土下座をするフォビオが見え、エリアが近づく。
「スミマセンでした! 俺はミリム様にとんでもないことを……あなたがたにも迷惑をかけてしまったようで――」
「なんでこんなことを……」
(……なんで?)
そこで小さな違和感を感じ、よく確かめようと更に近づく。
「なぜカリュブディスの封印場所を知っていたのですか?」
「偶然見つけた、などとは言わせませんよ?」
トレイニーとトレイアがフォビオに静かな怒りを向けている。
そんな中エリアは……
(なんでこの世界で、あいつの気配がするの……)
今にも消えそうなほど、ほんの微かなものだった。だがありえないその状態に、呆然とするエリア。
「謎のピエロ?なんでそんな奴の話に乗ったんだよ……」
「わかりません。ただ感情に任せていたら……」
恐らく何かしらの思考誘導や支配を受けていたのだろう。みんなはそれを聞いて呆れながら、そのピエロに警戒する。
(……ダメね、それらしい情報すら掴めないわ)
恐らく本人が動いているわけではない。それどころか、使われている当人も姿一つ見せやしない。
(それにしても……別世界にまで手を出してるなんてね。やっぱ碌でもない奴だわ。あいつ……)
最も憎たらしい存在を思い出し、内心で怒りを覚える。
(警戒は必須ね。あいつが関わってるなら、何を仕出かすかわからないわ。それこそ、この世界が滅びることも視野に入れなきゃダメね。まぁ、絶対させないけど)
エリアはそう思い、思考を目の前の状況に合わせる。
「だから、俺の命一つで許してほしい」
「次からは、もっと用心して騙されないようにしろよ」
「……は?」
フォビオの命がけの謝罪をそう軽く返すリムル。それに呆気にとられ、呆けた声を出すフォビオ。
「もう動けるだろう?行っていいぞ」
「……いや、俺は許されないだろう?」
間違えじゃないか再度覚悟を持って聞き直すフォビオだったが、どうやら違ったらしい。
「別にお前の命はいらないって、なぁ、ミリム?」
「うむ、当然なのだ!軽く一発ぐらい殴ってやろうかと思っていたが。ワタシも大人になったものだな。全然腹が立っていないから許してやるぞ!」
寛大に許してやるというミリムに、エリアはこれが強者の余裕かと呆れていた。エリアだったら許すにしても、何かしらの契約や縛りを付けるところだ。
「と言うことだ、気にするなよ」
「――カリオンもそれでいいだろう?」
カリオンが近くにいることに驚くリムルとフォビオ。
「フン、気づいていたのかミリム」
「当然なのだ」
話しかけて来なかったので、気づかれていないと思っていたカリオンだったが、リムルはキチンと気づいていた。
「よう、そいつを殺さずに助けてくれたこと、礼を言うぜ。お前が、ゲルミュッドたちを殺った仮面の魔人なんだろ?」
「ああ、その通りだ。まぁゲルミュッドを殺ったのはクロノの方だがな。で、仕返しにでも来たのか?」
カリオンの質問に、そう返すリムル。
「フッ!いや――立て」
「は、はい――」
カリオンはフォビオを立ち上がらせ、一発ぶん殴る。それにより撃沈するフォビオ。
「悪かった。部下が暴走しちまったようだ。俺の監督不行き届きってことで、許してやってほしい」
「あ、ああ……」
格上からそう言われるとは思っていなかったようで、動揺するリムル。
「今回の件、仮にしておく。何かあれば俺様を頼ってくれていい」
「それなら俺達の国と不可侵協定を結んでくれると嬉しいんだが」
それを聞いたカリオンは意外そうな顔をしながら
「そんなことでいいのか。良かろう。『魔王』の――いや、獣王国ユーラザニア『獅子王』カリオンの名にかけて、貴様たちに刃を向けぬと誓ってやる」
「ああ――」
棚からぼた餅かのように不可侵協定を得られ、喜ぶリムル。そうして全てを終えたリムルたちは、町へと帰ることにしたのだった。