ミリムたちが食事へ行くことになり、リムルがそれを案内しようとエリアとクロノの二人に話しかける。
「お前らも……どうしたんだ?」
「いや何でも、先行っといてくれ。ちょっと急用ができたんでな」
「そうね。先に言っといて頂戴。後から行くから」
卵を隠しながら、後から行くと言う二人。それを不思議そうに思いながら、了承し三人を連れて行くリムル。なお三人は、食事のことで頭がいっぱいなのか何も言ってこなかった。
「なんで生まれそうになってんだよ……」
「多分、ミリムが来たからかしらね。あの子、大陸最強格レベルのエネルギー持ってたから……」
ミリムが突撃してきて、それを襲撃だと思った卵は、急いで成虫になりエリアを守ろうとしていたのだ。
「で、どうすんだよ。これ……」
「わたしにもわからないわ」
とりあえず、ミリムたちが食事したり、皆に紹介されたりしている隙にどうにかしなければいけない。
「わかんねぇ。とりあえず強引に抑え込むしかない」
「そうね。こいつか生まれたら、何しでかすかわからないからね」
そう思った二人は、揺れる卵を落ち着かせようと力を込める。
だが……
「あっ!これ逆効果だ!なんか吸い取られてる!」
「え?そう?わたしはなんともないけど」
エリアの異粒子はまだ取り込めないようだが、クロノの魔素は容赦なく取り込んでいるようであった。そこで急いで離れるクロノだったが、すでに遅く孵化が早まる。
「これもう無理ね。もう孵化させましょう。じゃなかったら後が大変になるわ」
「……そうだな。これ以上しても、危機感を与えるだけか」
どうやら外部からの力を受け、よりいっそう危険な状態だと判断され、力が際限なく引き上がっていた。そこで逆に孵化させ、これ以上強くならないようにすることにしたようだ。
そして……
「あっ、生まれた」
「ッッ!!?」
殻が割れ、中から大きなカイコのような蛾が出てくる。見た目は愛らしいが、その力は強大で、クロノが戦慄し、エリアが異界でその力を外に出さないように抑え込む。
「大丈夫よ。もう危機は去ったわ。だから、力を抑えてね」
「そ、そうだ!速く抑えてくれ……」
力を込めたクロノを確実に排除できるレベルまで高まった力が、少しづつ引いていく。それと同時に、殻をムシャムシャと食べ始めた。
「勘違いで出てきちゃったから、驚いてるのね」
「ふ~、殺されるかと思った……」
クロノにだけ殺意をぶつけていたようで、気がそらされた事に安堵するクロノ。
「どう?かわいいでしょ。まぁ、わたしに気を使ってくれてるだけだろうけどね」
「ああ、あの力さえ出さなきゃな。って、気を使ってる?」
殺意さえ出さな避ければ、ただのデカイカイコでしかない。更に動きがトロく、柔らかそうな体はお世辞にも強そうには見えない。
「ええ、この子と本体である妖魔聖蟲は、状況に応じて形態変化するの。だから本気出せば……まぁね。分かるでしょ?」
「えぇ……こいつが?」
状況、環境、取り込んだもの、これらに応じて姿を変えるのがこの蟲の特徴だった。だが二人の前にいるこの個体は、エリアの為にこの可愛らしい姿を保っているのだ。
「あと、まぁ大丈夫だと思うけど、最終手段として本体を呼び出す時があるわ」
「それヤベェじゃねえか!?」
主人を守りきれなかったら、本体を召喚する場合があるようだ。だが、この覚醒魔王にも匹敵する蟲を殺せるやつなどほぼいないので、問題ないだろう。しかし万が一の場合の事を考えているのか、クロノの顔が青ざめていた。
「大丈夫よ。ここは別世界、いくら次元を超えて移動できるあいつでも、世界が違えば来れないと思うからさ。座標わからないだろうしね。それにわたしが負けなきゃいいだけの話よ」
「またすぐそう、フラグっぽいことを……それにな、この世界にはギィや竜種がいるんだぞ」
心配するクロノ。確かにエリアは強いが、世界最強クラスに目をつけられて無事で済む保証がない。
「その時はその時よ。どうにかなるって。ね、あなたもそう思うでしょ」
「キュ」
エリアによじ登り、頭の上に乗っかったカイコは、そう返事をしたのだった。