魔法少女リリカルなのはKreuzung   作:神原和人

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大変お待たせしました。
何とか月刊更新は保てて良かった……(;´Д`)

それと/04において、感想で追加情報を頂いたので設定を変更しています。
文章の一部を変えただけなので読み返す必用はないですが、ご報告させて頂きます。
ちなみに変更点は【風と電気の魔力変換資質】が【風・電気・水の性質を合わせ持つ嵐の魔力変換資質】という点です。

ついでに。Twitter もはじめたので、そちらの方も宜しくお願い致します。
今後執筆状況はあちらの方で呟いて行く予定です。
更新情報はこちらの方でも続けます。


/05 貴方が、私の運命だからよ

 最近、姉さんの視線を感じることが以前にも増して多くなった。

 もう隠しごとも無理かな? と思えてくる。

 とはいえ、実はあなたの弟は前世の記憶を持ってますよ~。何て言っても普通は信じないだろうしなぁ。

 こればかりは誰にも言うつもりはないのである。

 

「朔夜」

「何? 真名お姉ちゃん」

「朔夜が何を隠しているか、お姉ちゃんに教えて?」

 

 ところがどっこい。もはやバレているらしい。

 そんな簡単にわかるような隠し方じゃなかったと思うんだけどな。

 歳不相応の振る舞いが駄目だったのか? けど僕としてはあんまりバカっぽい真似は勘弁だしなぁ。

 いや、でも年単位で隠せたからもった方なのか?

 とりあえずシラを切っておくか。

 

「何も隠してることなんかないよ?」

「嘘。お姉ちゃんにはわかるんだから」

「あ、こないだお姉ちゃんのプリン、勝手に食べちゃったこと?」

 

 秘技・誤魔化し。

 ちなみにプリンを勝手に食べちゃったのは、本当は集です。

 

「いいえ。それ以外の、食べ物とかに関わりのないことよ。誤魔化さないで」

 

 しかし効果は無かったようだ。

 うーん、これは本格的にバレてるのかな?

 まぁバレて何か困るようなことでもないし、別に問題はないんだけどね。

 でも弟が実は前世の記憶を持っている、なんてことになったら、余計な心配をかけそうだしなぁ……。

 それに言うつもりはないけど、仮に自分が創作物に登場する人物だって知ったら、嫌な気分になるだろうし。

 

「僕の態度が歳不相応なことに関して?」

「それは私の弟だもの、当然よ。それ以外のこと」

 

 姉さんちょっと弟に夢見すぎじゃないですか……?

 自分の弟なら当然、ってそれじゃあ集はどうなるんだよ。

 とはいえここまで来ると確定だ。

 姉さんはどうやら僕が他の人間とは違うことに気がついているらしい。

 まぁ、この街は僕以外にもやけに精神年齢が高い子供が多いから、そういった点に関してはあまり疑問を抱いていなかったのだろう。

 

「……」

「お姉ちゃんはね? 朔夜のことが全部知りたいの。全部、ね」

 

 誤魔化しはきかない。

 本当のことを言うまで引き下がるつもりはさなそうだ。

 とはいえ、本当のことを言っても信じるかどうかは別問題だし……。

 仕方ないか。

 

真名(・・)は何を聞きたいの?」

「朔夜のこと、全部。

 そうね。まずはどうして最初から(・・・・)私のことを知っていたのか知りたいわ」

「……どこで気付いたの?」

「あなたが一歳になった時。私の顔を見て少しびっくりしたでしょう?」

 

 正に自業自得。いや、その僅かな表情に気付いた彼女が凄いのか。

 

「……真名は、輪廻転生って信じる?」

「ふーん、それが朔夜の秘密?」

「うん。真名を知ったのはその前世で」

「私と同じ存在を見たことがあるから?」

「どうして……」

 

 僕の言葉を遮って発した彼女の言葉に、僕は衝撃を受けた。

 彼女はそれをどこで知った?

 

「お姉ちゃんの秘密も教えてあげる」

「え?」

「平行世界っていうのかな?

