魔法少女リリカルなのはKreuzung   作:神原和人

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大変お待たせしました。/07更新です。
ちょっと急展開過ぎて、読者の皆様がポカーンとしないか心配です……。


/07 そんなに笑う必要、ないと思います!

 入学から既に三ヶ月が経過していた。

 僕の学校生活は、当初の予想を覆して良い状態が続いている。

 というのも、今のクラスに集められた転生者はその全てが、新しい生を穏やかに過ごしたいと願っている者ばかりだったからだ。

 そんな訳でトラブルが起こることもなく、僕は人生二度目になる小学校生活を満喫していた。

 

 綾ちゃんに渡す予定だったペンダントに関しては、彼女にリンカーコアがあることがわかった時点でペンダントではなくデバイスに変更になった。

 というのも、彼女に魔導師としての才能があるなら、ただ術式を組み込んだペンダントよりもデバイスである方が都合が良かったからだ。

 そんな訳で当初作成したペンダントは別件で使うことにして、父さんに頼んでデバイスを組んで貰うことにした。

 基本的には身を守る為の物なので、性能としては防御特化を予定している。

 それに合わせて、デバイスのコアを組み込む為の外装は僕が手作りすることになった。

 翔、慎吾に葵ちゃん。そしてなのはちゃんと奏ちゃんの分も一緒に作る。

 翔たちには友達になった記念に、と渡すつもりだ。形は全部、僕とおそろいのロザリオになっている。

 近々なのはちゃんたちに紹介しようと思っていたから、その場で全員に渡そうと思う。

 何でもなのはちゃんたちも新しく出来た友達を紹介したいという話だし、丁度良いだろう。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「良い天気だなぁ」

 

 本日は晴天。日差しが気持ちいい。

 僕たちとなのはちゃんの新しい友達の予定を合わせ、今日が初顔合わせということになる。

 当然、僕の方も奏ちゃんを合わせた五人に声をかけてある。

 集も最近出来た友達を連れてくるとかで、朝から別行動だ。

 姉さんは残念ながら、急遽父さんと一緒にミッドチルダに行ってしまった。

 

「お待たせ」

「おはよう奏ちゃん」

「ええ。おはよう、朔夜」

 

 一番乗りは奏ちゃんだった。

 白いワンピースと麦わら帽子がマッチしている。

 

「今日は一段とおめかしして来てるね」

「変?」

「いや、とっても似合ってるよ」

「……そう。ありがとう」

 

 そう言う奏ちゃんの頬は微かに赤く染まっていた。

 そんな可愛らしい彼女の様子に、笑みが浮かぶ。

 

「他の皆は?」

「まだだよ。奏ちゃんが一番乗り」

 

 そんなことを言っていると、公園の入口に翔と綾ちゃんの姿が見えた。

 僕が気付いたようにあちらも気付いたようで、綾ちゃんが軽く手を振っているのがわかる。

 僕はそんな二人に対し、手招きをしてこちらに来るように促す。

 

「オッス! はやいなぁ~、朔夜は」

「おはよう、朔夜くん」

「おはよう翔、綾ちゃん。紹介は皆が来てから、で良いかな?」

 

 三人に確認を取ると、皆頷いてくれた。

 流石に、来る度に紹介していると手間がかかる。

 それから五分も経たない内に、全員が集まった。

 ……しかし。

 

「まさかこんな人数になるとは……」

「にゃはは」

 

 なのはちゃんも思わず苦笑いする人数。総勢、十二人の子供が集まっていた。

 僕もここまで人数が集まるとは思っていなかった。

 内訳としては、僕の友達が四人に僕。

 なのはちゃんの友達が三人になのはちゃん。

 集の友達が一人に集。そして奏ちゃん。合計十二人、という訳だ。

 

「何か想像してたより人数が多いし、座れる場所に移動しようと思うんだけど、良いかな?」

 

 皆同意してくれたので、移動することに。

 

「でも、移動って言ってもどこに行くの?」

 

 金髪の勝気そうな女の子が聞いてくる。

 まぁ、これだけの人数が一緒にいれる場所など限られてくる。

 ここから近い位置だと、もう一箇所しかないだろう。

 

「僕の家。

 ここから割と近いし、今家には誰もいないけど、鍵は持ってるから」

 

 そう言ってキーホルダー付きの鍵を見せる。

 

「冷房が効いた部屋の方が良いでしょ?

