八幡「恋人のフリ?」   作:ハッサン

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 難産でした


吊り橋効果なんてない

 

 

 果たして、6月は何の季節だろうか。春と呼ぶには桜は涼し気であり、夏と呼ぶには森は騒がしくない。ならばその中道を行くのがこの月なのであろう。

 

 ともすると、俺はこの年に入ってまだ春を実感できていないのかもしれない。

 

 入学式以降は入院生活でまともに外出していないし、窓の外は生気のない建物ばかりで、季節を感じる術が無かった。

 そういや中学の卒業式でも誰とも話さずにすぐ帰ったからまともに桜も見ていない。

 何なのこの人生?

 

 だがしかし、その分今こうして森の中にいると自然を感じられる。どの季節に何の虫の音が鳴るのか俺は知らないが、静けさの中に彩りを与えてくれている。

 

「冷たいな…」

 

 6月にもなればもう梅雨入りしてしまったためか、地面は少しだけ湿気ている。お陰で尻が少し冷たい。

 あの時崖から木が転がって来たのは、雨で木が腐っていたせいなのかもしれない。

 

 

「…ちょっと寒いな」

 

 

 しかし6月とはいえ、流石に夜の森の中は冷える。それに、今の俺は運動用の体操服一枚しか身に着けていない。何故なら先程まで羽織っていた体操服のジャージは雪ノ下に貸している状態だからである。

 

 彼女が崖から落ちた後、俺も同じく崖から落ちた。いや、正確には下りたというのが正しいのだが。

 幸い崖に生えていた草木を掴みながらゆっくり降りることができたが、掌は擦り傷だらけになってしまった。つーかマメも痛いし最悪である。

 そして案の定降りた先で雪ノ下が倒れていた。

 しかし不幸中の幸いか、ジャージがすこし汚れていたぐらいで、かすり傷等は特に見当たらなかった。

 落ちたくせになんで俺より無事なんですかねこの子は……。

 

 

「……んん」

 

 羨む俺のすぐ隣で横になっていた雪ノ下が少し身じろぎしながら身体を起こした。

 目を擦りながら辺りを見回していると、彼女の目は俺の視線と交差する。

 

「やっと起きたか」

「……随分暗いわ……スイッチはどこ……」

「おーい雪ノ下……?」

「毛布はこんなに小さかったかしら……?」

「……おーい」

 

 

 どうやら寝ぼけているようで、先程まで被せていた俺のジャージを両手で伸ばしながら頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。

 ……学年首席が聞いて呆れるな。

 

 残念なものを見る目で暫くは様子を窺っていたが、彼女の頭も覚醒しだしたのか徐ろに立ち上がってこちらに向き直った。

 先程までの振る舞いを恥じるかのごとく、コホンと咳払いをしてから彼女は話し始めた。

 

「何故貴方がここに?」

「学年首席の雪ノ下さんでも知らないことがあるとはな」

「何故貴方如きに煽られなければならないのかしら、不愉快だわ」

 

 

 急に不機嫌そうに俺を見下すいつもの調子の彼女に少しだけ安心して、俺も立ち上がる。

 

「肝試し中に崖から落ちたんだよ、お前」

「………あ」

「思い出したか」

「ええ……」

 

 バツが悪そうに俺のジャージを手持ち無沙汰に弄りながら、彼女は小さく頷く。

 先程までの雪ノ下は素だったようだ。

 いつも起き抜けがあんな感じなら、雪ノ下雪乃といえども普通の女子高生と大差ないのだなと思う。

 親しみを覚えて思わず笑みが溢れそうになるが、それは同時に俺のキモさを発揮することになるので抑える。

 

「それにしても、崖から落ちて無傷とはな」

「私、受け身も得意なのよ」

「そういや合気道習ってるとか言ってたな…」

 

 やっぱり普通の女子高生と全然違うじゃん、多分暴漢とかに襲われても逆襲できるよコイツは。

 良く考えたら俺の知り合いに普通の女子高生とかいないからわからんし、それに知り合いも全然いないから更にわからん。無知の知を果たしたことによって俺は一皮むけた(当社比)。

