二人の強大な力がぶつかり、周囲が消し飛ぶ。
「出力だけなら竜種に匹敵するわね」
「だけは余計ですよ!」
方や異粒子、方や厄災を放出させ、超高速で殴り斬り合う二人は、その移動だけで異界の大自然を更地にしていく。
「改竄で補ってるから?それじゃ……こうなるのよ!」
「グッ!?ハッ!ガハァ!!」
エリアの拳が男の顔面に突き刺さり、男は改竄で元へと戻す。しかしその瞬間、何百発の殴打が叩き込まれ、男は殴り飛ばされていた。
「反応が若干遅くなる。その隙はここじゃ大きすぎるわよ」
一つの力に頼り切っているので、隙ができやすいのだ。
「一瞬でも間があれば全回復しますがね」
「だったら治らなくなるまで殴り倒してあげるわ」
だが改竄ですぐに元通りになる。そこへ飛斬を飛ばして、男がそれに反応した一瞬で背後へと転移し、異粒子の斬撃で薙ぎ払う。
「丸分かりですよ」
「これも?」
飛び上がり、エリアの方へ向き直る同時に飛斬を撃ち返す。しかし非実体であるエリアはそれを素通りし、バグったように荒ぶる攻防が繰り広げられる。
「吹き飛びなさい!」
「ッ!?」
吹き飛ぶエリアに、厄災で作った気弾を投げつける。それをひっかくように破壊し、追撃の斬撃ごと男を消し飛ばそうとした。
「こっちですよ!」
「厄介ね!」
攻撃した方の男は掻き消えるように消え、別の場所から現れ攻撃を放ってくる。どうやら残像を残した状態で、自身の座標位置を改竄しているようであった。それを何度も繰り返し、エリアの隙を狙っていたのだ。
「ならっ!これでどうかしら!」
「なッ!?」
エリアが光り輝き、周囲が有害な光に包まれた。流石にそれには驚いたのか、一旦距離を取ろうとする男に
「逃がすわけないでしょ!」
「グガッ!?」
地面に叩き落とし、強烈な一撃が叩き込まれた。それにより地割れが起き、男は潰れた悲鳴をあげる。
「グッ……ッ!?ま、まだまだッ!!」
だが改竄で逃げられ、仕留めきれなかったようだ。そのまま反撃のために刀で斬りかかるものの
「しぶといわね!」
「ッ!?」
斬撃が届く前にエリアの攻撃が入り、表情を歪め崩れそうになる男。しかし気合で踏ん張り改竄でもとへ戻す。だが完全に治り切らずに、苦しい表情が目立つようになってきていた。
「改竄と厄災が異粒子に負けるとっッ!!?」
「あんたが弱いだけよ!」
数百を超える斬撃がエリアを襲うが、すべて回避され距離を取ろうとしていた。だがエリアの突き出された手から輝く異粒子が放たれ、男をズタボロにしながら吹き飛ばす。
「勝て……ない……」
「当たり前でしょ。誰を相手してると思ってるの?」
傷はないが、体力が低下したのか息切れをしながら膝をつく男。そこへエリアが近づき
「私は“異界のエリア”よ」
そう宣言する。すると異界が本来の力を取り戻したかのように異粒子が満ち始めた。
「なる……ほど、表である“西森 エリア”でも、分かれた“異界側のエリア”でもない。本来の貴方の姿ですか」
「そうよ。守護者でも侵略者でもない、私個人として戦ってるのよ」
一時的にとは言え、表と裏が一つになり本来の力を取り戻したエリア。その力は男を圧倒するには十分すぎた。
「そうですか。ではッ!!」
上空に転移した男は、極大の厄弾を作り出し、力の本流である暴風が吹き荒れる。
「この世界ごと消し飛ばして上げましょう!!」
異界を壊さなければエリアは倒せない。何度だって復活するだろう。だからこの世界を破壊することにした男は、その厄弾をエリアのいる地上に向かって振り落とした。
「星を壊せる程の力ね。大したものだわ」