 お姉ちゃんはね、色んな桜満真名の記憶の断片を持っているのよ」

「断片?」

「そういった別世界の自分の記憶を、断片的に見るレアスキルを持っているの」

「レアスキル!」

 

 成程。そういったレアスキルを持っていれば、この反応も納得がいく。

 

「まぁ自発的に見れるような物じゃなくて、夢という形で不定期に発生する、酷く限定的なレアスキルなんだけど、ね?」

「……そっか。つまり、どの平行世界にも僕の存在が無かったんだね?」

「ええ。いくつもの平行世界の私の記憶を見たけど、何時も弟は集だけだったわ」

 

 それと僕の自意識が生まれた直後の反応を合わせて、僕が何かを隠していると考えたのか。

 

「ねぇ。お姉ちゃん、朔夜のこと全部(・・)知りたいな」

「……はぁ」

 

 つまり、彼女はこう言いたいのだ。

 僕の前世を含めた、その全てを聞かせて欲しい、と。

 

「良いよ。あんまり面白い話でもないけど、教えてあげる」

 

 文字通り、僕の全てを。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 そうして僕は、全てを真名に語った。

 僕の前世のこと。死んで神様に会ったこと。

 この世界のこと。転生したこと。

 話せることは全て話した。

 真名は僕の話を聞いている間、ずっとニコニコと笑っていた。

 

「……僕が話せるのはこれで全部」

「ありがとう、朔夜」

 

 どういたしまして、とは言えなかった。

 真名は何故、僕のことを知りたがったのだろうか?

 

「安心して。このことは誰にも言わないから」

「どうして」

「ん?」

「どうして真名はこんなことを知りたがったの?」

 

 僕の疑問に、真名は花の咲くような笑顔を見せて答えた。

 

「それはね? ――――貴方が、私の運命だからよ」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 結局、あの言葉の意味は教えて貰えなかった。

 その後も表面上は普段と何ら変わらず僕と接する彼女を見て、疑問は深まるばかりだ。

 今までと違う所があるとすれば、それは僕が彼女を名前で呼ぶようになったことぐらいか。

 今までは肉体の年齢と、僕の精神衛生上の理由からお姉ちゃんと呼んでいた訳だが、今回の件で僕が精神的には歳上であると知った真名から、殆ど強制に近い形で呼び捨てにするよう乞われたのだ。

 しかも父さんや集の居る目の前でやられたので、二人も後押しする始末。

 結局押し切られる形で真名、と呼び捨てで名前を呼ぶことになってしまった。

 

 まぁ僕としても真名の願望を叶えることはやぶさかじゃない。

 良い機会と言えば良い機会だった。

 

 ……そう言えば、気になることと言えばもう一つ。

 他の転生者の存在だ。

 転生する際、神様が言っていた他の転生者の存在。

 その存在が今まで全く感じられない。それがいささか不気味だった。

 話を聞いた限りこの世界に転生を果たした存在は一人や二人ではない。

 それこそ数十、下手をすれば百人以上が転生している筈なのだ。

 何せ世界が崩壊しかけたのだ。生半可な数じゃないだろう。

 しかし、今に至るまで僕は誰一人として他の転生者に遭遇していない。

 都合良く日本に転生したのが僕だけ、何てのはちょっとありえないだろう。

 

 まぁ、他の転生者に会わないからと言って問題がある訳でもない。

 頭の片隅に置いておく程度でも良いかな? とは思う。

 けれど一度気になりだしたら、どうにも収まりがつかない。

 それとなく情報収集もしておこうかな。

 

「朔夜お兄ちゃん?」

 

 おっといけない。

 考えに集中するあまり、ボケっとしていたようだ。

 マルチタスクを使い慣れて来たとは言え、まだまだ未熟だな。

 

「ごめんね、なのはちゃん」

「……大丈夫?」

「うん。奏ちゃんもごめんね」

 

 今現在、僕はなのはちゃんと奏ちゃんの二人と公園で遊んでいる最中だった。

 先日の宣言通り、僕はなのはちゃんと奏ちゃんを引き合わせた。

 昔の自分と重なる所もあってか、なのはちゃんはすぐに奏ちゃんと仲良くなった。

 今では奏お姉ちゃん、なのちゃんと呼び合う程仲良しさんだ。

 

「そう言えばこの間の約束」

「……? あぁ、奏ちゃんの家に行くって話のこと?」

「ええ。ロッテさんが来週の日曜なら時間が作れるから、その日なら良いって」

「わかったよ。その日はアリアさんも居るの?」

 

 僕の言葉に頷く奏ちゃん。

 ちなみにロッテとはリーゼロッテさんの愛称だ。

 アリアというのはロッテさんと交代で奏ちゃんの世話をしている、リーゼアリアさんの愛称になる。

 二人共何回か顔を合わせて簡単な会話を交わしたことはあるけど、本格的な顔合わせははじめてだ。

 最初に会った時、自分たちの名前は少し長くて呼びにくいだろうから、と愛称で呼ぶように言われたのだ。

 

