霊と踊る仙人が異世界を謳歌する   作:蔵元優輔

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中忍選抜試験本選奈良シカマル対テマリ、どうぞっ!


第六十一話

前回、一ヶ月の準備期間が終わりいよいよ中忍選抜試験本選が始まった。第一回戦うずまきナルト対日向ネジが始まった。両者それぞれの術・技を出し合い互角の戦いを繰り広げた。ネジの新技で形勢が傾いたがナルトが九喇嘛のチャクラを解放して状態1の状態になり原作で終末の谷で登場した九尾螺旋丸を使いネジに勝利した。

 

 

 

 

 

 

未だ歓声が鳴り止まぬ中、ナルトが会場を走り回って観客に笑顔で答える。

 

「(走り回る体力が残ってんのか。ったく、よく鍛えられてるな)良しナルト。次の試合があんだ、お前は上に行っとけ」

 

「押忍!」

 

ゲンマに言われてナルトは上に行き、シカマル達と合流する。会場は試験官達が最低限平らになる様に修復し、それを確認したゲンマから次の試合の開始が宣言される。

 

「それじゃあ次の試合を始める。出場予定の2名は降りてこい!」

 

「はあっ!」

 

人の身の丈ほどもある扇子をいとも容易く軽々と操り風を起こす。扇子に飛び乗ったテマリは試験会場へと華麗に降り立った。

 

「残りの一人、降りて来い」

 

「はいよ「頑張れってばよ!シカマル!!」って、はあ!?」

 

テマリに続いて会場に跳ぼうとしたシカマルだが、後ろからナルトに背中を押されて落ちてしまう。落ちる中、背面のまま壁に足を当ててふわりと表現出来そうな程柔らかく静止する。

 

「ったくナルトの奴、あぶねえったらねえな」

 

その滑らかなチャクラコントロールに観客は更にボルテージを上げていく。

 

「(舐めるなよっ!)」

 

「おい!まだ開始とは、ちぃ、試合開始!」

 

試験官であるゲンマの声を無視し、目を鋭くさせたテマリは巨大な扇子を振り上げ、一息にシカマルに接近する。

 

「ラァ!」

 

シカマルの頭目掛けた扇子の一撃は、何も捉えることはなかった。攻撃の余波で起こった砂煙が収まると、会場の壁に苦無を刺してそれに乗っているシカマルがテマリを見下ろしていた。

 

「そう慌てんなよ。試合は始まったばかりだぞ?」 

 

テマリは奥歯をギリッと噛み締めた。必殺の一撃とも言うべき扇子が簡単に避けられたからな。

 

「フン!」

 

憤怒により、一時的に底上げされたチャクラの性質を変化させる。一度、起こしたら止まらない、止められない、止まることなど考えられない・・・それは、まさに嵐だった。テマリが広げた扇子を振るうと同時に凶悪なチャクラが前方に向かって吹き荒れる。風が巻き起こり、砂を持ち上げてシカマルの姿を一瞬にして隠し尽くしてしまう。

 

吹き荒れる嵐の中、テマリの感覚に微細な揺れが引っ掛かった。

 

「逃げ足は速いようだな!」

 

感覚に従い、テマリは顔を試験場の端に向ける。テマリの目線の先には試験場を囲む壁に沿うように木が何本か生えている場所。人が身を隠すには十分なスペースだ。

 

本来ならば、テマリの攻撃が当たっていれば、そこには風に切り刻まれ吹き飛ばされたシカマルの無残な姿が残っていたハズだ。だが、何も残っていないということは、そういうことである。

 

「!!」

 

テマリの予想通りシカマルに風で刻まれた傷はほとんどない。戦闘に支障が出るほどに大きな傷は皆無だった。今度は自分の番と言わんばかりにシカマルは反撃に移る。地面を這いながらテマリに迫る黒い影。それは影だった。

 

“影真似の術”シカマルの一族、奈良一族が得意とする特異な忍術の一つだ。自分自身の影の形を任意に変え、対象の影と接触させると同時に同化させる。その後に影を捕まえた対象に術者の動きを強制させる術である。

 

ただ、この術の速度は速くない。忍相手であっては、不意を打たなくては影真似の術に掛かることなど、よっぽど油断していない限りそうあることではない。威力だけでなく、攻撃範囲もテマリの忍法 カマイタチと比べれば雲泥の差だ。テマリは自身に迫るシカマルの影から逃れるべく地面を強く蹴った。後ろへと飛び擦るテマリを捕まえようとシカマルの影が更に形状を変え、細く伸びている。が、突然、シカマルの影が止まる。腕立て伏せを限界まで行い、床にへばり付く寸前の者のように数秒プルプルと震えた影は、力を失ったように緩慢な動きでシカマルの元へと戻っていく。テマリの唇が弧を描いた。扇子で地面に線を描いた彼女は自身の勝利を確信し、立ち上がる。

 

「影真似の術、正体見たり! どうやら、影を伸ばしたり縮めたり、形を変えるにも限界があるようだな。どんなに影の形を変え、伸ばしても、自分の影の表面積分しか伸ばすことはできない・・・そうだろ?」

 

「ハハ、当たり」

 

 テマリの正確な推測に顔が引き攣るシカマルを歯牙にもかけず、テマリは扇子を縦にして地面と垂直に立てる。

 

