……飛びきりの『土産話』を持って来たぞ、百霊(モタマ)……(いや)、大神『鼎恵(カナエ)百霊(モタマ)世廻(ヨグリノ)(ミコト)』よ。面白い話と……面白くない話だ』

 

「あらあら。それじゃあ……面白くないほうから聞かせてもらえるかしら?」

 

 

 

 そう言うと……この国において屈指の信仰を集める、二柱の神様は。

 

 方や『にやにや』、方や『にこにこ』と……それぞれの神性がよくわかる表情で、おれへと視線を寄越したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呵ァッ々ッ々(カァッカッカ)!! 『龍を(したが)夢幻(ゆめまぼろし)(チカラ)の源とする童女(わらはめ)』と来たか!! 何処かで見覚えのある話よなぁ大神よ! (コレ)は傑作も傑作、御誂(おあつら)え向きと云わざるを得まいて!!』

 

「えっ!? これじゃない!? えっと、あの……フツノさま!? 『おもしろくないほう』って『魔王』ネタじゃないの!!?」

 

『くくっ……(いや)、合っておるよ。……っ、く呵々々(カカカ)! あの『王』を名乗りし不届き者め、姿を眩ませたかと思えば……(ワレ)(もと)を離れ、斯様(かよう)に愉快な事態(コト)を企てて居ったとは!』

 

「……えっと、その……意外でした。てっきりフツノさまは……あの『魔王』たちの動向、全部把握できちゃってるのかな、って」

 

呵ッ々ッ々(カッカッカ)! 知らぬ知らぬ! (ワレ)とて所詮(しょせん)は『浪越』の神よ! 神々視(カガミ)の『闚魔(のぞきま)』でも在るまいに、他神(タニン)の治界(すべ)てを()る事など出来ようか!』

 

 

 

 そういえば……あたりまえだが、神社にはそれぞれ祀られている神様がいる。

 鶴城(つるぎ)神宮のようにフツノさまを……『佐比(さび)布都(ふつの)天禍尊(あまがつのみこと)』を祀っている神社もあれば、この囘珠宮(まわたまのみや)の『鼎恵(かなえ)百霊(もたま)世廻(よぐりの)(みこと)』のような神様をお祀りしている神社も、当然あるわけだ。

 なんていったって……そこは日本、八百万(やおよろず)の神々が住まう国である。日本全国津々浦々、その土地土地に根差した神様の治める領地は、さすがにその神様たちのものだ。

 

 以前聞かせてもらった限りでは、神様は基本的に『自前の神社の敷地から(本体は)出ることができない』らしいので、つまり『ご自身が治めている領地の外では、振るえる力が限られる』のだと予測できる。

 よその神様の領地の中を覗き見たり、よその土地で暴れたり……なんかは出来ないわけだ。

 

 

「うふふ。私達ってねぇ、いうほど全知全能じゃないのよねぇ。……そりゃあ、私は治める土地と影響力は大きいほうだけど……数多の神々のひと柱でしか無いわけだし」

 

呵々(カカ)! 佳く云うわ『大神』めが。貴様一柱で何柱分の務めを果たして居る。……呑気に無駄話に興じる余裕なぞ在るのか? 早々に切り上げ、『微睡観(マドロミ)』に移るべきでは無いのか?』

 

「やぁよ。せっかく金鶏(きんけい)ちゃんがお茶会開いてくれたんだもの。私だって混ざりたいし……『面白い話』まだ聞いてないもの」

 

「えっ!? あの、でもまだ『魔王』の……面白くない話のほうが……」

 

布都(ふつの)ちゃんが応援してるんでしょう? なら私ももちろん協力するわ。何でも言って頂戴な。金鶏(きんけい)ちゃん、お願いね」

 

「は、はいっ! 承知致しました!」

 

 

 げに凄まじきは、圧倒的な『コネ』のちから。モタマさまと旧知の間柄であるフツノさまのお陰で、囘珠宮(まわたまのみや)の協力を取り付けることに……ほんの数分で成功してしまった。

 今後この東京で『苗』の被害があった際は、この囘珠宮(まわたまのみや)がおれたちのフォローを請け負ってくれるらしい。

 具体的には……隠蔽工作や、報道規制や、超法規的措置などなど。

 

 率直にいって……あのテのワイドショーのコメンテーターには辟易していたので、そのあたりもフォローしてくれるというのならとてもありがたい。

 

 

『後は……(くだん)の『龍(モドキ)』だがな。……百霊(モタマ)よ、貴様の(もと)で【隔世(カクリヨ)】の代演が叶う(モノ)は?』

 

「んーっと……金鶏(きんけい)ちゃんと、(なつめ)ちゃんと、若竹(わかたけ)ちゃんと、(おおとり)ちゃんと……あと末広(すえひろ)ちゃんと蓬莱(ほうらい)ちゃんね」

 

()鶴城(ツルギ)に於いては、(ワレ)を除けば龍影(リョウエイ)しか居らぬ。(ゆえ)に、恥を偲んで問おう。……()の者らの中で『囘珠(マワタマ)』の運営に直接絡んで居ない者は?』

 

「んー…………(なつめ)ちゃんね」

 

『!!?』

 

『……単刀直入に問おう。()の者を、此処な『(あき)つ柱』へと預ける心算(つもり)は?』

 

「うぅん…………力を貸してあげたいのは山々なんだけど……この子と()が切れちゃうのは、ねぇ」

 

 

 

 

 

「……っとお困りの、そこの神様(あなた)!!」

 

「えっ?」『呵々(カカ)!』

 

「そのお悩み……この【天幻】の万能アシスタントが、解決してみせます!」

 

 

 

 ………………えっ!!?

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。