【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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445【研究成果】限定的再現

 

 

 構想着手から、あっという間におよそ二週間。

 いつもの配信アシスタント業務に加えて、魔法道具の試作・研究を重ねてくれていたラニちゃんの手によって。

 

 ついに、限定的ではあるが【繋門(フラグスディル)】の能力を秘めた魔法道具……きわめて画期的なその試作品が完成したのだった。

 

 

 

「すごい!! すごいよラニ!!」

 

「うぅーん……やっぱこれくらいが限界かぁ」

 

 

 鶴城(つるぎ)さんの技研棟へと技術実証モデルを納品し、そちらはそちらで技術スタッフの方々に解析して貰うとして。

 現在おれたちの目の前には……その複製品第一号が鎮座しているのだ。

 

 作戦としては、この魔法道具の『魔力供給部分』にひと手間加えてですね、えっと、その……おれの、おしっ…………排水パイプを流れてきた()()()()()()()によって起動するように、改良を施すことが一点。

 あとは【門】の出口を、浄化槽……を開けるのは嫌なので、その手前の下水配管へと設置する作業が、もう一点。

 そうすることで、おそらくすべての準備は整うわけで。

 

 周りにインフラが何もない山中の小屋に、念願の水洗トイレが誕生するわけだ!

 

 

 

「…………不満ですか? 白谷様」

 

「そりゃあね。ヒトはおろか生物は運べないし、そもそも【門】の径も小さい」

 

「……しかし、これだけでも画期的な作品に御座います。……今はそれを誇るべきかと」

 

「………………そだね。ありがと」

 

「…………いえ。……手前はただ、当然の事実を述べた迄に御座います」

 

 

 空間を支配する【天幻】の称号を賜ったラニにとって、この程度の【門】()()()は到底【繋門(フラグスディル)】と呼びがたいのかもしれないが……しかし天繰(てぐり)さんの言うとおり、この世界においてはこの上なく画期的な存在なのだ。

 

 この……見た目は『巨大な二本のちくわ』のようにしか見えない木製の筒っぽは、この『筒A』の穴を通ったもの(※ただし非生物に限る)を『筒B』へと転移させることが出来るのだという。

 【門】の維持のために物理的な枠を設け、しかもその枠の内径は十五センチが限界だったとはいえ……その効能はまぎれもない『転送魔法』にほかならない。

 

 

 たとえヒトを……生物を送ることが出来ないとはいえ。

 つまりはこの筒の中を通れるサイズであれば、一瞬で目的地まで品物を送ることが出来るのだ。

 

 手紙に、書類に、小包に、小型高価な精密部品に、もしくは水や、燃料パイプラインの代替に。

 もちろん魔力供給の手段を講じる必要はあるが……それでも、使いどころは数多だろう。

 

 

 ……それよりも。なによりも。

 

 

 

「少なくともおれは、メチャクチャに嬉しい。あの小屋でトイレが現実味を帯びたことはモチロンだけど……なによりも、おれのわがままのためにラニがここまで頑張ってくれたってことが、この上なく嬉しい」

 

「ノワ…………」

 

「…………ありがとね、ラニ。……おれに何かお礼できることがあったら」

 

「ん? ん???」

 

「…………もう。……いいよ、なんでも言って」

 

「えっ!?!?? マ!!?!!?!」

 

「…………信じてるから、ね」

 

「………………まいったなぁ……反則だよ」

 

「……これはこれは……お熱いことですね」

 

 

 

 まぁ、気を取り直して……こちらの、暫定呼称【転送筒】の改良作業だ。

 燃料が異なるとしても、仕様そのものに大きな変更は無い。設置場所の都合上、筒の中を通った燃料から魔力供給を受けられる形にすればいいわけだ。

 というかどうせ転送するんだから、筒Aの片側を塞いでいいかもしれない。こうすれば筒の中に魔力素材が溜まれば自動で【転送筒】が起動し、筒Aの中のちょっと言葉では言いづらいものを筒Bに転送してジャーしてくれるわけだな。

 

 

