……何とか今年中に間に合って良かった(;´Д`)
現在の時刻は午後八時。
僕は今自室で、先日貰ったデバイスを起動させてみようとしている所だ。
というのも貰ってすぐの時はあまりの出来事に思考回路がまともに働かず、とてもじゃないけどデバイスの起動なんて出来る状態じゃなかったからだ。
日中は幼稚園だし、その後は集やなのはちゃんと遊んでいたので、結局こんな時間になってしまったのだ。
「――――起動」
《起動。本機の名称設定をお願いします》
「機体名、ギルティクラウン。愛称をクラウンと設定」
《設定完了。マスター登録をお願いします》
「マスター名、桜満 朔夜。以後、同マスターの指示がない限りマスター変更機能をロック」
《マスター登録完了。同時に変更機能のロックを確認。――――はじめまして、マスター》
「これから宜しく頼むね、クラウン」
《こちらこそ》
取り敢えず名称設定とマスター登録は完了。
マスター登録の変更機能をロックしたのは念の為なので、特に意味はない。
名称については色々と悩んだけど、結局記憶に残っているものから取ってしまった。
本当はもっとしっかりとした名前を考えてあげられると良かったんだけどね。
生憎と僕のネーミングセンスは壊滅的なのだ。
続いてモードの設定に移る。
取り敢えず今考えているのは近距離用の剣型と、中・遠距離用の拳銃型の2タイプだ。
体が出来ていない今の内に刀剣類を扱うのには不安があるけど、遠距離しか対応出来ないのではベルカ・ミッドチルダハイブリット式の名が泣く。
銃に関しては魔法使い然とした杖と迷ったけど、結局ロマンを取ることに。
そして剣のデザインに関しては、折角なので名称のギルティクラウンに肖ることにした。
「そう言えば起動用のパスワードを聞いてなかったけど、初回起動時は必須だったよね?」
《はい。しかしマスター専用に調節されている私には不要です》
「あれ、でもマスター登録はさっきしたばかりだよ?」
《あれは単に形式の問題です。
マイスター玄周より必要な情報は受け取っていましたし、そもそも私はマスター専用機として開発されました》
「そういうものか」
《そういうものです》
しかし随分と人間らしいAIだな。もうちょっと機械的な物を想像していただけに意外だ。
ついでに言うと音声は女性の、それも姉さんの物だった。
これは多分父さんじゃなくて姉さんの仕業だな。
「それじゃあバリアジャケットとモードの設定に移ろうか」
《仰せのままに》
バリアジャケットの設定は、どのデバイスでも初回起動時にすることになっている。
そんな訳で基本となるモードとバリアジャケットは一度セットアップする必要がある。
術者の脳裏に自分のバリアジャケット姿を想像することで、それをデバイス側で読み取って想像通りに生成するのだ。
ベルカ式とミッドチルダ式が混じりあったような魔法陣が広がるのを見ながら一旦目を閉じ、頭の中に自分のバリアジャケット姿――黒いコートを着て赤いマフラーをつけている姿を思い浮かべる。
そう。原作において前半では涯が使用し、そして後半で集に受け継がれたあのコートだ。
そのコートの背中には父さんの仕事場のエンブレムを刻む。
マフラーの色は合わせたというより、姉さんの好きな色から貰った。
あまり魔導師らしくない格好かもしれないけど、僕には一番しっくりくるものだった。
ここまで肖ったのだから、最後まで肖ろうという魂胆もある。
《バリアジャケット生成》
魔力光である銀色の光が溢れ、視界一杯に広がる。
光が収まった頃には、僕の姿は想像通りの物に変わっていた。
「続いて基本モードの設定。以後、このモードをリッターフォルムと呼称」
《名称設定完了。形状の設定をお願いします》
ロザリオを握り締め、想像する。
「――――ギルティクラウン、セットアップ」
《セットアップ》
足元に広がるハイブリット式の魔法陣。
同時にロザリオにはめ込まれたコアの形状が変形する。
魔法陣から溢れた光が収まると、僕の右手には【剣のヴォイド】が収まっていた。
無論、形状が同じなだけでヴォイドではない。
唯一違う点を挙げるとすれば、カードリッジシステムが装備されていることにより、若干ゴツイ印象を与えるようになった所か。
「続いてセカンドモード設定。以後、このモードをガンナーフォルムと呼称」
《名称設定完了。形状の設定をお願いします》
こちらはハンドガンの形を選択。
状況に応じて補助用のバレルを展開することで、遠距離にも対応出来るようにする。
スナイパーライフルの形にして長距離に特化させることも考えたけど、ひとまずはこの形で様子を見ることにする。
慣れてきたらバレルを廃止して、新しく長距離特化のモードを作れば良いだろう。
