【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

332 / 539
320【追加項目】専門スタッフの派遣要請

 

 

 鶴城神宮や囘珠宮の敷地内を警備する『(まわ)(かた)』や、()()()()でのお勤めを果たしている神使の方々……彼ら彼女らは通常、それぞれの持ち場である敷地から外へ出ることができない。

 彼ら彼女らが超常の力を行使できるのは、ほかならぬ主神との縁を繋ぎ、その力を借り受けているからに他ならないからだ。

 

 神様の力が及ぶのは、せいぜい敷地内……神域結界の影響範囲に限られる。

 そこから外に出てしまうと、神様から神力を届けるための『(パス)』が切れてしまうのだという。

 

 

 かつて霧衣(きりえ)ちゃんが、依代(シロ)としてのお役目を務めるために『鶴城(つるぎ)神宮』から外へと飛び出し、フツノさまからの(パス)が失われたように。

 あくまでも()()()へ適応してしまうというだけで、直ちに命が脅かされるわけでは無いとはいえ……神力の(パス)が切れてしまっては、業務に支障が生じてしまう。

 

 廻り方の纏め役である神使(ネチコヤン)、ナツメちゃんを手放すことは……囘珠宮(まわたまのみや)としても、モタマさまとしても、さすがに許容できるものではないのだろう。

 

 

 

 しかしそんな折、今まで沈黙していたラニちゃんが声を上げた。

 しかもその口ぶりはまるで……敷地から出た神使でも、主神との(パス)を失わずに済むかのような言い口だったのだが。

 

 

「セイセツさんに色々と協力してもらってね。キリちゃんとフツノさまのパスが切れたときの現象を、ボクなりに分析してみたんだけどさ? ……要するに『フツノさまの魔力を遠隔で送ることができれば、パスが切れない』わけじゃん?」

 

「そん…………そう、なの?」

 

「「「さぁ……」」」

 

「まぁ実際、そうだったんだよね。セイセツさんの紙人形で実験してみたんだけど、紙人形にその『フツノさまの魔力を受信する仕掛け』を施して、鶴城(ツルギ)神宮の外に放り出してみたところ……ちゃんと動いたんだよ。鶴城(ツルギ)さんの外でも」

 

「まじで!? ラニちゃんそんな実験やってたの! すごいねぇーえらいねぇー!」

 

呵々々(カカカ)! 中々に興味深い見世物であったぞ! 居合わせた市井の子らも大層驚いて居ったわ!』

 

「ちょっと!? バレちゃったの!!?」

 

呵ッ々ッ々(カッカッカ)!!』「わっはっは!」

 

 

 

 えっと、つまり……ラニちゃんの宣伝文句を信じるのなら、そのラニちゃん特製の仕掛けさえあれば、神使の方々が敷地外でも――神様の神力の届く範囲外でも――(パス)が切れることなく活動できる、ということで。

 それはつまり……神使の方々にとっては、これまで出ることが叶わなかった敷地外を見聞する好機(チャンス)が舞い込んできた、というわけで。

 

 

『まァ、当然『全盛の状態』とは行かぬがな。神域と同じ様に立振舞える訳でも無い。神域外での荒事は……業腹だが、相変わらず此奴(こやつ)()に任せる他無い訳だが』

 

「なるほどねぇ。その悪鬼を退治するのは、ちょっと不安だけど……【隔世(かくりよ)】の()()を行うくらいなら問題ない、ってことなのね?」

 

『然り。……荒事の際に【隔世(カクリヨ)】へと引きずり込むことが叶えば、此奴(こやつ)()の負担も減らせよう』

 

「…………本当に……本当に、私と(なつめ)ちゃんの『縁』は切れないのね?」

 

『百霊様!?』

 

「恐らくは、ね。……セイセツさんの紙人形は帰還後もパス繋がってたし、何度試しても問題は見られなかった。……けど、実際にシンシの方々で試したことは無いから……」

 

『万が一、と云う事態(コト)は……有り得ぬとは言い切れぬな。……まァその『万が一』が生ずれば、(ワレ)の眼が曇ったと云うことだ。責任を以て『出雲』へと掛け合おう』

 

「……布都(ふつの)ちゃんが()()()()言うなら……私は、良いわ。(なつめ)ちゃんはどう? ()()、興味あるんでしょう?」

 

『――――吾輩、は……』

 

 

 

 黄金色に輝く瞳を大きく見開き、その中に仄かな困惑と……ほんの微かに期待の『気配』を乗せて。

 しっとりふわふわの錆色の毛並みの、巡回警邏に並々ならぬ情熱を注ぐ――外界とそこに暮らす人々に並々ならぬ関心を寄せる――真面目でプライドが高い、錆猫の上級神使は。

 

 

 

 

「…………うん。じゃあ……()()()ってことで、やってみましょうか。

 

(われ)に連なる与力(よりき)が一柱、銘を八海山(やつみやま)(なつめ)其方(そなた)(われ)鼎恵(かなえ)百珠(もたま)世廻(よぐりの)(みこと)』の名に於いて、此処な(あき)(はしら)木乃(きの)若芽(わかめ)』の(もと)へ…………えーっと、しばらくの間? (えにし)(うつ)す……のを試してみることとする】っと」

 

()()! 何だその契約条詞は。ヨミに知れたら愉快な事態(コト)に成りそうだな』

 

「ここにいる子たちが告げ口しなきゃバレないわ。よみちゃんの常世視(とこよみ)だって、さすがに『音』は拾えないもの。…………そういうわけで、(なつめ)ちゃん。お母さんからの『命令(おねがい)』です。……いい?」

 

 

 

『――――御意に』

 

 

 

 

 歯を剥いて心から愉快そうに笑う神様と、慈愛に満ちた暖かみのある笑みを浮かべる神様に見守られ。

 

 多分に実験的な要素を含む、前代未聞の『はじめてのおつかい』作戦へと……二柱の神様による完全バックアップ(技術提供:のわめでぃあ)のもと、満を持して挑むこととなった。

 

 

 

 おれたちの仲間に、神使(ネチコヤン)が加わるかどうかの瀬戸際なのだ。

 頼むぞラニちゃん、信じてるぞラニちゃん。きみならできる。むしろできなかったら覚悟しなさいよ。でんぷんのりの刑が待ってるぞ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。