次話は半分近くは完成してますので今回のように間が開くことはないと思います。
「集、朔夜。誕生日おめでとう」
「集くん、朔夜お兄ちゃん。お誕生日おめでとう!」
そんな訳で、本日は僕と集の四歳の誕生日である。
時間が流れるのは早いもので、なのはちゃんと友達になってもう一年近く経つ。
二ヶ月程過ぎた辺りからはなのはちゃんの表情も明るくなり、今では少しヤンチャな面を見せるようにもなった。
最近は翠屋も軌道に乗ったのか、恭弥さんもちょくちょく顔を見せるようになったし、中々順調だと言える。
それと重傷だった士郎さんはこの一年で回復の兆しを見せている。
まだ起き上がることしか出来ないけど、リハビリ次第では普通に歩けるようになるだろうとの話しだ。
これには医者もびっくりで、本来なら歩くことは愚か起き上がることすら難しいと言われてたから、それも当然の反応だろう。
それ以外にこの一年で大きく変わったのは僕たちが幼稚園に通い始めた、ということだ。
おかげで鍛錬に回す時間が少し減ってしまった。
とはいえ、通うのは幼稚園なので早い時はお昼から時間が空く。
つまり極端に時間が減る、ということではないので実質的には何も問題ないんだよね。
「お父さんは少し遅れる、って話しだから先に食べちゃいましょ?」
そう言って姉さんが指すのは翠屋特性のバースデーケーキである。
この日の為に桃子さんが腕によりをかけて作ってくれた作品だ。
なのはちゃんも久しぶりに桃子さんのケーキが食べれるとあって、少し興奮しているようだった。
「その前にロウソクに火をつけようか。集、消したいでしょ?」
「うん!」
ホントは子供だけで火を使うのは駄目なんだけど、料理の許可を得ている姉さんは必然的に火の使用も許されている。
姉さんに頼んで、ロウソクにマッチで火をつけて貰う。
火が付け終わると姉さんとなのはちゃんがバースデーソングを歌いはじめる。
何だか気恥ずかしいな。
「集、もう消して良いよ」
バースデーソングが終わると集を促す。
促された集は息を強く吹きかけ、四本立ったロウソクの火を消した。
火を消した集はどことなく満足そうな顔をしている。
「それじゃあ切るわね」
姉さんが手際よくケーキを切り分けるのを見て、手馴れたものだなぁと思う。
これでもまだ料理を習い始めて半年も経っていない。
年齢のことを加味すると元々そっち方面の才能があったのだろう。
今はここに居ない父さんと春夏さんの分を合わせて六つ。ほぼ均等の大きさになっている。
「集が先に選べば良いよ」
ただ、大きさは同じでも場所によってはデコレーションの違う部分があるので、集に先に選ばせる。
殆ど迷いなく選ぶ集を見て苦笑が浮かんでしまう。続いて僕も選ぶ。
いつもならなのはちゃんや姉さんに先に選んで貰うのだけど、今日は一応僕の誕生日でもあるのだ。
こういった日にいつも通りにしてしまうと、二人共絶対怒る。どうして先に選ばないんだ! って。
……去年姉さんにやって怒られたのは、ここだけの秘密だ。
「なのはちゃん、先にどうぞ」
「……良いんですか?」
「子供は遠慮しないものよ」
姉さんも子供でしょ、と言いたい。
ホントここら辺に住む子供って精神が早熟な子が多いよね。
姉さんしかり、なのはちゃんしかり。恭弥さんとかもそうだ。
幼稚園でも割とそういった子がチラホラ居るし。
何かそういった子供が育ちやすい環境が整っているのかな? 気になる所だ。
「ありがとうございます、真名さん」
二人共選び終わったので、早速ケーキを頂くことにする。
うん。流石桃子さんと言うべきか。
子供に合わせて、通常に比べて甘めの味付けになっている。
大人といっても父さんは甘党なので、そこを考慮した上でもあるだろう。
予約に対しては、味付けを好みに合わせてくれるサービス。翠屋の人気が出て来た理由の一つでもある。
