前回、ガトー一派との戦いが終わり、波の国に平穏が戻ってきた。その夜の宴会にて俺の雷牙との戦闘の話をして呆れられるシーンもあったが戦いが終わり、平和になった証だと思い納得しよう。更に時間が経ち橋が完成しタズナさん達町の住民との別れを告げ、波の国を旅立った。そして更に数日経ち、木の葉の里に帰還した俺達は、早速ミナトさんがいる火影屋敷の執務室に向かう。そして現在、
「と言う訳で現地で助けた元霧隠れの桃地再不斬と白君です」
「ああ・・・」
「宜しくお願いします」
「え・・・」
「ええ・・・」
「はぁ・・・」
「葉、お主・・・」
「あはは・・・」
カカシ達の任務の完了報告の後、俺が再不斬と白を紹介した。俺の報告を聞いたクシナさん、シカクさん、ビワコさん、ヒルゼンさん、ミナトさんは固まり、かなり呆れているな。
「ナルト達や葉君が帰って来たって連絡があった時に、一緒に目付きの悪い人と少年を連れてるって報告があったけど、まさかそれが霧隠れの鬼人とその部下を連れてくるなんてね」
「ふん、犯罪者が来ちまって悪かったなぁ」
「再不斬さん、そんなに煽らないで下さいよ」
「大丈夫だよ、白君。君達は葉君が連れてきた客人だ。それだけで僕達は君を信じられるよ」
再不斬の挑発を聞き、呆れいち早く復活したミナトさんがそう返す。よくもまぁ、そんな小っ恥ずかしい事を平然と言えるよな。やはり天然だな。
「ちっ、小っ恥ずかしいセリフを吐きやがる」
「凄い信頼感ですね。一体どうしたらそこまでの信頼関係が築けるんです?」
「ああ、それは」
そこでミナトさんは2人に13年前の、九尾事件の事を話して聞かせた。ナルト達も何度も聞いた話だろうにキラキラした眼で此方を見つめながら聴いている。そして話を聴き終わると今度は再不斬と白が驚愕で固まっている。
「まさか・・・」
「そんな凄い事が起こっていたんですね。そしてその事件の功労者が葉さんなんですね」
「そうじゃ。ワシ等木の葉は里絡みで葉殿に返しきれん程の恩がある」
「だからワシ等は葉を信じられる。尾獣に会いに行ったら雲隠れと岩隠れと同盟を結んで帰ってきた時は本当に驚いたがな」
再不斬の驚愕、白の言葉にビワコさんとヒルゼンさんが続ける。
「噂では聞いてたが、木の葉が雲や岩と同盟を結んだって話は本当で、しかもその立役者がオメェだったとはな」
「まるで物語に出てくる英雄みたいですね」
「よせって、人を雲の上の存在みたくしなくて良いから!」
小っ恥ずかしくなったので、俺はこの話を終わらせて元の話に戻しにかかる。
「そうだね、もっと話していたいけど話を戻そう。2人をどの立場に入れるかだね、2人は希望はあるかな?」
「リクエストまで聞くのか、本当にユルユルだな、特にねぇな」
「僕は、出来れば再不斬と一緒にいたいです」
「白・・・」
白君の要望に再不斬は白を見つめる。白君も再不斬を見つめて、お互いが見つめあう形になる。
「ヒューヒュー!愛されてんなあ、再不斬さん!」
「ナルトっ!?テメェうるせぇぞっ!!!」
そんな2人の様子をナルトが茶化す。2人共顔を赤らめていて、周りの俺達は微笑ましいと言った顔をしている。
「う〜〜〜ん、葉君はどう考えているんだい?」
「聞くまでも無いんじゃ無いですか?」
「もしかしてこれも葉君の狙いかい?」
「いや〜、今回は運が良過ぎましたね。予想以上の結果でしたよ?まぁ帰って来てすぐ来てくれるよう連絡しましましたけどね」
俺達の会話で感のいいヒルゼンさんや、シカクさん、カカシは2人の移動先に当たりをつける。
「シカクさん、3人に入って貰って下さい。桃地再不斬君、白君、今から会う人達が今後あなた方の同僚になる人達です」
「同僚?どんな奴らだ?」
「それは来たからのお楽しみって事で」
