ガゼル王が来た理由は、ゲルドを倒した存在とこの町の存在の確認だった。そして話はトントン拍子に進み、盟約を結んだり、国や町の名前が決まったりとリムルが忙しそうにしていた。それに付き合わされていたクロノも大変そうだった。
その後もリザードマンやガビルが町に来て配下になったり、ベスターってやつをガゼル王からもらったりして時間が過ぎて行った。
その間エリアは何をしていたかと言うと…
「おお!素晴らしい、これほどの叡智。流石エリア様。今後の研究のために、ぜひこれを読ませていただきたい!」
「え?別にいいけど……」
町の発展の為に、持っていた各種専門書や資料を読み漁っているところをベスターに見つかり、資料を貸してあげたり
「流石はエリア様。実戦ではワシより上手でありますな」
「訓練じゃハクロウの方が上だよ。わたしは教えるの下手だからね」
ハクロウと手合わせして、訓練はハクロウ、より実戦的な戦闘訓練はエリアと役割分担したり
「参考になるかわからないけど、武器いる?」
「これは……エリア様の武器。ぜひ調べさせてくれ」
「なにこれ凄い……」
「なるほど、こういうのもあるんだべか」
立ち寄った鍛冶場で、元の世界に出回っていた武器をいくつか貸し出してみたり
「兵器ってのは、こういうモノを言うんだよ」
「オーバーテクノロジーにも程があるわ!」
レールガンらしき武器をリムルたちに見せて、怒られたりしてた。
「あの程度大丈夫だと思ったんだけどね」
「やりすぎだぞ、エリア。伝説級に近い特質級の武器渡すわ。レールガンみたいな近代兵器教えようとするわ。この世界が壊れるわ」
クロノにも怒られ、何が悪かったのか考えるエリア。
「お前の世界では普通でも、この世界にはそれにあったモノってのがあるんだ。異質なモノを入れまくったら、後が大変だろ」
「それもそうね。軽率だったわ」
やはりやり過ぎはよくないと、もう少し抑えようと考え直したようだ。そんな事を町が見える丘の上で話していると、リムルが一人でこっちへとやってきていた。
「どうしたの?」
「ちょっといいか?そういや一つ気になっていた事があるんだ。あの時出してた卵?あれなんだ?」
唐突に妖魔聖蟲の卵について聞き出すリムル。どうやらあの戦闘中に出したのがバレていたようだ。
(隠してたハズなんだけど……)
(強化しすぎたからじゃ……)
原作の大賢者なら気づかないほど慎重に動いていたエリアたちだったが、どうやら究極能力一歩手前まで強化された叡智者は気づいていたようだ。
「え~と、これのことでしょ?妖魔聖蟲っていう蟲の卵よ」
「なんでこんなの持ってんだよ」
卵を取り出した瞬間、強力なエネルギーを感じ、眉をひそめるリムル。そこでクロノにした説明をリムルにするエリア。
「そんなもん配ってる奴がいるのかよ」
「友達の印だってさ。まぁ特例でも起きない限り、孵化するのに時間かかるけどね。これは特に」
通常半月程で孵化可能になるのだが、エリアに合わせて作ってくれた卵なので、エリアの力になれるまでは孵化しないのだ。そのせいで、孵化までに数十年単位の時間が必要であった。
「特例?」
「そうそう。わたしが危なくなったら孵化するの。まぁ普段は異界の中に入れてるから、気づかれないけどね」
「そりゃ大丈夫だな。エリア強いし」
所有者が危険な目に合うと、それを助けるために急速に進化、成長を繰り返すようだ。しかしそれをすると、専用で作った意味がなくなるので、エリアは異界の中に入れて誤魔化している。そしてなにより、戦力として期待できないというのが大きいが、ペット的な立ち位置なので気にしていない。
呑気にそんな事を話す三人。だがクロノはそこで重要なことを思い出した。
(あ、そういやエリア。もうそろそろ……)
「何だ――この魔力!?強力な魔力の塊が、とんでもない速度でこっちに向かってくッ!?」
何かが着弾し、三人は距離を取る。
「初めまして、ワタシはただ一柱の竜魔人にして、破壊の暴君の二つ名を持つ――魔王ミリム・ナーヴァだぞ!」
(魔王かよ!?)
(ついに来たか、理不尽の権化め!)
(こいつがミリム……)
三者三様の思いを無視して、ミリムは話し出す。
「お前らがこの町で一番強そうだったから、挨拶に来てやったのだぞ!」
「は、はじめまして。この町の主、リムルと申します。よくぞ俺達が、一番強いと分かりましたね?」
恐る恐る挨拶をするリムルと、それを見守る二人。
「ふふん!その程度、ワタシにとっては簡単なことなのだ。この竜眼は、相手の隠している魔素の量まで測定できる」
「ほお、竜眼か……」
それを聞きながら、同対処しようか困っているようであった。
「ところで、その姿が本性なのか?ゲルミュッドとオーク・ディザスターと対峙したあの姿は、变化したものなのか?」
「この姿のことですかね?」
すべてお見通しと言われ、諦めて人化するリムルとクロノ。
「おお、やはりお前だったのだな!では、オーク・ディザスターを倒したのだな?」
「まぁ、俺が勝ちましたけど……で、何の御用でしょう?もしかしてゲルミュッドの復讐……じゃないですよね?」
慎重の面持ちで聞き返すリムル。だが……
「む?要件、だと?ただ挨拶しに来たんだけど?」
ほんとにそれだけのようで、困惑するリムル。
「覚悟!!」
「シオン!」
しばらく向かい合った後に、リムルが動き出そうとした。その時、シオンはミリムに大剣で斬りかかっていた。だがその斬撃は、割り込んできた誰かに弾かれる。
「ミリム様に手を出そうとは、これは私が相手をする必要がありそうだな!」
「ナナラか!もう追いつかれたのだ!せっかく遊べると思ったのに」
そこには龍のような翼の生えた、赤い瞳に金短髪の少女が、稲妻を迸らせながら槍を構えて立っていた。
「さぁ!行くッ!?」
「バカ、止めなさい」
次に来た、赤翼を生やした髪を長めに結んだ赤長髪の少女に頭を殴り落とされるナナラ。
「レッカ……」
「何しているの?いきなりあんな現れ方したら、ああなるのは当然」
なぜか説教が始まり、無愛想、無表情で淡々と話し続けるレッカ相手にミリムは静かになる。そして言いたいことを言い終えると、振り返り
「ごめんなさいね」
「べ、別にいいが……あっ!そうだ。ちょうど昼頃だろ?ウチで飯でも食っていかないか?美味い料理ご馳走するよ」
空気が悪くなったのをどうにかしようと、リムルがそう提案を出す。それを聞いたミリム一行は
「いいのか!?じゃあ早速行こう!楽しみなのだ!」
「いいんですか?では、お言葉に甘えて」
「よし!久々の外の飯だ!どんな料理かな~?」
目に見えるほど喜び、リムルに案内を急かす。
それを見ていたエリアとクロノは……
「思ってたんと違……ん?どうした?」
「……孵化しそう」
揺れる卵に目をやり、青ざめるのだった。