次の日、ここに来てやっとリザードマンたちが町へやってきていた
「我輩は、リザードマンの次期首領――ガビルである!お前らも、配下に加えてやろう!光栄に思うがいい!」
(こいつがガビル……しかも風槍族と水剣族、雷電族までいるね)
(そうだ。お調子者で、謎のカリスマ性があるやつだ。ここまでとは思ってなかったが……)
皆がガビルの方を見て、なんとも言えない表情をしていた。それもそうだろう、着いてそうそうこちらの戦力を確かめずにこの言い草なのだから。
だが配下におだてられて、本人は一切気づいていない。
「ゴホン……恐れながら、ガビル殿と申されましたかな。配下になれと突然申されましても――」
「やれやれ、皆まで言わねばわからんか?貴様らも聞いておるだろう?オークの豚どもが、このジュラの大森林を侵攻中という話だ。しかも、もうすでに大きな被害まで出ている」
そう言い、後ろにいた風槍族の少女が頷く。
「ほほう……」
「しからば我輩の配下に加わると良い!このガビルが貧弱なお前たちをオークの脅威から守ってやろうではないか!」
大げさに演技をなしながら、初めてこちらをキチンと確認したガビル一行。
「貧弱な……子鬼がいないようだが?」
「てか、貧弱な奴が誰もいないよ」
一旦後ろへ戻り、仲間たちと相談するガビル。話が違うぞとか、聞いてないぞとかが聞こえてきていた。
「えー……ゴホン!聞けばここには、牙狼族を飼いならした者がおるようだな。そいつは幹部に引き立ててやる。連れてくるがよいぞ」
取り敢えず引き返すことなどできる訳ないのか、予定を変更し話を続けるガビル。
それを聞いたベニマルは
「こいつ、殺していいですか?」
「ちょっとベニマル!落ち着け落ち着け!えっと……牙狼族を飼いならしたと言うか、仲間にしたのは俺なんですけど……」
今にもキレそうな、だが満面の笑みでリムルに了承を求めるベニマル。無論リムルはそんな事許すはずなく、必死に止めようとしていた。そこで我狼族の話を出されたので、それに答えるリムル。
「スライムが?冗談を言うでない」
「まぁ、そうなるよな……ランガ」
なんとなくそう来るのでないかと思っていたリムルは、ランガを呼ぶ。
「ハッ、ここに」
「お前に話があるようだ。聞いて差し上げろ」
嫌そうだが、リムルに言われ仕方がなくガビルの相手をするランガ。
「あんなにデカかったか?」
「あれが通常の大きさなんだよ。いつもは大きすぎるから縮んでもらってるが、威嚇するならあのサイズの方が都合いいだろ」
いつもよりデカイランガに、皆疑問を言う。どうやらリムルが、普段は小さくなるように言っているらしかった。
「他のやつは威圧されてるのに……あいつ結構根性ありそうだな」
ランガに威圧され、大半のリザードマンたちが縮こまっていた。だがガビルは平気そうで、変わらず堂々としている。
「我狼族の族長殿かな?美しい毛並み、鋭い眼光、威風堂々たるたたずまい。しかし、主がスライムとはいささか拍子抜けであるな」
軽い挨拶をし、褒めたかと思えばすぐに挑発を始める。そして勝手に話を続け……
「どうやら貴殿は騙されているようだ。良かろう、この我輩が貴殿を操る不埒者を倒して見せようではないか」
それを聞いたランガは、今にもガビルを食い殺しそうになるほど怒りを滲ませる。
「あれヤバいんじゃ?」
「そうね。ガビル死んじゃうわよ」
リムルは悩み、エリアとクロノはボケ~と眺める。そこに救世主が現れた。
「あれ?何やってるっすか?」
「あれ?もう動けたのか?」
シオンの料理を食わされ、撃沈していたゴブタが復活していたのだ。どうやら耐性を得たようで、リムルはそれを褒め、ゴブタは照れる。
「良いところに来たな」
「へ?」
だが次の瞬間にはランガに咥えられ、ガビルの前に置かれていた。
「トカゲ、この者を倒せたら、貴様の話、一考してやろう」
「ふっ、構いませぬぞ。部下にやらせれば恥はかきませんからな。なあ、スライム殿?」
ガビルの挑発にムカついたのか、リムルがゴブタに本気でやれだの言っている。それをエリアとクロノは可哀想にと哀れみの目で見ていた。だが最終的には、専用武器につられて了承したゴブタ。
「負けたらシオンの料理の刑な」
「絶対に負けられないっす!」
「なにやら非常に不愉快な話です」
シオンの料理の話を出され、本気になるゴブタ。そしてシオンに捻り潰されそうになるリムル。
そんな事はさておき、二人の勝負が始まった。
一気に距離を詰め、槍の一撃を放つガビル。だがその瞬間、ゴブタの姿が消え……
「やるな、ゴブリン!」
「今のに反応するっすか!?」
影移動を使い、背後を取ったゴブタの攻撃に反応するガビル。
(ガビルが強くなってる)
(見た目が変わってないから、進化しないギリギリまで強化されてるんだろうね)
ハクロウに鍛えられたゴブタと同等に渡り合うガビルを見て、二人はそう思った。
「おい、あのガビルとか言う奴強くないか?」
「ゴブタ押されてる」
元の種族差が大きすぎるのか、押され始めるゴブタ。それに対し仲間たちの応援を背に余裕そうに挑発をするガビル。
「こうなったら!」
「同じ手はくわぬぞ!」
再度影に潜み、背後を取ろうと動くゴブタ。それに構えたガビルは、咄嗟に槍を振るが、そこには誰もいない。
「へ?ぐわっ!?」
フェイントをかけ、ガビルが反応した瞬間に更にその背後から飛び出し蹴りを叩き込む。それを食らったガビルは、呆気なく気を失い倒れ伏す。
「やったなゴブタ。約束どおり専用の武器を作るように言っといてやる!」
「やったっすー!」
専用武器を貰えると聞いて喜ぶゴブタ。
「お前ら、勝負はゴブタの勝ちだ。まだなにか文句あるか?」
堂々としているが、どうやら勝つとは思っていなかったようで驚いていた。それに対し、まさか負けるとは思っていなかったリザードマンたちは、ビビって戦慄する。
「オークと戦う為に強力しろという話なら検討しておくが、配下になるのは断る。今日のところはそいつを連れて帰れ」
リムルの言葉を聞くなり、負け惜しみっぽいセリフを吐いて撤退していくリザードマンたち。それを見たリムルは
「やれやれ、こっちも方針を考えないとな……」
そう思うのであった。