前回、雪忍との本格的な戦いになり、チャクラの鎧により忍術・幻術が有効打にならない戦いが続く。何とか映画のクルーとカカシ達を船に乗せ、俺は雪忍達に孫悟空と共に放った華火山によって氷山を破壊してそれを目眩しにその場を脱したのだったそして、寝込んでしまった雪絵を休ませるため、船を一度、近くの波止場で止めることになった。
船内にある一番大きな部屋。そこには俺、カカシ隊第七班、再不斬隊第十一班、三太夫、マキノ、助監督がテーブルを囲み、席に腰をかけてきた。開口一番、再不斬は今回の襲撃について事情を知っていそうなマネージャーの三太夫を問いただす。
「で、話してくれるんだろーなァ、三太夫さんよォ。依頼でウソを吐かれたら困るぜ」
「まあまあ再不斬君、そうヤクザみたいに脅しにかからないの。三太夫さん、貴方は分かっていて小雪を雪の国に連れてきたんですね?」
「はい」
「彼女がこの国に帰ってきたらどんな状態になるか予想できた筈だ」
「姫にこの国に帰って来て頂くにはこうするしかないと、思ったのです」
「どう言う事だってばよ?姫って映画の役の事じゃねぇのか?」
「本物のお姫様なんだよ」
「「「えっ?」」」
カカシからのカミングアウトにナルト、サクラ、香燐が返す。言葉にはしていないがサスケ、白、サイも驚いている。
「女優・富士風雪絵とは仮の名。本当はこの雪の国のお世継ぎ、風花小雪姫様なんだよ」
「「「ええっ!?」」」
「私が姫様のお側にいたのはまだご幼少の頃でしたが覚えてらっしゃらないのも無理ありません」
「なるほど。それでその姫様を狙って、さっきの雪忍とかいうふざけた連中が現れたわけか・・・本当の姫様の護衛となりゃー、下手すりゃAランク任務だぞ」
「「「「「「Aランク任務!?」」」」」」
今回の任務は映画女優の護衛で、Cランクに設定されていた。それがいきなりAランクほどの任務と宣言され、ナルト達は驚きの声をあげる。再不斬はさらに三太夫を問い詰め、
「だが、なぜ依頼でそう話さなかった? 見たところ、どこぞの橋作りのじじいみてーに金がねー訳じゃねェだろ?」
「いえ、黙っていたのは依頼でウソを吐くためではなく、姫様に雪の国について教えないためでした」
「どういう意味だ?」
三太夫は頷き、遠い昔の夢を思い出す面持ちで、ゆっくりと語り始めた。
「先代のご主君であった風花早雪様は姫様を大層可愛がられており、雪の国は小さいながらも平和な日々を送っていました。あの十年前、ドトウめが反乱をおこすまでは! 」
再不斬達の疑問を察してか、三太夫が話を続ける。
「ドトウは雪忍達を雇い、この国を乗っ取り、美しかった風花の城を焼き落としました。私はその時に、姫様もお亡くなりになったものとばかり。だからこそ、映画に出演していた姫様を見つけた時はどんなに嬉しかったことか。よくぞ、よくぞ生きていて下さったと」
そう涙を流しながら語る三太夫。しかし、その言葉を否定したのは扉の前に立ち、冷やかな視線を送る女性、
「あの時死んでいればよかったのよ。いえ、生きてはいるけど心は死んでいる。あの時以来、私の涙は枯れてしまった」
雪絵だった。涙が枯れてしまった、なるほど。演技の時に目薬を要求した理由はそれか。俺達はこれまでの情報で、大体の流れを理解した。雪絵の言葉に、三太夫は目頭を押さえてから、涙を拭き取り、話を続ける。
「私はその後、なんとか富士風雪絵のマネージャーとなり、姫様を雪の国へお連れする機会をうかがっていたのです」
「えっ! じゃあ、オレ達も騙されていたのか?」
空気を読み、今まで口を閉じていた助監督が驚きの声をあげた。すると、突然三太夫は席を立ち上がり、マキノと助監督に頭を下げて、