「今はこれ以上は必要ないかな。
ところでクラウンの中には今どれだけの魔法が登録してあるの?」
《防御魔法三種に捕獲系魔法が一種、移動魔法二種に補助魔法が一種、そして結界魔法が二種の計九種になります》
「順に説明をお願い」
《了解しました。まずは防御魔法三種から説明します。
一つはバリアジャケット着用に必要な物です。
次がシールドタイプのラウンドシールド。最後がバリアタイプのサークルプロテクションになります》
聞いてみるとシールドとバリアの違いは、範囲と強度になるようだ。
問題点があるとすれば、デバイスによる自動防御に設定出来ない物しか登録されていない点か。
これは僕の戦闘スタイルに合わせた防御魔法を選ぶ必要がある為、あえて登録しなかったらしい。
《捕獲魔法はバインドタイプの基本形である、リングバインドになります》
これも色々な種類があるとのことで、スタイルに合わせて最適化する必要があるだろう。
特に魔力変換資質を持っている人間は、その資質に合わせたバインドを習得する必要があるという。
魔力変換資質というのは、特に意識せず魔力を炎や電気に変換する為の資質のことを指す。
僕も姉さんもこれを持っていて、姉さんは補助用のバインドをきちんと習得していると聞く。
ちなみに僕は風と電気、そして水といった三つの性質を併せ持つ嵐の魔力変換資質を持っている為、この場合優先して学習するべきなのは風系の魔法を補助するガストバインド、電気系の魔法を補助するライトニングバインド、そして水系の魔法を補助するストリームバインドになる。
勿論属性補助以外の用途の物も多岐に渡って存在しており、念の為にそういったバインドも幾つか覚える必要があるだろう。
《移動魔法は飛行用の魔法と転移用の次元転送魔法で、補助魔法に関しては念話用の魔法になります》
この飛行用と念話用、先のバリアジャケット着用の魔法の三種は、魔導師にとって必須のものなので必ず初期登録されているらしい。
転移魔法は何らかの事故で地球以外の場所に転移してしまった場合に必要だろう、との判断で入れられているようだ。
《結界魔法はサークルタイプのフローターフィールドと、エリアタイプの封時結界になります》
「封時結界っていうのは?」
《魔法が周囲に被害を及ぼさないようにする為の結界です》
「訓練する時に使えってことかな」
《ですが結界魔法でも上位に値するので、まずは魔法に慣れる必要があります》
なら、ある程度魔法に慣れるまで魔力を使った大規模な訓練は控えるべきだな。
すぐに出来るのは魔力負荷をかけたり、後はクラウンに協力して貰ってイメージトレーニングを行うくらいか。
姉さんが結界魔法を使えるのなら、姉さんに頼んで結界を張って貰うのも有りか。
「何はともあれ転移魔法用のマーカーだけ打ち込んじゃおうか」
《仰せのままに》
マーカーを打ち込んでおくと安全、かつ楽に転移をすることが可能なのだ。
座標指定を詠唱でこなす方法もあるらしいけど、そちらは指定する座標がかなり複雑なのだ。
そういった理由から僕の使う転移魔法はマーカー形式になっている。
早速自室にマーカーを打ち込む。
念の為にリビングにも打ち込み、後はいつもの公園にも打ち込んでおこう。
大量に打ち込む必要はないけど、万が一機能しなかった時のことを考えて、複数個打ち込んでおくのは判断としては間違っていないだろう。
《マーカーの打ち込み、完了しました》
「今日はこれ位にしておこうか。バリアジャケット解除」
指示を出した直後には、元の私服姿に戻る。
今日は魔法に関することはここまでにして、後はクラウンと交流を重ねることにしよう。
「それじゃあ、寝るまでお話しようか」
《はい、マスター》
結局この日はクラウンとの話に夢中になって寝るのが遅くなり、翌日姉さんにこっぴどく叱られてしまうのだった。
◇◇◇◇
クラウンを入手してから、僕の鍛錬にはクラウンを使用した物が加わっていた。
早い段階でデバイスになれる必要性を感じていたし、本格的に魔法を使ってみたいと思っていたのだ。
そんな時にデバイスを入手したものだから、スキを見ては鍛錬をする日々が続いた。
勿論、だからといって家族やなのはちゃんをないがしろにしていた訳じゃない。
鍛錬は寝る前のちょっとした時間など、空いた時間をイメージトレーニングを利用した仮想訓練に当てた。
……イメージトレーニング? と思うかもしれないけど、これが案外馬鹿に出来なかったりする。
何せ高性能なAIであるクラウンに協力して貰うことにより、脳内を擬似的なシミュレーターにしてしまうのだ。
イメージトレーニングというより、もはやシミュレーションというべきだろう。