 なのはちゃんの家も近いけど、確か今日は美由希さんたちが勉強会で使ってる筈だし」

「うん」

 

 なのはちゃんに確認を取ると、確かに勉強会で使用中のようだ。

 

「邪魔をしちゃ悪いし、かと言ってここから翠屋までは遠いからね」

 

 僕の意見に、反対はないようだった。

 流石に七月だけあってか、気温が高い。

 日差しが気持ちいいと言っても、この炎天下の中、商店街までは歩きたくない。

 

「先導するから、皆は僕の後について来て」

 

 そんな訳で、僕たちは桜満家へ向けて出発することになった。

 十分程歩いた所で、軒先が見えてくる。

 一応鍵がかかっていることを確認し、鍵を開ける。

 

「とりあえず皆は手洗いとうがいを先にしといて。

 僕はリビングのエアコン、つけてくるから。集、案内任せたよ?」

「うん、任せて!」

 

 自己紹介もまだな状況だけど、公園を占拠しちゃう訳にもいかないし、今は冷房と飲み物の準備が先だ。

 僕の方は台所で手洗い・うがいを済ませることにして、直接リビングに向かう。

 

「うーん、麦茶残ってたかなぁ……?」

 

 流石にこれだけの人数が集まることを想定していなかったので、人数分の飲み物が出せたかどうか……。

 手早く手洗い・うがいを済ませ、エアコンのスイッチを入れた後に冷蔵庫をのぞく。

 

「あ、オレンジジュースがある。麦茶も大丈夫かな?」

 

 どうやら先日作った麦茶がまだ残っていたようで、これなら十二人分あるだろう。

 とりあえずお茶を人数分用意する。

 お菓子類は自己紹介の後に用意するとして……。

 

 そんな風に準備を進めていると、ガヤガヤと会話音が聞こえてくる。

 皆手洗いをすませてこちらに向かって来ているようだ。

 

「飲み物は用意したけど、とりあえずは自己紹介から始めようか」

 

 皆が座ったのを確認し、飲み物を配りながら言う。

 まずはこの会合を企画した僕・集・なのはちゃんの順に自己紹介をすることに。

 

「先ずは僕から。僕は桜満 朔夜。こっちの集の、双子の兄です。宜しく」

「朔夜の弟の桜満 集です」

「高町 なのはです!」

 

 次に、僕たち三人共通の友人である、奏ちゃんを紹介する。

 彼女だけ一人なので、最初に紹介して接点を持たせたいという思惑もあった。

 

「で、こちらは僕たち三人共通の友人、立華 奏さん」

「……立華 奏。宜しく」

「奏ちゃんは年上で先輩になるけど、皆年上だからって遠慮したりしないで、普通に接してね?」

「私も、その方が嬉しいわ」

 

 奏ちゃんの言葉に、他の皆も頷いてくれた。

 後は、僕たちがそれぞれの友人を紹介する形で自己紹介を続ける。

 

「じゃあ僕から。向かって右側の黒髪で元気の良い男の子は春日野 翔くん」

「春日野 翔だ。遠慮なく翔、って呼んでくれ! ヨロシクなっ」

「その右隣の黒髪のほんわかした女の子は樋口 綾ちゃん」

「樋口 綾です。私のことも綾と呼んで下さい。皆さん、宜しくお願いします」

「更にその右隣の茶髪でメガネをかけた男の子は、斎藤 慎吾くん」

「斎藤 慎吾だ。苗字でも名前でも、好きな方で呼んでくれ」

「最後に、その右隣の黒髪の大和撫子然とした女の子は来栖 葵ちゃん」

「来栖 葵です。私のことも、宜しければ葵とお呼び下さい」

「この四人が、僕のクラスメイトで特別親しい友達だよ」

 

