ミュウランの元へと連れられてきたエリアとクロノは、部屋の中へ入る。
「初めはして、ミュウランさん。みんなから話しては聞いてるよ。結界を張ってくれてありがとう」
「いえ、どうってことないわ。クレイマン様からの指示でもあるから」
礼儀正しそうな女性だった。それに謙虚そうでもあったが、どこか浮かない顔をしていた。
「襲撃の件はどうしようもなかったからね。守ってくれただけでもありがたいぐらいだわ」
「そうですか」
魔王の幹部たる自分がいながら守りきれなかった事について、思うところがあったようだ。
「優しいのね。ヨウムとも仲いいみたいだし、師としてうれしいわ」
「い、いえ。そのような……」
「エリアの姐さん……」
咄嗟に否定的な言葉が出るが、満更でもなさそうだった。因みにエリアがヨウムたちの師匠になったのは、ハクロウの修行後に実戦も必要だろうと相手したのがきっかけだ。
「で、詳しい話を聞きたいわ。今回の襲撃のこととか、クレイマンのこと……あとなんでヨウムたちと一緒なのかとかもね」
「はい、できる限りお話します」
最初の2つに関しては普通に聞きたいことであり、最後のはただの興味本位だった。だがある程度は話してくれるようで、意外だなとエリアは思う。
「今回の襲撃の件ですが……」
どうやらミュウランは、クレイマンから襲撃のことについて聞いていたようだ。だがそれは可能性の話でしかなく、自国も含めあれだけのバックがあるテンペストを攻めてはこないだろうと思っていたようだ。
「へ~、クレイマンも予想外だったの?」
「そうね。裏で色々と根回ししてたみたいですし、勝てない相手に戦争なんて仕掛けないだろうと。でも違ったわ。それどころか魔王たちも討伐しようと考えているみたいね」
戦力差は明らかで、さらに後ろには魔王が複数人いる相手に戦争なんてするはずがないと思っていたようだが、結果は真逆だった。それどころか、テンペストに組みしている魔王や国家を倒す気でいるようだ。
「想定していた倍の戦力と西方聖教会を使ってきたわ。それもなんだか様子もおかしいようね」
「様子がおかしいね。強化されてるとか?」
2万ではなく4万の軍勢と、強化された兵士たち。話に出ていたユニークスキル持ちの者たちも強化されて、どうやったのか技量や練度なども引き上がっているようだ。
「それもあるけど、なんだか、見た目は変わらないけど人間味とか生気を感じないって言ってたわ」
「不気味だな。精神支配でも受けてるんじゃないか?」
「……そうかもしれないわね」
エリアにはなにか心当たりがあったのか、少し反応が遅れる。それに気がついたクロノはエリアに話しかけた。
「どうしたエリア?」
「ええ、少しね。わたしの知ってるのに、似たような物があるんだけど、それを使ったのかなって」
エリアの知っているは、道具を使っての強化人間の製造装置だった。流石にあんな非道なモノはこっちにはないだろうと思いたいが、似たようなモノがある前提で話を進める。
「ユニークスキルとか精神支配で、無理やり軍を強化してるのかもね。記憶とかを貼り付けでもしたら、擬似的にとは言え知識や技術も手に入るだろうし」
「あと思念伝達で情報共有もできるかもな。欠点は多いだろうが、即戦力や短期運用だと考えれば無視できるだろうし」
下手をすると大量の兵士を使い捨てる事になりかねない作戦に、それを聞いていたみんなは戦慄する。だが二人は冷静で、話を続けた。
「わかったわ。襲撃者については他の者に聞くとして、最後に、クレイマンの幹部であるあなたがなんでヨウムと?」
「私はある程度自由を保証されているの。だから仕事を受ける時意外は特に縛られていないわ。ヨウムたちとも偶々で出会って仲間に入っただけだしね」
クレイマンから聞いていたようだが、まさか自分がヨウム一行に入るなんて思ってもみなかったようだ。そして中々に居心地が良い様子。
「そう、マシになったとは言え、クレイマンからはいい噂聞かないからね。大丈夫なら別にいいわ」
「はい、脅しとか無茶なことは言わなくなりましたね。人使いが荒いところは変わってませんが……」
非道でなくなったというだけで、仕事には厳しくなった感じらしい。だがミュウランからすれば、それだけでも十分すぎるほど改善されたように感じているようだ。
「じゃ、私たちは別にやることがあるから」
「そうだな。客人たちの相手もあるしな」
そこまで話して、次の仕事があると二人は部屋から立ち去るのだった。