あれから時間が経ち、ヨウムからの良い返事も聞け、リュウの能力解析も終わった後のこと……
「リムル様。ジスターヴからの使者と名乗る者が、リムル様と話がしたいと伺っていますが、どういたしましょう?」
「ジスターヴ?確かクレイマンとか言う魔王が支配してる国だったよな」
リグルドからの報告に、一応確認しておいた魔王たちの事を思い出すリムル。そこでクレイマンの名が上がり、少々嫌な顔をする。
「あまり良い噂が聞かない国だからね」
「そうだな。自分じゃ手をくださないで、他人を利用するって話だからな」
エリアとクロノの言ったようにクレイマンは、他人を利用する事で有名な魔王だ。だがリグルドが少しそれを否定する。
「いえ、前まではそうだったようですが、つい最近は多少でありますが温和になったと聞いております。東の帝国との関係悪化のせいでは、と噂ですが。勿論、警戒する必要のある国ではありますが……」
「そうなのか?わかった。まぁ、まずは話だな。フォビオみたいなやつじゃなきゃいいんだが……」
そう言いリムルたちは応接室へと向かう。
(ずいぶん変わったわね。クレイマンが動くなんて)
(カリュブディスを使うんじゃなくて、自ら使者を……?)
原作の操られたクレイマンならしなかった行動。それに驚きながら、先に通された来客のいる部屋へ着き、中に入った。
(ッ!?クマラ!?なんで!?)
(どうしたの?)
そこには、クロノがクマラと言った女性が上品にリムルたちのことを待っていた。
「あら?お二方、どうしたでありんすか?」
「いや何も、意外な相手だったものでね」
クロノが動けなくなってるので、すかさずエリアがフォローに入る。
「意外?」
「獣王国の方からは、威圧的なフォビオってやつが来たの。だから同じかと思ってね」
それを聞くとクマラは、絵になるようにクスリと笑い
「そうでありんしたか。こちらもあまり良い噂が流れていないから、警戒されていたと」
「そうね。でも安心したわ。少なくとも話は通じそうで。ね、リムル」
「あ、ああ、そうだな。で、話ってのは何だ?」
エリアもそう言いながら、リムルに話しの手綱を渡す。そしてクロノと共にリムルの後ろ付近に構え、思念で話し始めた。
(そんなに驚いてどうしたの?)
(種族は若干違うけど、名前はクマラだ、それに……ってそうじゃない。おかしい、クマラはクレイマンの事を嫌ってたんだ。なのにクレイマンの下についてるなんて……)
あくまでも縛られていたから、クマラはクレイマンの下にいただけにすぎない。現に原作では東の帝国に住処と仲間を皆殺しにされ、残ったクマラはクレイマンに売りたわされていた程度の関係だ。更にクマラに真実が伝えられ、クレイマンを憎んでいたのだ。
(なるほどね。これは、わたし達がくる前から変わってたってことね)
(だろうな。途中から変わったんじゃなくて、リムルが転生してくる前から変わってたんだろうな)
原作開始からではなく、それ以前の問題だった。だが問題は何処から変わったかだ。現状わかっているのは、クマラとクレイマンが出会った辺りということだけだ。その中身すら分かっていない。
(東の帝国がなんちゃらっていってるわよ)
(なんでここで東の帝国が出てくるんだよ。それもっと後だろ……)
社交辞令が終わり、本題に入る。その内容は、不可侵条約や商売、後ろ盾の条約、その他様々な話が飛び交う中、東の帝国の話が出てきていた。
(へ~、クレイマン、東の帝国と仲悪いんだ。操られてないんだね)
(操られてない?いやでも、それを踏まえてもクレイマンがこんな行動を取るなんて考えられない)
そこでクレイマンが操られいなことを察した二人。
(なんで?)
