魔法少女リリカルなのはKreuzung   作:神原和人

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続・テンプレ回。


/02 お兄ちゃん、って呼んで良いですか?

 そんなこんなで翌日の朝。

 僕は約束通りなのはちゃんを迎えに高町家を訪れていた。

 玄関先で桃子さんと挨拶を交わし、なのはちゃんを待つ。

 なのはちゃんは余程楽しみにしていたのか、随分とソワソワしているようだ。

 

「それじゃあ、なのはちゃんはお預かりします。

 夜になったら戻って来ます。送り迎えは任せて下さい」

「お母さん、行ってきます!」

 

 高町一家に見送られ、僕となのはちゃんは桜満家へ向かう。

 桜満家は高町家から歩いて数分の距離にある。

 僕はなのはちゃんの手をしっかり握る。

 誰かと一緒にいれることが嬉しいのか、なのはちゃんは終始笑顔だ。

 桜満家に向かう途中、僕はなのはちゃんと少し会話をすることにした。

 

「なのはちゃん、今日は何して遊ぼっか?」

「……んと、なのはは朔夜くんのお話が聞きたいです!」

「僕の話?」

「はい! ……駄目ですか?」

 

 少し不安そうな表情を見せるなのはちゃんの頭を撫でる。

 

「構わないけど、多分面白くないよ?」

 

 僕の返事を聞いて、なのはちゃんはパッと笑顔になった。

 

「それじゃあ僕にはなのはちゃんのお話、聞かせてね?」

「はい!」

 

 そんな会話を交わしている内に、家が見えて来た。

 玄関先には姉さんの姿が見える。

 僕たちのことを待っていたのだろうか?

 

「姉さん、ただいま」

「お帰りなさい朔夜。……それで、その子がなのはちゃん?」

「うん。なのはちゃん、この人は僕のお姉ちゃんだよ」

 

 知らない人が来てビックリしたのか、僕の後ろに隠れてしまったなのはちゃんに言う。

 姉さんの表情が少し怖いから、というのも理由の一つだろう。

 

「姉さん、眉間にしわが寄ってる。そんな表情だとなのはちゃんも怖がるよ」

「朔夜? お姉ちゃん、何時も言ってるでしょ? 私のことはお姉ちゃんか名前で呼んで、って」

「……はぁ」

 

 眉間のしわはそれが原因か。なのはちゃんも怖がってるし、原因が僕なら従うしかない。

 何時ものことと言えばいつものことなんだけど、ね。

 集にも同じことを言っていて、僕と違って本当に年齢そのままの集は、言われるままに姉さんのことを真名と呼んでいる。

 僕個人としては精神年齢的な問題で【お姉ちゃん】呼びは遠慮したいのだ。

 同じ理由で姉に対して名前呼びは以ての外だし、妥協点での【姉さん】呼びだったけど、姉さん的には気に入らないらしい。

 こうやってことあるごとに訂正を要求してくるのだ。

 

「……真名お姉ちゃん」

「それで良いのよ、朔夜」

 

 こうやって結局折れるのなら、最初からそう呼べれば良いんだけどねぇ……。

 気恥かしさが勝って中々うまくいかない。

 

「父さんと集にも会わせたいから、自己紹介は中でまとめてお願い」

「お邪魔します」

 

 姉さんの話だと皆リビングに居るみたいだから、まずはそっちに通して顔合わせから。

 なのはちゃんを伴って洗面所で手洗いとうがいを済ませ、リビングに向かう。

 

「ただいま」

「お帰り、朔夜」

 

 集と父さんはテレビを見ているようだ。

 集の方はテレビに夢中で僕たちに気付いていないらしい。

 

「集。お客さんが来てるから挨拶だけしようか」

 

 父さんに声をかけられて、ようやくこちらに気が付いたようだ。

 テレビに向けていた視線をこちらに向ける。

 

「はじめまして、高町 なのはです。今日からお世話になります」

 

 相変わらず年齢に似合わない程しっかりした子だなぁ。

 頭を下げて挨拶をするなのはちゃんを見て、つくづくそう思う。

 

「朔夜の父の玄周です。おじさんと呼んで貰って構わないよ」

「桜満 集です! 宜しくなのはちゃん」

「朔夜と集の姉の真名よ」

「これでうちの家族は全員。改めて、宜しくね? なのはちゃん」

 

