【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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479【第四夜目】ありがとう。そして

 

 

 いやあの待って、これ配信中ですやん。大事な大事な『にじキャラ』さんの催しに部外者混じってますやん。

 いくらカメラに映らない位置とはいえ、この(てぇて)ぇ場におれがいること自体とてもいたたまれない気持ちになるのだが……しかしこれは一体どういうことなのだろうか、配信者(キャスター)さんだけでなくスタッフの方々までもが、おれがこの場にいることに対してホンワカした『感情』を湛えている。

 

 これはいったいどういうことなんだろう。おれはどうすればいいんだろう。下がっていい?

 ……あっ、だめですか。まじですか。

 

 

 

 

「……それでは、楽しい楽しい晩ごはんの席なわけですが……せっかくなのでこのまま『管理人さん』も同席していただきたいなって」

 

「ふぁっ!?」

 

「そうやよー! まだあたしらちゃーんとお礼言えとらんし!」

 

八代(やしろ)んタブレットある? コメント出てるヤツ…………あんがとー!」

 

「まぁまぁまぁまぁわか……管理人さん。これでも見て落ち着いてください」

 

「ふぇっ!?? オヘェ!!?」

 

 

 マネージャーの八代さんから、ミルさん経由で差し出された配信モニター画面。……そこにはまぁ、現在配信に流れているカメラ出力と、視聴者さんからリアルタイムで寄せられているコメントが流れているわけだけども。

 そこに流れるコメントのうち、いくらかの割合で『とある言葉』が含まれているのを……動体視力に秀でたおれの視覚(エルフアイ)は、バッチリと認識していた。

 

 

 たぶんだけど……彼らは。

 幸運にもおれがお付き合いさせて頂いてる、たのしいたのしい配信者の一団は。

 

 ただの裏方であり、施設管理人であるおれたちに……律儀にも()()()()を伝えようとしてくれていたのだろう。

 

 

 

 

『のわめでぃあありがとう』『マジありがとう』『最高』『生きててよかった』『わかめちゃん見てるゥー!?』『ありがとう!!!のわめでぃあありがとう!!!』『わかめチャンネル登録しました』『お礼言わせろバカ野郎』『かめちゃんのおかげやで』『ありがとうのわめでぃあ』『振り込ませろ』『毎秒配信して』『ありがとう!!』

 

 

 

 

 …………ちょっ、あの…………ずるい。

 

 

 いや、でも……おれの目はごまかせんぞ。

 さっき【Sea's(シーズ)】の皆さんがおれを拘束しながら晩ごはんの準備をしてる中、なぜか小型カメラ(ゴップロ)を握って行方を眩ませた一名(いちミル)が居ましたね。

 

 さすがに盗み聞きするのはよくないかなって、耳をそばだてることはしませんでしたけども……そこでコショコショ話で視聴者さんをそそのかし、おれにお礼を言うようにけしかけたりしててもおかしくない。

 

 

 つまりは……これは。この『ありがとう』の奔流は。

 【Sea's(シーズ)】の、ひいてはにじキャラの皆さんの意に添ったものであり。

 

 そしてなによりも……ミルさんにそそのかされた視聴者のみなさんも、それに喜んで乗ってくれたということなのであり。

 

 

 配信の向こうも含め、この場に居合わせた方々みんなの『本音』ということなのだろう。

 

 

 

「ま、まぁ……わたしはただの『施設管理人さん』ですので! ちょっとなにをゆってるのかわかりませんが!」

 

「かめちゃん顔真っ赤やんなぁー」

 

「ぶュ、ッ!? だ、だれのことだかわかりませんが! わたし『管理人』さんですし! ただの『管理人』さん、です……けど…………」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「うっ、…………んうゥーー!!」

 

 

 

 ……まぁ、でも…………たとえこの場に『のわめでぃあ』として介入するわけにはいかないとしても。

 

 それでも……ここまで『ありがとう』の感情を向けられて、知らんぷりなんて出来るはずもないわけで。

 

 

 

「…………その、『わかめちゃん』とやらに、代わりまして……あ、ありがたく……お言葉、頂戴しておき……まひゅ」

 

「「「「かわいいーー!!」」」」

 

「ワァーーーー!!?」

 

「おいコラうにくろ落ち着け。じゃー……みんなごはん食べるよ。わか……管理人ちゃんも『試食』といわず、たーんとおあがり」

 

「……はいっ!!」

 

 

 

 相も変わらず、なぞの美少女エルフ管理人さんであるおれの姿がカメラに収められることは無かったけれども……おれは【Sea's】の皆さんいわくの『感謝の宴』の席に、ありがたく同席させていただき。