「グレアムおじさまも時間を作って顔を出してくれる、って」

「グレアムさんが?」

 

 グレアムさんとは、ロッテさんとアリアさんを奏ちゃんの家に派遣している、奏ちゃんの両親の上司だった人のことだ。

 二人が殉職した際、現場に居たものの助けることが出来なかったと当時のことを悔やんでおり、その関係で奏ちゃんに援助をしている、というのは以前アリアさんから聞いた話だ。

 グレアムさんと直接顔を合わせるのははじめてになる。

 何せ相当忙しい人らしく、奏ちゃんも年に一回か二回会えれば良い方だという話だ。

 今回、奏ちゃんの家に遊びに行くのにここまで時間がかかったのは、グレアムさんの休暇とタイミングを合わせる為だったとか。

 どうやらリーゼ姉妹から僕のことを聞いているみたいで、直接会って挨拶がしたいという。

 

「そっか。なのはちゃんも行くよね?」

「うん!」

「それなら僕が迎えに行くよ。ついでに翠屋で何か差し入れを買ってこう」

 

 最近になって、父さんから商店街まで一人で出歩く許可を貰ったのだ。

 年齢以上にしっかりしていることが評価された形になる。

 とはいえ、出歩けるのは昼間に限定されている。

 夜の外出や夕方の行動範囲は基本的に今まで通りで、と釘も刺された。

 僕としても無闇に言いつけを破るつもりはない。

 

「お昼はどうする?」

「アリアさんが用意してくれる、って」

「それなら買い物だけしたらすぐ向かうね。集合場所はここで良い?」

「問題ないわ」

 

「お~いかなで~! 帰るぞ~!!」

 

 そんな会話を交わしていると、奏ちゃんの迎えが来た。

 今週はロッテさんらしい。

 

「ロッテさん、こんばんは」

「こんばんは」

「お、朔夜となのはか。元気にしてたか~?」

 

 なのはちゃんと二人で頭を下げると、ロッテさんが少し乱暴に撫でて来た。

 痛くはないけど、少し気恥ずかしい。

 

「はい。それと来週のこと、奏ちゃんに聞きました。

 翠屋で何か買ってから行こうと思うんですけど、何が良いです?」

「それならシュークリーム! あそこのシュークリームは美味しいから、父様にも食べて貰いたいし」

 

 ロッテさんの言う父様とは、グレアムさんのことだ。

 

「えへへ、そう言って貰えるとなのはは嬉しいです!」

「そっか。そういえば翠屋のパティシエはなのはの母さんだったね」

 

 ロッテさんは僕の頭から手を離すと、今度はなのはちゃんの頭を撫で始めた。

 なのはちゃんはこういったスキンシップが好きな方なので、今も喜んでいる。

 こういう所は年相応といえる。

 

「それなら少し多めに持って行くので、良かったら持って帰って貰って下さい」

「うん。父様にも伝えとく」

 

 撫で終わるのを待ってから話を続ける。

 そろそろ時間も遅い。

 僕もなのはちゃんを送る必要があるので、名残惜しいが今日はここまでだ。

 

「じゃあ奏ちゃん。また今度」

「ばいばい! 奏お姉ちゃん」

「またね。朔夜、なのは」

 

 ロッテさんに連れられて帰っていく奏ちゃんに手を振り、僕たちも帰路につくことにする。

 

「良し。僕たちも帰ろうか」

「うん!」

 

 そうして、僕たちも手を繋ぎながら帰路についた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 時間が流れるのは早いもので、早一週間の時が流れた。

 そんな訳で本日は約束の日である。

 父さんたちには事前に話をしてあるので、時間まで集と遊ぶことに。

 最近は僕も付き合いが悪かったので少し拗ね気味である。

 

 時刻は九時。

 集の機嫌取りに終始していたけど、そろそろ時間だ。

 まずはなのはちゃんを迎えに行くことに。

 

「気をつけていってくるんだよ?」

「うん。それじゃあいってきます!」

 

 歩くこと十数分。高町家に到着である。

 インターホンを鳴らして暫くすると、恭也さんが姿を現した。

 

「おはようございます、恭也さん」

「おはよう、朔夜くん。

 なのはならもう少しで準備が終わる。中で待つか?」

「いえ、ここで十分です」

「そうか。今日はなのはのこと、宜しく頼むよ」

「はい」

 