 

 そんな現実逃避の最中、俺に相対する雪ノ下の様子をちらりと盗み見ると、俯き気味に俺のジャージを握りしめていた。ていうか早く返してくれませんかね、それ。

 

「なぁ雪ノ「ごめんなさい」……下さん?」

 

 

 言葉が重なって両者が見つめ合う形になってしまった。

 しかしここは黙って何か言いたげな彼女の方に譲るとしよう。

 

「私の不注意で貴方まで巻き込んでしまったようね」

「え、何、お前そんなこと気にするキャラなの?」

「……貴方が私をどう思ってるいるのかよく分かったわ」

 

 心外だと言わんばかりに俺を睨みつけてくるが、貴方俺の扱い結構酷いよね?普段の行いを顧みて欲しい、そしてもう少し優しくして欲しい。

 

「まぁお互い無事なんだからいいだろ」

「…でも」

「それにあれだ、こんな夜に山で肝試しとか催した奴が悪い。つまり葉山が悪い」

 

 こうなったらアイツの机の上に落書きしてやろう。『巨乳大好き♡』とか。事実だし別にいいよね?寧ろこのぐらいで許す俺に感謝して欲しいレベル。

 あのいけ好かないイケメンのことを思い浮かべながらイライラしていると、クスリと笑い声がした。

 

「…なんだよ」

「いえ…ふふ、そういうところは変わらないのね」

「生まれてこの方15年間こんなんだからな。そう簡単に変わるかよ」

 

 いや、でも流石に15年は盛ったかもしれん。多分保育園児ぐらいまでは八幡君も普通の子だったかもしれないし、全然覚えてないけど。帰ったらかーちゃんに聞いてみるか。

 

 

「あの事故の時も、そうやって責任転嫁して……」

「いや、あの事故も今回のことも別にお前悪くないだろうが」

 

 お前が深刻に感じ過ぎてるだけだろうと、呆れて言う。

 

 きっと、彼女は責任感が強いのだろう。俺なんかと違って誰からも期待されていて、それに答えるのが彼女の常であり、それが雪ノ下雪乃という人物そのものなのだ。

 何でも卒なくこなすだけあり、失敗したときの失望は誰よりも重いのかもしれない。所謂ロス効果とかいうもので、真面目な委員長キャラがちょっとポイ捨てしただけで高感度が下がるみたいなものだ。

 何時でも雪ノ下雪乃たることを求められ、少しの失敗につけても口うるさく言われる。

 だから少しでも自分に非があれば責任を感じるのだろう。

 

「自意識過剰過ぎなんじゃねぇの」

「……随分ね物言いだけれど殺されたいのかしら」

「いや、そういう意味じゃなくてだな…」

 

 まるで凍てつく冷気でも放っているかの如く、彼女の視線が突き刺さる。視線だけで人殺せるとか一体何処のチート主人公なんですかね…。

 流石に冤罪で殺されるのは御免なので、釈明を慌ててする。

 

「世の中にはお前と関係ないことの方が多いってことだよ。

 風が吹けば桶屋が儲かるとかいうが、現実はそうでもないだろ。何故なら大体のことは対岸の火事で済むからな!」

「…社会の中で孤立している貴方が言っても説得力が無いわよ」

「いや、流石の俺もそこまでボッチじゃねぇよ……ないよね?」

 

 クスリと笑いながら毒を吐く彼女に、俺は溜息をつくほか無かった。別に一人じゃないし、小町とか戸塚とかいるし。

 …まあ、何だかんだ雪ノ下の調子も元に戻ってきたみたいだし何でもいいか。

 

 本当に面倒臭い奴だなと思う。いちいち気にしなくてもいいことを気にするし、そのくせやけに自分に自信を持っているし、負けず嫌いだし、俺には口悪いし。

 