それ以外には魔力負荷を常時かけてもらうようにして、魔力強化を図ったりもした。
まぁ、実際にはそこまで時間のことを気にする必用もなかったんだけどね。
一つは先程も言ったイメージトレーニングが空いた時間でも可能だったから。
もう一つは士郎さんの体がかなり回復して来ている為、桃子さんたちもなのはちゃんとの時間を持てるようになったからだ。
その結果、僕自身が家族といることを勧めたこともあって、今は前ほどなのはちゃんと一緒に居る訳ではないのだ。
休日は家族との間に一定の時間を取った後は、基本的に鍛錬に注ぎ込んだ。
特に複数の思考行動・魔法処理を並列で行う、所謂マルチタスクの鍛錬には力を入れた。
継続して二つの思考行動を取れるようになってからも、マルチタスクそのものの訓練は継続して行い、今では四つ同時に思考行動を取れるようにもなった。
正直なところ比較対象が姉さんしか居ないので、この四つという数字がどれ位のものかはわからない。
その姉さんが九つのマルチタスクを操ることから、僕個人としては普通なのかな? とも思う。
今後の為にも平均を調べておいて損はないだろうから、今度時間を見つけて父さんや姉さんに聞いてみるつもりだ。
話を戻して。
このマルチタスクが思った以上に便利で、時間の問題を解決するどころか、常に鍛錬を可能にしてしまった。
マルチタスクによって安定して複数の思考行動を取れるようになった為、思考の一つをイメージトレーニングに当て、残りの思考で会話をする、という風に会話と鍛錬を同時にこなすことが出来るようになったからだ。
その結果、今まで鍛錬に割いていた時間を減らしてその分集や姉さん、なのはちゃんに構う時間を増やせたのは大きい。
集は兎も角、姉さんやなのはちゃんは表情に出していなかったけど、少し寂しそうだったから、僕としてもこうして皆との時間を増やせるのは嬉しいことだ。
しかし残念なことに、今日は僕一人だった。
集は最近出来たという友達と遊びに。姉さんは父さんについてミッドチルダに。
そしてなのはちゃんは家族でお出かけをする予定だという。
そんな訳で息抜きの為に何時もの公園に、最近していなかった日向ぼっこをしに来たんだけど……。
「…………」
僕は視線の先に、天使を見つけてしまった。
いや、正確には天使と見間違う程綺麗な女の子、になる。
銀色に輝くストレートロングの髪。そして金色の瞳。
どこか沈んだ表情をしているその少女の姿に、僕は目を奪われた。
この辺りでは見かけない顔なので、他所から来た子だろうか……?
沈んでいる表情がどうしても気になったので、僕は声をかけてみることにした。
なのはちゃんの時と良い、僕はこういった場面に出くわすと放っておくことが出来ない性分なのだ。
「こんにちは」
「……?」
「隣、良いかな?」
「……かまわないわ」
よっこいしょ、と隣に座る。
年甲斐もなく緊張してしまうのは、前世ではあまり女性との付き合いがなかったからだろうか。
しかしこの歳で同じ年頃の女の子に緊張してしまうのは僕ぐらいのものだろう。
「………」
背に太陽の光が当たり、丁度いい感じにぽかぽかしてくる。
隣に座ったのは良いものの、何を話すか悩んでしまう。
「僕は桜満 朔夜。キミは?」
「……立華 奏」
首をかしげてそう答えられた。しかも表情に変化がない。
うーん、感情表現が乏しい子なのかな? いや、単に初対面の相手に警戒してるだけか。
まぁ行き成り知らない人間が話しかけて来たら警戒もするだろう。
「奏ちゃんって言うんだ。良い名前だね」
いやぁ困った。会話が全く思いつかない。
響きが良かったので思わず名前を褒めたけど、普通に考えてこれは違うだろう。
同年代の子とは、集やなのはちゃん以外はあまり接点がないからなぁ。
二人共、どちらかと言えば他の子に比べて精神的に成熟している方だから、あまり参考にはならないし。
「奏ちゃんはここで何してたの?」
「……」
やっぱり警戒されてるのかな?
まぁ見知らぬ子に話しかけられれば、警戒もするか。
「何も」
「……?」
「何もしていないわ。ただ、ボーッとしていただけ」
「それじゃあ、僕と一緒に遊ばない? 今は僕も一人だから、遊び相手が欲しいんだ」
「貴方は」
「ん?」
「何も言わないのね。私の容姿のこと」
確かに、彼女の容姿は日本人とは言えないものだ。
染めたりしない限り、純粋な日本人が銀髪を持つことはない。
とは言え彼女の両親、あるいは片親が日本人じゃない場合はその限りじゃない。
普通僕らの歳でそういったことには気付ないから、自分たちと違う彼女を避けるのだろう。
そういったことを気にしない子も居ただろうけど、周りに流されて避けていた、と考えるべきかな?
