八幡「恋人のフリ?」   作:ハッサン

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 短めです。

 高校が始まらないと雪乃達との絡みが書きづらいんです。


真っ直ぐすぎる

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「…はい?」

 

 悲報。話しかけたら振られたんですが。

 確かに突然話しかけたのはキモかったのかも知れないけど、それは流石に酷くないですかね?泣いちゃうよ?

 そんな風に心に傷を負っていると、その女子は慌てた素振りで言葉を継ぎ足していく。

 

「あ、いや、その…さ、サブレ!サブレを助けてくれてありがとう!」

 

「…サブレ?何の話?」

 

 サブレっていうのは鳩サブレのことか?なんか俺随分ちっぽけなものを助けたらしいが…。

 

 

 いや、もしかして助けた犬の名前だろうか?となるとこの子が犬の飼い主ってことになるけども。

 

「あ、サブレは私の犬のこと!入学式の日、助けてくれたよね?ずっと比企谷君に謝りたかったんだ」

 

「…そうだったのか」

 

 やはりこの子が犬の飼い主だったようだ。

 あのときは飼い主の存在とか気にしてなかったからなんか新鮮な気持ちだ。

 しかし、何故この病院が分かったのだろうか。俺の病院は家族と雪ノ下家、そして学校にしか知られていない筈だが。まあ、学校に聞けば教えてもらえるのだろう。

 

「あたし、由比ヶ浜結衣って言います。その、比企谷君と同じ総武生なんだ」

 

「そ、そうなのか…」

 

 まさか二人目…いや3人目の総武生を知ることになるとは。まだ俺学校行ってないのにね。

 

 それにしても、この由比ヶ浜結衣という少女、かなり可愛い。雪ノ下は美人という言葉が似合うが、この少女は正しく美少女と言うべきだろう。ついでに言えば雪ノ下には無い素晴らしい物もお持ちのようで…

 

 そんなくだらないことを考えていると、由比ヶ浜の方は困った顔でこちらを見ていた。…やっべ、急に黙っちゃってたわ。雪ノ下としか会話してないせいで感覚がズレていた。

 

「あー、見舞い来ようとしてくれてたみたいだな。」

 

「き、聞いてたんだ………はずかしいな」

 

 ぽしょぽしょ喋るので最後の方はよく聞こえなかったが、見舞いに来てくれていたのは本当のようだ。

 まあ、罪悪感みたいなものがあるのだろう。

 あのとき犬はリードを引きずりながら走っていた。つまり由比ヶ浜はリードを何かしらの不手際で放してしまったということだ。自分のせいで事故が起こったと思っても仕方はない。

 

「…別に気にしなくていいぞ。俺が勝手に飛び出ただけだからな。罪悪感とか感じる必要なんてない。」

 

「そ、そうかな…?」

 

「そうだ。…だからもう俺のことは気にかける必要は無い。」

 

「…そっか」

 

 そう言ったきり由比ヶ浜は悲しげな顔をして黙りこくってしまう。

 …すげえ気まずいんだけど。こういう時って何すればいいんですかね。これが小町とかなら頭を撫でてやるのだが。まあ見知らぬ人にそんなことをやる勇気はないし、やってもキモがられるのでやらない。なんなら通報されるまである。

 

 しかし、由比ヶ浜は何かを決心したようにもう一度こちらの方を向いて言った。

 

「そ、それじゃあ友達になろうよ!事故のこととか関係なく!」

 

「…は?友達?」

 

 何それ美味しいの?

 友達って何だっけ?

 

 …え、マジで言ってるの?俺と?友達にって?

 

「あのな…別に気を使わなくていいって言ったろ」

 

「うん。だからそういうの無しで仲良くしよう?」

 

 何言ってるの?と言わんばかりのキョトンとした顔。これもかわいいな…じゃない、落ち着け俺。

 

「…事故のせいで学校行けてないから友達ができてないとか、そういうことを哀れんでるんだったら、そういうのは辞めてくれよ。」

 

 そもそも、俺は惨めなのは嫌なのだ。人から見下されて、憐れまれて生きるのがたまらなく嫌だ。中学時代、俺に関わって来たやつは皆結局俺のことを見下していた。

 

『こんなやつと話している自分、素敵』と考えているやつばかりだった。その時は気づかなかったが今なら分かる。

 

 由比ヶ浜はきっと優しい女の子なんだろう。しかし、哀れみの優しさなんていらないのだ。なんら中学時代と変わらない。

 

 

 

 

「うーん…あたし、そういう難しいことは分からないけど…」

 

 そう言って由比ヶ浜は再び俯く。

 

 だが、彼女はここで終わらなかった。

 

 

 

「あたしがただ、比企谷君と仲良くしたいから、って理由じゃ…だめなのかな?」

 

 真っ直ぐな瞳だった。まるで、俺の薄汚い思考を掻き消すかのように、その視線は突き刺さった。

 

 …何この子、俺如きじゃ太刀打ちできねぇわ。というか世界中どの男も無理だ。

 

「まあ…それなら別に…」

 

「え?ホント?…良かった…」

 

 そう言って由比ヶ浜は胸を撫で下ろす。…別に変な目で見てないよ?少し目線を下げただけだからね?

 

 そんな風に煩悩が支配していると、不意に後ろから声を掛けられた。

 

 

 

 

 

 

「…話は終わったのかしら?」

 

「…え」

 

 

 

 焦って後ろを見ると、そこには雪ノ下雪乃が呆れた顔をして立っていた。ついでに見渡すと、周りの人達が俺らのことを温かい目で見ていた。あれ?何これ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 っ!…そういえばここまだ病院だったじゃん!何やってんの俺!?滅茶苦茶恥ずかしいこと口走ってたんだけど?

 何が『そういのは辞めてくれ…』だよ。何で少しキメ顔で言っちゃったんだよ…。 

 

 俺が頭を抱えて悶ていると、雪ノ下の方は由比ヶ浜の方を向いて話していた。

 

「貴方は由比ヶ浜結衣さんね。」

 

「え?雪ノ下さん、あたしのこと…知ってるんだ」

 

「勿論。私もあの事故に見合わせていたから…」

 

「…そうだったんだ」

 

 運が良いのかはわからないが、少なくとも奇跡的に、事故の当事者たちが巡り合ってしまったわけだ。最近の俺は本当に運が良いのか悪いのか分からんな。

 

 ここは取り敢えず場を収めなければ。

 

「…まあ、なんだ。取り敢えず事故のことは帳消しってことになった。これでもう誰も気にする必要は無いってことだ。」

 

「それは聞いていたわよ。あんなところで普通に喋っていたし」

 

「あ、そうですか…」

 

 雪ノ下は当然のように言いのける。貴方だけならまだ良かったけど、周りの人全員に聞かれちゃってたんだけどね。個人的に今までの黒歴史のトップ3に入る勢いなんだけど…。もうこの病院行けない!

 

「そうだ!雪ノ下さんも仲良くしてね!クラス違うけど、お昼とか誘ってもいい?」

 

「え?…それは…」

 

 由比ヶ浜からのアプローチに断りきれていない。こう押され気味の雪ノ下というのも新鮮だ。まあ俺と同じくコミュ症だもんね!

 

「…なんか凄いことになりそうだ」

 

 

 退院まであと少しだ。しかしまだ学校に行けていないにも関わらず、初めての友達が出来てしまったようだ。 

 

 

…それよりも前に恋人(偽)できちゃったんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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