 しかし、それが雪ノ下雪乃なのだろう。俺がずっと変わらないのと同じく、彼女も昔から変わっていないのだ。今更それを変えろなんて言う権利は俺にはないし、言うつもりもさらさらない。

 

 

「まあ、とにかくさっさと肝試しに戻った方がいいだろ」

「こんなところでゾンビに襲われたら怖いものね」

「遠回しに人をゾンビ扱いするのやめてね…」

 

 

 やはり彼女は変わらない。

 そのことに、思わず口角が少し上がる。

 

 しかしその笑みは一瞬で消えた。

 

 

「あ」

「どうかしたの?」

「どうやってここから帰れるのかと思ってな」

「……あ」

 

 比企谷八幡15歳、絶賛遭難中でした☆

 雪ノ下が無傷だったので崖から落ちたこととか完全に忘れてましたね、ええ。

 落ちてきた場所を見遣るが、ロッククライマーでもない俺達がどう考えても登れるような地形ではなかった。

 …こんなことならボルダリングでも習っとけばよかったな。帰ったらボルダリング部に入ろう、ウチにあるかしらんけど。

 

「ここを登るのは無理そうね」

「だな、どうしたもんか……ん?」

 

 少し冷えるのでなんとなしにポケットに手を突っ込むと、紙切れが入っていることに気がついた。

 折り畳まれたそれを広げると、肝試しの初めに懐中電灯と共にもらった地図だった。

 

「まあ地図があるし大丈夫だろ、ここから山道までそう遠く離れていないみたいだし」

「…案内は任せるわよ、比企谷君」

「そりゃ勿論」

 

 当然、迷子ノ下さんに道案内なんて任せられるわけ無い。

 

 懐中電灯の電源を入れて足元を照らすと、辺りは思いの外鬱蒼と茂っていた。人が通った形跡等は全く無く、長ズボンを履いていなかったら草まみれで大変なことになりそうである。

 流石に今回は俺が先導して草を掻き分けながら進んでいくことにした。

 

「今度はちゃんと付いてこいよ」

「いいから黙って前を向いて歩きなさい」

「…はいよ」

 

 安否を確認しながら進んでいたらウザがられてしまった。やっぱり俺に対して当たり強くない?当たり屋なのかそれとも只々俺を痛めつけたいサディストか。どちらにせよやめて欲しいものだが。

 

「…」

「…」

 

 暫くは二人の間に沈黙が続いた。

 

 俺にしては今日は喋りすぎたのかもしれない、いつも学校じゃ大して会話してねぇしな。最近じゃ戸塚と葉山ぐらいか。

 葉山はクラス違う筈なのに妙に話しかけてくるから困る。しかも俺の恋愛相談に乗るとか爽やかに行っておきながら、最近じゃアイツの趣味嗜好ばかり聞かされているのだ。他に喋る相手が居ないのかと聞けば、こんなことを話せるのは比企谷だけだとか抜かしやがる。

 しかし一応この先役に立つかもしれないので無碍にもできないのがなんとも言えないジレンマである。

 

 思わず手を強く握りしめると、崖を下ったときに作った擦り傷がじわりと滲む。戻ったら即刻水で洗わねば、ついでに俺に付着しているらしい比企谷菌とやらも流せたらいいなぁ(願望)。

 

「ねぇ、比企谷君」

「ん?」

 

 ふと雪ノ下から小さく声がかかる。難儀な問題でも抱えているかの如く、彼女の声は控えめであった。

 草で切り傷でも作ったのかと思い、歩きながら答える。

 

「貴方は私の噂のこと、知っているかしら」

「噂?……そういや由比ヶ浜がなんか言ってたな」

「あら、あなたも彼女から聞いたのね」

「そうだな」

 

 その様子だと、由比ヶ浜は雪ノ下に直接聞けたらしい。相変わらず俺の知らない所で仲良くしているのだなと微笑ましく思う。

 ただ、俺としてもあの噂の真偽については気になる所である。雪ノ下と付き合っていると噂される目つきの悪い男の正体が誰なのか明かしておきたい。

 

