Fate/KIYOSI〜光に導かれた魔術師の宴〜 作:荒瀬 伊織
「……魔術師」
「うんそう。まあ僕は違うけど。僕はあくまで魔術使い」
真田堂力と名乗るこの人が無害であることはすぐにわかった。まず僕の拘束魔術に対して一切の抵抗を見せなかったこと、そして無防備にも回路を起動させていたこと。まあ堂力さんの場合は回路のオンオフも満足に出来ない状態だったから、らしいけど。
堂力さんは魔術の魔の字も知らない、それなのに超能力の類だと思って魔術を使っていたというとんでもない人だった。ある意味僕より何か別の才能が突出しているような、それに聞くところによると属性は火で間違いない。……僕からしたら願ったり叶ったりだ。
「あの、魔術師と魔術使いって何が違うんだ?」
「えっとね、根源に到達するために魔術を使うのが魔術師で、魔術を使うだけで満足しているのが魔術使い、かな」
「……根源ってなんだ?」
うんこれに関しては僕の説明が悪かった。根源ってのはなんというか、究極の知恵みたいなの。この世界、歴史、人理定礎で紡がれてきた神秘の集合体。
魔術師ってのはみんな根源に到達するのが目的で、そのためには文字どうり手段も選ばない人たちばかりだ。極端な話、世界最高峰の山サガルマータに登って頂上で全裸になり、そのまま5時間阿波踊りを踊り続けた後にガリガリ君を5本平らげたら根元に到達出来るよって言えばみんなする。
魔術使いというのは言ってしまえば魔術師たちから呼ばれる蔑称のようなもの。魔術を使うのが僕たちにとってのゴールだから根元には興味がない、さっき言った根元に到達出来る方法を言っても、そんなの凍死しちゃうからやらないと理性的な返しをされるだろう。
「つまりその……魔術は根元に到達するための道具ってことだな」
「魔術師たちにとってはね。魔術を勉強するよりも効率的な到達方があるならみんな魔術を捨ててしまうと思う」
「で、お前は魔術使いってことはその、根元には興味ないのか」
「うん。僕は光の魔術を極めたいんだ。母さんと父さんがくれたすごい力だから」
そう。僕には根源なんかよりもお父さんやお母さんみたいな人になる方がよっぽど凄いと思うし、この稀有な力を開花させるのも親孝行の一つだと考えている。それにくらべたらいつ手に入るかわからない根源なんて2の次だ。
「……俺も、魔術の方がいいかな」
そうぽつりと言った。確かに堂力さんは根元より前に、その特異な魔術に対する才能を伸ばした方がいい気がする。本来なら僕みたいにルールの穴見つけないと確立することはない基盤を1から作って、それで魔術を行使する。これだけでもすごいのになんと魔術を使う度に新しい基盤を作って、要は使い捨て戦法をしているというとんでもない力、混沌魔術を図らずしもやってのけているわけ。幼少期から英才教育を受けているエリート魔術師一族にも真似出来ない凄技だ。
「な、なあさ……お前が良ければ、また会いにきてもいいか?」
なんとまあ、棚からぼた餅、至れり尽くせり、火の属性を持つ魔術師の友達を探していた僕としては断る理由がなかった。
「勿論だよ。ここならいくらでも魔術の練習をしてもいいからね、でもあんまり研究成果とか新しく掴んだ式とかは僕相手でも教えない方がいいよ。魔術の質が下がってしまうからね」
「わかったぜ、ありがとう! あと、式ってなんのことだ?」
……こうして僕は、魔術式も知らないけどなんかすごい才能を持っている凄腕の魔術使いと友達になった。また会いにきてもいい、そう言ったいいものの、それからほぼ毎日会いに来てくれるなんてその時は考えてもみなかった。
混沌魔術とはまあ一番現代的と言うか、いいとこ取りの魔術。でも基盤を1から作らないといけないから万能感なんてほとんどない、むしろめちゃくちゃめんどくさい。一方堂力くんは「紙、燃えろ」とか「鍵、開け」とか言うだけで、魔術式なんてすっ飛ばして基盤が成立するある意味光の属性より抜きん出た才能を持っています。
あと回路にはそれぞれ起動するときに思い描くヴィジョンのようなのがありまして、魔術師ごとにそれは違います。堂力くんで言えばあの時の事故で心臓にガラス片が突き刺さったことを思い出す、清志くんは死期が迫った母親の手が冷たくなるのを感じながら握っていた時のことを思い出す、とかです。