異世界に落ちたら弱体化してた件   作:バトルマニア(作者)

53 / 102
ユウキと……

 異界から出たエリアは、ユウキが来るまでの間、リムルたちに挨拶をしていた。

 

「久々ね。外は……」

「随分と長く籠もってたな。力は取り戻せたか?」

 

 リムルの言葉に、エリアは

 

「半分ぐらいかしら。結構戻ってきたわよ」

「それは良かった。で、話はクロノから聞いてるよな?」

 

 勿論と返したその時、扉が開く。

 

「お待たせしました。初めまして、僕が自由組合総帥のユウキ カグラザカ……」

「こちらこそ初めまして、リムル・テンペストだ。ジュラの大森林にて、魔物の国、ジュラ・テンペスト連邦国の盟主をさせて貰っている」

 

 リムルたちの姿をみたユウキは、言葉を失い、リムルの返答を待つ。

 

「その仮面……シズ先生の……」

「そうだよ。俺の正体をしってるだろ?俺はスライムで、喰った魔物の姿に擬態できるんだ」

 

 言い方悪いんじゃない?と思うエリアだが、なんか割って入るのも悪い気がして、クロノと共に端で構えておく。

 

「喰った……魔物の姿……」

 

 そうして二人は向かい合い、いきなり蹴りでの挨拶を交わした。

 

(部屋の中でそんな事するから……)

 

 吹き飛ぶ家財に響き渡る衝撃波。そしてそれを呆れたように見ているエリア。

 

「落ち着け小僧――『僕は悪いスライムじゃないよ』」

 

「……!そのセリフは……」

 

 一旦離れ、警戒体勢を解くユウキ。その顔は驚愕の表情に変わっている。

 

「あのゲームは俺もクリアしたぜ。お前がシズさんに教えたんだろ?」

「……詳しい話を聞かせてもらえますかね?」

 

 そっからリムルのこの世界に来てからの話やエリアたちの紹介。シズさんのことなど、様々な説明をし、ユウキも納得した。

 

 だが――

 

「なるほど!最終回はそんな展開なんですね!そうか、あの漫画は……うん、うん!」

「ふっふっふ、他に聞きたいことはないかね?俺が転生した時点で、ユウキ君の知りたい漫画やアニメは、ほぼ完結しておる!無論だが、俺様はその辺りは抜かりない。抑えるべきは抑える、それが真摯の嗜みだからな!」

 

 前世の話題になり、一気に元気を取り戻したユウキは、もっともっととリムルにグイグイ行く。それに機嫌を良くしたのか、リムルも調子良く話していく。

 

 挙句の果てには、紙を用意させ、漫画を大量に作り出す始末……

 

 そんな時だった。新たなる人物がドン!と扉を開けて出てきたのは

 

 

「ユウキ!ドタバタうるさいし、紙を大量に持っていくと思ったら!こんな面白そうなこと、私を無視してやってるなんて、酷い!」

「ね、姉さん!い、いや違うんだ!これには事情が……」

 

 そこには、ユウキを女体化させたような高身長、長髪の美人が立っていた。

 

「あっ!初めまして、そこの弟の姉。ユウカ カグラザカと申します。リムルさんたちだったかな?アイリスから聞いてるよ。シズさんの最後を看取ってくれたんだって。私からも感謝を申し上げます」

 

 リムルたちに気づいて、礼儀正しく頭を下げるユウカ。

 

「で、お前はいったい何をやっていたんだ。こっちは山のように積み重なった書類と戦っていたと言うのに……」

「いや、それは姉さんがガガガッッ!!」

 

 ユウカに締め上げられるユウキ。その腕力は凄まじく、ユウキが全力で足掻いているのに緩みすらしない。

 

「その辺で止してあげなよ、ユウカ。それに君にはまだ仕事が残ってるでしょ?」

「あ、ヴィオレ。ごめんね、急にいなくなっちゃって」

 

 そこに紫髪の女の子が入ってきて、ユウカの動きが止まる。

 

(……なんで原初がここにいるの?)

(あれが原初ね。まぁそこそこ強そう)

 

 そんな光景をは?と言った風に見ているクロノと、原初を推し量るエリア。

 

「止めてくれてありがとう、ヴィオレ。危うく窒息するところだったよ」

「その程度じゃ死なないでしょ?まぁいいや。とりあえず遊ぶにしても仕事が終わってからだよ、ユウカ。そもそもこの仕事は、君のせいで発生してるんだから」

「え~そうだけど……わかった分かった!行くから」

 

 ヴィオレが核撃魔法を放とうと力を込めたのを見て、急いでユウキを離し、ヴィオレと共に仕事に戻るユウカ。

 

「じゃ、また後でね」

「はいはい、行くよ。はぁ~なんでボクがこんな事を……」

 

 嵐のような登場と退場に呆然とするリムルたち。

 