「一応聞いておくが、お前今付き合ってる奴とかいんの?」

「あら、貴方には私の恋人としての自覚がないのかしら」

 

 挑発するような物言いに少しうんざりするが、話を続ける。

 

「自覚も何もフリだろうが……

 それに学校じゃお前と大して関わってないし、もしかしたら他の誰かと実は付き合ってるかもしれないだろ」

「…そういう意味なら私は誰とも交際していないし、するつもりもないわ」

 

 まあ、もし彼女に彼氏が居たとしたらソイツにフリを任せれば良いわけであり、俺なんかが出る幕はないので当然といえば当然なのだろう。

 

「ほーん…」

 

 しかし、静かな目でそう言い切る彼女を見て、どこか安心している俺がいた。これ以上面倒くさい案件が飛び込んでくるのは厄介な上、彼女に対して妙な勘違いをすることも無くなるからだ。

 『お前と恋人のフリをしている間に実は好きになっちゃったよ』現象の事前防止に成功し、胸を撫で下ろす。

 

「でも、都合がいいと思わないかしら?」

「は、何が?」

「噂の話よ」

 

 どういうことなのかと彼女に聞き返す。何がどう都合がいいのか俺には見当がつかなかった。

 寧ろ厄介事が増えるだけではないか、例えば雪ノ下ファンの人間からの俺に対するイジメが増えるとか。そのことを都合がいいと言っているのだとしたら酷すぎやしませんかね。

 

「外堀を埋めれば、私達ももう少し恋人らしくなれると思うのよ」

「別にそこまで張り詰めてもないだろ」

「そうは言っても、母と合うのは8月なのだからもう2ヶ月しかないわ」

「それはそうだが…」

 

 そもそも俺達がこうして肝試しのペアにさせられているのも、俺達が恋人には見えないという葉山の差し金のためだ。まあ実際張本人である俺自身も同じことを感じてはいる。恋人らしく振る舞うために今まで雪ノ下とやってきたことといえば……なんかあったっけ?

 思いかえせば、雪ノ下母との会合に向けて相談をしたことはあったが、結局のところ有効策は見つけられないまま、今まで過ごしてきた。

 つまるところ、雪ノ下は焦っているのかもしれない。彼女の目的は縁談を取り消すことであり、そのために俺という偽の恋人をでっち上げているのだ。もし雪ノ下母に恋人関係が偽であることが見破られてしまえば、縁談の話も浮かび上がってしまうのだろう。

 

 

「あくまで俺達は恋人のフリだろ、噂通りになるなら俺達は4月から僅か5ヶ月で破局したカップルになるぞ」

「5ヶ月?」

「8月にお前のかーちゃんと会うんだったら、それ以降は恋人のフリなんてする必要無くなるだろ」

 

 設定上は4月に付き合い始めたことになっており、雪ノ下母にもそう知られているはずである。

 今までは俺と雪ノ下家の問題でしかなかったが、噂を真にするならば校内の人間共が関わってくる。

 比企谷八幡とかいう良くわからんボッチが、あの雪ノ下雪乃と交際しているという事実が彼らに公に存在することになってしまうのだ。

 偽の恋人が必要無くなれば俺はお役御免となるわけだが、そうすれば俺と雪ノ下が交際しているという事実は消え、学校の中で俺は「良くわからないが雪ノ下雪乃と付き合ってすぐ別れたボッチ」という称号を背負わなければならなくなる。

 俺の意図しない失恋歴が増えるのは勘弁願いたい。

 

 しかし雪ノ下は俺の言葉を聞くや否や、こめかみに手を当ててやれやれといった具合に溜息をつく。何か言いたいことでもあるのかと目線をやる。

 

 

「……比企谷君、貴方まさか母と会うのが一度だけで済むと思っているのかしら」

「へ?」

「そんなすぐに破局したなんてことになったら、頭の固い母は縁談を復活させるでしょうね」

「…そういうものなのか」

 

