並んだ子どもたちに、リムルがこれからする事を説明していく。
「一人ずつ、俺と模擬戦を行う。ルールは簡単。お前らは全力で俺に大して攻撃をしてもいい。そして、俺を倒せたら終わり。だが、十分間逃げ切ったら俺の勝ち……簡単だろ?」
「……それだけ?」
「十分間?」
リムルの説明に不思議がる子どもたち。
「ああ、一時間でもいいぞ」
「へへ~んだ!その犬をけしかけないのなら、十分もかからないよ!」
アリスの言葉にリムルは了承し、ランガに手を出すなと指示を出す。
「へへ、その犬さえいなけりゃ、俺が勝つさ!」
「絵本読んでいたいのに……」
一人やる気がない奴がいるが、とりあえず始めることにするリムル。
「やりすぎないようにね、リムル」
「そうだぞ。大人気ないことするなよ」
「わかってるよ。流石の俺もそこまでしねえから!」
野次を飛ばす二人に、そう返すリムル。そしてケンヤとの勝負が始まる。
「くっ!こいつ!避けるんじゃねえ!」
一気に斬りかかり、連撃を放つケンヤ。その身体能力と剣の腕前は、並の戦士では太刀打ちできない程のものだった。更にそこに火炎魔法が合わさり、その凶悪度は跳ね上がっている。
「結構やるな。だがそれじゃ、俺には届かないぞ」
「うるせえ!なんで当たらないんだ!」
荒削りだが、年にしては十分すぎる程の腕前だろう。だがそれだけでしかないようで、リムルには届かない。
「アイリスが剣教えたの?」
「はい、基礎だけだけどね。それと偶にあの人と遊んでるのも大きいかも」
「あの人?」
アイリスの言うあの人に反応したクロノ。するとアイリスはすんなりと教えてくれた。
「ユウキのお姉さんのユウカさんよ。あの人たまに来ては、みんなとあんな感じに遊んでたわ。そのせいかもね。彼女、私やヒナタさんより強かったから」
「あのヒナタよりも?」
どうやらユウカが子どもたちと遊んだり、入れ知恵したりしていたから、原作よりも強くなってしまったようだ。だがそれだけで、問題が解決したわけではない。せいぜい少し寿命が伸びた程度だろう。
そんな事を話していると、十分が過ぎ、ケンヤは悔しそうに下がっていく。
「次はクロエね。一番大人しそうだけど、大丈夫かしら?」
「彼女は強いですよ。特に魔法が凄いから、リムルさんは驚くんじゃないかしら?」
仲間たちから心配されながらも、前へ出てリムルと向かい合う。そして始めの合図で、無詠唱からの水の膜がリムルを包み込む。
「無詠唱!?凄いな」
「強度もなかなかね」
リムル含め、クロノもエリアも驚いていた。なぜなら、水で包む、感知妨害、それが突破された時用の、次の対策まで高レベルで用意しているのだ。
「最初は水で包んで刃を出すだけだったんだけど、ユウカさんに安々突破されてから、考えるようになったみたい」
「なるほど、対策しているのはいいことね」
だがリムルには通じない。普通に水から出てきて、盛大に崩壊した水球からの濡れた地面から生える水槍を、難なく歩いてきて見せるリムル。
「この魔法は上手に扱えている。今後ともしっかり勉強するように!」
「……!」
そう言って頭を撫でるリムル。それに対しクロエは泣きそうになっており、リムルは困った顔をしていた。
「次はゲイルって子ね。あの子はどうなのかしら?」
「ゲイルくんも凄いですよ。魔力弾が得意で……」
始めの合図で、ゲイルが手に魔力弾を込める。そしてそれの先を尖らせ、高速で撃ち出してきた。
「はいっ、ごちそうさま!」
「なんですかそれ!?汚い!」
確かに投擲は早かったが、予備動作と軌道の読みやすさから簡単に対処されていた。
「……次!」
「くっそ……リョウタ、俺の仇をとってくれ!」
次に出てきたのはちょっと気弱そうなリョウタと言う少年だった。応援しているケンヤとは正反対に見える。
「狂戦士化?」
「はい、リョウタくんは狂戦士化が使えるんです。それもある程度制御した状態で」
完全に意識を失わないように上手く調整して狂戦士化したリョウタは、野性的な動きでリムルに容赦なく襲いかかる。だが……
「冷静さを欠くのは痛手ね」
「じ、時間です!」
意識があるとは言え気性が荒くなっており、冷静とは言い難い。その隙を突かれ、簡単に翻弄されて時間切れになる。
「次で最後だな……アリスさーん」
ドンヨリとしている他の子供達は仕方がないと割り切り、最後の女の子を呼ぶ。
「何よ、揃いも揃ってだらしないわね!不甲斐ないアンタたちは、このアリス・ロンド様の活躍をしっかり見ていなさい!」
自信過剰でリムルの前へ出るアリス。そして浮かべた人形をリムルに突撃させる。
「人形遣い?念力みたいなものかしら?」
「念力……かどうかはわかりませんが、アリスさんは、人形やモノを浮かべて戦うんです」
「人形であれなら、武器使わせればもっと凶悪だろうな」
念力だったら、それで直接相手に攻撃するなり、自分を高速移動させるなりできるのにね、と思うエリア。でもそうでなくとも、クロノが言ったように武器だけでも十分強いのだ。
「じ、時間です!それまで!」
操作精度は随分高いようだが、使っているのがぬいぐるみなこともあって、普通に決着がつかずに時間切れになっていた。
「あらら、やっぱこうなるのね。でも……」
「ああ、上手く力を引き出してるし使い方が上手いのに、全然エネルギーが減ってない。こりゃ手こずりそうだ」
どうやらこれで、どれだけエネルギーが減るか試していたようだ。その結果は散々で、解決へは一歩も進まなかった。それを踏まえて考えるリムルだが、どうにもいい案が思い浮かばないようだ。
「はい、ちゅーもーく!今お前たちが体験した通り、俺は強い!その俺が約束しよう。お前たちを助ける、と」
「助ける……」
そうは言っているが、ムリだろうと疑問と少し諦めの混じった表情でそう呟く。
「おお、この仮面に誓ってな」
「それ……シズ先生の?」
仮面をみてそう呟くアリス。
「そうだ。シズさんに託された。そしてこれを受け取った時に、お前たちのことも託されたのだと思っている!」
それを聞いた子どもたちは、一人また一人とリムルに信頼の言葉を伝えていく。そこでリムルはシズさんのことを思い出し、なにか思いつきそうになっていた。
「……絶対助けてやるからな。だからお前たちは、俺を信じていい子になれよ?いいな。シズさんから託されたお前たちを俺は見捨てたりしないからな」
「お願いします、先生!!」
みんなと仲良くなれたリムルたちは、そっからみんなと軽い授業や面白い話をしたりしながら時間を使ったのだった。