ユウカのお陰で訓練場が貸し切りで使えるようになり、まずはヴィオレと戦う事になったエリア。
「先、ヴィオレでいいの?」
「そうだね。いいの先やって?」
「別にいいよ。先にエリアの手を見ておきたいし」
意外なことに、ユウカはヴィオレに先を譲った。理由は先に手を見ておきたかったらしい。
「そう、じゃ手加減しなくていいように……これでいいか」
「凄いね。これほどの結界を張れるなんて」
さっと超位魔術の結界を張り、ヴィオレを驚かせる。
「分かるの?一応読み取らせないように対策してるんだけど」
「まぁ、ちょっとはね。これでも原初だからさ」
すべてを理解したようではないようだが、効果や何をしたのかは理解したようだ。
「……本当に手加減なしでいいんだね?結界壊れない?」
「これで壊れるんだったらお手上げだよ。そこらはそっちの加減にまかせるわ」
再度確認をしてくるヴィオレに、そう返すエリア。そこでやる気を出したヴィオレは
「じゃ、やるよ」
「うん、どうぞ」
核撃魔法をいきなりぶっ放す。それにより、結界内部が地獄の業火に包まれる。
「あれ~、全く効いてないよ?どうして?」
「いや、危なかったわよ」
ユニークスキルを乗せた破滅の炎を無傷で対応したエリアと結界に、不思議そうにするヴィオレ。
「じゃ、これでどうかな?」
「翼も生えるのね」
ヴィオレの背中から生える6対の薄い紫色の翼をみたエリアは、一瞬で距離を詰めて拳を振るう。
「うぐっ!?なにこれ!?」
「続けていくわよ」
重く貫く打撃を一瞬の内に何十発も叩き込まれ、ヴィオレは吹き飛ぶ。そこに……
「高位魔術 黒炎波」
「ニ、ニュークリアフレイム!!」
複数の黒炎核を発生させて、津波のように迫りくる黒炎を相殺させる。そして背後に回り込んできていたエリアの手刀の刺突を翼で受け流した。
「気づくのね。流石は原初だわ」
「褒め言葉にもならないね!」
残った翼で体勢を整えながら、殴打と斬撃をエリアに喰らわせる。
「ぐがっ!?」
「流石に防ぐわよね」
だがギリギリで返され、殴り飛ばされて結界に激突していた。しかし防げていたようで、見た目ほどのダメージは受けていない。それどころか
「ん?これは……っ!?」
背後からニュークリアフレイムが炸裂し、それに直撃したエリアは体の一部を欠損して、ヴィオレに認識される前にすべて元に戻す。
「あ、危なかったわねッ!」
「当たらないか!」
飛びかかってきたヴィオレの斬撃をかわし、次々に繰り出される猛攻を凌ぎ切るエリア。そこで反撃をしようと手を出すが
「成長が早い!」
「それが取り柄だからね!」
次は対応されており、互角の攻防が続く。
だが……
「っ!?」
「どう?ボクの体は?」
一瞬の隙を突いて、拳がその胸に突き刺さる。だが、なぜか腕と傷が燃え上がり瞬時にエリアを火だるまにした。
「ボクの体は黒炎核を元に作ってあるんだ!触れればこの通り、火だるまさ!ユウカように取って置きたかったけど、キミは強いからつかちゃったよ」
自慢気に話すヴィオレ。どうやら依代を黒炎核で作る事により、莫大なエネルギーの確保と、自分自身を強力な武器へと変えていたようだ。
「なるほど、これは厄介ね」
「ッ!?」
自分が上手だと思っていたヴィオレはその声に驚き、離れようとする。
「超位魔術 完全凍結」
「炎がっ!?」
ヴィオレごと炎も含めてたすべてが凍り付き、エリアの動き1つで簡単に崩れ去る。これによりヴィオレは体内から粉々にされた。
「あ、ごめんなさいね。高位魔術 復元」
流石にやりすぎたと思い、即座に復元し直すエリア。するとヴィオレは何事もなかったかのように元に戻った。
「ま、これぐらいでやめておきましょうか。にしても、私が出会ってきた悪魔の中でも、十本の指に入るぐらい強かったわよ。下手したら負けてたかもね。……それに、これ以上手札を出すのは気が引けるでしょ?」
「はは……まだまだだね。勝てなかったよ」
残念がるヴィオレは下がり、次にユウカが前へ出てくる。
「じゃ、次は私だな!ヴィオレの攻撃を防ぎ切るなんて凄いじゃない」
「ヴィオレも本気じゃなかったからね。殺し合いならどうなっていたか」
ユウカの言葉に、手合わせだからと返し、両者構える。
「じゃ、先に手を打たせてもらうよ!」
「早いね!」
瞬間的に懐に入ったユウカの連撃を防ぎきり、衝撃が大気を揺らす。
「おっ!できた!」
(真似されたッ!?面白い!!)
エリアの技を見よう見まねで模倣し、さらなる連撃を叩き込もうとする。
だが――
「んっ!?あれ!?」
「こっちよ」
なぜか透き通り、隙だらけになるユウカ。そこに背後から腕を振り、それをギリギリで防ぐユウカ。
「なんで!?どうなってるの!?」
「わたしの一番得意な技よ。見抜いてみなさい」
元の世界では乱用していた無敵の絶対回避を使い。即座に切り替えしてきたユウカの殴打を、すべて当たりすらせずにやり過ごす。それどころか、腕を掴み不格好に投げ飛ばされる。
「だったら!極炎獄霊覇!」
なぜか精霊の技を平然と撃ち放つユウカにより、結界内が獄炎に焼き尽くされる。
「最上位魔術 炎操術」
「ズルっ!?」
だがそれを即座に掌握し直して、自身の手のひらに集めるエリア。それを見たユウカは、ズルいのなんのと騒いでいた。
「貴方たちの魔法って、放つだけなの?だからこうやって主導権奪われるのよ?」
「単発だからそんなの考えてないよ!てか、そんなのできるのエリアぐらいだよ!」
なんでもそうだが、エリアたちは、あらゆる対策をこれでもかと言うぐらい講じてから技を使っている。でなければ普通に主導権を奪われることもあるし、そもそも発動すらさせてくれない場合もあるからだ。
(まぁ、操るのは能力者とか一部の魔法使いだけだけど、せめて奪われないぐらいの対策しといたほうがいいんじゃないかな?って言ってもわからないか、世界が違うし……)
「あ~!エリアの魔法がわからない!」
魔術を真似されないのは、秘匿や妨害と言った術式なども入っているからだ。これにより、外側からの解析を未然に防いでいる。どうしても知りたければ、手にとって自壊する前に無理やり解析するか、本人から聞くしかない。
「ま、返すよ」
「いらッ!?」
投げ返した炎の塊は、急激に膨張してユウカを焼き尽くす……はずだったが
「いらんって!」
「少し焦げるだけなのね」
少し黒っぽくなったユウカがぷんすかと怒っていた。
「ま、これぐらいで止しときましょうか。結界の維持も大変だし」
「そ、そう言うなら仕方がないね。その代わり、また遊んでね!」
そう言って結界を閉じるエリア。ユウカも納得してくれたのか、諦めて引き下がったのだった。