霊と踊る仙人が異世界を謳歌する   作:蔵元優輔

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遅くなりました。


第五十七話

前回、第八回戦は犬塚キバ対サイ、第九回戦は日向ヒナタ対白、第十回戦は日向ネジ対剣ミスミの3回戦が行われ、それぞれサイ、白、日向ネジが勝利を納めた。そして次の対戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

電光掲示板が動き出し、次の対戦カードが決まろうとしている。

 

「さあ、次こそはお前の出番だ。準備しておけよリー!」

 

「はい!ガイ先生!!」

 

「次、次こそ俺が」

 

「ナルト、何だかんだ残り三戦まで残ったわね」

 

「順番は時の運、焦る必要はないさ」

 

「そうそう、先生の言うとおりだよ。主役は遅れて登場!位に考えておきなさいよ」

 

いつもの通り燃えまくってる似た者師弟を横目にそろそろ出たいと体全体で訴えてるナルトや七班メンバーと話していると電光掲示板ば動き出す。

 

「おいおい、どうすんだ?チョウジ。あと残ってんのはナルトにリーって先輩に音の奴に雨の奴に砂の奴。中々に面倒くせぇメンツがのこってんぞ?」

 

「うっ・・・だよねぇ」

 

「ま、頑張んなチョウジ。もし本戦行きが決まったら俺や先生が焼肉ごちそうしてやるよ」

 

「えっ!?マジ!!?よっしゃー、焼肉行くぞおっ!!」

 

「ったく、現金な奴だな。しかもアスマの奴、ちゃっかり葉の兄貴も奢りの対象にしやがった」

 

残りのメンバーが固唾を呑んで見守っていると、電光掲示板が止まると同時に我愛羅が下に降りてくる。それと同時にチョウジが大声を出す。

 

「うおおおおおーっ!!」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

その声にまさかっ!という空気になるが、電光掲示板に映し出された名前は・・・我愛羅そして、ロック・リー。

 

「おおおおっセーフ!」

 

「いきなり大声出すな!紛らわしい!」

 

シカマルがチョウジを叩く。このギャグシーンも面白かったなぁ。

 

「良しっ!僕の出番ですねっ!!」

 

「ああ、油断するなよ、リー!!」

 

「オッス!!」

 

ガイからの激励を受けてリーも下に降りていく。そして原作でも最高の戦いの1つが今始まろうとしていて、俺もワクワクが止まらなかった。

 

「(あいつ、確かにスピードはあったけど蹴りは大したレベルじゃなかったからな。フフ、我愛羅の敵じゃないさ)」

 

「っ!・・・そう慌てないでください」

 

リーが素早く掴んだのは瓢箪のフタだった。それを見てハヤテが準備が整ったと確認した。

 

「では、第十一回戦ロック・リー対我愛羅始めて下さい」

 

試合開始を宣言した。すぐさまリーが一直線に駆け出す。下忍にしてはなかなかのスピードだ。洗練された流れるような動きで、

 

「木ノ葉旋風!」

 

上段後ろ回し蹴りから、下段回し蹴りを連続で放つ。だが我愛羅は仁王立ちで立ったまま砂でガードしていく。

 

「砂!?砂を操っているの!?」

 

「砂にチャクラを通して操る・・・砂隠れならではの術だな」

 

上から見ていたサクラが疑問を持ち、サスケも我愛羅の能力を分析している。そこからリーが何度も攻撃するが、我愛羅に1発も届かない。

 

「あの強いリーさんが有効打を与えられないなんて、でもどうしてリーさんは忍術を使わないの?確かにあの砂に効く術は少ないかもだけど別の流れには持っていけるんじゃ」

 

サクラがリーの戦い方に疑問を持ち、それに近くにいたガイが答える。

 

「使わないんじゃない、使えないんだ」

 

「え?」

 

「リーには殆んど、忍術・幻術の才能がない」

 

「う、ウソ!?」

 

「俺が初めて会った頃は、全くのノーセンス。何の才能もなかった」

 

