ガビルたち一行を返した後、皆で集まって会議をしていた。
「30万のオーク、その本隊が大河を沿って北上している……そして、本体と別働隊の動きから予測できる合流地点は、ここより東の湿地帯……」
ソウエイが調べてきた情報を説明し、予測を話してくれる。
「つまり、リザードマンの支配領域……ということですかな」
オークの合流地。それは、リザードマンの縄張りだった。
「30万か、オークの目的って何なんだろうな?」
「それだけの数を食わせていく為の食料源でしょ」
「だがどうやってだ?格上ばかりのジュラの大森林で暮らせるのか?」
リムルの疑問に、エリアが即答する。そもそもの目的や行動を考えれば、その答えはすぐに出てきていた。だが今までしてこなかったこと、実現可能性が低いのになぜ行動に起こしたのかわからない様子。
「ふむ、オークはそもそも、あまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に本能以外の思惑があるとするなら、何かしらのバックを考えるべきだな」
「例えば魔王、とか。各種族の里、それにこの町の近くに来たっていう、ゲルミュッドとか言う魔族が絡んでるとしたら……」
絡んでいるのは確定だろう。本人がそれらしいことを言っていたのだ。
「詳しくはわからん。だが……」
「だが……?」
だが目的がわからなかった。あれだけの実力があり、本人が魔王になると言っているのに、オークなどを使うのかと。目的が似ているだけでまったくの別もので、偶然発生したオークをただ利用しているだけではとも考えていた。
「オークロードが発生した可能性が高まったと思う」
「数百年に一度生まれるユニークモンスターだっけ?」
ベニマルから聞いた話を思い出すリムル。
「はい、30万もの軍勢を普通のオークが統率できるとも思えませんから」
「いないと楽観視するよりかは、警戒すべきかと思います」
「そうだな」
そんな話を聞きながら、エリアはとあることを考えていた。
(元が20万で、今回は30万。こっちのオークはよくこんなに群れれるわね。個々の実力も上がってるだろうし、いざという時には動けるように……ん?だれかしら?)
そう思った瞬間、部屋が光、ドライアドの女性が姿を表す。
「――魔物を統べる者。及びその従者たる皆様。突然の訪問相すみません。わたくしドライアドのトレイニーと申します。どうぞお見知りください」
「お、おう。俺はリムル・テンペストです。ええと……トレイニーさん、一体何の御用向きで?」
(ここはリムルに任せればいいわね)
そうしてリムルとトレイニーの話が始まる。その内容は、オークロード討伐の依頼だった。
「オークロードの討伐?ええと、俺がですか?」
「ええ、そうです」
戸惑うリムル。倒す予定とは言え、いきなりそう言われると戸惑うようだ。
「いきなり現れ、随分と身勝手なものいいじゃないか。トライアドのトレイニーとやら」
「……」
気に食わないのか、いきなり食って掛かるベニマル。舐められないためにでもやっているのだろう。
「なぜこの町に来た。ゴブリンよりも強い種族はいるだろう」
「そうですね。オーガ、及び他の種族の里が健在でしたら、そちらに出向いていたでしょう」
さらっと返され、言葉が詰まるベニマル。
「まぁ、そうであったとしても、この方の存在を無視することは出来ないのですけれど」
そこで話を続けるトレイニー。
「我々の種族の集落がオークロードに狙われれば、ドライアドだけでは対抗できません。ですからこうして、強き者に助力を願いに来たのです」
「オークロードがいるってこと自体、俺たちの中では仮説だったのだけど……」
不思議そうにそう聞き返すリムル。
「――いますよ?オークロード。ドライアドは、この森で起きていることならば大抵は把握しておりますの」
オークロードの存在を知って、会議室はざわめく。
「返事は、少し待ってくれ」
「?」
それを聞いたエリアは、少し感心する。なんやかんや言って、困ってるなら助けると言ってしまいそうなリムルが、保留にしたのだ。結果はどうであれ、今の行動には好感を持てていた。
「こう見えてもここの主なんでな。鬼人たちは援護するが、率先して藪をつく気はないんだ。情報を整理してから答えさせてくれ」
そう言いつつ、トレイニーも加わり会議が続く。
「オークたちの目的だが、思い当たる奴はいるか?」
リムルがそう意見を求める。そこでシュナが挙手し、ソウエイへと話を振った。
「同胞のものも、オークのものも、ただ一つも死体がありませんでした」
「30万もの数の食料を、どうやってまかなっているのか不思議だったが……」
まさかと皆固唾を飲む。
「ユニークスキル、飢餓者。世に混乱をもたらす災厄の魔物。オークロードが生まれながらにして必ず保有しているスキル」
「それが原因だってか?」
クロノの言葉にトレイニーが頷き、話を続ける。
「オークロードの支配下にある全ての者に影響を及ぼし、イナゴのように周囲のものを食べ尽くす。食らった相手の力や、能力までも自分の糧とするのですわ。貴方さまの異食者と似ていますわね」
面倒な相手だなと思うエリアと、黙り込むリムル。
「飢餓者の代償は、満たされることのない飢餓感。オークたちは、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進むのですわ」
そう締めくくったトレイニー。
「オークの目的は、森の上位種族を滅ぼすことじゃなくて、力を奪うことか。そうとなればウチも無事とは言い難いな。味はともかく、餌になりそうな奴がわんさかいる」
皆を見渡し、そういうリムル。
「それに、オークロード誕生のキッカケに魔人の存在を確認しております。貴方様は放っておけない相手かと思いますど」
「やっぱりな。通りでノコノコやってきたわけだ」
追加で魔王の話も出てきて、クロノがそう呟く。
「リムル・テンペスト様。改めて、オークロード討伐の依頼をします。数多くの種族を配下に持つ貴方様なら、オークロードにも遅れは取ることはないでしょう」
再度オークロード討伐を依頼され、悩むリムル。だがそこへ……
「当然です!リムル様なら、オークロード程度敵ではありません!」
「まぁ、やはりそうですよね」
シオンが勝手に話を進め、トレイニーがそれに乗っかる。
「……わかったよ。オークロードの件は俺が引き受ける。みんなもそのつもりでいてくれ」
そうしてリムルは、オークロード討伐を引き受けたのだった。