 挨拶を交わしている間に時間が来たようで、父さんが出勤の準備をはじめる。

 今日は仕事がないって聞いてたんだけど、こういう風に突発的に仕事が入ってくることは珍しくない。

 いつものように急な仕事が入ったのだろう。

 

「今日はちょっと仕事が入っちゃったから。真名、朔夜。後は任せるよ」

「うん。帰りはいつぐらいになる?」

「あんまり長くならない予定だから、夕方には帰って来れると思う」

「わかった。いってらっしゃい」

「いってきます。それじゃあ集のこと、よろしく」

 

 出勤と言いつつ、父さんが向かうのは外じゃない。

 その行き先は地下室だ。そこから転送装置を使用してミッドチルダに向かうのだ。

 ミッドチルダは地球とは別の次元世界にある、という話を聞いた時にはびっくりしたものだ。

 

「どこでお話しよっか」

「なのはは朔夜くんのお部屋が良いです」

「うん。それじゃあ僕の部屋に行こうか。真名お姉ちゃん、暫く集のこと任せるね?」

「お昼になったら降りて来るのよ?」

「わかった。……なのはちゃん、行こっか」

 

 そんな訳で僕の自室である。

 うちは父さんの方針で、三歳と言えども一人部屋を与えられている。

 そういう訳だから僕と集も一人部屋を使っているのだけど……。

 お世辞にも僕の部屋は、三歳児のものとは思えない状態になっている。

 まぁ、普段からこういう言動だから、うちの家族はあまり気にしていないみたい。

 

「……わぁ」

「本だらけでしょ? 飲み物持ってくるから、なのはちゃんは座って待ってて」

「はい!」

 

 小説・漫画・参考書。兎に角本なら何でも集めた。

 どんな本でも情報量が多いから、この世界のことを把握する為には丁度良かったのだ。

 一階に降りてリビングに戻り、お茶の用意をする。

 そう言えば何を飲むか聞いて来なかったけど、麦茶で大丈夫かな?

 一応ジュースもあるから、そっちにしとこうか。

 

「はい。オレンジジュースだけど、大丈夫だったかな」

 

 頷くなのはちゃんを見て、ホッとした。

 

「それじゃあ何からお話しよっか」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「……もうこんな時間だ。そろそろお昼にしようか」

 

 僕が普段どんなことをしているか、とかなのはちゃんが聞きたがっていたことを粗方話し終えると、いつの間にかお昼時になっていた。

 

「退屈じゃなかった?」

「そんなことないです。朔夜くんのこと一杯聞けて、楽しかったです」

「……なのはちゃん」

「ふぇ?」

 

 うーん、やっぱり気になる。

 

「今から敬語禁止! 友達なんだからさ、もっと砕けようよ」

「……友達?」

「うん、友達。……嫌だった?」

 

 そう聞くとなのはちゃんはブンブン、と首を横に振って笑顔を見せた。

 そんな様子を見てついついその頭を撫でてしまう。

 

「嬉しいの!」

「良かった。そろそろお昼の時間だし、下に降りようか」

 

 なのはちゃんを伴ってリビングに入ると、丁度姉さんが昼食の用意をしている所だった。

 

「今日はお姉ちゃんが作ったから、後で感想聞かせてね?」

 

 部屋に入って来た僕たちに気づき、姉さんが声をかけてきた。

 その作った発言に驚いたのか、なのはちゃんのツインテールがぴょこんと上に跳ねた。

 ……一体どういった原理で動いてるんだろうか。凄く気になる。

 

「作ったって、真名さんが?」

「そう、真名さんが」

 

 そう言いつつ心なしか胸を張っている姉さんを見る。

 年齢以上にしっかりしていて大人びている姉さんも、妙なところが子供っぽい。

 この場合は、僕や集に褒めて貰いたいのだろう。

 

 視線を食卓に向ける。

 そこには見るからにふわふわな卵焼きと焼き鮭にサラダ、そして味噌汁が並んでいる。

 日本だとどの家庭でも見ることが出来る和食の風景だ。

 八歳の子供が作ったと考えられないぐらいしっかり作られている。

 

「流石真名お姉ちゃん。えらいえらい」

 

