どこかの世界で
とある深い深い森の奥、幻想的な光りに包まれた場所で三人の少女がいた。
「よぉ久しぶり!何十年ぶりだ?」
「三十年ぶりね。ちょっとは外に出た?」
水色髪の獣人少女が楽しげに少女に話しかけ、片方の氷龍人のような少女が呆れ気味にそう聞く。
「……なんでこれてんのよ」
厄介者を見るかのように二人を見る少女は、そう小さく呟く。
「これは出れてないようね。ちょっとは良くなったと思ったんだけど……」
「引きこもりは治らないか。まぁ、あんな事があっちゃな」
「黙れ!別に出なくても生きていける!」
これは重症ね、と氷龍人は思い。どうにかなるんだろうか?と不思議がっている獣人。それを嫌に思ったのか、無駄とわかっていながら一気に力を開放する。
世界がガラリと変わり、歪んだ異界が姿を表す。同時に謎の粒子が知覚できるほど濃く発生し、世界を霧のように広がっていた。
「外には面白いものがいっぱいあるぞ。二百年も引きこもってたら時代についていけないぞ」
「友達として心配してるだけなんだけど……」
「余計なお世話だ!何回もわたしを引きずり出そうと画策しやがって!わたしは絶対にここから出ない!!」
次元が歪み、時空が乱れ、周囲一帯を破壊し尽くす。だがそれらすべてを普通に回避した二人は、呆れた顔をしながら楽しそうに戦闘を開始した。
「くうぅ……相変わらず出鱈目な!」
そして数分が経ち、未だに激しい攻防が繰り広げられていた。異界はどこまでも広がり続け、氷龍人は冷却波や冷凍線を撃ちまくり、獣人は近接戦で少女を苦しめる。
「なぁ、もういいだろ?こんな所で引きこもってないで……」
「うるさい!外は危ないんだ!あいつがいるんだ!」
衝撃波を放ち冷却波と獣人を跳ね除け、無差別に光線を放ちまくる。
「そうでもないよ。だってここは裏世界じゃないんだからさ」
「ッ!?」
だが間を縫って氷龍人が迫り、腕を掴まれる少女。
「は、離せ!このっ!?」
腕を粒子化させ、撒き散らされた異粒子が崩壊波を発生し、空間ごとすべてを削り取る。
「超越種であるあなたは、この世界でも上位に位置する超位精霊。そんなを傷つけられる存在なんて、裏世界でも滅多にいないよ。表世界ならなおさら」
安々とそれをすり抜け、捕まえようと少女へと手をのばす。そこへ少女は、逃げながら光線を撃つがすべて透き通り当たりやしない。それどころか周囲がこおり、身動きが取りにくくなっていく。
「おまえらみたいなのがいるから嫌なんだ!ここまで逃げてきたのに……関わらないでよ!」
「そうはいかないよ。引きこもってばっかじゃ、心身ともに悪いからね。それに友達としてどうにかしてあげたい」
ついには腕を捕まれ固められ、それを無理やり引き剥がすが、体勢が悪く反撃もできずに離れる。
「あれは不運としか言いようがないよな。だけど大丈夫だぞ。もう手は出させない」
「私達と一緒に気ままに旅でもしてさ。あの時みたいに楽しく過ごそうよ」
獣人と氷龍人がそう言い、少女へと手をのばす。
「で、でも、あいては神で……」
少女は困惑し、何も出来ずにブツブツと呟く事しか出来ない。
「神だろうがなんだろうがぶっ飛ばせばいい。オレに任せておけ」
「そうよ。ルスカがどうにかしてくれるよ」
「いやそこはお前も戦えよ」
「私じゃ邪魔になるだけだと思うよ?」
いつものように仲良く軽い言い合いをし、場が和む。その光景を見た少女は、自然と笑みがこぼれ、二人の元へ歩もうとした。
だが――
「ん?なんだ?っておい!?」
「この吸引力は!?」
「ちょっ!?無理ッ!!」
激しい戦闘により世界の一部が破壊され、ヒビとともに先の見えない穴が空いていた。そこへ体勢を崩した少女が、吸い込まれるように落ちていく。
「飛べ!飛ぶんだ!」
「と、飛んで!今すぐ!!」
「ダメ!力場が無茶苦茶で!それに力がッ!?」
手をのばす二人だったが、抵抗虚しくジリジリと距離は離れ、穴が閉じていく。
「く、くそっ!無理だ!こうなったら!これ持っていけ!」
そう言いルスカが何かを投げ渡し、それを掴む少女。
「こ、これは!?」
「それがあればこっちの世界にたどり着けるはずだ!無力ですま……」
そこまで聞こえ、世界の穴が閉じたのだった。