「そ、そんな・・・信じられない」

 

ガイから聞くリーの話に、サクラが驚きながらも試合は動き始める。

 

「ハッ!セイッ!」

 

リーが我愛羅目掛けて正拳突きを繰り出す。その拳を砂が絡め取り我愛羅の頭上で振り回して壁に向かって投げつける。

 

「ぐっ」

 

地面を転がりながらリーは体勢を立て直し、そのままバク転の要領でくるくると回り、我愛羅から距離をあける。少しずつ戦局が我愛羅の方に傾き始めた。サクラは心配そうに手を握り締める。

 

「リーさんが押され始めてる、忍術が使えないんじゃ、このままだと」

 

「ハハハ、そんな心配は必要ないさ」

 

ガイがサクラの不安を笑い飛ばし、

 

「確かに忍術も幻術も使えない忍者なんてそうはいない。だが、だからこそ勝てる!」

 

「えっ?」

 

「ん?」

 

横で聞いていたサクラとカカシが疑問をかかげる中、ガイはナイスガイポーズで、声を大にして叫んだ。

 

「リー! 外せー!!」

 

その声に、戦っていた二人が動きを止める。リーがガイに顔を向け、

 

「で、ですが、ガイ先生。それは、沢山の大切な人を守る時じゃないとダメだって」

 

「構わーん!! オレが許す!!」

 

「・・・あは、ははは」

 

ガイの言葉にリーは笑いながら腰を下ろし、手元と足元の布を外す。そこには「根性」とびっしり書かれた重りが着けられていた。それは中忍試験が始まってから、いや、それよりもずっと前からリーが着けていた物であった。その重りの留め具を外し、手と足から抜き取っていく。

 

「あれは・・・重りか?」

 

「何てベタな・・・」

 

と、口々に言い、リーとガイの修行を甘く見ていた。忍の世界で重りを着けた修行は決して珍しいものではない。しかし、この師弟は普通じゃなかった。

 

「よーし! これで楽に動けるぞー!!」

 

重りを両手に、元気よく立ち上がるリー。そして、それを手放す。放された重りは地面にぐんぐんと落下していき、凄まじい音を立てて、コンクリートの床を粉砕した。4つの土煙を見て目を丸くする忍達。どう考えてもやり過ぎというより、どうして今まで動けていたのか不思議でならない重りの重さであった。呆然となる場の空気。

 

「やり過ぎでしょう、ガイ・・・」

 

「いや、まだまだだ!リー!!あれも外せ!!」

 

「えっ!良いんですか!ガイ先生!!」

 

「え?何よ、ガイ。まだ何か隠し球があるのか?」

 

「隠し球と言うほどのものではないさ。この場にいる木ノ葉の全員は知ってるものさ」

 

「木ノ葉の全員が知ってる?・・・おい、まさか」

 

キメ顔のガイの言葉に、カカシは考える様子を見せ、その後こいつ正気か見たいな顔になっていった。それは他の担当上忍達も同じで自分達の同期の修行バカのやった事に驚愕していた。

 

「え?どう言う事だってばよ、カカシ先生?」

 

「・・・こいつはな?リー君に呪霊錠を解除させずにここまで来させたんだよ」

 

「「「「「「「「「・・・はっ?」」」」」」」」」

 

下忍達が呆然とした顔になったな。当たり前だよな、自分達が修行の時だけ使っている拘束具を試験に、それも命懸けの試練をやる中、それを付け続けさせるなんて考えないよな。俺も試験当日にリー君を見た時ビックリしたもん。

 

「えっ、あれをやったままあの死の森を攻略したんですか!!?」

 

「何やってんだ、あいつ・・・」

 

「おかしいってばよ。それは!?」

 

「そ、それは」

 

「頭おかしいのか、オメェは!」

 

「流石にそれはやめた方がいい。何故ならあのチャクラ増強ギプスはかなりの重さになるからだ」

 

「幾ら修行と言ってもねぇ」

 