(クレイマンの背後には、ユウキっていう世界征服を目指してる奴がいるんだ。だからリムルとの思想が合わずに仲良くなるなんて事まずありえない)
リムルが目指す世界と、ユウキの目指す世界は違うものだ。だから思想の違いからいずれぶつかるし、その衝突は避けられない。クロノはそれを知っているから、現状を受け入れられずにいた。
(まだあっちはリムルのことあまり知らないんだから、挨拶ぐらい来るんじゃない?)
(そうだといいんだが、だったら尚更警戒しないといけないな。なんせいずれは敵になる相手だ)
この世界は、明確な悪は少ないが、思想の違いで争うことが多い世界だ。代表例が、ギィとルドラのゲームであり、あれは人類の管理方法を決める戦いだ。その他、マリアベルやユウキ、リムル、争っていないがルミナスなどがいる。
それを知っているからこそ、クロノは警戒を解けない。皆壮大で、いずれぶつかる相手だから……
「話はわかった。好条件なのもな。だが少し時間をくれないか?この場で、俺の一存で決められる話じゃないんだ」
「そうでありんすか。では待ちんす。唯一つ……」
そう言い、クマラは自身の過去について語りだした。
「東の帝国は非常に危険な国家でありんす。何もせずにただ暮らしていただけのわっちらを、魔物と言うだけで殲滅しにくる輩。平和を願っていた母上も、交渉しようとしていた者も例外なく殺された程でありんす」
東の帝国の危険性を、自身の経験と共に話すクマラ。その表情は悲しそうで、悔しそうであった。
「そんなわっちらを救ってくれたのが、クレイマン様でありんす。当時東の帝国と不可侵条約を結んでいたのにも関わらず、それでも駆けつけてくれた方。裏にどんな思惑があるにせよ、伸ばした手は決して引き戻さない方でありんす」
クレイマンにどういう思惑があったにせよ、それでもクマラたちを助けたのは事実であった。それのおかげで、大きな被害は受けたが一族は滅びずにすみ、クマラも感謝していた。
「同じ魔物として、東の帝国に近い国家として、共に歩んでいけたらとわっちは思ってるでありんす」
そう言い終え、今回の交渉は幕お下ろした。
そして、結論がでるまでクマラたち町に置くことにしたリムルは、まずクロノとエリアに相談を開始する。
「あの話、どうだった?」
「好条件過ぎて怖いわ。ちゃんと目はとうしたんだろうな?」
リムルとクロノがそう言い合い、条約文を読み上げる。そこには特に悪い条件は書いておらず、当たり前でありがたいことばかり書かれていた。
「こっちの将来性とか、東の帝国が攻めてきた時の対処とか言ってたじゃない。それに相手は大国よ。その程度で恩が売れるなら安いもんでしょ」
「そうだよな。なんか俺がいずれ、このジュラの大森林の主となるとか言われたからな。流石にそれはないとは思うが、東の帝国の方はありそうだな」
目覚ましい発展を遂げるであろうテンペストを仲間に引き入れられるのは、あちらにとってもメリットが大きかった。更に世界征服を企んでる東の帝国との衝突は避けられないので、来るべき戦争に備えて少しでも戦力が欲しいのだ。
「まぁどちらにしても、今このタイミングだからってのもあるんだろうね」
「そうだな。双方に最も利があるのは今だもんな」
ドワーフ王国が後ろ盾にあるからと言っても、たかが一国。その他の国、特に人類が新たな魔物の国など許さんと潰しにかかってくる可能性は十分ある。そうなると対処に困るのはリムルたちだった。
「まあ何にせよリムルに任せる。俺じゃ何も出来ないからな」
「そうね。わたしが口出しするのも違う気がするし」
「お前ら……」
意見や情報を与えても、結論はリムルが出さなくてはいけないと二人は思っていた。なぜならリムルがこの世界の主軸であり、二人は悪く言えば部外者だからだ。
「わかった。他の皆にも話してみるよ。判断はそっからだ」
そうしてリムルは、他の幹部たちと相談しに行くのだった。