Fate/マッスル☆Order 〜筋肉で人理は救えるか?〜   作:ナウい息子♂

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続かないと言ったな。アレは嘘だ。


憎悪 < 筋肉

──百年戦争。

 

 

それが次に俺が送り込まれる特異点であり、人類史のターニングポイントの一つ。

ざっくりと言えば、フランスの王位継承権を巡ってイギリスとフランスがダラダラと戦っていた戦争だ。

かの聖女、ジャンヌダルクが参加していた戦争だと言えばもっと分かりやすいだろうか。

 

 

確か原作ではジャンヌが処刑された数日後に、ジル・ド・レによってジャンヌオルタ……もとい邪ンヌが呼び出されたのだったか。んで、竜と狂化を付与されたバーサーク・サーヴァントを引き連れてフランス中を暴れ回っていた所を、カルデアに止められる……そんなストーリだった筈だ。

だがこの世界では、総じて特異点が原作よりも強化されている。どんな風に改変されてんだろ。

邪ンヌが3人に増えてて『3人に勝てるわけないだろ!』ってして来るとか?若しくは、イギリスと邪ンヌが手を組んでいて円卓のメンツが乱入……

 

 

いや、考えてもあまり意味はないだろう。

抑止力の端末の一つと化している俺ですら、いざ特異点に入るまで内情を観察する事は出来ない。

例えどれだけ敵がマシマシに強化されていようとも、俺はカルデアをサポートするだけだ。溢れ返る筋力(見せ筋では無く、しっかりと筋力EX付きだ。何処ぞの赤い弓兵と一緒にしてもらっては困る)に物を言わせ、凡ゆる障害を粉砕して見せよう!

 

 

と意気込んでみたものの、俺は幾つかの要求を先にヨッシー(抑止力 )へと話しておかなくてはならない。

①全裸は社会的に死ぬからやめて欲しいという事

②俺の口をコミュ障にしてくれるなという事

③黒いモヤが鬱陶しいから取ってくれ

 

この三つである。いや、此れには我が身可愛さだけでは無くキチンとした理由があるのだ。

冬木の特異点では、既に特異点の舞台となっていた冬木が絶賛キャンプファイヤー中であり、協力できる民間人もクソも無かったが、今回の特異点である【邪竜百年戦争オルレアン】では普通にフランス兵やら街の人々やらが居るのだ。間違い無く、情報収集等でコミニュケーションを交わす必要が出てくる。

だが、ただでさえフランス兵達は未曾有の事態にピリピリしているだろう。そりゃそうだ。死んだ筈のジャンヌが蘇り、ワイバーンを引き連れてフランス中を焼き尽くしている。ピリピリするなと言うのがどだい無理な話なのだ。

そんな時に、黒いモヤを纏わせた筋肉モリモリマッチョマンの全裸野郎が『なか……よく!(ムキッ!ムキムキッ!)』なんて言いながら凄まじいスピードで走り寄ってきたら敵対不可避である。

 

 

何が悲しくてカルデア&フランス兵vs邪ンヌ一行vs俺とかいうマゾプレイをしなくてはならんのか。

そこ等辺を説明しつつ抗議したのだが、ヨッシー(抑止力 )曰く

 

『黒いモヤはとあるサーヴァントの宝具を強化したものであり、ゲーティアの監視の目をシャットアウトし、抑止の代行者の能力を明かさない為の措置である。

そして、守護者が他者とのコミニュケーションを交わすとそこから情報が漏れる恐れがある為、態と喋りにくくしている。全裸なのは仕様(めんどくさいから)』らしい。

 

 

あのさぁ……(クソデカため息)

いや、確かにね?ゲーティアに此方の存在がバレてはならないのは分かる。だけどさ、天下の抑止力サマがこんな……何というか、あほくさな対応しかできないというのは如何なものなのだろう。というか、全裸なのは仕様なのか(困惑)この全裸のせいで前回、立香ちゃんとマシュにドン引きされたんだからな!絶対マイサン見えてただろ、アレ……。

そうだよ、カルデアとの円滑な協力のために全裸と隠キャ口はどうにかしろ!人理修復の前に羞恥心で俺が死ぬわ!