 僕の方の紹介は終わったので、集の方を促す。

 集は隣に座る少年の肩に手を乗せ、紹介を始めた。

 僕はその、金髪に灰色の瞳を持つ少年の顔に、非常に見覚えがあった。

 

「じゃあ次は僕の番。こいつは茎道 涯。ほら、涯!」

「茎道 涯です。宜しくお願いします」

「涯のお父さんと僕のお父さんは、同じ仕事をしている友達同士なんだよ」

 

 茎道。その苗字から予想するに、どうやら修一郎さんの息子さんらしい。

 その割には今まで直接会ったことはなかったんだけど……。

 どうも単純に、顔を合わせる機会がなくてそのまま今日に至った、ということのようだ。

 

「正確には、養父なんです。二年程前に養子にして貰って……」

 

 顔に出てた表情を別のことと受け取ったのか、涯くんが答えてくれた。

 場が少ししんみりしてしまう。

 特に、奏ちゃんは人ごとじゃないので、より一層暗くなってしまう。

 

「湿っぽいの禁止! 次はなのはちゃんっ」

「ふ、ふぇ!?」

 

 暗くなった雰囲気を吹き飛ばすように集が声を出し、なのはちゃんにキラーパス。

 行き成り投げられたなのはちゃんはあたふたと慌ててしまう。

 そんななのはちゃんの様子に、場の雰囲気も和らいだ。

 僕も思わず笑みを浮かべてしまう。

 

「も、もうー! なのははそんなに笑う必要、ないと思います!」

「ごめんごめん」

 

 頬を膨らませ怒る様は、怖さよりも可愛さが目立つ。

 頭を撫でて宥めると途端に怒気が萎んでいく。

 

「ふにゃあ」

「次はなのはちゃんのお友達を紹介してくれる?」

「わかったの」

 

 なのはちゃんはまず、自分の隣に座る金髪の女の子に手を向ける。

 

「最初はなのはの隣に居るアリサちゃんから。この金髪の子はアリサ・バニングスちゃん」

「アリサ・バニングスよ。

 名前で呼ばれ慣れてるから、アリサで構わないわ。宜しくね」

「次に、その右隣に居る紫色の髪の子は月村すずかちゃん」

「月村すずかです。私のことも良ければすずか、って呼んで下さい。宜しくお願いします」

「最後に、すずかちゃんの隣に居る栗色の髪の子は結城 明日奈(ゆうき あすな)ちゃん」

 

 ……ん?

 

「結城 明日奈です。結城でも明日奈でも、好きなように呼んでね」

 

 んん? この子も何だか見覚えのあるような……。

 いや、誤魔化すのはやめておこう。うん、どう見てもSAOの結城 明日奈だね。

 これはちょっと、調べることが増えたかな?

 でも今は横に置いておこう。こんな時にそんなことを考えるのは、無粋だしね。

 

「さて、一通り自己紹介も終わったことだし、暫くは親睦を深める為に色々とお喋りしようか」

「賛成なの!」

「昨日、今日の為に翠屋でケーキを買っておいたから、今用意するね」

 

 皆お茶も飲み終えつつあるようだし、ジュースを持ってくるついでに取りに行く。

 親睦を深める、と言っても本当はこうやって喋っているより一緒に遊んだ方が良いと思うんだけど、流石にこの人数で一緒に遊ぶとなると色々と限られてくる。

 今日ここ二・三年の間の最高気温を更新してしまったので、そんな中外で走り回ると熱中症で倒れかねない。そういった理由から必然的に室内での遊びに限定されてしまう。

 そうなるとあんまり遊びに詳しくない僕では、トランプなどしか思い浮かばないのだ。

 グループを分けるようではこうして集まった意味がないし……。

 

「喧嘩になるといけないから全部同じ物を選んだんだけど、大丈夫かな?」

「私たちは問題ないです」

 

