とある異空間の狭間にて、男は状況を確認していた。
「テンペスト襲撃は失敗、ユーラザニアは消し飛ばしましたが、パンドラデビルは不完全、ドワルゴンとサリオンに設置した兵器も壊されましたか……」
失敗続きで疲れた顔をする男。
「ドワルゴンとサリオンの再設置は無理そうですね。他はまぁ、魔王不在であれば問題は出ないでしょう。聖人も敵ではありませんね。所詮は超越種にすら届いていない相手ですし、数が揃ったところで蹴散らされるだけです」
超越種。それは転スラ世界で言う、神性を帯び始めると言われる領域に達した者たちが、ギリギリついてこれる程の猛者たちのこと。なので、なりたての覚醒魔王や聖人程度では勝つことは不可能だと、男は言う。
「いやはやこれほどとは、楽しい限りですね」
ニヤリと笑い、楽しそうに今の状況を見ていた。
「ですが残念ですね。これももう終わりです。それに東の帝国の強化も粗方済みましたが、使うことはなさそうですね。せっかく聖人や究極能力持ちを増やしたのに……まぁ、ミカエルとか言うヤツには協力してもらいますがね」
どうやらミカエルとも契約をしているようで、その隙のなさが伺える。
「成功報酬はヴェルダナーヴァの復活でしたっけ?まぁ創造主かなんだか知りませんが、過去改竄をすれば余裕でしょう。世界の抵抗など邪魔者がいなくなればいくらでも無視できますし、その後は正式にこの世界を支配すればいいですからね」
ヴェルダナーヴァを復活させるのと引き換えに、ミカエルとの協力関係を結んだようだ。しかし、復活させた後は好き勝手するらしく、世界を我が物としようとしていた。
「にしても少し面倒でしたね。なにが、ルドラは完全に支配しない、ですか。そのせいでムダな労力が増えましたよ、まったく……」
男としては、ミカエルにルドラを支配させて、楽に東の帝国を強化する気だった。だがミカエルはそれを拒み、遠回りな方法で仕事をする羽目になっていたのだ。
「まぁ、正義之王が手に入ったので良しとしましょう。これで奴らの攻撃など怖くありませんし、余裕があれば支配、なんてのもいいかも知れませんね」
一応自分でも防御結界は持ち合わせているが、やはりその世界に合った最強防御があれば一番だろうと思っていた。
そんな事を考えていると、急に次元の隙間から光が差し、何かが投影される。
「進捗はどうかな?」
「ッ!?転生神か。驚かせるな」
キレイなピンク髪の身長が低い白衣を着た女が、男の前に現れる。
「何のようですか。約束は守っているし、そもそもあなたなら、聞きもせずにすべて理解しているでしょう」
「そうだけど?聞いてみただけさ。ところで、追加で新しい兵器の試運転をして欲しいんだ。そのためにここへ来たんだよ」
そう言うと、男の目の前にいくつかの武器や道具が出される。そしてその説明がなされた。
「……わかった。だが一つ聞きたい。ホントに私は、お前に言われた通り、兵器や術式を使えばいいだけなんですか?」
「ああ、それでかまわないよ。なんせあっちじゃ、世界の意思や管理者がうるさいからね。だからこうやって別世界で実験しているんだよ」
元の世界だとできないことを、他の世界でする。それが転生神の狙いらしく、定期的に男がそれをしているようであった。
「そのためにはキミに、この世界を支配してもらわないといけないからね。別に悪い話じゃないだろう?」
「そうですね。私も世界征服が目的ですし」
自身が支配者層になることが目的の男は、転生神との相性はすこぶる良かった。
「じゃ、頑張って……ってそうだった。困ったらいつでも呼んで貰っていいからね。手伝うからさ」
「その時はお願いします」
そう言って転生神は消え……
「呼ぶわけないじゃないですか。何されるかわかったもんじゃないんですから……」
男はそう呟くのだった。