 恭也さんも、ひと月程前に士郎さんが退院したこともあり、以前はあった険が取れて余裕が戻ったようだ。

 そう。何と士郎さんはリハビリを済ませて退院したのだ。

 一時期は起き上がることすら絶望的、とまで言われてたけど、今では日常生活を問題なく送れる程に回復した。驚異的な回復速度と言える。

 今では翠屋のオーナーとして、桃子さんと一緒に働いている。

 

「朔夜お兄ちゃん、お待たせっ!」

 

 玄関先で暫く恭也さんと会話を交わしていると、なのはちゃんがやって来た。

 

「あれ、そのリボン……」

「えへへ。昔朔夜お兄ちゃんに貰ったリボンなの」

 

 なのはちゃんの言う通り、今彼女の髪を結んでいるピンク色のリボンは去年僕がプレゼントした物だった。

 女性物にはあまり詳しくなかったけど、なのはちゃんも女の子なんだし、女の子らしい物をプレゼントしようとしてリボンをチョイスしたのだ。

 

「その服も新しいやつだよね?」

「前の休みの時に皆でお買いものに行った時に買って貰ったの」

「うん。良く似合ってるよ」

「にゃはは」

 

 なのはちゃんは照れくさいのか、少し顔を赤くしている。

 

「それじゃあ恭也さん、いってきます」

「ああ。翠屋に寄って行くんだろ? 二人共、道中気をつけて」

「はい」

「お兄ちゃん、いってきます!」

「ああ、いってらっしゃい」

 

 恭也さんに見送られて、僕たちは高町家を後にした。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 三十分程歩くと商店街に差し掛かった。

 流石にこれだけ歩くと子供の体には少し堪える。

 更に五分程歩くと、ようやく翠屋が見えて来た。

 

「いらっしゃいませ。……あら? なのはと朔夜くんじゃない」

「桃子さんこんにちは。シュークリーム十個程、テイクアウトで貰えますか?」

「今から奏ちゃんのお家に行くの!」

「そういえば今日だったわね。ふふ、それじゃあ少し待っててね?」

「はい」

 

 桃子さんがシュークリームを包んで箱に詰めるのを待つ間、店内を少し見回してみる。

 十時前にも関わらず、店内にはそこそこお客さんの姿が見えた。

 

 最近翠屋も評判を上げてきており、常連さんも増えて来たという話を以前恭也さんから聞いたことがあるけど、確かにその通りのようだった。

 元々美味しい洋菓子が食べられるということでその下地はあったし、士郎さんが退院してからは彼の入れるコーヒーが絶品だと、コーヒー好きの間で噂にもなっている。

 昼に出すようになったランチセットも、値段も量も手軽に食べられると評判をよんでいる。

 そういった諸々の理由が合わさって、翠屋は今人気急上昇中なのだ。

 最近は新しく従業員も雇ったという話だし、かなり軌道に乗っているのだろう。

 

「はいお待たせ」

「ありがとうございます。……ええと、お代は」

「1050円になります」

「じゃあ1100円からお願いします」

「はい、お釣り。二人共気をつけていってくるのよ?」

「はーい!」

 

 なのはちゃんの返事と共に僕も頷く。

 手をつなぎ直し、反対の手にシュークリームの入った箱を持つ。

 今度は来た道を戻る必要がある。

 とはいえ、自宅より公園の方が近い距離にあるので来る時より時間はかからない。

 子供の脚だということを配慮してか、箱の中に保冷剤を入れてくれたみたいだし、そこは流石桃子さんといった所か。

 

 なのはちゃんと会話を交わしながら歩いていると、公園が見えて来た。

 入口には奏ちゃんとアリアさんの姿が見える。

 

「奏ちゃんにアリアさん、こんにちは」

「こんにちは!」

 

 二人も近づいて来た僕たちに気が付いたのか、手を振っている。

 僕は両手が塞がっていて振り返すことは出来ないけれど、なのはちゃんは空いている手を大きく降っていた。

 

「こんにちは」

「アリアさんはお久しぶりです」

「ふふ、久しぶり。父様たちが待ってるわ。早速行きましょう?」

「はい」

 

 今度は四人で歩き出す。

 他の同年代の子と比べてまだ体力のある方の僕は兎も角、なのはちゃんは流石にバテてきているようだ。

 とはいえ、友達とのお出かけが嬉しいのか笑顔が絶えない。

 

 更に十五分程歩くと、他の家に比べて少し立派な一軒家が見えて来た。

 どうやらあそこが奏ちゃんの家になるらしい。

 

「ただいま」

「お~! 朔夜になのは!! いらっしゃい」

 