「それについてはお詫びします。しかし、これも雪の国の民のため」
その足で、小走りで雪絵の前に跪き、
「小雪姫様、どうかドトウを打ち倒し、この国の新たな主君となって下され! この三太夫、命に代えても姫様を御守りします! どうか!」
膝をついて頭を下げながら、願い込む三太夫に雪絵は、
「嫌よ」
冷たく見下ろし、拒否した。
「えっ?」
「お断りよ!」
「し、しかし雪の国の民は」
「そんなの知ったこっちゃないわ! だいたい、あんたがどんなに頑張ったってドトウに勝てるわけないじゃない!!」
完全な拒絶の言葉に、口を噛み締める三太夫に、机をバンッ! と叩き、立ち上がったナルトが言葉を繋ぐ。
「諦めろなんて、気安く言ってんじゃねえぞ! このおっちゃんは自分の命をかけて夢を叶えようとしているんだ! バカ呼ばわりする奴はオレが絶対許さねえ!」
真逆の主張に、ナルトと雪絵が睨み合う。そこに今まで沈黙を貫いていたマキノも加わり、
「諦めないから夢は見られる。夢が見られるから未来は来る。いいねぇ〜。風雲姫完結編にぴったりのテーマじゃねえか! それにうちとしても本物の姫様を使っての映画撮影、そんな千載一遇のチャンスを逃す手はねぇ」
マキノは命の危険すらある状況だというのに、笑みを浮かべる。
「ちょっと!?」
マキノに乗せられ、その気になっている皆に雪絵が待ったをかけようとする。
「ふー、お前ら、ごちゃごちゃ相談してるところ悪いがよ、オレ達は既に雪の国に入り、雪忍とやらに存在まで知られている。この時点で残された選択肢は闘う以外に残ってねーんだよ」
その再不斬の言葉に俺や忍び組が頷く。
「再不斬さん」
「ですよね、再不斬先生の言うとおりです」
「うちもサスケ達からそう言う事があるって言うのは聞いてたからな。腹は括ってる」
「まぁ、私達はこう言う依頼は2回目だし」
「ああ、どんな依頼も逃げる気はねぇ」
「オッケー! 風雲姫は、雪の国に行って、悪の親玉をやっつける!」
「ふざけないで!!」
周囲の楽観視する状況に雪絵はそれを否定する。それにマキノが対抗して叫ぶ。
「現実は映画とは違う。ハッピーエンドなんか、この世のどこにもないの!!」
「んなもなぁ、気合い一つでなんとでもなる!!」
主演女優と映画監督が真っ向からぶつかり合う。取り敢えず、欲しかった情報は手に入った。再不斬は言い合いをしている映画関係者を無視し、部下達を呼び寄せた。今後の対応を話し合うために。
「さて、お前ら。何処ぞのカカシ班じゃねーが、今回の任務はCランクなんて生易しいものじゃねェ。このまま続けるか、最悪依頼人を放り出して、オレ達だけ逃げるか。自分達で決めろ」
「ちょっとちょっと、再不斬君?何処ぞのって何よ。何処ぞのって」
「再不斬先生、それは」
「サイ、理由はどうあれ、コイツらはオレ達にウソを吐いて依頼したんだ。依頼内容はあくまでも女優の護衛。姫様との国盗り合戦じゃねーよ」
「そりゃあ、そうかも知れねーけど・・・けど、ここで逃げるような奴は忍者じゃねーってばよ」
「ああ、ここでケツ捲ったら俺達の目標に辿り着けねぇだろうしな」
ナルトにサスケも任務続行の意志を示す。香燐、サクラ、サイも同様の意志を示す。俺を見ながら・・・こらこら、こっち見んな。恥ずかしいだろ。
「白、てめぇも意見は同じか?」
「再不斬さん。僕も今回の任務は続行したいです。同じ氷遁使いとして彼らの蛮行は見過ごせません!」
「殺し合いになるぞ」
「今更ですよ?」
はっきりとした口調で返事を返す白。再不斬は部下達の応えに、ため息を吐いた。
