正面をリムルに任せたエリアは、そのまま後方部への警戒に当たる。
「始まったようね」
遠くから声が聞こえ、しばらくした後に慌ただしく戦闘音がなり始めた。それを聞いたエリアは、周囲に誰もいないことを確認し、異界を展開させる。
「はぁ~。こうも細かく節約しなきゃいけないなんて、面倒ね。疲れるし」
一々異界を展開させて、異粒子の消耗を抑えなければいけない今の状況に、面倒を感じるエリア。なぜならこれは、あくまで異粒子のムダを抑えるためにやっているだけで、本人の疲労はまた別であるからだ。
「早く帰りたい……。ってやっぱり来た」
異界に牙狼族が十匹ほど入った事を確認し、外へと瞬間移動する。
「入り口はこっちじゃないわよ」
急に現れたエリアに、警戒して足を止める牙狼族たち。そしてその異質さに、言葉も忘れ、一斉に威嚇を開始していた。
「結構薄めてるんだけどね。やっぱ、人間ぐらい鈍感じゃないと本能で分かっちゃうか」
異界内だとこれが限界かと、エリアが思っていると、すでに臨戦態勢になった牙狼族たちは、確実に目の前の異物を仕留めようと囲い込むように移動していた。
「一応、引くんだったら……って無理ね。じゃあ容赦しないよ」
飛びかかってきた牙狼族の噛みつきを避け、容赦なく手刀で斬り裂くエリア。それにより再起不能になった牙狼族を蹴り飛ばした。
「無闇には殺さない。後が面倒そうだからね」
当人たちはさて置き、リムルになんて言われるか分かったもんじゃないと、仕方がなく殺しを避けるエリア。
だが……
「手加減は苦手だからあしからず」
エリアはその性質上、手加減が非常に苦手なのだ。よって殺さないということは出来ても、鎮圧などは苦手としている。更に弱体化している上、相手が抵抗してくると言うなら尚更である。
再度牙狼族がエリアに食らいつこうと飛びかかった。それを真正面から殴り飛ばし、背後からくる牙狼族に手刀を振る。
そして次に来る相手に蹴りを放つ。
「こんなんでも連携はとれるのね」
死角を狙い、次に繋げるために隙を作り出させるように決死の特攻を仕掛けてくる牙狼族。だがどれも通じず、軽々と殴り蹴られ、斬り飛ばされる。
「……弱すぎない?」
手揚げん出来ているかわからないようだが、明らかに急所は避けて攻撃を当てていた。なのに全員、一発で撃沈しているのを引き気味に見やる。
「残りはどう……って向かってくるのね」
仲間をやられ、異界に当てられ、本能も含め正常な判断ができなくなった残りの牙狼族たちが、一斉にエリアに襲いかかる。
「せっかくだし、こっちも試しましょうか」
牙狼族にぶち当たり、霧散するエリア。それに驚いたのか、混乱しながらエリアを探す牙狼族たち。だが次の瞬間には苦しみだし、転げ回り始める。
「調整が難しい」
まるで壊れやすい玩具を丁寧に扱うように、異粒子を操作していくエリア。少しでも気が逸れたら、いつものように殺してしまうからだ。
「これだから脆いやつは……」
そう愚痴をこぼし、勝手に弾いてくれればいいのにと、雑に扱っても死なない奴らのことを思い出す。そうしていく内にも牙狼族は抵抗力を失い。一匹残らず動けなくなっていた。
「まぁ、これでいいわね」
面倒ながらも一箇所に集め、異界を閉じる。そしてしばらく待っていると
「お~い、エリア!そっちはどう……って聞くまでもないか」
事を終えたリムルが、エリアの様子を見に来ていた。
「こっちはとっくに終わってるわよ。早く回復させて、群れに戻るよう言って」
引き気味のリムルに、早く回復させて群れに戻るように伝えてくれと頼み込む。
「そうだな。ちょうどよかった。なんか引くように言ったら、俺に従うとか言い出して大変だったんだ」
「何したのよ……」
だが予想外の答えが帰ってきて、怪訝な目をするエリアであった。