 

「え~と彼女たちは……」

「……すみません。僕の姉と、その友達です。一応補佐をやって貰ってるんでっすが、自由奔放でよくああやって仕事を持ってくるんですよ。正義感が強いのはいいことなんですが……」

 

 そう言ってユウキは、姉 ユウカについて話し出す。どうやら双子の姉のようで、すごく優秀だが自由奔放で正義感の強い性格のせいで、よく厄介事を持ってくるようだ。実際ユウキ自身も姉の行動を全て把握しているわけではなく、どこまでやっているのかわからない様子。

 

「制御不能の兵器みたいね」

「そうですね。確かに言われてみればそうかも知れません。僕、姉さんには頭が上がらないので」

 

 フレンドリーでアクティブ過ぎて、上に立ったりなにかの役職についたりするのが苦手で、しかもよくいなくなることから、神出鬼没のお姉さんなんて呼ばれているようだ。だがそんな姉に助けられることも多く、ユウキはユウカに頭が上がらないような。

 

 

「……ところで、今回ここに来た目的はなんですか?例えば、帰還方法を探してる、とか?」

「いや、違うが……帰還って、できそうなのか?」

 

 押し黙るユウキに、悟ったリムル。

 

「まぁ、可能ならとっくに帰ってるだろうからな。俺はもう諦めてるよ、火葬されてるかもしれないし……」

「そうだな。俺達転生者だし……」

 

 リムルとクロノがそう言う。

 

「一方通行みたいでしてね。ですが、僕は可能性がないとは思っていません」

「え?」

 

 その理由を話し出すユウキ。どうやら、元の世界にも鬼や悪魔など様々な伝承があり、どこかでつながっているのでは?と思ってのことらしい。

 

「帰還が目的でないとすると、一体、何をしに?」

「俺はのんびりした生活ができたらそれでいいんだけどな。町も作ったし、仲間と一緒に楽しくやるつもりだった。だけど、ちょっと気になる事があってさ。シズ先生の未練さ……」

 

 そこでリムルは、シズ先生の未練について語る。

 

「なるほど、シズ先生の未練、自由学園の子どもたちですか……これかシズ先生の意思だと言うなら……そうですね……。リムルさん、僕も貴方に託してみることにします」

 

 

 そうしてリムルたちは、ユウキに連れられ自由学園に行くことになった。どうやらリムルを、その子どもたちの先生にしてくれるそうだ。

 

「元はシズ先生がやっていましたが、シズ先生が亡くなってからはアイリスさんがやっているんです。だから、わからないことがあれば彼女へ聞いてください」

「そうか。あの人が……」

 

 シズさんが亡くなったあと、そのあとを継ぐかのように先生になりたいと申し出て、今は彼女が担任をしているようだ。しかし子どもたちとは上手くやってるようだが、どうやら教えるのが苦手らしく、四苦八苦している様子。それを二人でなんとか……との話だった。

 

「……リムルさん、ヒナタ・サカグチを知っていますか?」

「ヒナタ・サカグチ?」

 

 聞き覚えのない名前を聞いて、記憶を探るリムル。

 

「かつてはシズ先生の教え子でした」

「ああ……もしかして、シズさんのもとを去って行ったという子か?」

 

 どうやら探り当てたようで、話が続く。

 

「そうです。全盛期のシズ先生は、上位精霊のイフリートを完全に使役していましたが……ヒナタは十五歳にして、そんなシズ先生を上回る強さを得ていました。それだけで、彼女の強さが推し量れると思います」

 

 よく分かっていなさそうな三人。それもそうだろう。シズさんの全盛期などだれも知らないのだから。

 

「なんでこんな話をしているか疑問に思うかもしれませんが、ヒナタや僕たちのように、自然と世界を渡ってしまった『異世界人』と、五人の生徒たち……『召喚者』の違いを知って欲しいのです」

 

「召喚者……」

 

「何らかの目的を持って呼び出される『召喚者』には、必ずその目的に見合う力が与えられます。それこそ、人類の切り札になり得る『勇者』のように。世界を渡る際に肉体を作り変えられるのですが、その際に大量のエネルギーを取り込んで、能力の取得が行われるようです」

 

 ヴェルドラから聞いた話を思い出し、エリアが先に答える。

 

「で、召喚時に、子供だと身の丈に合わない力を得て長持ちしないと?」

「そうです」

 

 持って五年だと伝えられる。そこでリムルは……

 

「それじゃあその子たちを俺がどうしようと文句は出ないんだな?」

「なにかするつもりなんですか?」

 

「ああ。それがシズさんの願いなら、俺が引き継いでやるさ!」

「――お願いします!もしできるのならば、あの子たちを救ってください……」

 

 そうして必ず救うと心に決めたリムルは、その面持ちのまま教室に向うのだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。