ルスカ以外の全員が動けないでいる中、厄災と呼ばれた男は、なんてことなさそうに話の続きを始める。
「エリアも含め、貴方たちが来るのは想定外でした。ですがもう恐れるものはありません。なぜならワタシは、厄災の力を手に入れたからです」
「それは手に入れたんじゃなくて飲まれただけだろ。自分が誰だか分かってんのか?」
自慢気にそう話す男は、ルスカの突っ込みに
「確かに以前の私の自我はなくなりましたが、引き継ぎには成功しました。よって私もワタシもさして変わらないでしょう。ただ成長し、強くなっただけですよ」
「ホントお前は出鱈目だな。頭がないなら宿主の情報を使うなんて、自我なんてないも同然じゃねえか」
厄災の大半は、世界の中心部にして大穴である深淵へと封印されている。よって厄災の残骸たちは、本能のみで復活を目指す有象無象なのだ。だが稀にこうやって、宿主の情報などを使って自我を得る場合があった。
「意思と情報さえ継げればワタシはそれでいいんですよ。それ以外は宿主のままで一切構いません。ですからワタシの目的も何一つ変わっていません」
厄災の因子が入り、自分という存在が再構成されたとは言え、結局主軸は元のままなのでもちろんこうなる。逆に厄災分の力が手に入り厄介になっているぐらいだ。
「だそうだ。じゃ、叩き潰すか。それでいいよな?」
「え、ええ。そうしないとこの世界がヤバいからね」
ルスカの言葉に、エリアが反応し了承を得る。
「ルスカ、貴方は厄災とは友人だったと記憶していますが?」
「いや違うな。オレの友は厄災本体の古内だけだ。混じり物のお前なんかじゃない」
「そうですか。では、死になさい」
男がそう言うと、改竄により余裕が生まれた三体の複製体がルスカたちに襲いかかる。
「なッ!?」
「ナメすぎだ。オレの足止めをしたきゃ本物連れてこい」
「そうね。この程度じゃ相手にならないわよ」
「ま、そう言うことよ」
ルスカ、エリア、レイにより一瞬で消し飛ばされた三体に驚く男。
「複製体とは言え、歴代最強の魔王と勇者、それに大英雄なんですよ!」
「オレたちは一度相手したことがあるんだ。大体の事は分かってる。そんな相手に……と言うか、それより明らかに弱い相手に手こずるとでも?」
ルスカは威圧を放ちながら、男に近づく。それに対し男は、ルスカから離れるように少し後ずさり、後方で構えている妖魔聖蟲のことを思い出して引き下がれなくなる。
「ま、まぁいいでしょう。そもそも、転生神がくれたものだからと安易に期待したワタシが悪いのです。ここでワタシがすべて始末すればいい話ですよ」
「へ~、確かにエネルギー量も出力も大したもんだな。だけど、安定性に欠けるな。何発か殴ったら勝手に崩壊しそうだ。こんな……」
男は、禍々しい波動を撒き散らし、その場にいる全員を圧倒するほど強大な力を見せつける。しかしルスカは、煙たそうに攻撃を仕掛けようとしていた。
「ちょっとルスカ。アレは私の獲物よ。ケリはワタシがつけなきゃダメなの」
「エリアのそういうところ、真面目だな」
「いつものことでしょう?エリアに任せましょう」
「なにを……ッ!?」
そうしてエリアは異界を展開し、男と自分だけを異界へと放り込んだ。
「ここならホンキを出せるわ。邪魔ものなんていないもの」
「……後悔しても遅いですよ?」
そうして二人の最終決戦が幕を開けたのだった。