 

 

なんとかヨッシー(抑止力 )も俺の必死に抗議を聞き入れてくれ、やっと雇用体制が改善された。

まずは全裸、黒モヤ問題。此方は元々黒モヤの素体となっていた、狂スロットの宝具【己が栄光の為でなく】を物理的に存在する、モードレッドの宝具【不貞隠しの兜】と融合させることによって俺は、全裸に兜を身につけることで全裸から脱却したのだ……!というのは流石に冗談であり、自分の好きな格好に変換できる。まぁ、Apocryphaでモードレッドも私服状態で宝具の効果を発動させてたしね。

 

で、口下手隠キャ問題。これは、認識阻害の特性を俺自身に付与する事で解決した。

曰く会話している最中は俺と話していた事や俺の行動を覚えているが、一旦俺から離れるとその記憶があやふやになるらしい。分かりやすく言うなら反ミームって奴かな?で、その上にダメ出しとして抑止力による発言の校正が入る。

大幅にカルデアの旅を変えかねない発言や、未来の事、抑止力の事を発言しようとすると言葉を発せなくなるらしい。言論の自由は何処……?俺には自由がある!労基に駆け込むぞ!あ、そんな物は無い?さいですか……

 

 

 

 

紆余曲折の後に、俺は抑止力くんからぶっ飛ばされる様にフランスへとレイシフトさせられた。もうヨッシーなんて呼んでやんねーからな。

そこはワイバーンが飛び交い焼け焦げた戦士達の亡骸が転がる地獄だった。

見渡す限り、俺が降り立った場所で生存者は居ないようだ。ミディアムな焼き加減の死体と空を舞う竜だけ。

チッ、俺の超絶交渉術を見せてやろうと思ったのによ……。あ、因みに今の服装は上下共にスーツです。やっぱり第一印象から大事だからね。気分はまるで就活生さ。

 

フランス兵「ご職業は?」

俺「世界を救う手助けです。」

フランス兵「得意な事は?」

俺「素手でワイバーンとか殺す事です^ ^」

フランス兵「良いねぇ!」

 

 

かーっ!これは一発採用じゃけぇ。フランス兵君達からの信頼も勝ち取れるし、俺がコミュ障では無いことも証明できて2度美味しい。どっかに生存者とかいねぇかな。俺のフレンチ☆陽キャ生活の橋頭堡になってもらいたい。おっ?なんか向こうから数人来たな……あの甲冑はフランス兵!しかも生きてるぅ^〜!これは声かけるしか無い。走れ〜!

 

 

「すはずー!我は怪しき者ならず!我が生業は天下を救ふ事なりー!(すいませーん!怪しい者ではございません!職業は世界を救う事ですー!)」

『#\/@&+€☆○*!(理解できないフランス語)』

 

 

おまっ、抑止力!校正ガバガバな上に翻訳機能も無しかよ!

完全に怯えた顔してこっちに槍とか剣とか向けとるやんけ!

そりゃそうか。異国の服着た筋肉モリモリマッチョマンが謎言語で叫びながら走り寄って来るんだもんな。

あーあ、ファーストコンタクト失敗。つか、言語の壁はでかく無いか?英語なら生前の知識でギリギリ行けるが、フランス語は分からんぞ。分かるのはボンジュールがこんにちは、くらいだ。

 

やべ、切りかかってきた。でもぶっちゃけ、敵にならない。そりゃそうだ。並大抵のサーヴァントをぶっ飛ばせる筋力の俺に対し、相手は職業軍人とはいえ只の人間。多分デコピン一発で絶命するだろう。

かっこよく『当身っ!』とかやって気絶させたいけど、俺がやると彼等の首が胴体と泣き別れする。もしやるならマッスル・アンリ・サンソンを今後名乗った方が良いかもしれない。

 

しょうがない。まぁ、多少の後遺症は勘弁してくれよ……。

俺は体感的にスローモーションで繰り出される剣や槍を難なく避け、両手を勢いよく打ち鳴らす。

 

 

『スッパァァァン!』

 

 

瞬間、音の波が俺の両掌を中心に周囲を蹂躙し尽くす。付近を飛んでいたワイバーン達は蚊取り線香の煙に巻かれた蚊の様に地面へとフラフラと落下し、周囲の草むらは一斉に薙ぎ倒される。多分、フランス兵君達には音としては聞こえてないだろう。俺が両手を打ち鳴らし、生み出した衝撃波は彼等の鼓膜を粉砕し脳をガンガン揺らした筈だ。その証拠に、彼等は白目を向いてその場に昏倒する。……生きてるよね?