 縁談ってそんな簡単に消えたり現れたりするのだろうか。まあ、縁談なんていう時代錯誤なことをやるような人間のことは分からないのでどうでもいいが。

 しかし頭に過った一抹の不安がある。

 

「なら、一体何時までフリを続ければ良いんだ?」

「少なくとも高校卒業までは必要ね」

「いやいやつまらないご冗談を」

「私、虚言を吐くのは嫌いなのよ」

「今だけは吐いて良かったんですけど…」

 

 傷だらけの手で頭を抱えるしかない。そういうことは初めから言っておいてほしかったんですけど…。

 雪ノ下父から事故の被害者である俺にとんでもない難問を押しつけられてない?もし俺に彼女いたらどうするつもりだったんだ、まあ居ないけど!

 

 しかし、それは雪ノ下にとっても同じことだ。

 つまり彼女には3年間好きでもない男と恋人のフリをしてまでも、縁談を破談にしたいという確固たる意思があるのだろうか。単に葉山隼人が気に入らなかったのか、それとも他人に人生の選択権を握られるのが嫌なのかは定かではないが、そこまでする彼女のことを邪魔しようとも俺には思えなかった。

 

 

「…つーか雪ノ下はどうなんだよ」

「どうって…何が?」

「俺と付き合ってるとか、フリとはいえ良い気はしないだろ」

 

 そもそも彼女と俺とではステータスが違う。学校では雪ノ下は今を時めく噂の美少女らしいが、俺は存在感0のボッチなのだ。言わば彼女にとって俺は格下の人間であり、そんな人物と交際している彼女の格を落としかねないのだ。

 というか、もうちょっと皆俺に興味持ってくれてもよくない?一応入学式で事故にあったという強烈な事件があったし、それに目も腐ってるし見た目のインパクトは結構あると自負しているのだが…。

 

 そんな俺の思いとは裏腹に、雪ノ下は質問に答えることはなかった。

 

「…あれ、元の山道ではないかしら」

「おお…」

 

 

 彼女が指差す方へと目線をやると、確かに奥に道が見えた。こうして話している間にいつの間にか元の肝試しの順路へと戻ってこれたようだ。

 結構な距離を歩いたからか足は棒になってるし、手のひらの傷は一層しみる。たかが肝試しの筈だったのになんでこんなことになったんだか。

 

「二度と肝試しとかしねえわ」

「…同感ね」

 

 

 道を囲う柵を超え、ようやく俺達は肝試しへと復帰出来たのであった。

 

 

 

 

 

 お互い疲れているからかそこから暫くは会話も無く、特に問題なくゴール地点の広場へと辿り着いた。

 

 先に出発していたペア達はクラス順に並び直していて、クラスの仲間同士で雑談しているようだった。

 だから広場は騒がしい。俺のクラスも随分人が群がっているが、

 あの中に入っていくのはハードルが高い。またもや一人で暇を潰す羽目になりそうだ。

 

 これで漸く俺の役目も終わりかと雪ノ下の方へと振り向くと、彼女は既にこちらを見ていた。

 少し驚いて後ずさるが、慌てて体勢をもとに戻す。

 

 彼女は徐ろに口を開いて言った。

 

「…さっきの質問の答えだけれど」

「あ?」

 

「私、貴方の顔、結構好きだったりするのよ」

 

 言われた瞬間は意味がわからなかった。困惑したわけではなく、ただ何を言われているのかが分からなかった。

 理解が追いついていない中、立ち去りながら彼女は言った。

 

 

「だから、別に悪い気はしてないわ」

 

 

「……え」

 

「それではまた、比企谷君」

 

 

 意外と面食いだったのか、とか、俺も悪い気はしてない、とか、そんな言葉を返せればよかったのかもしれない。

 

 しかし、彼女の言葉に当惑した俺はただ黙って見送ることしか出来なかったのだった。

 

 

 

 





 なんとか年内に書き終えれて良かったです

 ところでヒッキーとパンさんって似てるよね!
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