 持ってきたショートケーキを見て、綾ちゃんが答える。

 

「なのはたちも大丈夫」

 

 次に、なのはちゃんが自分の友人に確認を取りながら首を縦に振った。

 

「こっちも大丈夫」

 

 最後に、集と涯くんも頷く。

 集やなのはちゃん、転生組である僕のクラスメイトに関しては心配していなかった。

 この年頃だと好き嫌いはあまりないと思うけど、一応無難なものを選んでショートケーキにしたんだけど、特に問題がなさそうで良かった。

 

「おかわり用にジュースも持ってきたから、欲しい人は自分で注いでね」

 

 そう言いつつ机の上にケーキの入った箱を置く。

 流石にケーキと一度に持ってくるのは無理だったので、今度はジュースのペットボトルを取りに行く。

 

「あ、そうそう。こんなタイミングで悪いけど、翔たちに渡したい物があるんだ」

「渡したい物?」

「うん。取りに行くからちょっと待ってて」

 

 目的のペンダントは自室に置いてあるので、まずはそれを取りに行く。

 

「お待たせ」

 

 五分程かけて目的の物を用意し、部屋に戻ると皆そこそこ打ち解けて来てるようだった。

 リビングから楽しそうな声が漏れている。

 

「ちょっと歪で悪いんだけどね」

 

 そう言って手に持った小袋を見せる。

 全部同じ形をしているので、万が一にもデバイスをつけたペンダントを間違えないようにする為の措置だ。

 正直、そんなミスは犯さないと思うけど、念の為だ。

 

「とりあえずは翔たちと集、なのはちゃんと奏ちゃんの分だけなんだけど……」

 

 小袋を順に手渡していく。

 

「これ、今開けても良いの?」

 

 なのはちゃんが聞いてくる。

 僕はそれに頷く。

 なのはちゃんをはじめ、小袋を受け取った皆が袋を開ける。

 

「あ、これって……」

 

 そこから出てきたペンダントを見て、なのはちゃんが少し嬉しそうな声を出した。

 喜んで貰えたようで、僕としても嬉しい。

 

「朔夜くんのとお揃い、ですね」

 

 綾ちゃんがペンダントを掲げながら言う。

 贔屓にならないように、デバイスのコアがついてないペンダントにもコアを模した珠をはめ込んである。

 それぞれ僕がイメージする皆の色の珠だ。

 

 集には赤色。

 奏ちゃんには銀色。

 なのはちゃんには桜色。

 翔には緑色。

 慎吾には青色。

 葵ちゃんにはオレンジ色。

 そして綾ちゃんのデバイスコアは空色になっている。

 

「まあ、改めてこれからも宜しく、っていう意味で。

 今日初めて会う涯くんたちの分は、また今度改めて用意させて貰うよ」

「僕たちも?」

「うん。折角知り合ったんだから、これからも仲良くしていきたいと思ってる。

 珠の色に希望があったら今の内に言ってね?

 集たちのは勝手に僕のイメージで合いそうな色を選んだけど、大丈夫だった?」

 

 皆、頷いてくれた。

 

「それで涯くんたちは希望の色はあるかな?」

「それなら僕は金色で」

「私は真紅にして貰おうかしら」

「だったら私は紫が良いかな」

「じゃあ、私はなのはちゃんとお揃いの桜色で」

 

 それぞれの希望を聞き、それをメモに書く。

 

「了解。ちゃんと皆の希望通りの色にするよ」

「楽しみにしてるね」

 

 明日奈ちゃんの言葉に頷く。

 

「あ」

「どうかした? 綾ちゃん」

「いえ、私たちは何も用意してないと思って……」

「ああ、気にしなくて良いよ。これは僕の自己満足、っていう意味合いが強いし」

 

 何を気にしていたかと思えばそんなことか。

 

「そうですね。私たちも今度何か用意します」

「葵ちゃんも、それに皆も気にしなくて良いよ。

 僕が主催者のようなものだし折角だから、って用意しただけだから」

「……朔夜さんがそう仰るなら」

 

