少女が気がつくとどこかの洞窟におり、周囲を見渡していた。
「ここはどこよ……」
見覚えのない場所に、濃い魔素が漂う空間に顔を歪める少女。
「誰かの縄張り?だったらヤバい」
自身の力を確認し、大幅に弱体化した事を認識した少女は冷や汗を流す。
「この規模と密度……。裏世界の魔物、それも最上位に匹敵する相手か」
やりあえないことはないだろうが、今の自分では勝ち目はほぼないと当たりをつけ、気配を完全に隠し切った。
そして再度周囲の安全を確認し、
「これがあれば帰れるって言うけど……」
最後に投げ渡された転移結晶を見ながら小さく呟く。
「燃料不足か……まずは力を取り戻さないと」
流石に世界を越えられるほどの力は無いようで、足りない分を補わなければいけなかった。
「ここに漂う魔素は……直接は無理か。はぁ~、時間かけて馴染ませる必要があるのね」
少女はこの世界の存在ではない。よってこの世界に漂う魔素とは合わず、時間をかけて力を取り戻すしか道はないのだ。そしてさらにその取り戻した力を、結晶に馴染ませなければならない。
「時間かかる」
それは非常に時間がかかる作業で、いつ終わるかもわからないものであった。
「戦闘は避けたほうがいい。負傷はなおさら」
消耗すればするほど帰還が遅くなるので、それを避けようと見つけた魔物がいない道を通って洞窟の出口を探す。
「にしても広い。早く帰らないと二人が心配……してないね。わたしが死ぬなんて微塵も考えてないやつらだから、なんせあの忌々しい神が襲ってきた時だって生き残ったんだから」
元の世界で、神に襲われた時の事を思い出す。
「わたしが異界そのものだからって、研究させろとか。本当に神なのあいつ。まぁ、神性は持ってたから神なんだろうけど、異常にも程があるわ」
少女は、超位空間精霊の特異個体である。その力は異界。一つの世界にして、唯一無二であり続ける代わりに、既存の存在とは逸脱した異質な存在。
「まぁ、どうにか逃げ出したり二人に助けてもらったりしたけど、結局トラウマで引き込もちゃったし散々だった。……ちゃんと二人に謝らなきゃ」
そう考え、絶対に帰るんだと気を引き締め直す。そんな時だった。
「ん?なんかこっちに向かってくる?」
今までとは違う動きをする魔物を見つけ、気になった少女は静かにそれを追いかける。そして視界内にそれを捉え、よく観察する。
「無差別っぽいけど、知性がある動き?変なの」
活発に動き回るスライムを遠くから眺め、変なやつだなと感想をもらす。
「あっ、落ちた」
しばらく動き回っていたスライムは、調子に乗ったのか一気に加速し、どこかへと落ちていった。
「あっちから強い気配が感じるけど、どうしよう……」
以前の少女なら、気になることがあれば突撃していたのだが、今は弱体化中である。それにトラウマのこともあり、より慎重になっていた。
「この世界にあいつはいない。強者と出会っても逃げ出すことぐらいはできる……」
時間を忘れ深く考え、ベストを探す。その結果……
「それに何より気になるし……よし行こう!好奇心優先だ!」
気配を隠しておけばバレないだろうと安易に考え、降りていくのだった。