 この場の演者さんからだけでなくスタッフさんからも、さらには配信の向こうからも数多寄せられる『感謝』の感情を一身に受け……おれの小さな胃袋だけでなく、心がとても満たされるのを感じていた。

 

 ……たぶん疲労かなにかで視界が滲んでしまった気もするし、おれの顔を見る皆さんがなんだか頬を緩めてた気がするけど……きっときのせいだろう。そうにきまってる。

 このおれが泣くわけが……涙なんて見せるわけがないじゃないか。なぜならおれはおとこなので。

 

 

 

 

 

 

「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 

 

 ごはんの間も、おれはおそれ多くもお喋りに参加させていただいたりもしちゃって。

 今後の実在仮想配信者(アンリアルキャスター)の可能性……つまりは『あんなこといいね』『できたらいいね』などのお話にも、めちゃくちゃに花が咲きまくったりして。

 そしてやっぱり……【Sea's】の皆さんの気遣いの上手さに、不覚にも目頭が熱くなってしまったりもしちゃったりして。

 

 そんなこんなで、やや突発的ともいえる座談会と夕餉の席を終えて。

 数えきれないほど多くの『たのしい』と『うれしい』に囲まれた、恐らくおれ史上において過去一(かこいち)しあわせな晩ごはんの時間は……やがて当然のように終わりを迎え。

 おれは改めてとなる『ありがとう』の言葉に見送られ、当初の予定通りカメラに姿を晒すことの無いまま、無事かんぺきにお役目を全うすることができた。

 

 

 というわけで、おれは再び傍観者の立場に戻り、あとかたづけを行う皆さんをニヨニヨしながら観察させていただく。

 目ではバッチリ(てぇて)ぇ絡みを満喫しながらも、腹心であるラニちゃんとはリアルタイム思念通話により意見折衝の真っ最中だ。

 

 最後の仕上げとなる今夜の仕込みに向けて、バッチリ細部も詰めておかなければ。

 

 

 

(んでんでんで~~、そろそろ配置に着かせていい? ハデスくんたちヤル気満々なんだけど)

 

(おっけー。ちゃんと【虫除け】の魔法掛けてあげてね。あとチーム『おにわ部』にも号令を)

 

(はいはーい! いやー楽しみだよ。みんないー笑顔だし。……あとテグリちゃんズね。いつのまにあんな大道具をね)

 

(たぶん脅かすときは、初日みたいにいろんな【術】も織り混ぜるんだろうけど……人形めっちゃ手ぇ込んでたもんなぁ)

 

 

 

 食後の片付けばほぼほぼ完了し……そろそろ本日最後のスケジュールに移ろうかというところだろう。

 これから彼らが、何をしようとしてるのか。……それは実をいうと、もう既にSNS(つぶやいたー)にて表明されていたりする。

 

 

 思い出すのは月曜の夜。第一陣であるⅠ期生の某メンバーが、みっともなく盛大にビビり散らしたあの夜のこと。

 そのビビり散らしていた某メンバーと仲の良いⅣ期生メンバーが、そのことを繰り返し繰り返し慰め(茶化し)ていたところ、『じゃあお前らもやってみやがれ!』とおキレになられまして。

 

 そこへ騒ぎを聞き付けた癒し系邪龍(ウィルム)さんや、彼同様参加できなかったことを悔やんでいた天使(セラフ)さんや、祭の気配を嗅ぎとった王女(ティーリット)さま、果ては(ちとせ)さんや刀郷(とうごう)さんや各マネージャーさんたちやスタッフの方々、そしてなによりも視聴者さんたちが『肝試しやるってよ』『マジかよやったぜ』などと盛大に期待の声を寄せたがため……だいたいその某Ⅳ期メンバーのせいで、引くに引けない事態へと陥ってしまったのだという。

 

 まったく、いったい誰崎だれさんのしわざなんだろうか。おれにはわからないけどⅣ期のみんなは災難だとおもう。せめて華々しく散ってほしい。

 

 

 

 

 

 というわけで!

 いよいよやって参りました『肝試し』大会その二!

 

 前回からコースもルールも一新、さらに『おにわ部』の手により仕掛けも大幅バージョンアップ。加えてひそかにⅠ期生の皆さんの協力を取り付け、脅かし手の数も単純に倍!

 より騒々しく気合いの入った仕掛けにてお客様をお待ちしております!

 

 CM(※ないです)のあといよいよ本番!

 チャンネルは……そのまま!

 

 

 

 

 








そして

 ● ぬ が よ い



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