そっと一番近くにいたフランス兵の首に指を当ててみると……よかった、ちゃんと動いている。

特異点が崩壊すれば此処で起きた事は無かったことになるが、流石に無辜の一般人を殺すのは後味が悪い。

 

 

「御免、げに済まずと思へり(ごめん、本当に済まないと思ってる)」

 

 

アラヤァァァァ!良い加減にしろォッ!ガバガバじゃねぇか!校正ソフト変えろ!あと翻訳機能も付けとけよ!コミニュケーションもクソもねーじゃねーか!

 

フランス兵達の脈を全員分確認しつつ、ぽろりと漏れた謝罪の言葉すらも古めかしい日本語に変換されていた事についてキレてしまった。おかしいだろ。フランスで日本の古語なんぞ通じるか!

自分の胸の奥からぼんやりと何処かへと繋がる見えない紐のような感覚が、きっと俺と抑止力の間に繋がっている経路(パス)なのだろうと予想をつけ、その思念を流し込む。

すると、暫くした後に己の中で何かが切り替わるのを感じた。何だ、やればできるんじゃないか。もっと早くやってくれたら、今頃はこのフランス兵君達とキャッキャウフフと親交を深めていたのに……。

 

 

そんな事を考えていると、俺の強化された感覚が接近する幾つかの存在を感じる。

えっと……存在の大きさからして、サーヴァントが6、サーヴァントには少し届かないのが1と人間1………こんな特徴的なパーティは一つしかあるまい。カルデアだ!お、これは校正ソフトver.2の使い所さんですよ!

ここから、俺の人理修復が本当に始ま─────

 

 

「彼等から今すぐ離れなさい!」

 

 

あるるぇ〜?なんでぇ?

声を発した彼女の金の美しい髪に天蓋にて輝く巨大な光輪が放つ光が反射し、彼女の神聖さを際立たせる。

目には強い決意と信念の輝きが宿り、手に持った旗は油断なく此方へと構えられていた。

彼女の名はジャンヌ・ダルク。救世の聖女であり、この特異点に召喚された人理側のサーヴァント。

え、俺の味方だよね?なんでこっちに旗を向けて………あ、エリちゃんとか清姫も居る。アマデウスと……あれはゲオルギウス(冤罪おじさん)か。で、剣を地面に刺して息も絶え絶えなのがジークフリートと。全員が臨戦態勢で彼等の背後ではマシュが盾を構えてるし、立香ちゃんはこっちを不安と勇気が入り混じったような目線を送ってくる。

 

 

 

 

ん?待てよ?彼等目線になると……

 

 

・周囲に倒れ伏すフランス兵達

・先ほど聞こえた爆音

・俺は脈を測るためにフランス兵の首元に手を置いたまま

 

 

ねぇええええ!違うって!ちがーう!これは不幸な行き違いだ!止めろ、俺は敵じゃない!

 

 

「アタシの歌に合いそうな良い音が聞こえてきたと思って来てみたけれど……あれって子イヌの敵?なんか

輪郭がふわふわしてるし……物騒な感じよ?」

 

エリちゃんは黙ってようね〜!つか、さっきの爆音を自分の音楽に合うと思うのか(困惑)

くそ、此処は抑止力の校正ソフトver2を信じて交渉だ!行くぞ、ネゴシエーター俺!ニッコリ笑って交渉だ!