「普通はやらないわよっ!!」

 

「実際、葉の兄貴は任務の時なんかは外していくしな」

 

「うわぁ、あれを付けたままサバイバルとかしたかねえよなぁ」

 

「うん、サバイバルは命の危機もあるからね。流石に修行も一緒にやろうとは思わないね」

 

「ですが彼はやってのけた。凄い人ですね」

 

サクラ、サスケ、ナルト、ヒナタ、キバ、シノ、チョウジ、いの、シカマル、香燐、サイ、白のルーキーメンバーはコンクリートを粉砕するほどの重り4つと呪霊錠を付けたまま戦うリーに驚愕していた。それを振り払うかのように、ガイが指を二本立て、リーに降り下ろす。

 

「行けー!! リー!!」

 

「オーッス!!」

 

次の瞬間、リーの体が消えたと同時に我愛羅の背後に現れた。

 

「ハッ!」

 

そのまま正拳を放つが、砂のオートガードに阻まれて狙いがずれ、我愛羅の頰の横を正拳が通り過ぎる。そして拳の先の壁に衝撃音と共に拳大の小さなクレーターが出来る。ちゃっかり遠当てじみた事も出来てるじゃん・・・やっぱりリーはリソースを体術に振り切ってんなぁ。

 

「くっ、速い!」

 

縦横無尽に駆け回りながら、下忍にしては破格の速度で拳や蹴りを放つリー。そしてリーの連撃に全く着いていけない我愛羅。この場にいる誰もが明らかに上忍以上のスピードを出すリーに注目する中、そんな雰囲気を感じ取りながら、リーの優勢にガイは腕を組み、自慢気に語る。

 

「忍術や幻術が使えない。だからこそ、体術のために時間を費やし、体術のために努力し、全てを体術だけに注いできた。たとえ他の術は出来ぬともアイツは誰にも負けない体術のスペシャリストだ!」

 

びゅんびゅんと風切る音を立て、リーが我愛羅の周りを高速旋回し、背後から攻撃する。しかしその攻撃は砂で止められたが更に一瞬で我愛羅の上に移動し縦回転しそのまま勢いで両足による踵落としを決める。

 

「ぐっ」

 

蹴りを受けた我愛羅は吹き飛ばされる。床に転がる我愛羅を見て、口元を緩ませリーが笑みを浮かべる。ガイが歯をキラリと輝かせ、激を飛ばす。

 

「青春は爆発だぁー!!」

 

「オ――ッス!!」

 

その激励にリーは目を燃やし、速度を上げる。正面から突っ込むリーに我愛羅は砂を波のような盾にして防ごうとした。だが、リーはその盾を利用して自分の姿を隠し、背後に回り込む。

 

「こっちですよ」

 

我愛羅が声のした方へ振り向くと同時に、リーに殴り飛ばされた。

 

「がはっ!」

 

リーが再度片手の甲を見せる構えを取る。

 

「手応えありです!」

 

しかし油断はしない。手を抜くことは、自分にも対戦相手にも失礼というもの。だから、勝負はここから。意気込みを入れるリーに対し倒された我愛羅はゆっくりと起き上がる。だがその顔は砂が張り付いてその奥に本当の顔があり、その顔は、13、4の少年がするには狂気が溢れた顔をしていた。

 

「なっ」

 

「あいつ、体にも砂を付けてたのか」

 

「ああ、ありゃ砂の鎧じゃん」

 

「砂の鎧?」

 

ナルトや俺達は、恐らく敵情視察に来たカンクロウに我愛羅の術について聞いていた。

 

「ああ、あれは最初から自分の意志で薄い砂の防御壁を身に纏いガードするいわば「砂の鎧」、普段身の周りを流動する砂がオートガード「砂の盾」とは違う・・・あれが我愛羅の・・・¨絶対防御‥だ」

 

「二重の防御、なんて強ぇ術なんだ・・・弱点あんのか?」

 

