八幡「恋人のフリ?」   作:ハッサン

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 評価とか貰えたら嬉しいです。


誰か見舞いに来てくれ

 

 

 あれから一週間が経った。相変わらず病院食は味が薄く、小町の手料理が恋しくなるときも多いが俺は元気です。時々猛烈に家の自分の部屋に郷愁の念を感じることもある。窓から入ってくる春風は爽やかなのになんでこんなにセンチメンタルになるのか。

 

 それは置いておいて、今病室には俺以外に客がいる。

 

「比企谷君、聞いているの?」

 

「…聞いてるよ。アレだろ?今のままだと日本経済は右肩下がりだっつー話でしょ」

 

「…全然聞いてないじゃない」

 

 そう、俺の恋人(偽)である。この人、あの日から毎日来てるけど学校の方は大丈夫なのか?

 雪ノ下が「恋人のフリなんてやってみせるわ」と言ってからというものの、毎日一冊小説を持ってきて一方的にその感想を話してくる。

 …これが恋人というものなのだろうか?今まで一度も彼女が出来たことのない俺でも違うというのは分かる。

 

 

「…あの」

 

「何かしら、まだ話している途中なのだけれど」

 

「何で毎日小説の感想を喋ってんの?」

 

 ようやく俺は雪ノ下に対して疑問を呈す。この一週間気まずくて何も言えなかったのだ。ただでさえコミュ症だしね!

 雪ノ下の方を見ると何を言っているのかわからない、という感じで首を傾げている。いや、かわいいけどなんか腹立つな。

 

「恋人というのは、会話をして愛を育むもの…

と本に書いてあったのだけれど」

 

「…因みに聞くけど何て本なんですかね?」

 

「これよ」

 

「…」

 

 雪ノ下が取り出した本は『恋愛とは』と明朝体で書かれた新書だった。…駄目だこりゃ。

 

 というか、そもそも雪ノ下の母親に見られていない所で恋人のフリなんぞやっても無意味なのでは?この子頭良さそうなのにそういう考えには至らなかったのだろうか。

 

「なぁ、そもそもこんなところで演技してても意味ないだろ。わざわざ来なくていいぞ」

 

「そうね、私も最初はそう思っていたけれど…」

 

 そう言って雪ノ下は顎に手を添えて上を見る。一つ一つの動作が様になっていて恥ずかしくなって目を背けてしまう。

 

「父から『見舞いはちゃんと行きなさい。行かないなら一人暮らしのことは認めない』と言われたものだから」

 

「へー、アンタ一人暮らしなのか」

 

「…その呼び方は辞めてもらえるかしら」

 

「…雪ノ下は一人暮らしなのかよ」

 

 きつい目つきで見られてしまい、草食動物のように見をすくめてしまう。

 

「えぇ、ついでに言えば貴方と同じ総武高校に通っているわ」

 

「あ、そうだったのね」

 

 今更ながら衝撃の事実を知る。つーかマジで俺雪ノ下のこと何も知らないのに恋人のフリとかできるのだろうか。逆もまた然りだけども。

 

 そもそも、縁談の相手というのは誰なのだろうか。説得するなら母親だけでなく、その相手もしなければ根本的解決にはならない気がするが。

 

「あ〜、雪ノ下の縁談の相手ってのは誰なんだ?」

 

「…総武高にいるわよ」

 

「…は?」

 

 何それ、超面倒くさいじゃん。もしかして高校でもフリをしなければいけないのだろうか。ていうか無理だろ。俺が雪ノ下に近づくだけでもストーカー扱いされそうなのに恋人のふりとか絶対無理だ。

 そもそも雪ノ下も彼氏を作るような質でも無さそうだし違和感しかない。

 

 

 

 そんな感じにどうしようか思考を巡らせていると、廊下の方から軽やかな足取りが聞こえてきた。

 この病院音が良く響くな…

 

 

 

「ごめーん!お兄ちゃん遅くなっちゃった!」

 

 そう言ってドアを勢い良く開けて入ってきたのは我が妹小町だった。

 しかし不味いな。今この場には雪ノ下もいるのだ。面倒くさいことになりそうだったので面会については雪ノ下と小町が鉢合わないように時間をずらしておいたのだが…。失敗した。

 

「___って、あれ!?お兄ちゃんが女の子連れ込んでる!?」

 

「小町、ちょっと声抑えてね?」

 

 驚きのあまり大声を出す小町。ここが病院だってこと忘れてない?ただでさえ時々隣の病室の人から苦情来てるんだから勘弁してほしいものである。

 

「あー、小町。こちらは雪ノ下雪乃さんだ。」

 

「始めまして。雪ノ下雪乃です。彼とは…何かしらね?」

 

「…普通に知り合いでいいだろ」

 

「そうね、彼とは知り合いです」

 

「いやいやいや、普通ただの知り合いなんかの見舞いなんて行きませんよ?ましてやお兄ちゃんだし」

 

「ちょっと小町?酷くない?」

 

 いや俺も自覚してるけどね?それでも言われると辛いんだよ?

 

「まあいいや。兄がお世話になっています!

妹の小町ですー」

 

「比企谷小町さんね。別にお世話はしていないのだけれど…」

 

「…いや、社交辞令だろうが」

 

 時々だか、雪ノ下はおかしな発言をする。雪ノ下父が言っていたように、俺と同じくコミュ症なのだろう。多分、別のベクトルのものだと思うけど。

 

 

 小町はといえば、持ち前のコミュ力を活かして早速雪ノ下と対話をしている。ホント、よくできた妹だよな。その分おバカな所はあるけど。

 

「いやー、本当に家の兄が飛び出してすいません!」

 

「大丈夫よ、それに関しては全員が悪いようだから。

…ねえ、比企谷君?」

 

 そう言うと、それまで小町の方を向いていた雪ノ下がこちらを見てきた。いや、女子トークに俺を巻き込まないでね?