(ガキのおもりがここまで退屈しねェとは思ってもみなかったぜ。それにナルトやサスケはともかく、あの白がここまで自分の気持ちを出してくるとはな、どの道あのレベルの忍達から絶対に逃げきれる保証なんざねェ。だったらコイツらの意思を汲んでこっちから仕掛けるか)
「いいだろう。これよりカカシ隊第七班、並びに再不斬隊第十一班の任務は女優の護衛から、小雪姫を守り、雪忍達の撃退、又は討伐へと変更する!」
「「「「「「了解っ!」」」」」」
「再不斬君たら、態々俺を立て無くていいのにぃ〜、俺の事先輩だって思ってくれたって事かなぁ〜?」
「うるせぇ!!ニヤニヤしてんじゃねぇカカシ!!!こんなの社交辞令だろうがっ!!!」
ゴタゴタはあったが、結局のところ、俺達は任務続行。マキノ達も映画の撮影を続行するという結果に収まった。そんな中、雪絵だけが冷たい眼差しで皆を見ていたが、予定が決まった以上は最後まで付き合ってもらうしかない。俺達は見て見ぬ振りでやり過ごすことにした。
次の日。船の移動からバスへと乗り換えた一同は雪の国の中心部、今回の目的地でもある"虹の氷壁"を地上から、安全第一で目指していた。現在は氷で埋めつくされた大洞窟の中を走ってたのだが、
「全然出口が見えて来ないってばよ」
長時間、殆んど変わり映えしない景色に見飽きていたナルトはげんなりした声で呟いた。そんなナルトを気遣って、向かい側に座っていた三太夫が声をかけてきた。
「昔はここに鉄道が走っていたのです。今は氷柱が延び放題で見えませんが、氷の下にはちゃんと線路があるんですよ」
聞き慣れない言葉に首を傾げるナルト。
「てつどう?兄ちゃん、てつどうって何だってばよ?」
窓の下を覗きこむが、木の葉にも、霧にも鉄道などは存在せず、何のことかわからないナルトであった。そしてナルトは俺に鉄道について聞いてくる。
「ん〜、説明するのは難しいからいっちょ本物を見てみるか?」
「「「「「「「「本物?」」」」」」」」
「輪廻写輪眼・・・」
俺はそのまま輪廻写輪眼を発動し、バスの中に現代の汽車が走る様子を投映する。
「うお〜〜〜スゲェ!」
「成程、これが汽車って奴か」
「凄いわね」
「ああ、木の葉や草では見なかったもんだな」
「これが汽車、俺の沸遁みたいなエネルギーで動き、遠くまで移動できるものだ。俺の生きてた時代じゃもっと早く安定したものまで出ていたな」
「これがあったら里間の移動も今より容易になりますね」
「ああ、今より国が豊かになるな」
「先生、こんなのが普通にある世界から来たんですね。改めて凄い出会いをしたと思いますよ」
「葉さん。いずれこれをこの世界にも造られるんですか?」
「いずれは、だな。今は無理だ、でも、今以上に里と里の交流が進んだらそれも可能になるだろう。ようはこれからの努力次第だな」
どれくらい経っただろうか。次第に長かった洞窟にも出口の光が見えてきた。日射しが差し込む場所に、バスが到着したのだ。一同は一度外に降り、マキノの提案で映画の撮影を撮り行うことに決まったのだが、事態は一転し、息を切らせながら、助監督がマキノに向かって状況を報告した。
「監督、大変ッス! また雪絵が逃げました!」
「なにぃ〜!!」
その会話を聞いていたナルト達は、すぐ捜索に向かった。ある程度、雪絵の足取りを追ったところで、
「チッ、あの姫さんは毎度毎度!」
「カカシさん、再不斬さん、ここからどうしますか?」
「このまま全員一緒に探してしょうがないしねぇ。ここからは四方にわかれて捜索するぞ」
「「「「「「了解!」」」」」」
再不斬の指示により、ナルト達は四方に分かれて雪絵の捜索を開始した。その数分後。雪が降り積もる原生林。雪絵は雪山を下るように走って逃げていた。が、忍者の足に勝てる訳もなく、つまずき、転げてしまったところで、ナルトが追い付く。