「(いや、一概にはそう言い切れない・・・「砂の鎧」はむしろ弱点の目白押しだ・・・アレはピンチの時以外使わねェからな。何よりオートでない分チャクラを膨大に消費する。「砂の盾」より防御力は劣るし、その上本体に砂が密着することで体は重くなり体力も使う。我愛羅がアレを使わざるを得ないとなるとやはり、今の所防御体勢・・・追い込まれている証拠だ。あのリーとか言う奴、かなりやるじゃんよ・・・けど勝負は見えてる)」

 

ナルトとカンクロウが話す中、試合は進む。

 

「それだけか」

 

「!(なんてガードだ・・・いくら速く動けてもガードを纏っていられては僕の攻撃も意味がない。こうなったら砂のガードの上から強烈なダメージを与えるしかない!・・・蓮華だ!!)」

 

リーは手を考えたようで、ガイの顔を確認している。それにガイは笑顔で頷き、それにリーは笑顔で返す。リーは両手の包帯を緩め始め、ある程度の長さを出し終わると構えを取る。

 

「さっさと来い」

 

「お望み通りに!」

 

またもや一瞬で我愛羅の真下に移動し、顎を蹴り上げる。だがサスケの時より飛ばず、我愛羅も下を見て防御の構えをとっている。

 

「くっ!」

 

「まだまだァ!!」

 

だがリーは構うことなく、更に蹴りを入れ上に上がり続ける。その途中で体の痛みが走ったようで、ほんの一瞬動きが止まってしまう。

 

「くっ」

 

「!!」

 

「(通常の蓮華でさえ体にとてつもない負担が掛かる。あれだけの連蹴りはリーにもヤバイ・・・ここで決めろ、リー!)」

 

「・・・・・」

 

だがリーは痛みに耐えながら我愛羅に包帯を巻き付け、それを掴み頭から回転しながら落下していく。

 

「食らえ!!表蓮華!!」

 

そのまま地面に激突した。リーも激突する瞬間離脱し、無事着地していた。

 

「良し!」

 

ガイがガッツポーズをしながら勝利を確信しているが、激突地点の砂煙がやんでいくと横たわり一切動かない我愛羅がそこにいる。しかし砂の鎧にひびが入り剥がれていく。剥がれてみるとそこには我愛羅本体がいなかった。まるで昆虫の抜け殻のようだ。

 

「!いつの間に砂のガードから!リーがそんな事を見逃す筈が!!」

 

「ガイ、お前が眼を瞑って祈ってる時だよ。リー君は一瞬体の痛みで動きが止まった、その時だ」

 

カカシが説明した時、リーの後ろの砂から我愛羅が出現した。

 

「クク」

 

「!!」

 

リーが振り返るが、その瞬間砂に飲まれてそのまま壁に激突する。そこに更に追い討ちが入る。

 

「ぐはっ!!」

 

「何でリーさんは避けないんですか!このままじゃ」

 

「さっきの蓮華という技は諸刃の剣なのだよ」

 

「え!?」

 

「本来禁術に当たる技だ、あれだけの高速体術は足や体に多大な負担をかける。今は体中が痛み、動きまわるどころじゃない。そうだろ、ガイ」

 

「そ、そんな・・・このままじゃリーさんは」

 

そのままタコ殴りだったがリーの動きが戻り、危機を回避する。構え直したリーを見ると笑っていた。

 

「(ガイ先生が笑って見ててくれてる・・・それだけで僕は強く甦ることが出来る!さらに強く・・・もっと強く!、)」

 

「リーさん、笑ってる。あんなに追い込まれているのに」

 

「イヤ、今度はこっちが追い込む」

 

「えっ?」

 

「木ノ葉の蓮華は、二度咲く!!」

 

「(木ノ葉の蓮華は二度咲く・・・!!)ガイ、お前まさか!」

 

「・・・お前の想像通りだ」

 

「じゃあ下忍のあの子が、¨八門遁甲の体内門‥を開き¨裏蓮華‥を」

 

「・・・そうだ」

 