 奏ちゃんの声に反応したのか、ロッテさんが姿を現した。

 そのまま僕たちの方に飛びかかって来る。

 

「シュークリーム持ってますから、危ないですよ?」

 

 その言葉に反応して急ブレーキ。目と鼻の先でストップする。

 相変わらず驚異的な身体能力だ。

 

「ロッテさんこんにちは!」

「こんにちは、なのは」

 

 その代わりと言わんばかりになのはちゃんの頭を撫で始める。

 少し髪型が崩れたけど、なのはちゃんは嬉しそうだ。

 そんなロッテさんの様子にアリアさんは少し呆れている。

 

「ほら、父様も待っているんでしょう?」

「おおそうだった」

 

 アリアさんに諫められ、なのはちゃんの頭を撫でるのを止める。

 ここまでの移動でかなり堪えている筈なので、僕としてもそろそろなのはちゃんを休めたい。

 

「おじゃまします」

「おじゃまします」

 

 リビングに入ると、そこには見事なひげを蓄えた壮年の男性が居た。

 恐らくこの人がギル・グレアム氏だろう。

 ……それにしても、何て力強い魔力の鼓動だろう。

 僕が見た中でも一二を争う程、強い魔力の輝きだ。

 

「おじさま」

「おかえり、奏くん。そちらの二人が……?」

「私の友達です」

「紹介して貰えるかな?」

 

 奏ちゃんは頷き、まずは僕の方に手を向ける。

 

「男の子の方が桜満 朔夜くん」

「はじめまして、桜満 朔夜です」

 

 自己紹介と同時に頭を下げる。

 ついで、奏ちゃんの手はなのはちゃんの方に向く。

 

「女の子の方が高町 なのはさん」

「はじめまして、高町 なのはです!」

 

 なのはちゃんも自己紹介と同時に頭を下げる。

 流石に普段から礼儀正しいなのはちゃんだけのことはある。

 

「はじめまして、私はギル・グレアム。

 君たちのことは奏くん、ロッテやアリアから聞いている。これからも奏くんのことを宜しく頼むよ」

「はい」

「はい!」

 

 自己紹介も終わり、促されて椅子に座る。

 今日は暫くグレアムさんと会話をして、その後奏ちゃんの部屋で遊ぶ予定になっている。

 名目的にはお茶会、ということになる。

 その割にお茶請けがシュークリーム、というのも変な話だけど。

 

「これ、なのはちゃんの実家の喫茶【翠屋】のシュークリームです。

 お茶会の分と合わせて少し多めに買って来たので、残った分は良ければ持って帰って下さい」

「気を使わせてしまったようだね」

「いえ、そんなことは」

「アリア」

「はい、父様」

 

 グレアムさんに促されて、アリアさんがお茶を入れに向かう。

 何か手伝おうと思ったけど、お茶に関して素人の出る幕はないか、と会話を続けることにした。

 

「それにしても桜満、か……。玄周は壮健かね?」

「はい。……あの、父のことをご存知で?」

「ああ。彼の勤めるダアトには随分世話になっててね。その関係で彼にも世話になった」

「そうだったんですか」

 

 とはいえ、予想はしていた。

 父さんの工房はデバイス業界ではかなり有名だと聞いたことがあったし、管理局に商品を卸していても不思議じゃない。

 

 そうやって暫く会話しているとお茶を入れ終えたアリアさんが戻って来た。

 

「それじゃあ、お茶会をはじめましょうか」

 

 アリアさんが用意したお皿の上にシュークリームを並べていく。

 残りは箱ごと冷蔵庫に入れておく。

 お茶請けと紅茶が全員に行き渡った所でお茶会がはじまった。

 

 グレアムさんも翠屋のシュークリームを気に入ってくれたみたいで、絶賛してくれた。

 なのはちゃんも喜んで、僕としても嬉しい限りだ。

 奏ちゃんもこういった集まりは初めてのようで、凄く楽しそうだ。

 そんな奏ちゃんを穏やかな表情で見るグレアムさんが、酷く印象的だった。




ちょっと詰め込み過ぎな気もしますが、/05更新です。
本当は真名関係をもう少し多めにするつもりだったのですが、ちょっと予定を変更して立華家訪問を同じ話に組み込みました。
そのせいか今回は場面転換が少し多くなりました。
見にくかったなら申し訳ないです。

そう言えばいつの間にかお気に入りが80件になってました。
流石になのはのネームバリューは凄いですね。
これからも精進していく所存です。
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