「皆、私のことを気味悪がるわ。私だけ違うから」
「僕は綺麗だと思うけど」
「綺麗?」
「うん。その銀色の髪も、金色の瞳も綺麗だと思うよ」
「……不思議な人ね」
そう言って奏ちゃんは少し笑った。
少しの間の後、奏ちゃんは自分のことを少しずつ語りだした。
「お父さんとお母さんは、ミッドチルダって国の人なの。だから私の髪と瞳はこんな色をしているのよ」
成程、ミッドチルダか。あそこなら銀髪金眼何て珍しくもないか。
実際もっと凄い髪の色をしている人を見かけたこともあるし。
……ん?
「って、ミッドチルダ!?」
「……?」
ミッドチルダといえば、僕にとっては父さんの職場のある異世界のことだ。
まさかこんな魔法に縁のない所でその名前を聞く羽目になるとは……。
つまり彼女は、厳密に言えば日本人どころか地球人ですらなく、異世界人だということになる。
通りで日本人離れした容姿を持っている訳だ。
「ごめん、知っている名前だからビックリしただけ。奏ちゃんはミッドチルダに行ったことあるの?」
「いいえ、ないわ。調べたけどそんな国はなかったもの」
言い回しが少しおかしい?
「お父さんたちに連れて行って貰わなかったの?」
「…………もう、いないわ」
どうやら僕は特大級の地雷を踏んだらしい。
もういない。つまり既に亡くなっている、ということだ。
「ごめん。無神経なこと聞いた」
奏ちゃんは黙って首を横に振り、話を続けた。
「警察官のような仕事をしている、と聞いていたわ」
「それって……」
奏ちゃんは頷いた。
つまり、彼女の両親は仕事中に殉職したのだろう。
確かにミッドチルダには、管理局という組織が存在する。矛盾点はない。
ここで寂しい? とは聞けなかった。流石にそこまで無神経じゃない。
寂しくない訳がない。
だから僕は違うことを言うことにした。
「今度、僕の友達を紹介するよ」
「……?」
「人と違っても絶対避けたりしない子だよ。
……奏ちゃんが寂しく感じる暇がないくらい、一杯遊ぼう?」
「!」
「嫌、かな……?」
奏ちゃんは勢い良く首を横に振った。
孤児院で生活していたとしても、大人は奏ちゃん一人につきっきりでいる訳でもない筈。
周りの子供には避けられ馴染めず、ずっと一人だったのだろう。
なら僕は、せめてその寂しさを少しでも和らげてあげたい。
きっとなのはちゃんも賛成してくれるだろう。
あの子は一人で居ることの寂しさを知っている子だから。
その後、奏ちゃんは迎えに来た女の人と帰っていった。
簡単に話を聞くと、今は両親の知り合いだという人に援助をして貰って生活をしているらしい。
迎えに来たのはその知り合いの人が寄越してくれた、所謂お手伝いさんとのことだった。
ちなみにお手伝いさんは二人居て、一週間ごとに交代で面倒を見てくれるとか。
今日迎えに来たのは、リーゼロッテさんと言う名前の人だった。
この時に聞いたんだけど、奏ちゃんが僕より三つも歳上だということには驚いた。
同い年だとばかり思ってたから少し焦ってると、リーゼロッテさんが笑いながら、今後も奏ちゃんと仲良くしてくれ、と言ってきた。
勿論、僕の返事は決まっていた。
そんな訳で最新話をお届けしました。
ちなみに作中の魔法に関するものは、なのはwikiに記載されているもの以外は殆ど憶測です。
特にバインドや転移魔法に関しては独自解釈が含まれますのでご注意下さい。
さて、今回から新たにクロスするのは Angel Beats! になります。
といっても今回のクロス先からは、主にキャラクターのみの拝借になります。
後は今の所、音無とゆり辺りが出せるかなぁ? と言った感じです。予定は未定。
長々語るのもアレなので、今回はこれ位で。
それでは皆様、良いお年を。
※1/28追記
感想の方で、ViVidの方で炎熱と電気を併せ持つ炎雷と呼ばれる魔力変換資質が登場していることを指摘されました。
通常のwikiを見ると確かにその存在の確認が取れましたので、一部設定を変更します。
漫画版の方はどれも手付かずの状態だったので盲点でした。
本編での変更点は以下になります。
風と電気の魔力変換資質を持つ
→風と電気、水の三つの性質を併せ持つ嵐の魔力変換資質を持つ
水が追加されたのは、単純に風と電気を合わせた場合の魔力変換資質に関する名前が思い浮かばなかったからです(;´Д`)
複合属性は恐らく原作の方でもかなり稀少だと考えられますが、主人公だけの特異性を表すには若干弱いので、新しくもう一つ何か特性を追加する予定です。