「なんてこった・・・」

 

「(!!・・・裏蓮華!?)」

 

「ガイ、あの子がお前にとって何なのかまで詮索するつもりはないし、私情を挟むなとも言わないが限度ってもんがある。見損なったぞ、ガイ!」

 

「お前が、あの子の何を知ってる!あの子には死んでも証明し守りたい大切なものがある。だから俺は、それを守れる男にしてやりたかった。ただ、それだけだ」

 

「ガイ、今あの子は¨八門遁甲‥いくつまで門を開ける!?」

 

「・・・五門だ」

 

「!!!」

 

「あ、あの!さっきから何なんですか!¨はちもんとんこう‥とか¨うられんげ‥とかって」

 

「¨八門遁甲‥とは裏蓮華に行くまでの前準備で行う「リミッター外し」の事だ」

 

「リミッター外し?」

 

「そうだ・・・チャクラの流れる経絡系上には頭部から順に体の各部に開門・休門・生門・傷門・杜門・景門・驚門・死門と呼ばれるチャクラ穴の密集した八つの場所がある、これを¨八門‥と言うんだ。この¨八門‥は体を流れるチャクラの量に常に制限を設けているが、¨蓮華‥はその制限の枠を無理矢理チャクラで外し本来の何十倍にも当たる力を引き出す事を極意としている」

 

「ちなみに表蓮華は一の門・開門を開けるだけだ」

 

「!じゃあ裏蓮華は」

 

「開門で脳の抑制を外し、休門で無理矢理体力を上げる。そして第三の生門から裏蓮華に入る」

 

「そ、そんな、表蓮華だけであんなにボロボロになっちゃうのに。それ以上の技なんかやったら」

 

「そうだ。この技はまさに諸刃の剣。八門全てを開いた状態を¨ハ門遁甲の陣‥といい、少しの間五影をも上回る力を手にする代わりにその者は必ず死ぬ!!」

 

 

 

 

 

「終わりだ」

 

「ええ、どっちみち次が最後です」

 

腕を組み、顔を隠しながら息を整えるリー。そのまま精神を集中しだし、我愛羅は何かが来ると察して身構える。

 

「!」

 

「(ネジ・・・サスケ君・・・そして、ナルト君・・・こんな所で僕だけ負けるわけにはいかない!!ガイ先生、認めて下さい・・・今こそ・・・自分の忍道をつらぬき守り通す時!!)第三生門、開!!」

 

目の前で組んでいた手を下ろすと、リーの肌は赤くなっておりチャクラも爆発的に放出されていた。

 

「肌が!」

 

「赤く!」

 

「なんてチャクラだ!」

 

「第三の生門を開いた、動くぞ!」

 

「いや、まだだ」

 

「何?」

 

カカシがが写輪眼でリーを見て動くと予想するが、ガイはそれを否定する。

 

「更に!第四・傷門、開!!」

 

リーは更に第四の門を開放した。

 

「(なんて奴だ・・・努力でどうこうなるもんじゃないぞ)」

 

「はあああああ〜〜〜!!!」

 

更に力を貯め、それが完了した瞬間、凄まじい勢いで突進し我愛羅の足元に移動、真下から顎を蹴り上げる。その威力は凄まじく闘技場の床は粉砕され、俺達のいる上の階にも突風が吹き、飛ばされそうになる。

 

「ぐっ!」

 

「イテっ!」

 

「くっ、我愛羅」

 

「何処だ!」

 

「っ、上だ!」

 

シカマルの声に全員が上を向くと仰向けの我愛羅が天井に向かって飛ばされていた。その我愛羅を追って砂が追うが全くついていけてなかった。

 

「砂なんか、もうまるっきり追いついてないじゃない」

 

サクラはリーの攻撃に砂が追いついてない事に驚愕している。そんな中、仰向けで飛ばされた我愛羅の前にリーが現れパンチを食らわせる。そして飛ばされた先に先回りしたリーが更に一撃。そんなやり取りが超高速で何度も何度も行われる。