「…………成程。把握致しました。……ではもう一方の、被転送先は……筒状のまま、既存配管と置換する形で宜しいでしょう」

 

「あーそっか、おうちの排水はそのまま筒を通過して……」

 

「筒Aからの転送もそのまま流せる、てことね。オッケー意外とスムーズに行けそうじゃん?」

 

「そうだね。…………思ってたよりも早く完成しそう」

 

「……小屋の作業も、『(カラス)』共が着々と進めて居りますので……部品さえ届けば、来週には」

 

「まじですか! ……うん、やっぱおれも作業手伝います。埋設作業なら……地面掘ったり固めたり戻したりするのは、たぶんおれがいちばん早いと思うので」

 

「……それは…………そうですね。……非常に助かります」

 

 

 

 本日の暦的には、まだかろうじて八月。ここから一週間で作業を終わらせて、それでもなんとか九月の頭。

 本格的なキャンプのシーズンには、どうやら無事に間に合わせることができそうだ。

 

 

 

「チフリちゃんのお願いかぁ。……何人くらいだって? 来たいって言ってたの」

 

「えとねー、全員だって」

 

「は? …………え? は???」

 

「だからね、『にじキャラ』の配信者(キャスター)さん全員。Ⅰ期からⅣ期。()()()キャンプしたいって。なんならマネージャーさんたちも」

 

「      、  」

 

「…………その、御館様。……つまりは、総勢は」

 

「総勢ね、配信者(キャスター)で二十七人だって」

 

「「……………………」」

 

「……いや、さすがに一気には来ないでしょ。ユニットごとじゃない?」

 

「あの、そうはいってもですね……」

 

 

 

 せっかく『おにわ部』のみなさんが整備してくれた、贔屓目に見てすばらしいキャンプ地なのだ。一般公開することは不可能だとしても……知人友人であれば使ってほしいと考えるのは、別におかしなことでは無いだろう。

 とはいえ……先方にお知らせしたのは、まだほんの()()()だけだ。

 

 つい先日編集および投稿が完了した動画【『のわめでぃあ』全員集合! 真夏の林間キャンプ(プールもあるよ)編】に対して、直接熱烈な感想REIN(メッセージ)を送ってきてくれたⅣ期の洟灘濱(いなだはま)道振(ちふり)さん。

 とても羨ましそうな感情が文面からも滲み出ていた彼女に『よかったらキャンプしに来ますか?』『お誘いあわせの上ぜひどうぞ』と返事を送ったところ……それから三十分と経たない間に『にじキャラ』配信者の方々からの問い合わせが次から次へと立て続けにですね。いやおれが撒いた種だけど。

 

 挙句の果てには……大規模オフコラボの気配を感じ取った鈴木本部長から、直々に『商談』の予約(アポ)が舞い込む始末であり。

 ……そんな経緯もあった中なので、水洗トイレの整備はそこそこ急務だったわけだな。

 

 

 ともあれ、これならば『商談』を受けても大丈夫そうだ。

 ……いやまあ、その前に現場の進捗状況も一度見に行った方がいいだろうけど……受け入れが『できる』か『できない』かでいえば、おそらくは『できる』のだ。

 

 完成の日取りまではまだわからないけど、ざっくり『九月中旬から下旬』くらいの日付目安と、施設全般の情報提供くらいはできるはずだ。

 

 

 

「……御客様と在らば……丁重に歓待させて頂きましょう」

 

「ウーン……そだね。まぁなんとかなるか」

 

「テント張るスペースだけ地ならしすれば、まあ収容人数ふやせっかなって。最悪オウチの和室で寝てもらってもいいし」

 

「そうだね。……あの子たちなら、ボクも気が楽だ」

 

「油断しないでよね? 鈴木本部長撮る気満々だから」

 

「ホェェ!?」

 

 

 

 おれたち(というか『おにわ部』の皆さん)が手掛けた場所で、おれたちが大好きな配信者チームが、まちがいなく楽しいコンテンツを提供してくれる。

 

 そういうところに、おれたちは幸せを感じるんだ。

 

 

 たのしみになってきたな!

 

 

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