 綾ちゃんも葵ちゃんも特に義理堅い方だから、私も、と思ったんだろう。

 この空気を打破する為に、僕は空になったコップにジュースを注いでまわる。

 

「折角だから乾杯しよう!」

「何に?」

 

 アリサちゃんが僕の様子をニヤニヤとした表情で見ながら言ってくる。

 ……これは、僕の照れ隠しに気がついてるな。

 他の皆もわかっているのか、口元に笑みが浮かんでいる。

 

「――――新しい友人と、僕たちの友情に!」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 皆でわいわいと話し続けている内に、いつの間にか夕方になっていた。

 外は既に夕焼けで赤く染まっている。

 話をしているだけでこれだけの時間が過ぎたことに、少し驚く。

 

「……今日はここまでね」

 

 外の様子に気がついた奏ちゃんが、時計を見ながら言う。

 時刻は六時近くを示していた。小学生には遅い時間だ。

 何人かは残念そうな顔をしている。

 意外かもしれないけど僕もその一人だった。

 転生者以外の子たちも想像以上に聡明で、僕も話に熱中していたのだ。

 すずかちゃんとは読書関連で話が合ったし、涯くんとは集関連で話した。

 アリサちゃんや明日奈ちゃんとはなのはちゃんのクラスでの様子だとか、僕と一緒に過ごした休日の話しなんかで盛り上がった。

 奏ちゃんは綾ちゃんと気が合うようで、時折小さいながらも笑い声が聞こえてきた。 

 集は翔と気性が似ているのですぐ意気投合したみたいで、一緒にサッカーをする約束を交わしていた。

 なのはちゃんは葵ちゃんや慎吾に、僕のことを聞いていたようだ。

 まだ会って一日しか経っていないのに、何だかもっと長い時間一緒に居たかのような気がする。

 

「……少々名残惜しいですが、そろそろお暇させて頂きますね」

「それなら今電話で迎えを呼ぶから、送るわよ?」

 

 葵ちゃんの言葉に、アリサちゃんが声をかけた。

 

「家がすぐそこのなのはと、ここが自宅の朔夜と集を抜いて九人。

 これくらいの人数ならうちの車に十分乗れるわよ?

 家の場所さえ教えて貰えれば、近い所から順に送るけど……」

 

 その言葉に、皆顔を見合わせている。

 

「ふふ。じゃあお願いしようかな」

 

 この中で一番アリサちゃんと付き合いの長い明日奈ちゃんが、口元に手をやりながら答えた。

 不思議に思ってアリサちゃんを良く見ると、その頬が少し赤くなっている。

 

「珍しいんだよ? アリサちゃんがこんなに早く友達認定するの」

「ちょっと、明日奈!」

「なのはちゃんたちとお友達になった時のことを抜きにすれば、今までで一番早いんじゃないかな?」

「へぇ、そうなんだ」

 

 ちなみに。その友達になった時のことというのは、取っ組み合いから友情を育んだという、何とも漢らしいエピソードのことを指す。

 すずかちゃんのカチューシャを取り上げたアリサちゃんと、それを偶々見ていて平手打ちをかましたなのはちゃんの間で取っ組み合いになり、それを見かねたすずかちゃんが二人を止めた、というのがそのエピソードの全容だ。

 

「そういうことなら、私たちもお願いします」

 

 完全に真っ赤になってしまったアリサちゃんに、綾ちゃんが声をかけた。

 普段はあまり笑みを見せない奏ちゃんも、この時ばかりは微笑を浮かべていた。

 

「迎えはどれくらいで来そう?」

「そうね……。大体十五分、って所かしら」

 

 と、アリサちゃん。

 電話が繋がったのか、答え終わるとすぐに会話をはじめる。

 

「じゃあお願いね、鮫島」

 

 通話と言っても迎えを呼ぶだけ。二・三会話を交わして、それで終わりだ。

 アリサちゃんはこっちに顔を向けると、指で丸を作った。

 

