相手の姿が見え、なんとそれはゴブリンだった。
「ゴブリン?この世界にもいるんだね」
「ファンタジーだとお約束だな。で、お前たち、俺たちになにかようか?」
ありきたりな感想をもらす二人に、ゴブリンたちは恐る恐るといった風に話しかける。
「い、いえ!強力な魔物の気配がしましたので警戒に来ただけです」
リムルの質問に、少し気負いして答えるゴブリンのリーダー。
「へ~強力な気配ね?そんなの感じ……エリア、お前じゃないか?」
「そんな訳無いでしょ。わたしは一切、力を外に出してないんだから」
一瞬エリアを疑ったリムルだったが、そう返され確かにと思い直す。
「この先には我々の村があるのです。何かごようでしょうか?」
「いや何も、ただ近くを通りかかっただけよ。で、他になにか言いたいことはある?」
「それが……」
どうやらリムルたちが、村を襲いにでも来るのでないかと気が気でなかったらしい。それを聞いた二人は、そんなことしないと言い切り、そこからゴブリンたちの話を聞いていく。
そして……
「我々の忠誠を捧げます! 我らに守護をお与え下さい。さすれば、我らは貴方様に忠誠を誓いましょう!!!」
(どうしてこうなった?)
あれよあれよと話に流され、断りづらくなった結果、なぜか守護者になることになってしまっていた。
(ちょっと、これ大丈夫なの?わたしこんなのしたくないよ)
(そんなこと言ってもな。あそこまで言って、ここまでされたら断れないだろ)
バレないように思念で話しかけ、リムルを問いただすエリア。だがリムルも予想外過ぎて困り果てていた。
(てかお前、殆ど後ろで指示やら文句言ってただけだろ)
(あれはアドバイスよ!わたしはこういう交渉が苦手だからお前に任せたの!)
二人は……と言っても、殆どリムルだが、断る努力はしたのだ。それらしい言葉を並べ、見捨てはしないものの妥協点を探しつつ話を進めたのだが、どうにも案が出ずにこうなってしまっていた。
(と言うかな、そもそもお前が妖気のこと教えてくれてたらこうならなかっただろうに)
(それは……わたしのミスだ。ごめん……)
エリアの考えが甘かったのだ。あれだけ強力な妖気を放っていたら、弱い魔物など近寄ってこないと高をくくっていて、報告をおろそかにしていた。
(まあ、分かったならいいか。で、こいつらは助けるぞ。こっちとしても引けないからな)
(……仕方がない。甘んじて受け入れる……)
諦めがついたのか、元気がなくなり了承するエリア。それを横目に、呆れた様子を隠し村長と話しを続けるリムル。
(はぁ~、悪意なら悪意で返せばいいけど、善意はほんと面倒。こっちは別に仲良くしたいってわけじゃないのに……)
自由気ままに生きたい彼女からすれば、そういうしがらみはゴメンなのだ。とは言え元の世界でも、なんやかんや言って縄張りを持ち、部下や上司、仲間たちに挟まれ、さながら中間管理職のように生きてきていた。
(あいつら元気かな?腹心に任せてずっと管理ほったらかしだけど)
トラウマ抱えて、二百年もほったらかしにした縄張りのことを思い出す。一応総大将には申し付けはしていたようだが、流石に放置しすぎて代替わりでもしてるのではないかと考えていた。
(大丈夫だって言ってたけど、後から防衛能力がない守護者なんていらないとか言われたら?ハハ、心折れそう……)
それなりに世話にもなり、信頼もしている相手からそんな事言われたら、流石のエリアでもショックは大きいだろう。そう考えていると
「おい、大丈夫か?」
「あ、終わったの?ごめん考え事してた」
リムルに話しかけられ、ハッとする。
「お前な~。まあいいや。こっちは付添のエリアだ。俺と同格だと思って接してくれ」
「西森 エリア。よろしく」
「はっ!リムル様、エリア様、どうか我らをお助けください……!」
こうして二人は、ゴブリン村を守るために動き出すのだった。