 そう言って頭を撫でる。

 この口調も別に馬鹿にしたものではなく、褒める時はこんな感じの方が姉さん自身が喜ぶのだ。そういった所も合わせて【妙なところが子供っぽい】という訳だ。

 

 姉さんがこうして料理をするのには、無論いくつかの理由がある。

 母が亡くなっていて、かつ家には普段料理を作らない・作ったことのない父しかいない、という点。

 普段は、一年程前に父さんの助手になった茎道 春夏(けいどう はるか)という女性が作ってくれる。

 その春夏さんが今日の様に来れない日がある、という点。

 主な理由を言えばこの二つになる。

 後は外食や出前だと、似たようなものばかり食べて栄養が偏る、というのも理由の一つだろうか。

 その辺は自分で言うのもなんだけど、僕たちはしっかりしているから大丈夫だと思う。

 ただ出歩ける範囲には似たようなお店しかない、っていうこともあって心配なのだろう。

 高町家が経営する翠屋が選択肢にないのは、翠屋がある商店街は三歳や八歳の子供だけで行くような距離にはないからだ。

 

 そういった諸々の事情から、姉さんは春夏さんに料理を教わっているのだ。

 勿論最初の頃から一人での料理を許されていた訳ではない。最近になってようやく許可がおりたのだ。

 さっきの得意げな様子ははじめて一人で料理をした、という所からも来ているのだろう。

 

「皆お腹すいてるだろうし、早く食べよ?」

 

 頭を撫でるのをやめ、ニコニコしている姉さんに言う。

 もうちょっと続けてあげたいんだけど、ちょっと集のお腹が限界そうだ。

 そこでタイミング良く、隣のなのはちゃんのお腹がくぅ~と可愛らしく鳴く。

 癖のように僕は彼女の頭を撫でた。いかんいかん、気をつけなければ。

 

 それはそうと、部屋で喋ってる最中は夢中になって気付かなかった空腹感が、今になって襲ってきたのだろう。

 頬を染め顔を下に向けてしまったなのはちゃんを見て、姉さんが正気に戻った。

 

「それじゃあ、手を洗って食事にしましょ?」

 

 手洗いをすぐにすませ、席に着く。

 席順は僕の隣になのはちゃん。僕の正面が姉さん。そして姉さんの隣が集だ。

 僕となのはちゃんが席に着くのを見て、姉さんが合掌する。

 

「いただきます」

 

 僕たちもそれに続いて合掌しつつ、いただきますと口にする。

 姉さんは感想が気になるのかチラチラとこちらの方を見る。

 その横では集が一心不乱に鮭と格闘していた。

 骨が心配になったけど、見た所食事前にほぐしてもらったのか、骨もない状態のようだったので大丈夫だろう。

 

 それを横目に、僕は卵焼きに箸を伸ばし一口かじると、口の中にダシの良い味が広がった。外観からは気付かなかったけど、だし巻き卵だったようだ。

 父さんが甘党なのもあって、うちは基本的には砂糖入りの卵焼きなので、これはどちらかというと僕好みの味付けだ。

 うん。美味しい。

 

 隣に視線を向けると、なのはちゃんもだし巻きに口をつけた所だった。

 ツインテールが天井に向く。

 ……またしてもツインテールで感情表現をしたなのはちゃんを見て、ホントにどういった原理なのか気になってくる。

 

「凄く美味しいです!」

 

 なのはちゃんは興奮しながらそう言った。

 確かに、この歳で一人で作ったとは思えない程美味しかった。

 

「うん。真名お姉ちゃんは将来良いお嫁さんになれるね」

 

 集の世話をしていた姉さんが、ガバっとこちらに顔を向けた。

 行き成りの行動にびっくりする。

 

「ホントにそう思う?」

「うん、ホントホント。集もそう思うよね?」

「お嫁さん? は良くわからないけど、美味しいよ!」

 

 集の目もキラキラと尊敬の眼差しを送っている。

 

「ありがと」

 

 頬が若干赤く染まっている。照れているのだろう。

 なのはちゃんも楽しそうだ。

 僕たちはそうして、笑顔を見せ合いながら食事を続けた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 食事を終えて部屋に戻った後、今度はなのはちゃんの話を聞いた。