「オッケーよ」

「それじゃあ迎えが到着するまでもう少しだけお話ししてようか」

「それも良いけど、次のことを話しましょ」

「次?」

 

 なのはちゃんが首をかしげる。

 

「そう、次よ! 今日は朔夜のうちだったけど、次はどこで集まるかって話し」

 

 思わず皆で顔を見合わせる。

 そんな様子を見て、アリサちゃんの頬が紅潮した。

 

「な、何よ?」

「……なら次は、言いだしっぺのアリサちゃんちにしようか!」

「ちょっ、明日奈!?」

「言いだしっぺのほうそーく!」

「……し、仕方ないわねぇ」

 

 そんな二人のやりとりを見て、思わず笑みがこぼれた。

 周りを見ると、他の皆も穏やかな表情をしている。

 

「じゃあ次は私の家でお茶会ね」

「う。なのははお作法とか、あんまり詳しくないの……」

「馬鹿ねぇ。そんなの適当で良いのよ、適当で。

 集まるのは友達だけなんだから、小難しく考える必要なんてないの」

 

 アリサちゃんの言葉に安心したのか、なのはちゃんはホッとしているようだった。

 皆の都合の良い日を照らし合わせ、その日の都合は良いかアリサちゃんの家族に聞いてみる、という所まで話が進むと、アリサちゃんの携帯に電話がかかって来た。

 時計を見ると、いつの間にか十五分経っていたようだ。

 

「迎え、来たわよ」

「なら玄関先まで送るよ。なのはちゃんはどうする?」

「なのはもそろそろ帰るの」

「それなら見送りの後、そのまま家まで送るよ」

 

 そんな訳で見送り後になのはちゃんを送る為に、帽子を被る。

 

「――――ッ!」

 

 廊下に出て玄関に向かおうとした瞬間、頭に痛みを感じた。

 思わず壁に手をつき、頭を抑える。

 

「……朔夜?」

 

 最後尾を歩いていた奏ちゃんが声をかけてくるが、それに答えるだけの余裕がない。

 頭痛は収まるどころか、酷くなる一方だ。

 ついには、膝をついてしまう。

 

「朔夜、大丈夫?」

 

 尋常じゃない僕の様子に、奏ちゃんが駆け寄ってくる。

 そんな奏ちゃんの様子で異変に気付いたのか、皆が僕の傍に寄って来た。

 

「朔夜くんどうしたの?」

「……頭、痛っ」

 

 言葉が続かない。

 頭の中で、知らない女の人の声が響いている。頭痛の原因は恐らくこれだろう。

 

「何だこれ、朔夜の体が……!」

「光ってる?」

 

 手のひらを見ると、確かに淡く光っている。

 一体何が起こっているのだろうか。

 いや、待てよ?

 この現象を、僕たち(・・・)は知っている。

 頭痛を堪え聞こえる声に集中してみれば、この声もどこか聞き覚えのある物だとわかる。

 

「まさかこの現象……」

 

 薄目を開けてみれば、葵ちゃんが口元を抑えている姿が見えた。

 翔と慎吾の二人も呆然としている。

 そうか、やっぱりこれは……。

 

『王……於い……』

「朔夜お兄ちゃん!?」

 

 なのはちゃん。顔が青ざめ、今にも倒れそうな雰囲気だ。

 僕はそんななのはちゃんを安心させる為に、無理矢理笑顔を浮かべた。

 

「だい、じょうぶ、だから……。泣か、ないで?」

『疾……為し…ま…!』

 

 その瞬間、僕の意識は急速に闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――さくや、おにいちゃん?」

 

 





これだけ大人数を動かすことはもうない、と思いたい……。
何人かはセリフが極端に少ないですし、要反省(;´Д`)
次回更新はいつもと同じ。つまりは未定です。
それではまた次回、お会いしましょう。

追記。
忘れてましたが、なのはの一人称が【なのは】なのは故意です。
もう暫くしたら原作同様【私】になる予定です。
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