激しい戦いが繰り広げられる中、男とエリアが向かい合う。
「貴方は私が直接始末してあげますよ」
「そうね。あなたの相手はわたしが適任ね」
両者とも力が高まり続けており、余裕がない様子の魔王たちもチラチラと二人の様子を確認していた。
「ふっ、その程度ですか?私の半分以下の力で勝てるとでも?」
「これで十分よ」
そして竜種に匹敵する力を得た男は、一本の禍々しい刀を取り出す。その気配に、敵味方関係なくすべての者たちが怪訝な様子を示した。
「それは……」
「厄刀と言ったところですかね。五大サイキョウが一人、厄災の力が込められたものです。知ってますよね、貴方ならこれがどういうモノか?」
予想外のモノを見た顔をするエリアに、男は満足げに刀を見せつける。
「害悪の頂点……なんてものを……」
「厄災、あらゆるものを例外なく害し滅ぼす怪物、その一部ですよ。あの転生神から貰ったんです。そして私の改竄の力。相性は完璧でしょう?」
男の言うとおりであり、その力の相性はすこぶる良い。どれだけ強力で完璧なものでも害する力と、あらゆるモノを好き勝手に改変する力。
強制的に歪みを発生させて、そこへ改竄を叩き込むのだ。
「さて、邪魔されても面倒なので隔離しますか。ま、それだけの余裕があればですがね」
「エリアッ!?クッ!!」
「リムル!目の前の相手に集中してくれッ!!」
別次元に空間を変えられ、まるで周囲の世界が背景のように干渉できなくなった。そこへリムルが叫ぶが、襲いかかってきた魔王らしきおっさんの斬撃がリムルを捉えかけ、クロノに助けられる。
「では、簡単にやられないでくださいよ。楽しみたいですからね」
「そっちこそ」
そう言った瞬間、二人の拳と刀がぶつかり、衝撃波が空間を揺らす。そして攻防が見えない速度で、接戦が始まった。
エリアは体術と異粒子で、男は刀術と改竄で、魔王たちも巻き込まれたらただでは済まない程の戦いだ。
「っ!?これでも勝てませんか!!」
「異界を舐めるんじゃないわよ!!」
予備動作もなく発生する魔法や斬撃の数々、更には悪影響の全てをなかったことにする改竄に、目まぐるしく変わる環境。その全てを真正面から跳ね除けるエリアは、異界の力を出していた。
「異界を使う羽目になるなんてね!」
「改竄が効きにくいわけです!」
厄刀は確実にエリアを弱体化させていた。だがそれに合わせて、異界から莫大な力が流れ出し、強引にその隙を埋め合わせていく。それによってエリアは、改竄の影響を受けずにいた。
だが……
「ッ!?」
「貴方には効かなくても、それ以外には効果はあるんですよ!」
今までより遥かに近い位置で空間が破裂し、吹き飛ぶエリア。そこへ連続して爆発が起き、跳ね回るゴムボールのように無茶苦茶に叩きつけられる。
「ふふ、異界に仕舞い込むなんてできませんよね?そんな事すると厄災も入り込みますからね。おっと!」
「チッ!」
どうにか方向転換し攻撃を仕掛けるエリアだったが、男の姿がブレて回避したことになっていた。
「ガァッ!?」
「この程度ですか?警戒していた割に強くありませんね」
上段から厄刀を振り落とし、地面に叩きつける。更に蹴り飛ばし地面を転がるエリア。
「って、以前戦ったのは異界の方でしたね。ま、出されても厄介なのでここで始末しますか」
「なにが、始末だ……まだっ!?」
距離がなくなり、立ち上がった瞬間に何十何百と斬り裂かれた。それにより完全に瀕死にまで持っていかれたエリアの髪を掴み持ち上げる。
そしてエリアを包み込むように大爆発が起きた。
「消し飛ばなかった事に関しては褒めてあげましょう。それだけですがね」
範囲を絞り、広がるはずだった力を一点に集中させる。威力を重視したそれを竜種レベルのエネルギーでやれば、大抵のものは消滅するだろう。だが異界を展開させたお陰で難を逃れていた。
「アァ、ガッ!!?」
「厄災に侵され死ぬといいですよ」
しかしその隙間に厄災を入れられ、内部から身体を破壊され苦しむエリア。
「厄災に限らず状態異常は、一度罹ると悪化していくものですよ。厄災はそれが特に強いですからね。どうです?なにもできずに崩壊する気分は?」
抵抗もしている。反撃も試みている。だがそのすべてを改竄され、“何もできない”と、都合のいいように現実を歪められていた。
「もう喋れませんか。異界も出てくる様子はないですね。中で破壊されでもしましたかね?」
異界内部では巨大化して暴れ回る厄災の対応で、異界側のエリアは手一杯になっていた。
「厄災が出てきても面倒です。このまま完全に……ん?なんですこいつはッ!?」
「キュッ!!」
完全に消し飛ばそうと力を込める男の前に、エリアの中から出てきたカイコが、ブレスを放ち、一部とは言え男の体が瞬時に分解される。
「なにか知りませんが、よくもやってくれましたね」
「キュ!」
離れた男と地面に倒れるエリア。その間にエリアを守るように現れたカイコは、男に威嚇をする。
「死になさい」
「ギッ!?」
すべての改竄を防ぎきれなかったカイコは、一瞬にしてグチャグチャにされ、潰れた虫のようにピクピク蠢くだけになる。
「死にきりませんでしたか。まっ、すぐにでも……」
「ギッ、ギィィッッ!!!!」
止めを刺そうと次の改竄を使おうとしたその時だった。カイコが最後の力を振り絞り、鳴き叫び、次元が揺れ世界に響き渡る。
「なんッ!?」
それにより力尽きたカイコは、粒子とかして消滅していく。同時に隔離空間は破壊され、上空の空間が大きく渦を巻くように歪みだす。
『異世界からの侵攻を確認しました』
そして、世界の声が響き渡り、一体の怪物が姿を表すのだった。