久しぶりに食べたけど、美味しい。
うちでは最近洋菓子を買う時は大抵翠屋だ。謙遜抜きで、ここらで一番美味しい。
甘いものに関して、父さんはかなり厳しいからね。
その父さんが翠屋の洋菓子を絶賛することから、如何に翠屋の商品の味が良いかがうかがえる。
「集くんにはこれで、朔夜お兄ちゃんにはこっち」
「私からはこれよ」
ケーキも食べ終わり、なのはちゃんと姉さんからそれぞれプレゼントを受け取る。
なのはちゃんからのプレゼントは集とお揃いの腕時計。
少し大きめのサイズなので、大切に使えば中学までなら持ちそうな程だった。
子供のお小遣いで買ったにしてはしっかりとした作りの物だ。
……四歳の子供に同い年の子が上げるようなプレゼントじゃない、というツッコミはもう出ない。慣れって怖いよね。
「これ、結構高そうな時計だけど良かったの?」
「うん」
「大事に使わせて貰うね。ほら、集もお礼言って」
「なのはちゃんありがとう!」
「……えへへ」
照れるなのはちゃんを横目に、今度は姉さんからのプレゼントを取り出してみる。
こちらは僕と集で別々の物だ。集の方は最近集がハマっているテレビアニメのグッズのようだった。
目を輝かせてはしゃぐ集を見ると微笑ましく感じる。
一方、僕の方はどこか見覚えのあるデザインのロザリオだった。
それも当然だろう。何せギルティクラウン本編で恙神 涯がつけていた物と、全く同じデザインだったのだから。
ただ、ちょっと違和感を感じる。中央に何かをはめ込む様なくぼみがあり、形も若干歪だった。
「朔夜のそれ、お姉ちゃんの手作りなのよ? 大事にしてね」
「ありがとう、真名お姉ちゃん」
通りで少し歪な筈だ。
折角なので首にかけてみる。
「……どうかな?」
「とっても似合ってるわ。ね? なのはちゃん」
「はい!」
そこまで絶賛されると、少し照れくさいな。
ついでだからなのはちゃんから貰った腕時計もつけてみる。
うん、しっくりくる。僕の好みに合わせてくれたのかあまりゴテゴテしていない、割とシンプルな作りの腕時計だ。
「腕時計も似合ってるわよ、朔夜」
「ありがとう」
こういうイベントは前世でもあまり経験がなかったから、本当に照れくさい。
なのはちゃんも僕が受け取ったプレゼントを付けてくれる様子を喜んでくれた。
集は相変わらずおもちゃにはしゃいでいる。
「ただいま」
そうやってプレゼントを受け取っている間に、父さんが帰って来たようだった。
父さんの後ろには春夏さんの姿も見えた。
「おかえり父さん、春夏さん」
もう今は春夏さんも殆どうちで生活をしているような状態で、父さんの話では今年中には式をあげる予定、とのことだ。
そんな訳で実質春夏さんは義母も同然だった。
白衣を着たままなのを見ると、着替える間も惜しんで家に向かってくれたみたいだ。
些細だけど自分たちの誕生日を祝って貰えていることが実感できて、嬉しく感じた。
「お父さんお帰りなさい!」
「集。走ると危ないよ」
走り寄った集が父さんに抱きつき、その様子に苦笑した父さんが集を抱き上げる。
「仕事の方は大丈夫なんですか?」
そんな集の様子を尻目に、僕は春夏さんにそう尋ねた。
最近は少し忙しくなって来ているようだったし、今日の出勤も殆ど予定外の物だった。
遅くなる、と聞いていたのにまだ誕生日会が始まって一時間程度だ。
この場合の遅くなる、というのは父さんたちの仕事の関係上二・三時間は覚悟していただけに、ちょっと意外だった。
「大丈夫。……ここだけの話」
「……?」
「今日までのは別に仕事が増えたからじゃないの。
どちらかと言うと玄周さん個人の用事で、私たちはそのお手伝いをしていたのよ」
「父さん個人の用事?」
「ええ。……でも、ここから先は玄周さんに直接聞いてね?」
父さんに直接聞け、ということは僕たちにも関係のあることだろうか?