 今までのこととか、士郎さんが事故にあった時の話だとか。

 事故に関しては話しにくいかと思って何も聞いていなかったのだけど、なのはちゃんの方から話してくれた。それだけ僕に心を開いてくれたということだろう。

 当時は凄く寂しかったけど、今は僕が居てくれて寂しくない、となのはちゃんは笑顔を見せた。

 

 そうやって話を続けていると、そろそろ日が暮れる時間帯になってきた。

 いくら近所と言っても、暗くなるとそれだけで危ない。

 僕は会話を切り上げ、なのはちゃんを送ることにした。

 

「はのはちゃん。そろそろ暗くなるし、お家に帰ろうか? 送ってくよ」

「…………」

 

 僕の帰りを促す言葉に、なのはちゃんが目に見えて暗くなる。

 ツインテールも心なしか萎びて見える。

 僕はそんななのはちゃんの頭を撫でる。こうして何回も頭を撫でると、何だかお兄ちゃんになった気分になる。

 

「明日は真名お姉ちゃんたちと一緒に遊ぼ? また朝迎えに行くよ」

「……ホント?」

「うん、約束する」

 

 空いていた方の手の小指を差し出す。

 その理由に気付いたなのはちゃんも、同じ様に小指を差し出し、僕の小指に絡める。

 

「指切り拳万、嘘付いたら針千本のーます。……指切った!」

 

 小指を離し、僕は笑顔を見せた。

 

「約束」

「……うん!」

 

 やっぱりこの年頃の子供は笑ってるべきだよね。同い年の僕が言うことじゃないけど。

 ……? 何だかなのはちゃんの頬が赤い。

 そこでようやく、僕はまだなのはちゃんの頭を撫でていることに気がついた。完全に無意識だったらしい。

 

「ごめん、嫌だったかな?」

 

 慌てて手を離した僕を見て、なのはちゃんは首を横に振った。

 何だか少し嬉しそうな表情だ。

 

「……何だか、朔夜くんてお兄ちゃんみたい」

「え?」

「あの!」

 

 急に力強い眼差しを向けてくるなのはちゃんに、少し後ずさる。

 

「朔夜くんのこと」

「うん」

「お兄ちゃん、って呼んで良いですか!?」

「…………うん?」

 

 何ですと?

 

「ごめん、もう一回言って? 聞き間違いしたかもしれないから」

「朔夜くんのことお兄ちゃん、って呼んで良いですか?」

 

 聞き間違いじゃなかった。

 いや。いやいやいや。僕たち同い年だよ?

 そりゃあ確かに、口調とか行動とかが年相応じゃない自覚はあるよ?

 いや、でも流石に同い年の女の子からお兄ちゃん呼ばわりはちょっと……。

 

「だめ?」

 

 若干涙目だよ。そんな表情されたら断れないじゃんか。

 しかし友達! と言ったその日にお兄ちゃんにクラスチェンジか。どうしてこうなった。

 許可は出しても、これだけは言わなくちゃ。

 

「……恭也さんの前じゃ、駄目だよ?」

 

 何で? と首をかしげるなのはちゃん。

 昨日の沈んだ恭也さんの様子を見ると、他人のことをお兄ちゃんと呼んだだけで死んじゃいそうだからだよ。……とは、流石に言えない僕であった。




春夏さんは人物設定では桜満になってますが、まだ再婚前なので茎道さんです。
多分後二・三話したら桜満さんになってるかな?

そんな訳で、久しぶりの更新です。
今回は特に新しい登場人物は居ないので【New!】付きの人物紹介の更新はありません。
ちょっと強引だったかなぁ? とは思いましたが、なのはの二次を書く上でちょっと憧れていたなのはのお兄ちゃん呼びをぶち込みました。
後、個人的には書いていてちょっと真名のキャラが定まってない気がしましたが、どうでした?
重要キャラだったのに原作での露出が少なく、正直あまり把握しきれていないんですよね。
課題点としてはそこと集のセリフの少なさですかね。
集はもうちょっと年を重ねて原作幼少期辺りの年齢になると喋らせやすくなるんですけどね(;´Д`)

長々と書きましたが今回はこれにて。
尚、次回更新は毎度のごとく未定です。いつかは連日更新とかしてみたいですね……。


追記
アニメでは無かったと思いますが、この話で登場したなのはのツインテールを使った感情表現は、わかりやすく表現する為の措置なので、出来ればこの件に関してのツッコミは無しでお願いします。
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