ベスターに呼び出され、連絡用の水晶のことやら、フルポーションの事を聞かされる。
「よく作れたわね」
「抽出大変だっただろ」
少しの不純物も許されない慎重な作業をこなしたベスターたちに称賛の言葉を伝える。と同時に、これを売れないかとリムルが提案する。
「いや無理でしょ。性能が高すぎるのも問題があるわよ」
「競合相手からなんて言われるか分かったもんじゃないからな」
勝手にそんな事をすれば、本来ポーションの市場を占めているはずのドワーフ王国との関係悪化は避けられない。
「二人の言う通りだぜ旦那。普段から気軽にしよう出来ねぇし、値を調整して売っても、高すぎてあまり売り筋にはならないだろうな。それこそ安く売っちまうと、クロノ様の言ったようなことになりかねない」
「さようですな。最高品質のものが出来たのは満足ですが、商品として考えるとこれは市場に流すには不向きでしょう」
皆にそう言われ、諦めたように言いかけるリムル。だがそこでエリアがとある提案をした。
「じゃあ高値で売ればいいんじゃない?簡単には手が出せないけど、大金叩けば買えるようにさ。そうすれば客寄せにもなるだろうしね」
「いや、いくら客寄せっていても目立っちまうぞ。それも悪目立ちってやつだ。手が出しづらいって言っても、魔王や人間側が何してくるか分かったもんじゃない。それこそ、戦争なんてこともあるかもしれないんだ。だから売るにしても国として力を付けてからの方がいいと思うぞ」
それをすかさずクロノが止めに入り、それはヤバいと流石に納得したようで、リムルは先送りにする事を決めたようだ。
「で、ですがリムル様、ドワーフ王国で市販している薬は、ハイポーション薄めて量産したローポーションなのですよ」
「ん?」
なになら別の切り口から話され、反応するリムル。
「ガゼル王と交渉し。テンペストで生産したローポーションを納入すればいかがですか?ただし、ドワーフ王国で薬を生業としている者を、こちらで引き受けるのが条件でしょうが……」
「それはありだな、旦那。この国で薬の生産をしつつ、販売元になるなら、ドワーフ王国は、必要量を仕入れるだけで済む」
「なるほど、それはどちらにも好都合だな。よし、話を詰める事にしよう。ベスターたちは、引き続き製造に励んでくれ」
元気になったリムルは、そう言い部屋を後にしようとする。その時だった。
「「「!?」」」」
大きな破壊音を感じ、現場に急行するリムルたち。
「――何がどうなっている?」
「新たな客がやって参りまして、その客に対して、ミリム様が激怒し――」
ざわめく人の中、先へと進んでいき怪我をしたリグルドの姿が見える。
「は、これはリムル様。この程度、どうということはございません」
「いや重症だよ」
そう言いつつポーションを渡し、倒れている男を見る。
「アイツにやられたのか?」
「さようで……」
どうやら泡を出して倒れているこいつにやられたようだ。
「おお、リムルよ。こやつが舐めたマネをしよったから、ワタシがお仕置きしておいたのだ!」
「何てことしてるんだ。無闇に暴れないって約束しただろ」
そしてリムルに怒られるミリム。どうやらレッカの静止が間に合わず、こうなってしまったようだ。
そして一応、応接室で話し合いをする事になったが
「で、何をしに来たんだ?」
「フン。下等なスライム風情に、この俺が答えるとでも?」
ミリムにボコられたにもかかわらず、リムルに高圧的に答えるフォビオ。
「下等と言うが、お前より俺の方が強いぞ」
「……」
事実に押し黙るしかないフォビオに、リムルは続ける。
「俺は魔王カリオンとやらを知らないし、お前の態度次第ではカリオンは俺達と敵対することになるんだぜ?それともお前らは、このジュラの大森林全てを敵に回すつもりなのか?」
懇切丁寧に説明するリムル。だが……
「ハン!偉そうに、この町はこんな下等な魔物に従うのか?雑魚ばかりだと大変だな。ミリムに気に入られてるからと調子に乗るなよ」
「おいお前、ワタシの友達に舐めた口をきくじゃないか」
やはりミリムが怖いのか押し黙るフォビオ。
「ミリム待て。お前今度なにかしたら、マジで晩飯抜くからな?」
「大人しくしていてください、ミリム様。これはリムル様方の問題」
「そうだぞ。晩飯くれなくなるだろ」
「わ、わかった。おとなしくするのだ……」
ミリムを黙らせ、話を続ける。
「俺は確かにスライムだが、俺がこの森の三割を支配しているのは本当だし、そちらがその気なら、戦争するのもやむをえないと思ってる。なので、よく考えて返事をすることだ」
戦争を持ち出し脅すリムル。それも仕方がないと思っているようで、割と本気だ。
「オーク・ディザスターを倒した、謎の魔人たちをスカウトするように、魔王カリオンより命じられてやって来たのだ」
「ほう、俺達のことだな」
どうやらミリムと同じく、他の魔王たちも戦いを見ていたようだ。
「カリオンのやつ、邪魔しないという約束を破りおって……」
「いえ、破ってませんよ。たまたま居合わせただけ、そもそもあっちは私たちの宣言を知らないと思うのが妥当」
「だな!伝えにいかなきゃ、他の魔王連中にも手出しされるかもだし、早めに言いに行ったほうがいいと思うぜ」
なにやらミリムたちがコソコソと話しているが、それを無視して話は続く。
「ま、話はわかった。じゃ、帰っていいぞ」
「え?」
「リムル様?」
「よろしいのですか?」
予想外な答えに、一瞬その場は静まり返る。
「だって、殺すわけにはいかないだろ?……魔王カリオンに伝えろ。俺達と交渉したいなら、日時を改めて連絡を寄越すように、と」
「お、覚えてろ!きっと後悔させてやる!」
そう言い悪態を着いて帰って行くフォビオ一行。そうしてここから、ミリムたちへの聞き込みが始まった。
しかし……
「クロノ、わたしはちょっとやることが出来た。席を外すわよ」
「え?別にいいが、なにか来た……って行っちまった」
何かを感じ取ったエリアは、そう言い誰にも気付かれないように町の外へと転移し、現場に向かう事にしたのだった。