ソウエイの報告が届き、約束の日がやってきていた。
「籠城戦って話じゃなかった?」
「そのはずだが……」
だがいきなりトラブルが発生していた。それはリザードマンたちが当初に予定していた籠城戦を止め、一気に打って出ていたのだ。
「しかも結構押されてるって?」
「はい、機動力では有利なリザードマンとは言え、強化されたオーク相手には苦戦を強いられているようです」
ソウエイと念話をするリムル。その内容は、リザードマンが苦境に立たされていると言う内容だった。
「リムル様、はぐれのリザードマンたちがオークに襲われています、いかがいたしましょう」
「いかが致しましょうって……、そりゃ助けるしかないだろう。事情を聞くぞ」
どうやらリザードマンの拠点の近くで、少人数のリザードマンたちがオークに襲われているようだ。それを聞いて急ぐリムル一行。だが辿り着いた先では、すでにソウエイがオークたちを始末していた。
(思った通り相当強化されてるわね)
(想定外すぎる。こりゃ、食った奴らの力全部持ってるんじゃないか?)
リムルがリザードマンから話を聞いている間に、エリアとクロノは相談していた。
(それはないでしょ。基礎以外の特殊能力は、多分適正あるやつに自動的に配られてるだけよ)
(それだけでも十分に脅威だ!死ににくいし、偶に特殊能力持ちがいるとか地獄そのものだろ!)
数が数なのだ。全体の一割程度しか能力に発現していなくても、3万程度はいることになる。しかもこれは特殊能力だけの話で、耐性などは皆共通で死ににくさにも拍車がかかっていた。
「じゃあ決まりだ。同盟は締結された」
どうやらリムルたちも話が終わったみたいで、ソウエイにガビルを助けに行くよう頼んでいる。
「よし、行くぞみんな!オークロードを倒しに!」
「「「おおっ!!」」」
そうして、リムルたちも急ぎ現場に向かうのであった。
とある森の奥深く、二人の魔人が水晶を見ながら話していた。
「よっしゃ!よっしゃ!いい感じになってきたで!なぁ、ゲルミュッド様!」
「うむ」
喜ぶピエロに、冷静に様子を確かめるゲルミュッド。
「計画の方、順調に運んどるようやなぁ~、ハハッ」
「いや、まだ不安点がある」
それを聞いたピエロは、一瞬動きを止めたが、すぐにテンションを戻してその内容を聞こうとする。
「どうしてや?オークはすでに魔王種を得てるし、そもそもあれだけ食ってたやん。それに加え、リザードマンまで食えばもう負けなしやと思うけどな~」
「実は掌握に失敗した魔物たちがいる。そいつらがどう動くかによってこちらも考え直す必要がある」
ピエロの言葉に、ゲルミュッドはダメな理由を答える。エリアの事を見て相当警戒しているようだ。
「へ~でもまぁ、あんたが失敗することって割とあったやろ?今まで通りオークたちに食わせればいいやん。多少強くても、あんな数に勝てるわけないってな」
「……そうだといいんだが、一応警戒しておく。あのお方に期待されている以上、無様な失敗はできないからな」
まさかとは思っているようだが、その時のためにも準備を十全にしておく必要があった。
「できればオークに魔王になって貰いたいが、いざという時には俺が直接出る」
「ああ、そういやゲルミュッド様は、名付けした魔物の力を得られるんやったっけな?しかもそいつらがやられれば大半の力が入ってくるって言ってたな?」
ゲルミュッドが原作よりも多くの魔物に名付けをしてきたのも、それが理由であった。そして名付けした魔物たちを争わせ、殺られた魔物の力はゲルミュッドのものになり、残った魔物は傀儡になるのだ。
「そうだ。万が一オークが倒されても、俺が魔王になればいい」
この隙のない計画により、もしオークロードがやられても、ゲルミュッドがより強い存在となり、魔王化するようになっていた。
「そうやそうや、今回相当手を貸して貰っとるんやろ?その能力も含めて。そりゃ失敗できませんな。警戒する理由も分かりますよ」
「ああ、あの方の希望に答えるため、そして俺の野望のためにも……」
「なかなか楽しそうな話をしていますね」
そこまで話が進み、誰かが現れる。
「誰や!?」
「何者!?」
「わたくしの名はトレイニー。この森での悪巧みは見逃しません」
トレイニーが突如として現れ、戦慄する二人。どうやらトレイニーのことを知っているようで、急いで撤退しようとする。
だが――
「森を乱した罪で、あなたがたを排除します」
「なんやて!?」
「くそっ!こんなところで!」
その前にトレイニーが風の精霊を呼び出し、風斬を放ち、ピエロの腕が斬り飛ばされる。
「くっ!?無茶苦茶しよるな、アンタ……問答無用かいな。まぁ、目的は粗方達成してますんで、このへんで撤退させてもらいますわ。ほな、サイナラ!」
そこでピエロは煙幕を張り、ゲルミュッドとともにその場から消えた。
「……逃げられましたか。状況は思わしくありませんね。
リムル・テンペスト、オークロード討伐……信じていますよ」
逃げられたことを悟ったトレイニーは、酷くなった状況を憂い、そう願うのだった。