「まったく、何度逃げれば気がすむんだってばよ。みんな待ってんぞ」
ナルトに見つかったのであった。足を挫いている可能性もあり、ナルトは雪絵を背負いながら、先ほどバスで通ったばかりの洞窟の中をゆっくりと歩いて行く。二人は終始無言であった。ナルトの方も声をかけたいのは山々だったが、何を話せばいいのかわからなかったのだ。すると、あまりにも居心地が悪かったのか、珍しく雪絵の方から先に口を開き、ぽつりと呟いた。
「どうして、いつもあんたに見つかっちゃうわけ?」
「任務だからな、あんたがどんなに嫌がろうと、どこまでも追いかけてやる」
「答えになってないわよ」
「わかっちまうんだよ姉ちゃんの匂い」
聞き様によっては変質者のような言い分。でも、言い訳でも何でもなく、ナルトには雪絵の居場所が何故かわかってしまったのだ。そこに理由も理屈もなかった。
「ふん、私は帰ってもカメラの前で演技するだけ。他のことは一切ゴメンだわ」
「へっ」
内容はけして楽しいものではなかったが、初めてナルトと雪絵が会話をしていたがその時、どこか遠くから汽笛の音が聞こえてきた。さらに、地面の氷がみるみると溶け始め、隠されていた線路が浮かび上がってくる。何か違和感を感じる。とてつもなく、嫌な予感。しかし、知識のないナルトにその正体はわからず、次第にナルトの方から徐々に大きな光が射し込み、汽笛の音が近付いて来た。それにようやく気付いた雪絵が、ナルトの背中に乗りながら、目を見開いた表情で、
「き、汽車が」
「きしゃ? 汽車ってまさか」
またも聞き慣れない単語に首を傾げるナルト。だがバスでの移動中の話を思い出した。そして、すぐに言葉の意味を嫌でも理解することになる。何故なら、汽車が目の前に迫って来たからだ。
「う、うそだろ〜!?」
ここは一方通行の洞窟内。逃げ道など一つしかなく、ナルトは雪絵を背負ったまま走り出した。洞窟を削りながら追いかけてくる汽車。背中越しから雪絵が、
「追いつかれるわ!」
「追い付かれねェ!」
「絶対無理よ!」
「オレは諦めねェ!」
「無理に決まってるじゃない!」
「うるせェ! 黙ってろ!!」
叫ぶように言い合いながらも、一般人の速力を遥かに超えたスピードで走り逃げる二人。だが、無情にも汽車はどんどん距離を詰めてくる。
「こんな事しても無駄よ! もう終わりよ!」
「終わらせねェ! オレは絶対諦めねェ! あんたが諦めるって言うなら、オレは意地でも絶対諦めねェ!」
『……フン!』
「つぅぅらぁぁぁぁああ!!」
ナルトの体から微量ながらも九尾のチャクラが溢れ出し、先ほどまで追い付かれそうになっていた汽車から、逆に距離を空け始めた。その様子に雪絵は思わず、ナルトの肩を強く掴む。前方から光が見えて来た。足を進めるたびに、その光は明白になる。そんなナルト達を逃がさないように、汽車の方も速度を上げて追い詰めてくる。ナルトは雪絵を背負ったまま、最後の力を振り絞り、出口に向かって跳躍した。轟音と突風がナルトと雪絵を追い越したのは、ナルト達が跳躍した後だった。ナルトと雪絵は無事に洞窟を抜け、雪の下へと飛び降り、後方に迫る汽車からギリギリのタイミングで逃れたのであった。
「へへ、へへへ」
ナルトは息を切らしながらも、逃げ切ったことに笑みを浮かべる。しかし。ナルト達の危機はまだ去ってはいなかった。少し離れたところで、ナルト達を追っていた汽車がブレーキをかけて止まり、中から一人の男とそれに付き従うように雪忍のナダレが出てきた。その男は離れた雪絵にも声が届くように、マイクを手に取り、邪悪に満ちた顔を向け、
「久しぶりだな、小雪」
「風花、ドトウ・・・」
もうちょい続きます。