牙狼族にやられたゴブリン達が寝かされている建物に来た二人は、ゴブリンたちの様子を見て顔を歪める。
「酷い怪我だね」
「牙や爪に斬り裂かれたのか」
応急手当はされているが、それでも立ち上がれないほどの者が多いようだ。
「回復薬あったでしょ?それでどうにかできるんじゃない?」
「そのつもりだ」
そう言うとリムルは、近くにいたゴブリンを捕食し、回復薬をぶっかける。
「お!効果抜群だな!この調子で……!」
村長が何かをいいかけたが、リムルはその前に次から次へとゴブリン呑み込み、回復薬をぶっかけては放り出していく。
「え?なにしてんの?」
全員の治療を終え、エリアの声に気づき振り向いて見ると…
「さ、流石はリムル様……!」
何故か、ゴブリン達が平伏してこちらを覗っていた。
「え~とリムル。重傷者を一瞬で治すのは結構すごいことらしいよ」
「あ、ああ、そうみたいだな」
どうやらこの回復力は異常らしいと思い、ゴブリンたちへ軽い説明をしたが、こんなモノを持っているのは凄いと押し切られてしまう。
「と、取り敢えずだ!次は柵を作るぞ!村全体を囲うんだ!」
「ははっ!分かりました!」
話を変え、次の指示を出すリムル。ゴブリンたちはその勢いに乗せられ、急いで柵を作りに行った。
「大丈夫なの?手伝ったほうがいい?」
「そうだな。大体はあいつらにさせて、仕上げと補強はこっちでしてやるか」
そう言いつつ二人は、柵作りの様子を見に行く。そうして周囲を偵察したり、柵作り指導をしたりしている内に日は傾き始め……
「よし、仕上げも終わったしあとは待つだけだな」
「ええ、そうね。資材も時間も足りなかったから大したことは出来なかったけど、狼を防ぐぐらいならこれで十分でしょ。罠もあるし」
資材が足りず、躊躇わず家を壊させ、それでも足りない分は、エリアが少し木を切って柵を作っていた。あるもので作るしかないのだ。しかも時間は短いともあれば、この程度のものしか作れない。
そしてこの際だからと、村の外周を全て覆うように円を描いて設置させ、見張りも付けさせていた。そして全員に戦闘の指導……などしている暇はなかったので、エリアが軽いアドバイスをして、次いでに戦気も上げていた。
その作業の合間に、ゴブリンの中でも目端の利く弓を装備した者を斥候に出したようだ。
「そういやエリア、お前あんな事できたのか?」
「ええ、こう見えても結構知恵はあるのよ。長いこと生きてると、暇になって色んなことしたり関わったりするからね」
本職には届かないにしても、大量の知識と経験があるエリアにとって、こんなこと朝飯前である。それどころか、エリアは知識だけで言えばオーバーテクノロジーじみたモノを数多く保有している。やろうと思えば、高層ビルや近未来の宇宙戦艦なんかも作れるだろう。だがここは、材料もなければ法則も違う別世界であり、そんなもの作ろうとすれば調整だけで年単位の時間を使ってしまい、現実性に欠けてしまうのだ。
「魔術とか技術に関しても得意なんだけど、この世界じゃ使えないからね。だから大したものは作れないけど」
「そうだよな。でもそれで十分だぞ」
残念がるエリアに、今のままで十分だと言うリムル。それはエリアの心境を知らない、純粋な言葉であった。
「んっ、なに?騒がしい?」
「どうやら斥候が帰ってきたみたいだな」
そんな事を話して時間を潰していたら、真夜中になる手前頃、斥候が帰ってきたようだ。しかも全員無事で、怪我はしているようだが死者は出ていない。
「牙狼族が移動を開始したようね」
「ああ、そうだな。よし、全員無事で何より!これより牙狼族を迎え撃つぞ!」
「「「おおっ!!」」」
帰ってきた斥候たちを労い回復させ、慌ただしく皆配置に付き始める。
「じゃあ、正面は任せたわ。わたしはそれ以外を守るから」
「済まないな。こっちは任せてくれ」
そう言い合い、二人も動き出すのであった。