ミナトさんと俺達は笑いながらこれから来る人達を待つ。その態度に再不斬は不安そうな顔になっている。そして少ししてシカクさんと一緒に件の3人が入って来た。
「四代目、ヤマト隊第十一班を連れて来ました」
「「「失礼します」」」
そうして入って来たのは第十一班隊長のヤマトと香燐とサイだ。
「香燐!サイ!久しぶりぶりだってばよ!」
「あ、ナルト!久しぶり」
「よお、あっ!?サスケ〜っ!!帰ってたの〜!!!」
サイはナルトと挨拶を交わし、香燐はナルトとの挨拶も軽く終わらし、サスケの腕に抱きつく。
「ちょっと香燐っ!サスケ君が困ってるでしょ!!離れなさいよ!!!」
「ああ!んだよサクラっ!うちの邪魔すんなっ!」
そうしてサスケの両手を持ったサクラと香燐が喧嘩を始めた。サスケはメッチャ疲れた顔になってる。
「お前ら、俺を挟んで喧嘩するな」
「う〜ん、サスケって羨ましいけど、こう見ると羨ましくねぇってばよ」
「そうだね、ああなったらなんだか可哀想だもんね」
「何なんだ?こいつ等」
「ご、ごめんね?活発な子で」
「君達、火影様や葉さんの前で、何をやっているのかな?」
「「ヒィッ!」」
ヤマトがアニメで強調されてた怖い顔をして2人を止めた。
「す、すいませんでしたっ!」
「ご、ごめんなさい、お兄ちゃん」
「良い良い、気にしなさんな。それじゃあ皆、ミナトさんの話を聞いてくれ」
俺の言葉で全員が聞く姿勢になる。
「それじゃあ改めて、彼等は元霧隠れの忍びの桃地再不斬君と彼の部下の白君だ。本日よりヤマト君が担当上忍外れ、暗部に戻るため、再不斬君を新たな担当上忍とし、香燐ちゃん、サイ君に白君を加えたこのメンバーが新たな第十一班となる」
「なっ!?」
「「「「おお〜〜〜」」」」
「ええ〜、この人が担当〜?メチャクチャ厳しそうじゃんかぁ。ヤマト隊長ならやる事やっとけば何も言われなかったのに〜」
「そうだね」
「君達、僕の事そんな風に見てたの?」
ミナトさんの決定に再不斬は驚き、香燐はメッチャ嫌そうにしていて、サイも同意している。だけど理由を聞いてヤマトは項垂れている。
「それじゃあ手続きはこっちでやっておくから後は「ちょっと待てっ!」ん?どうしたんだい?」
ミナトさんが閉めようとしたら再不斬が割って入って来た。何だよ。
「何で俺が担当上忍なんだ!」
「今から木の葉の暗部の事を覚えてもらうより勝手を知ってるヤマトを暗部に戻し、そこに置いちまった方がいいだろと言う事にしたんだよ」
シカクさんが理由について説明していき、ミナトさんが続けて話していく。
「それに担当上忍になれば白君と一緒に居られるよ?」
「再不斬さん、僕は再不斬と共に居たいです」
「白・・・」
「うち等も良いぜ、アンタもそいつの反応見たらそこまで悪い奴じゃ無さそうだし、それにお兄ちゃんの推薦ならうちはそれで十分だし」
「ええ、僕も葉さんや四代目の勧めなら喜んで班を組みますよ」
「再不斬さん」
「しょうがねぇか。お前、ヤマトっつったよな?お前のとこの第十一班の隊長、俺が引き受ける」
「よろしくお願いします」
ヤマトと再不斬が握手を交わして正式に木の葉の再不斬隊第十一班が誕生した。
「さて、それじゃあ正式に隊を引き継いだから新生第十一班として任務について貰うよ?」
「ああ、了解だ」
「それじゃあまずは、畑の手伝いからかな」
「・・・はっ?」
その依頼内容に再不斬は固まった。
「次にペットの捜索に隣町へのお使い」
「四代目、子守りの依頼もありました」
「ならそれもですかね」
「おい!ちょっと待てっ!!」
「ん?どうしたんだい」
「何だ今のふざけた任務はっ!」
「ん?霧隠れはしないのかい?下忍は大体こう言う危険度の低い任務から慣らしていくんだよ」
「い、幾ら比較的平和な里だからって、こんなガキの扱いのような任務をやれってのか」
「うん、そうだよ?」
動揺した再不斬の問いにミナトさんは笑顔で答える。