 

「それはいいけど、小町は何で今日遅れたんだ?」

 

 話を逸らそうと、適当な話題を振る。やはり家族相手なら普通に話せるな、俺。

 小町は鞄を探り、何やら小さい箱のような包みを取り出した。

 

「ほらこれ、お兄ちゃん欲しいって言ってたやつ。これ買ってたから」

 

「あ?…あぁ、これね。ありがとな小町」

 

「いえいえ、お兄ちゃんの幸せが小町の幸せだからね!…あ、今の小町的にポイント高い!」

 

「うーんそうだな滅茶苦茶高いぞー」

 

「うわぁー適当…」

 

 そうして俺はその包を開いていく。中には英語の単語帳が入っていた。言わずもがな勉強のためのものである。病室でダラケすぎたせいか、勉強がしたくなるという不思議な現象が起こってしまったのだ。暇すぎると知識をつけたくなるのが性らしい。

 

「あ!そうだ、雪乃さんって兄と同じ総武高なんですよね?」

 

「…ええ、そうだけれど」

 

 先程から俺達兄妹のやり取りを不思議そうに見ていた雪ノ下は、声をかけられたことに戸惑いつつもそう返した。

 

「よかったら、兄に勉強を教えてもらえませんか?」

 

 おそらく独学では中間も期末テストも乗り越えることは難しいだろうからそれは願ったり叶ったりだが、だからといって雪ノ下に教わるのも気が引ける。だいぶ慣れたとはいえ、未だに二人きりは緊張するのだ。

 

「…勿論、そもそもそのつもりだったわ」

 

「わぁー!ありがとうございます!ほら、お兄ちゃんもお礼言わなきゃ」

 

「…ありがとうございます」

 

 小町に急かされ、ぶっきらぼうに言ってしまう。はぁ…なんかどんどん俺の望まない方向へと進んでいる気がする。一人で静かに過ごしたいのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ◇ ◇

 

 

「それで、この場合は係数の正負で場合分けするのよ」 

 

「ば、場合分け?」

 

「…貴方、よくそれで総武に受かったわね」

 

 あの日から、雪ノ下からの小説講評に加えて勉強会まで追加されてしまった。正直勉強に関しては滅茶苦茶助かっている。話を聞くと、どうやら雪ノ下は主席で合格していたらしい。

 こいつ、顔もよくて頭もいいとかフィクションのキャラクターじゃねぇの?

 

「まあ、他の教科でカバーしたからな。数学以外なら中学の範囲までは完璧な自信がある」

 

「そう…けれど高校には赤点というものがあるのだから、どれかの教科を捨てる…というのは無理な話ね」

 

「そうですね…」

 

 流石に俺も最初のテストから赤点なんぞ御免である。余計に目立つことはしたくないしね。先生とかに目をつけられたらひとたまりもない。

 

「でも安心して、ちゃんと教えてあげるから。…フリとはいえ私の恋人となるのだから、補習なんて失態はさせないわよ」

 

「…うわー心強いなー」

 

 なんだかんだで、俺と雪ノ下は仲良く…?なっていた。俺も時々雪ノ下に小説を紹介することもあるし、ちょっとした会話ぐらいなら出来るようになった。

 まあ、このぐらいは打ち解けないと恋人のフリとか絶対無理だし。

 

 あれから雪ノ下父とは会っていない。まあ、議員なのだし忙しいのだろう。あの男前な顔を見れないのは少し寂しい。

 

 そんなわけで順調に学力もつけ、俺は退院の日を待つばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

__________________________________

____

 

「これで今日のリハビリは終わりだからね」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

 

 今日もリハビリを終え、俺は自分の病室へと戻ろうとしていた。受付を横切ろうとしたその時、ふと、そこでの会話が聞こえてきた。

 

「あの…比企谷君のお見舞いに来たんですが…」

 

「すいません、関係者の方以外は面会はできませんので…」

 

「そ、そうなんですか…あーあ、せっかく病院が分かったのに…」

 

 ちらりとみると、お団子ヘアーの黒髪の少女がそこにはいた。…いや、誰だよ?比企谷ってことは多分俺の見舞いに来たんだろうが、俺はあの子のことは全く知らないのだ。

 どうしたものかと考えていると、その女の子が俺の立っている出口近くの方へと向かってきていた。

 

 気になるし、声掛けてみるか?

 

「あの…すいません」

 

「…え?」

 

 俺が声を掛けるなり、その少女は驚いた顔でこちらを見てきた。なんか、皆俺に会うとこんな反応するけど決して俺の顔がキモいからとかじゃないよね?

 

「あの…俺、比企谷ですけど何か御用でした?」

 

 俺、一世一代の勇気を振り絞って話す。見知らぬ人に声をかけるだけでも、俺の手には汗が出てくる。噛まずに言えたぞ!やるじゃん、俺。

 

「あ、あの…」

 

 そう言って少女は手を前でいじりながら俯いてしまう。そして、俺の目線は自然と手の方へと向くのだが、ついついその奥にある大きなメロンの方へと向かってしまった。おお、これが万乳引力の法則か…

 

 そんなことを考えていると、その少女は意を決したようにこちらを向いて言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご…ごめんなさい!!」

 

「…はい?」

 

 俺、ココ最近で振られたの3回目なんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 黒髪のガハマさんってどんな感じだったのだろうか。アニメに出てましたっけ?
 
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