 

 

「それ以上私に近づかない方が良いだろう。貴様らが私の崇高な考えを理解できると思わぬし、理解してもらおうとも思わぬのでな。(ちょっと待った!君達は勘違いしてる!)」

 

 

交渉じゃなくて脅迫じゃねぇか!しかも顔面ピクリとも動かねぇよ⁈

ほら!エリちゃんも槍構えだしたし、ゲオルギウス先生に至ってはこっちに飛びかかろうとしとるやんけ!

……待てよ?此処にゲオルギウスが居る……?つまり、時系列的には……マリーが足止めに残った後か!

これ不味くないか?カルデア勢がもし此処で俺と衝突すれば人理側は消耗しちまうし、更にただでさえ特異点が強化されてるらしいんだ。マリーの脱落は痛手だろう。ど、どうすんねんコレ!人理燃えるぞ、このままじゃ!

 

 

俺が鉄面皮の裏側でテンパっていると、突如として俺の身体が何処かへと引っ張られるような感覚に襲われる。

これは……抑止力による強制転移か!恐らく、コレを見守っている抑止力による介入だろう。こんな所で有能さを発揮するなら校正ソフトもキチンとしろ!

俺の体が徐々に薄れ、何処かへと引っ張られていく。俺は無駄だとは分かっていながらも、最後に彼等に激励の言葉を発する事にした。

 

 

「全くどいつもこいつも私の目的も分からぬ愚物ばかり。まぁ、精々貴様らも私の目的に利用させてもらうとしよう!(口調が凄く威圧的になってるだけで君達の味方だ!共にこの特異点を修復しようじゃないか!)」

 

 

あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!(苦悶の声)

 

 

 

 

 

 

 

《マリー・アントワネット視点》

 

「わたしは喜んで輝き、散りましょう。

星のように、花のように、泡沫の夢のように。」

 

 

ああ、きっと私は此処で死ぬのでしょうね。二度目の死はちょっと怖いかも。

そんな思考が頭の片隅を掠める。だけど、そんな物はすぐに消えた。だって、私はマリーアントワネット。

白百合の王女であり、このフランスに恋をした一人の少女。自分がそうなのだと考えただけで、目の前で目を怒りに染める竜の魔女も、その背後に控えるサーヴァントの人達も気にならない。

 

ああ!フランスに栄光を。そして、願わくば……ジャンヌの行く先に沢山の夢と、希望が待っていますように!

 

 

「それがサーヴァント、マリーアントワネットの生き方なのだから!」

「黙れぇぇぇ!!!!

バーサーク・ライダー!バーサーク・アーチャー!あの女を……今すぐに消し去りなさい!」

 

彼女の命令に従い、大地を蹴って迫り来る二騎のサーヴァント。

槍を片手に持ち、クルリと回しながら突貫する一騎はその精悍そうな顔つきを狂気に染め、もう片方の弓兵の目にも理性の色は見受けられない。

可哀想に。マスターとサーヴァントという括りすら、己の意思で突破し竜の魔女へと反逆しようとし、残っていた僅かな理性すらも奪われた気高き二人の戦士。その二人に、何か言葉をかけてあげたいのだけれど……もう、終わりみたい。

 

 

宝具の為の魔力は欠片も残っておらず、この身はサーヴァントと言えど何処まで行っても只の王女。

この泡沫の生も、あと数瞬後には消えているだろう。後悔は無い。このフランスの…いえ、世界の未来の為に散る事に対して。かのジャンヌダルクとも言葉を交わし、世界の重さに押し潰されそうになりながらも、未来を見据え続ける少女にも出会えた。嗚呼、でも……一つだけ心残りがあるとするのなら。

 

 

「ピアノの約束、守れなくてごめんなさいね。アマデウス。」

 

 

 

だが、そのあり得た筈の死は。一人の白百合の少女の死は。

絶死へと至る一撃は、最も容易く受け止められる。

 

 

「一輪の花に対して、大の男が二人がかり。そして嗾しかけた本人は後ろでふんぞり返っているとはな。

コレを滑稽と言わずに何と呼ぶ、竜の魔女よ。己の痴態に泣き喚いて八つ当たりする為の胸板ならば私の物を貸してやろう。こう見えて、大胸筋には自信があるのでな」

 

 

 

────────その男は、マッスルだった。

 




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