これ以上は答えてくれそうに無かったので、僕も父さんの方に行くことにした。
僕が父さんに声をかけるより前に、父さんが僕に気付く。
抱き上げていた集をおろし、白衣の内側を漁る仕草を見せた。
「朔夜、集。誕生日おめでとう。……これが僕からのプレゼントだよ」
「ありがとうお父さん!」
「ありがとう、父さん」
そう言いつつ父さんは僕たちの目線に合わせるために膝をつき、白衣の内側から手を出す。
その手の中にはビー玉サイズの妙な珠と、父さんがよく付けていたブレスレットがあった。
「集にはこっちのブレスレットだ。
僕がいつもつけていたやつに、ちょっとした細工をしてある」
そう言って集の腕にブレスレットを通す。
すると不思議なことに、集の手にフィットするサイズに変化した。
「今は必要ないかもしれないけど、何時か集の役に立つ時がくるから必ず手につけておくように」
そんな父さんの言葉に、集は頷いた。
次に僕の方に珠を渡してくる。
「こっちが朔夜の分。真名から受け取ったロザリオのくぼみにはめてごらん」
言われるままに珠を受け取り、くぼみにはめ込む。
ピッタリとフィットすることから、はじめからこの為にあったくぼみだと解った。
「これってもしかして」
「うん、デバイスだ」
ということは集に渡したのもデバイスだろう。
集にも魔法の才能があることは確認済みだ。
つまり、父さんたちが最近忙しかったのは、このデバイスを作っていたからだろう。
「じゃあ最近仕事が忙しかったのって」
「恥ずかしながら、このデバイスを作る為だよ。
僕としても、父親として出来るだけ君たちには最高のプレゼントを渡したいからね」
「でもデバイスって高いんじゃ……」
「作成費用は仲間も出してくれたし、僕の今までの稼ぎも使った。心配の必要はないさ」
「ありがとう。大切にするよ」
ロザリオをキツく握り締める。
「名称設定がまだだから、後でマスター登録と一緒に正式登録すると良い」
「うん、そうする」
「そうそう。インテリジェントデバイスだから、登録と一緒にモードも幾つか設定しておいてね?」
横から出された春夏さんのセリフに、僕は硬直した。
確かインテリジェントデバイスは一般に普及しているストレージデバイスより制作費が高かった筈。
量産できるストレージと違って完全なワンオフ機になることも合わさり、魔導師としてかなりの実力を持たないと扱いきれないと聞く。
「ついでに言うとカートリッジシステムも積んでいる」
追い討ちをかける父さんの一言。
カートリッジシステム。
今は衰退したベルカ式が使用するアームドデバイスに採用されているシステムだ。
カートリッジは弾薬の形をしており、使用することで瞬間的に莫大な魔力を発生させ、発生した魔力の制御の難しさからベルカ式衰退の理由の一つとしてあげられる存在だ。
当然、今の僕が持ってて良い代物ではない。
「うちはデバイスは全般的に扱うからね。当然、ベルカ式も扱っている」
「そうやって皆で色々悪乗りした結果……」
「二人のデバイスはベルカ・ミッドチルダのハイブリット式になった、という訳だ」
二人して照れたように後頭部に手をやる。
どうしてそうなる……!
いや、僕たちのことを思って力を入れてくれたんだろうけど。
その気持ちは純粋に嬉しいし、ありがたいと思う。
けれどその結果とてもじゃないけど扱い切れそうにない代物になっている。
「カートリッジシステムに関しては僕の方で使用にプロテクトをかけてあるけど、デバイス側の判断で解除できるようになっているから、念の為体がしっかりと出来るまでは使おうと思わないように」
「わかった」
正直、色んなことが一度に起こりすぎて思考回路がショート寸前だった。
とはいえ、どれもこれも僕と集のことを純粋に考えた結果なので、怒ることも出来ない。
結局この日はそれ以降まともな思考を維持することが出来ず、なのはちゃんたちに盛大に心配される羽目になってしまった。
予告なしの更新になりましたが、出来れば今月中に一話は上げたかったのでご了承下さい。
ギリギリまで同時更新できないか粘ったんですけどね(;^ω^)
新キャラ登場はお預けになりました。
次の更新時は予定通り新キャラ投入になります。