洞窟を出るために早、三十日。二人は、探索……などすることなくとある事をしていた。
「水刃!」
「甘いよ!」
リムルが何度目かわからない水刃を飛ばし、エリアはそれを軽々と避ける。そして反撃と言わんばかりに斬撃を手刀で飛ばし、リムルもギリギリで回避して見せていた。
「まあまあ避けれる様になってきたね」
「ああ、やっとだよ」
両者とも、今の自身の力を確かめるために特訓をしていたのだ。それ以外にも周囲の探索や素材採取なども行っていたが、魔物の気配がある扉の先へは、リムルはまだ行っていない。
「これで安心ってところか?」
「ええ、これだけできれば外の魔物にも負けないだろうね」
そう言いながら異界を閉じ、散らばっていた異粒子を回収するエリア。
「そういやその異界?ってのはなんだ?解析も出来ないし、耐性も取得できないんだが」
「異界はわたしそのものよ。唯一無二であり続ける代わりに、何者にも真似れない存在ってところかしら。だからこの力を使えるのはわたしだけだし、影響を受けたものは既存のものとは別のものになるの」
近しい存在になれても、決して同じ存在にはなれない。どこかズレ、逸脱し、理解できないモノ。それがエリスであり、異界であった。
「まぁだから、普段は撒き散らさないように閉じ込めておくの。じゃなかったら世界が変わってしまうから」
すぐすぐ影響が出るわけではないが、それでも長い間あてられ続ければ誰も耐えられない。弱いものであれば尚更であり、強者であっても永遠と防ぎ続けられる代物ではなかった。
「そ、そういや元の世界じゃ何してたんだ?俺は転生前は日本って場所でいたんだ」
「わたしは……そうね。友達と世界を旅したり、縄張りの管理なんかをしたりしてたね。こう見えてもわたし、結構偉かったのよ」
話を変えてきたリムルに合わせ、エリアは元の世界の生活を話し出す。
「友達?俺も元の世界じゃ仲のいいやつがいたんだよ」
「そう。こっちも気のいい奴らではあったけど、出鱈目な奴らでもあったわね。だって私なんかよりも強かったんだもの」
それを聞いて驚くリムル。
「エリアより強いのがいるのか!?あんな力が使えるのに?」
「あの程度の力よ。元の世界じゃもっと強かったけど、それでも敵わない奴はいるわね。まぁ、わたしは近接戦はあまり得意じゃないし、どちらかと言うと能力型かな?」
エリスの基本戦闘は、中距離から遠距離の戦術能力型であり、近接戦に関しては大して強くなかった。とは言えそれも最上位勢の中だけの話なので、あまりあてにはならない。
「物量で攻めるのが得意なんだけど、その分の力を失ったから、こうやって戦ってるってわけ」
本来なら異界に溜めてある魔物などを解き放ち、そいつらに戦ってもらいつつ支援や援護を繰り返しながら能力で攻撃するのが戦法なのだ。その圧倒的手札と手数の数で、いかなる相手にでも対応可能というのが彼女の真骨頂なのだが、今の状態ではそれは出来ないでいた。
「そうか。力が早く戻るといいな」
「ええ、そうね」
そう言い、二人で扉の方へ向かって移動しだすのだった。