「さぁ、張り切ってやってこうぜ、再不斬隊長」
「そうですよ、隊長」
「再不斬さん、一緒に頑張りましょう!」
「お、俺様が」
放心する再不斬の後ろで、俺や第七班は爆笑していた。
俺達が木の葉に帰還し一ヶ月ほど経過した。再不斬と白が加わった第十一班はいくつかの任務をこなしてチームワークを深めていった。白は兎も角再不斬も何とか慣れて来たようだいくつかの任務もこなして何とか里にも慣れて来たようだ。そんなある日。
嵐舞う荒野。数多の武者達が傷つき、得物に刺され、骸と化した廃墟。
「オレ達は、どこにもたどり着けない」
「無理だったんだ。こんな旅は」
「ここまでだ。もう、諦めよう」
無数に転がる仲間の亡骸。希望のなくした瞳にそれを映し、諦めの言葉を口にする三人。ナルトはその光景をただ茫然と見ていることしかできなかった。手を伸ばせない自分が歯痒かった。誰かいないのか!そう拳を強く握った時、
「道はあります」
誰もが諦めた戦場において、迷いなく立ち上がる者がいた。激戦の中、その身を血で汚しながらも、なお美しさを感じさせる翠色の装束を身に纏った女性。風雲姫が立ち上がり、剣を掴む。
「信じるのです。必ず探し出せると」
絶望の渦中にありながら、それでもなおその瞳には希望の光が宿っていた。だが、そんな風雲姫とは裏腹に、先ほど諦めの言葉を口にした家来の一人が、
「しかし・・・姫」
倒れ伏したままの姿で、力なく言った。吐き捨てるように、もう終わりだと。しかし、風雲姫は言葉を投げ続ける。
「諦めないで!」
その姿に三人の家来が首を動かす。それと同時だった。突如、突風が発生し、風雲姫達に襲いかかったのは・・・
轟々とした嵐の中、勝ち誇った声が降り注ぐ。
「はははは、風雲姫よ! 貴様らにはこの先へ行くことなどできぬのだ!」
大振りな杖を手に、崖の上から声を発していた人物の名は魔王。幾度となく風雲姫一行の旅路を妨害してきた諸悪の根源。その魔王が下卑た笑みを浮かべ、風雲姫を見下し、見下ろしていた。プライドが許さなかったのだろう。先ほどまで地に伏し、動けなかったはずの家来達が己の気力を振り絞り、立ち上がった。
「魔王!」
「まさか、この嵐も貴様が!」
その問いに返事はなかった。答えの代わりに、魔王が杖を振るう。すると、残骸と化し、骸と化していたはずの鎧武者達が武器を手に取り、風雲姫に襲いかかった。風雲姫は自身を斬り裂こうとする鎧武者の斬撃を、紙一重で躱し、
「ハッ!」
剣から放たれた衝撃波が、鎧武者を吹き飛ばした。だが、息をつく暇はない。鎧武者はその一体だけではなく、何十体と現れていたのだ。
「諦めるがいい! 観念するがいい、風雲姫!」
絶望を撒き散らす魔王。しかし、風雲姫はその魔王に剣尖を突きつけ、真っ向から言い放った。
「私は諦めない! この命ある限り、その全てを力に変え、必ず道を切り開いてみせる!!」
次の瞬間、風雲姫の身体から特殊なチャクラが溢れ出す。七色の光が煌めき、輝きを放っていた。
「姫!」
「七色のチャクラが燃えている」
「行こう! オレ達もチャクラを燃やすんだ!」
風雲姫の元に部下達が駆け寄る。それを見た魔王は薄笑いを浮かべ、
「笑止!!」
杖から生み出されるは暗黒の波動、風雲姫を倒すためだけに出現する黒き奔流。魔王のどす黒いチャクラが竜巻となり、風雲姫に襲いかかった。黒い旋風、その全てを飲み込まんとする黒い竜巻を――風雲姫達は正面から迎え撃った。七色のチャクラを込めて。
「ハァアアアア!!」
黒の衝撃波は七色の防壁によって阻まれ、次第にその威力をなくし、霧散していく。風雲姫は力の限りを振り絞り、魔王の一撃に耐えてみせた。そして、今度は反撃といわんばかりに七色のチャクラを刃に纏わせ、
「ば、バカな」
虹の光が一筋の閃光を放ち、魔王を討つ!