次元を削り、空間を歪め、世界が抉れる。これが起爆すればきっと、エリアでさえただでは済まない。それだけの暴力の塊を目の前にして
「でもどうにかなるわ」
「なにッ!!?」
異粒子が厄弾を受け止め持ち上げる。
「おっ、押される……だとッ!!?」
逃げ場もなくなり、ジリジリと押される男は、焦りを顕にする。
「ごめんだけど、私は星なんてとうの昔に超えてるのよ」
「ふ、ふざけるな――ッ!!こんなところでッ!こんなところでッ!!」
生み出された力をすべて厄弾にぶつける。しかしそれでも押し返せず、自身の持ちうるすべての力が通じない。それどころか体が軋み、至る所から血液が吹き出していた。
「来るなッ!来るな――ッ!!ワタシはッ!ワタシの――ッ!!?」
男が叫び散らし、命を削り荒ぶる力をぶつける。だが止められずに厄弾の中に取り込まれた。
「さよなら」
そしてドス黒い光が漏れ、押さえつけられた厄弾は圧縮するように消えるのだった。
元に戻った異界に、拍手の音が響き渡る。
「流石だ。エリア。あの男を倒すなんて」
「転生神」
エリアが振り返ると、そこには転生神が立っていた。
「そう睨むな。今回は何もしない」
「何の用?」
だがこれが本体でないとわかっているのか、エリアは何もせずに睨みつける。
「ちょっと忠告をな。早めの帰還をオススメする。世界同士が離れかけてるから」
にこやかに微笑みながら、要件を伝える転生神。それは、帰る気があるなら早くしろというものだった。
「私がこっちに来たのも、こっちの世界を狙ったのも……」
「そうだ。世界同士が近づいたからだ。だから繋がった。まっ、お前が私の計画に巻き込まれたのは予想外だったがな。そのせいで上手く実験ができなかった。あの男も役に立たなかったし。片手間とは言え大失態だ」
やれやれと困ったようにする転生神。
「ムダだ。今の私はただの映像だからな。いくらお前でも届かないぞ。と言うか、怒っているのか?どうせ虚空に落ちた世界は長くない、廃棄されたか本編から切り離された世界だ。それぐらいお前もよくわかっているだろう?」
「分かってるわよ。でもあんたが手を出さなきゃここまで酷くならなかった」
手に込めた異粒子を曲がる斬撃のようにして撃ち出す。すると転生神は無傷で、後ろの背景がズリ落ちた。
「消える世界、誰も見ていない世界。そんなもの、こっちで勝手に使ってやって何が悪い。誰かの役に立ってるだけありがたいと思わないか?どうせ他世界に取り込まれるか、消滅するしか道はないんだからな」
「……」
譲歩しているとは言え、エリアたちの世界も他世界を取り込んで生き残っている世界だ。それを言われると押し黙るしかなくなる。なぜなら、世界はどこまでも残酷で、救いも逃げ場もないからだ。
「まぁ、この世界の規模なら数千万年は持つんじゃないか?こっちの世界に比べてまだ余裕がある。上手く行けば他世界を取り込んで長生きできるかもな。いや~、こちらの世界のためにもエネルギーを奪いたかったんだが、残念だよ、非常にね」
「っ!?」
苦虫を噛み潰したような顔をするエリア。なぜこんな横暴が許されるか、それは五大サイキョウというのに加え、転生神が世界の延命に多大に貢献しているからだ。
要は、強すぎる上、世界にとってなくてはならない存在だからに他ならない。
「まぁ二、三日ぐらいは余裕があるとは、言え早めに帰ってくるように。じゃ、失礼するよ」
言いたいことだけ言った転生神は、そう言って消え失せる。
「……帰ろう」
そしてエリアも異界を出るのだった。