お名残欲しいが、ヴェルドラの封印場所から離れようとしたエリアは、リムルに引き止められていた。
「ちょっとまってくれ。少し試したいことがあるんだ」
「その封印?を解く気?ちょっと難しい気がするけど」
ヴェルドラを閉じ込めている封印は、エリアから見ても強力なものだった。おそらく元の世界でもこれを破れるやつは少ない。相性もあるだろうが、せいぜい百人もいないだろう。
「いや、流石の俺でも無理だ。だけど何か方法がないかなって」
「……わたしも無理ね。ヴェルドラを安全に出すことなんて」
そんな代物を、弱体化したエリアがどうにかできるはずもない。強引にやった所で事態は悪化するだけである。そしてリムルもまた、今さっき出た解析の結果、無理だと言っていた。
『むぅ~、こればかりは仕方がなかろう。だから偶に来て話し相手になってくれればそれでよい』
「とは言っても、百年後には消えちまうわけだろ?なんだか寂しいじゃないか」
(一応壊せるけど、中にいるヴェルドラも消滅する可能性が高いし黙っとこ)
そんな感じに悩む三人。そこでエリアがふと何かを思いつく。
「わたしの異界の中に入る?どうなるかわからないけど」
『異界とな?そこはどんなところなのだ?』
せめて消滅しないようにと、自身の異界の中で過ごさないかと、次いでに封印の解除も試してみようか?と提案する。
「もう一つの世界、かな?でも今はなにもないよ。力を失って散っちゃったから」
『もう一つの世界……』
異界の元となる異粒子が漂うだけの、ただただ広いだけの空間。そこにヴェルドラを放り込むつもりであった。
「少し懸念点があるんだけど、ヴェルドラが変異しちゃうかもしれないのよ。まぁ、わたしも自分より強いやつを長期間入れたことないからわからないけど」
あらゆるモノが違う世界へ放り込まれ、その力にさらされ続ければ、変異する可能性があった。現に今まで異界に入れた存在は、例外なく変異している。だがエリアは、ヴェルドラは自分より強いから跳ね除けるだろうと考えていた。
『結局別のなにかになるわけか。それは困ったな』
「わたしも、力を取り戻すのが遅くなるからあまりしたいことではないけど、せっかく友達になったんだから、助けたいなと思ったんだけどね」
結局何も解決せず、また位置から考え直し……とはならなかった。
「そうだヴェルドラ!俺の胃袋に入らないか!」
「は?」
『ぬ?』
いきなりリムルがそう言い出し、困惑する二人。そこでリムルが急いで説明を始める。
「い、いやな。俺の能力で捕食者ってのがあるんだ。それでヴェルドラを封印ごと取り込んで消滅を防げるかなと思って。それに上手くいけば封印も解けるかもしれないんだ」
どうやらリムルには捕食者という能力があり、取り込んだものを入れておける亜空間も備わっているらしい。その中にヴェルドラを入れ、封印解除の作業を行おうとしていた。
「これなら消滅も防げるし、時間はかかるが封印が解けるはずなんだ」
「考えるなリムル。たしかにそれなら上手くいくかもしれない」
リムルの案に納得するエリアは、よかったら自分も手伝うよといい、黙り込むヴェルドラに視線を向ける。
『ク、クアハハハハ!面白い!面白いぞ二人共!!ぜひやってくれ。お前に、お前たちに我の全てを委ねる!』
予想外すぎる提案に、ついに堪えが効かなくなったのか、大笑いし楽しそうにそう告げるヴェルドラ。
「そんなに簡単に信じていいのか?」
「警戒しなささすぎじゃ?」
『無論だ!だがそれでいい!!ここでお前が帰って来るのを待つよりも、お前の中で外へ出る為に奮闘したほうが面白そうだ!
なあに!我とお前と、そしてエリアもおるから、三人でかかれば『無限牢獄』も破れるかもしれん!』
実に愉快そうなヴェルドラは、裏切られるなど微塵も感じていないようであった。
「じゃあ、今からお前を喰うけど、さっさと『無限牢獄』から脱出して来いよ?」
「そうね。あんたならできそうね」
『クククッ!任せておけ!そんなに待たせずに、お前たちの前に合間見えよう!!!』
そうしてリムルはヴェルドラに触れ、一気に広がり捕食を行った。
「呆気ない。やっぱ、全体を包み込まれたらああなるのね」
「ああ、だがこれでやっと行けるな。次会うのが楽しみだ」
土産話でも用意していくかと二人で話し合いながら、洞窟を出るために移動を開始したのだった。