「くっ・・・ぬ、ぬおおおおお!」
魔王は放たれた光の矢をまともに受け、空の彼方へと消し飛んでいった。雲は晴れ、嵐は去り、空に大きな虹がかかった。
映画を見終わった後。ナルト達第七班と香燐達第十一班は映画館の裏にある空き地に座り込み、待ち合わせの約束をしている先生陣が来るのを待っていた。
「再不斬さん達、遅いですね」
そう呟いたのは白だった。それにサイが続く。
「確かにあの後、僕達だけにチケットを渡して、四代目に任務について詳しく尋ねると言っていましたが」
皆が其々の担当上忍が来ない事を気にする中ナルトは、
「いや〜、よかったなぁ〜、さっきの映画!どこかにいねーかなぁ、風雲姫みたいなお姫様。あんなお姫様のために戦えるなら忍者も本望だよな〜」
ナルトは映画を見終わってから、ずっと空を見上げ、感動に浸り続けていた。そんなナルトに、サスケとサクラが話しかけて来て、
「ナルト、さすがにそれは難しいんじゃ無い?」
「わかってるってばよ、。でも憧れるじゃん、ああいうの」
「確かに、あんなシチュエーションなら、憧れるのは分かるな」
「だけど、ナルトの言うことも少し分かるなぁ。うちはどっちかというとお姫様にだけどさ。あんな凛々しい大人になりたいって思うし」
「あっ!それ分かる!綱手様達も憧れるんだけど、それとはまた違ったベクトルの憧れよねぇ」
そんな歓談をしている時だった。丁度壁の向こうから、時代劇よろしく、ぱからぱからと馬の足音が聞こえてきたのは。その蹄鉄の音にナルト達が少し警戒しながら身構える。何故こんな町中で、馬の足音が聞こえてくるのか? と考えていたら突如、思いも寄らぬ方向から人影が入り込んだ。壁の向こうから飛び越えてきた白馬に乗った風雲姫の姿が六人の目の前に現れる。
「「「「「「ふ、風雲姫!?」」」」」」
我を忘れ、その姿に見惚れてしまった。だが、次の瞬間、その顔は忍のものとなる。なぜなら、壁を乗り越えてきた人物が一人ではなかったからだ。
「追え! 絶対に逃がすな!」
風雲姫のあとを追いかけるかのように、これまた映画と同じく黒い馬に乗った鎧武者達がぞくぞくと現れる。事態の把握はできないが、取り敢えず風雲姫を助けなければと、満場一致で首を縦に振り、速やかに行動を開始する第七班と第十一班であった。白馬に乗り、町の中を疾走する風雲姫。だが、数の有利をいかした鎧武者達がついにその身を捕らえようと挟み撃ちに成功し、投網を投げた。しかし、
「させません!」
投げられた縄は白の千本に断ち切られ、細切れになる。自由を得た風雲姫はさらに逃亡を続けた。
「足を止めるな、裏口に回り込め!」
鎧武者のリーダーと思われる男が指示を出す。それを聞いた白が何人かの鎧武者を拘束しつつ、
「ナルト君、サスケ君、!ここは僕等が押さえます。二人は姫様を!香燐さん、お願いします!!」
「よし、任せなっ!」
「わかったってばよ!」
「おう!サクラ、サイ!2人は先生達にこの事を伝えてくれ!」
「分かったわ!」
「うん。忍法・鳥獣戯画!」
サクラとサイは、サイの忍法・鳥獣戯画で描いた鳥に乗って先生の元へ向かった。ナルトとサスケの二人はその場に白と香燐を残し、風雲姫が駆け抜けた方向へと援護に向かった。屋根の上を跳ねるように駆け、階段を下り、少し拓けた場所に出る。そこで固まっていたのは、またもや大量の鎧武者に捕まりかけている風雲姫であった。状況をすぐに理解したサスケが逸早く動き、風雲姫と鎧武者達の間に苦無を投げ、さながら姫を守る近衛のように降り立つ。それを見た風雲姫は馬の手綱を引き、方向転換する。またもや人気の少ない方角へと馬を走り始めた。
「ナルト!お前は先に行けっ!!」
「わかったてばよ!」
サスケに促されナルトは一人で風雲姫の後を追うのであった。逃走劇の後。川辺で休息を取り、白馬に水を飲ませる風雲姫の後ろ姿を、ナルトはすぐに見つけることができた。むしろ困ったのはその後だ。だって、映画の登場人物が目の前にいるのだ。それから、それから一分近く妄想に浸ってから、ようやく最初のセリフを決めた。ナルトはそっと手を差し出し、
「お怪我はありませんか? 姫」
頑張ってかっこつけてみたが、やっぱり性分に合わず、ナルトはいつも通り人懐っこい笑みを浮かべて、
