Fate/KIYOSI〜光に導かれた魔術師の宴〜   作:荒瀬 伊織

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紙飛行機を辿って

数週間後の話

 

「おい、紙飛行機が窓から飛んできたぞ

 

「近くの小学生が飛ばしちゃったんでしょ、返してあげて」

 

「いや結構飛んでて、持ち主遠くにいるんじゃねえかな」

 

「そっか、相当折るのが上手なんだろうね」

 

「多分な。なんか変な印? みたいなの付いてるし……」

 

「……見せて」

 

堂力くんが毎日家に来るようになってしばらく経った。年上の男の人と話したことがなくて不安だったのは最初だけ、彼のコミュ力の高さのおかげか、いつの間にか平気で喋れるようになっていた。よく一緒な遠出をしようというアウトドア派な言動にインドア派の僕が振り回されることは決して珍しいことではなかったけど、それありきでも2人の時間は快適だった。……光と火の魔術についても色々わかってきたしね。

 

そんな状況にこの紙飛行機だ。人間無機物問わず窓から客人が来るのが最近この家での流行りみたいだ。堂力くんが心配そうにしながらも渡してくれた白い紙飛行機を元の四角い紙に戻す、その印は丸くそして赤い、一見花のような紋章だった。紙からは甘い匂いがするだけで裏には何も書いていない。

 

「赤いな……」

 

「これは簡易的な魔法陣だね」

 

「へぇ、なんか魔術師って感じだな」

 

「多分魔術師がつけたものだろう」

 

おいおいそれは大丈夫かと堂力くんは今にも破ろうと手を伸ばした、僕は咄嗟にその手を握って阻止する。飛行魔術のような初心者魔術の簡易的な印とはいえつけた魔術師がいるのだ、破こうものならそれに気がつくはずだし、最悪ここがバレるかもしれない。

 

それにもう一つ気になるのが、この紙に隠された「文字」についてだ。

 

「破く前にちょっと確かめたいことがあるんだ。堂力くん、今指先に火をつけることはできる?」

 

「え? まあ出来るけど……えっと回路起動して、火よ、指先につけ!」

 

最近魔術の制御がようやく出来てきたんだな。回路捌きも見事だ。左の指先についているその火の上に、燃えないよう紙を炙る。やっぱり予想通り。みるみるうちに文字が浮かび上がってきた。

 

「うわなんだこりゃ、あぶり出しか?」

 

「原理はそれで合ってるけど、魔力で出来た火に反応するようまじないがかけられてる。魔法陣といいどうやらこれを送りつけてきた人は随分と花が好きみたいだね……花か……」

 

 

 

ここら辺で一番強い魔術師の家にこの紙飛行機が届くよう魔術をかけたわ

この山の何処かに居る私を探し勝負なさい、貴方を倒したら私は幸せになれるんだから!

 

 

 

「僕は随分と嫌われてしまったみたいだね」

 

「いや清志は何もしてないだろ」

 

恐らく魔女であるだろう彼女、堂力くんと違って魔術協会と繋がりがあるかもしれない。合うか合わないか……あれ? 下にもう一つ書いてある。

 

 

 

この紙には私が3ヶ月かけて作った超強力な魔術がかけられているの。3日以内に私の元に返さないと、その家の家主の恥ずかしい秘密を森羅町や周りの市町村にバラすようにってね。

もし逃げたら……覚悟しておくことね

 

 

 

「……堂力くん、僕行ってくる」

 

「え!?」

 

当然だ。秘密がバレるなんてもってのほか、しかもただの秘密じゃなくて恥ずかしい秘密だ。魔術関係のことではない多分恐らく絶対に、

 

 

 

僕のおねしょ癖がばら撒かれる。

 

なんでこんな変な魔術を3ヶ月もかけて作ったんだこの魔女は、究極的に暇なのか、それともそんなに強い魔術師が嫌いなのか。何はともあれそんな長時間かけてかけられた呪い3日以内に解くなんて不可能だ、僕の潤沢な回路をフル稼働させたとしても1週間はかかる。

 

「お、俺もついて行くよ」

 

「……秘密知ったも嫌わない?」

 

「勿論だぜ!」

 

なんでだろう、堂力くんは信じることができる気がした。それでも相手は堂力くんとは違ってお手本のような魔法陣と魔術を駆使する生まれながらの魔女だ。何かあったら僕が守ろう。

 

「で、どうすんだ、3日かけて森の中から探すってか?」

 

「まさか。魔術を使うよ」

 

少しずつ落ち着いてきた。光は吸収と反射の作用を持つ。3ヶ月かけて作った呪いは手が出せないにしろ、もう一つ、飛行魔術の簡易的な魔法陣なら反射も容易のはずだ。

 

「煌天式起動・呪詛返し(カウンター)!」

 

僕は運がいい、まずは反射と光属性の繋がりを既に見抜けていたこと、そして魔女がこの魔法陣に役目を終えたら帰ると言った仕掛けを作っていなかったこと。魔女のところからこの家に来たのだとすれば、この魔術をカウンターつまり反射すると、僕の家から魔女の場所まで飛んでいってくれるはず! 

 

僕の予想な無事に当たってくれたようで、紙は再び飛行機の形になって窓から飛んでいった。

 

「よし追うよ、いざという時のために身体強化の魔術準備しといて!」

 

「わかった! 回路起動しとく!」

 

それはやめて、町の人にバレてしまうから。それはそれとして、魔女にある種の恐れを抱きながらもそれを振り払うように僕は走り続けた。




堂力くんは清志くんのおねしょ癖をまだ知りません。しても清志くんが意地でも隠してます。

あとこの数週間で堂力くんの魔術の腕はめちゃくちゃ上達してます、まあ近くに先生いるし当然っちゃ当然ですけど。
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