 

「(ぐっ、砂の鎧が、剥がされていく!これが、人間の動きか)」

 

「また砂の鎧ですか、こうなったら!」

 

砂の鎧がまたガードしているのが感触で分かったリーは、天井、壁、地面を利用して更に加速し、リーの姿が眼に映らないほどのハイスピードラッシュを仕掛ける。その中、リーの体の至る所から筋肉が切れるのが眼の能力を持つ物には分かった。

 

「筋肉が切れやがった!これ以上は」

 

「リー」

 

「これで最後です!第五・杜門、開!!!」

 

我愛羅に突撃する瞬間、第五門を開き更に力を上げる。そして我愛羅が視覚する前に我愛羅の腹に重い一撃が入る。地面に向かって吹っ飛ぶ我愛羅だが、その勢いが急に止まる。我愛羅の腰に蓮華の時に使っていた包帯が巻き付いている。

 

「(盾の砂が追いつかない!鎧の砂もかなり剥がされた、ヤバイ!!)」

 

「(裏蓮華・・・すなわちそれは、触れることすら出来ぬ高速連続体術!!砂が追いつく筈がない)」

 

「(この技で最後です!)はああああ!!」

 

リーが包帯を思いっきり引っ張って我愛羅を引き寄せる。そこに右手・右足による同時打撃が我愛羅を襲う!

 

「裏蓮華!!!」

 

「「「「「!」」」」」

 

これまで以上の衝撃が会場を襲い下忍達は顔を覆ってしまう。だがその時、この場にいる上忍以上の者達は我愛羅の背負っている瓢箪が砂になっていくのが見えた。

 

「(なにっ!)」

 

「(瓢箪が砂に!)」

 

その瞬間、我愛羅が地面に激突する。少し遅れてリーが受け身も取れずに落ちてくる。

 

「ぐわぁ!!」

 

砂煙が晴れていくと砂のクッションの上にいる、砂の鎧が所々剥がれ我愛羅がいた。クッションによって我愛羅もダメージを軽減したとはいえ、すぐには立ち上がれないようだ。だが我愛羅はリーの方へ手を伸ばして、リーの左手と左足にくっつき術を発動する。

 

「砂縛柩!!」

 

「ぐわああああ!!」

 

「「「「「「「「「!」」」」」」」」」

 

我愛羅の砂縛柩によって左手・左足が潰された。その衝撃でリーは倒れてしまう。我愛羅はそこで終わらず、そのまま砂をリーに向かわせる。あと一歩でリーに砂が届くという瞬間、砂が弾ける。砂が弾けた先には俺達の横にいたガイが立っていた。突如現れたガイに驚いていた我愛羅だが、突如頭痛でも起こったように頭を押さえている。少しして痛みが引いたのかガイに問いかける。

 

「なぜ、助ける」

 

「こいつは、愛すべき俺の大切な部下だ」

 

「(我愛羅には到底理解できぬ言葉だな)」

 

ガイの言葉を聞き、我愛羅は砂を瓢箪に戻していく。

 

「やめだ」

 

「勝者、我愛羅!」

 

「え!」

 

ハヤテの宣言が終わるがこの場にいる全員が驚愕で固まっている。無理もない、手足を潰されたリーが立ち上がったのだから。

 

「(まさか)」

 

「(五門を開けて、手足まで潰されたのに立てるはずが)」

 

「リー、もう終わったんだ。お前はもう立てる体じゃない・・・!(リー、お前・・・)」

 

ガイがリーに声を掛けるが、ガイは何かに気付いたようでその眼には涙が溢れている。そりゃそうだよな・・・気絶してもなお立ち上がっていたんだからな。

 

「(気を失ってさえもまだ、自分の忍道を証明しようと言うのか・・・リー、お前はもう・・・立派な忍者だよ!)」

 

己が忍道を貫かんとした愛弟子を思い、ガイは優しく、しっかり抱きしめる。

 

 




次回で予選は終わる予定です。

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