「な〜んちゃってな! 姉ちゃん、本物の風雲姫だよな? オレさ、オレさ、姉ちゃんの映画見てたらすっげぇー感動したってばよ! 『諦めないで!』って、涙が止まらなかったってばよ!」
手まで使いながら自身の感動を伝える。だが風雲姫はそんなナルトを無視して、
「・・・・・」
完膚なきまで無視して、無表情のまま馬に跨り、一言もくれず、一目の視線も合わせず、手綱を引き、走り去って行った。
「あれ? 」
いやそんな訳がない。目の前にいたのだ、気づかない訳がない。つまり、わざと無視された訳で、ナルトはへこんだ。だが、しかし、この程度で諦めるナルトではなかった。少し遠ざかった風雲姫の姿を確認し、僅かに闘争心を燃やしながら、チャクラを練る。足にチャクラを巡らせ、加速し、ナルトは瞬く間もなく疾走する白馬に追いついた。が、そんなナルトに風雲姫は目もくれず、馬に鞭を打ち、スピードを上げようとする。これ以上引き離されるのはゴメンだ。だからナルトは今もなお走り続けている馬の後方に身を寄せ、空いたスペースに飛び乗ってやった。見事、馬の背中に着地を成功させる。そこで初めて風雲姫はナルトの方を振り返り、驚きの顔を見せた。が、すぐにその顔は無表情に戻り、また前方へと向き直る。だけど、そんな事はお構いなく。ナルトは一方的に話を切り出した。
「姉ちゃんの映画見てたらさ、オレもやる気が出てきたんだ! 絶対に四代目火影を越える忍になるって! ああ、四代目火影ってのはオレが今まで見てきた忍者の中で一番凄い忍で」
後ろから声をかけるナルト。だが、風雲姫が耳を傾けることはなく、ただただ風を切るように街道を疾走し続けた。しかしその速度は、町中を駆け抜けるには少しばかり速かった。いや、速過ぎた。馬が駆け抜けるごとに、物は破壊され、人々から悲鳴の声が上がり、町にはどんどん被害が拡大していく。さらに、そのスピードは緩まるどころか、加速し始め、ナルトはなんとか風雲姫の腰にしがみつき、
「姉ちゃん、ちょっとスピード出し過ぎじゃねーか、これ」
このままでは事故を起こしてしまう。と、ナルトが言おうとした時、物陰から子ども達が飛び出てきて、
「危ねえっ!」
「くっ!」
ギリギリのところで手綱を引き、馬を止める。だが、急ブレーキの反動により、乗馬していたナルトと風雲姫の体は勢いよく宙に投げ出されてしまった。このままではマズイ。咄嗟の判断でナルトは風雲姫を庇いつつ、地面に転がる形で受け身を取った。
「あ、危なかったってばよ」
風雲姫の無事を確認した後、続けて周囲に目を配る。怪我人は出ていない。どうやら寸前のところで衝突事故は免れたようだ。最初、事態を把握していなかった子ども達はきょとんとした顔をしていたが、次第にその目に風雲姫に止まり、
「あっ、 風雲姫だ!」
「すっげえー、本物だ!」
「風雲姫だ! 風雲姫だ!」
わらわらと集まり出す。そんな子ども達に、風雲姫は素っ気ない態度を隠そうともせず、
「私は風雲姫なんかじゃないわ」
と応えるも、子ども達は先ほどのナルトと同じく、お構いなしに用紙とペンを取り出し、
「知ってるよ。 女優の富士風雪絵でしょ、私ファンなの!」
「サインちょうだい!」
「サイン、サイン!」
「僕も〜」
だが、風雲姫がペンを取ることはなく、冷たい口調に、少しばかり怒気を混ぜ、
「私はサインなんかしないの!」
語尾を僅かに強めて、そう言った。ここにきて、ようやくヤバイ空気を感じたナルトだったが、子ども達が人気女優を前に止まる訳もなく、
「え〜、ちょうだいよ〜」
「女優なんだからサインぐらいしてよ!」
子どもにとっては何気ない一言だったはずだ。けれど、風雲姫はもはや怒りを隠そうとせず言い放った。
「いい加減にして!!」
怒鳴り声が響き渡った。わいわいしていた場が一気に静まり返る。笑顔は消え、中には涙をこらえる子どもすらいた。
「私のサインなんか貰ったってどうしようってのよ! どうせ片隅に置き忘れて埃でも被ってるのが関の山でしょ! 何の役にも立たない、下らない物じゃない! バカみたい」
もう、サインをねだる子どもはいなかった。子ども達を押し退け、その場を去る風雲姫。それを見ていた町の大人達は、
「嫌ね〜、気取っちゃって」
「何か幻滅」
「ちょっと売れてるからって天狗になってんじゃないの?」
かなりの不満をもらしていた。ナルトも彼女の対応には困惑している。
「ええ〜〜」
次回から雪の国に突入します