「(会場の壁から落ちている影の中で一番離れた壁際から影を伸ばし攻撃してきた今の距離から見て、アタシまでの一直線上にある自分以外の壁の影を利用したとして・・・ここまでが影の攻撃限界距離!!つまり会場の壁の影を差し引いた日なたからここまでが奴の影の伸ばせる攻撃範囲!!15メートル30センチ)」

 

扇子で距離を測ったテマリは続いて笑みを浮かべる。それは肉食獣が弱った獲物を見つけた嗜虐心溢れた表情によく似ていた。テマリの表情とは逆に、難しい顔をしたシカマル。だがシカマルは、直ぐ様腰を落とし両手の指を合わせるポーズを取る、始まったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なの、アレ?あんな印、見た事ない」

 

木ノ葉隠れの里の上忍であり夕日紅ですら呆気に取られたのだから。しかし、彼女の隣に座り、試合を観戦しているシカマルの担当上忍はニヒルに嗤う。

 

「フ、あれは印なんかじゃねーよ。アイツの癖みてーなもんだ」

 

「癖?」

 

「ああ、お前は上忍に成り立て色々忙しくて、先生の修行も自分の班やお前自身がやる時しか余り来られなかったから知らないだろうがな。アイツゆっくり時が過ぎるのを楽しむことができる、そんなジジイみたいな奴でね、アイツは将棋や碁が好きでいつもオレが相手させられるんだが、手が詰まるといつも決まってアレをやる」

 

「何の為に?」

 

「戦略を練ってんのさ。んで、オレは一度もアイツに勝ったことがない」

 

紅はアスマの言葉の続きを待つ。

 

「戦略って、これは実戦。ゲームとは違うのよ、全く」

 

「けど元々、軍師が戦略練るのに使ってたコマがあーゆー遊びになったって言うぜ。言ってみりゃ、シカマルはキレ者軍師ってとこか」

 

「キレ者・・・?」

 

「信じられねーだろ? 忍者学校アカデミーじゃドベのナルトと成績は同レベルだからな。だがな、アイツは『筆記なんてめんどくせー』ってテスト中いつも寝てたんだと・・・まあ、後になって先生にバレた時にゲンコツで地面に沈められてな、やる事はやる様になったがな」

 

下忍の同期組が「ああ〜、そんな事あったな〜」って顔をしてるな。まあ、シカマルのサボり癖というかめんどくせ〜の精神を少し変えとこうと思ってたからな。

 

「話を戻すがな、余りに戦略ゲームが強いんで、ちょっと腑に落ちなくて遊びに見せかけてIQテストをやらせたことがある」

 

「で、どうだったの?」

 

「・・・キレ者もキレ者! あいつはIQ200以上の超天才ヤローだった!」

 

「に、200っ!?」

 

話している間に

 

「思考が終わった・・・今からだな」

 

 アスマは視線を鋭くさせる。一瞬にして精神を切り替えることができるアスマは上忍であることを許されるレベルの実力者と言えよう。そう、下でシカマルの柔軟体操をポカンとした表情で見続けているテマリと比べれば、その実力は雲泥の差であった。だが、テマリも上忍には及ばないものの、下忍の中では随一の実力を持つ忍。今が戦闘中だということをシカマルに思い知らせるべく、扇子を持つ手に力を籠める。

 

「!」

 

 再びテマリカマイタチの術を放つ。

 

「くっ!」

 

それを素早い動きで躱し木の裏に隠れるシカマルにテマリの怒りのボルテージがグングン上がっていく。

 

「いつまで逃げられるかしらねっ!はあっ!」

 

何度も瞬身の術を繰り返し、細かく移動を続けるシカマルに何度もカマイタチを放ち、退路を塞いでいくテマリ。風塵の隙間を縫い、シカマルが影を使い別方向から投げた苦無が迫る。

 

「チィ!」

 

扇子を反転させ、シカマルから放たれたクナイを弾いたテマリは隙を晒してしまった。1秒ほどの、到底、隙と呼べるものではないが、その時間はシカマルに更なる攻めを許す。

 

「影真似の術!」

 

 テマリに迫るシカマルの影。しかしながら、テマリは動かない。

 

「(フッ、無駄だ。この線より内側にいる限り、絶対に捕まることはない・・・いや、待て・・・ヤバイ!!)」

 

 が、練り込んだチャクラを足に集めて、地面を蹴り後ろへと下がった。その判断は正解だ。シカマルの影がテマリを捕まえようと、先ほどテマリが引いた線を越えてきていた。テマリは慌てて数歩下がると、また影が止まる。テマリの前には影を伸ばしたままの、上着を脱いでいるシカマルが立っている。

 

「よく見抜いたな」

 

「・・・なるほど、時間稼ぎは太陽が低くなるのを待っていたのか。壁の影のラインと自分の影の表面積を大きくする為に、陽が落ちれば影は伸びる。そうだろ?」

 

「へっ」

 

「(現在の陽の高さとさっきの攻撃限界距離から計算しても、間違いなくこの距離に誤魔化しはない)」

 

「テマリ!上だ!!」

 

「なるほど」

 

「・・・!!何だ!?」

 

皆が上に注目する中、カンクロウが仕掛けに気付く。それにシノが相槌を打ち、その声にこの場にいる全員が上を向く。そうしているとテマリの前で止まっていたシカマルの影の前に、徐々に影が出来始める。それに気付いたテマリは、これまでの余裕は無くなり逃げるような勢いで後退する。

 

「(・・・!しまった!!)ちぃっ!!」

 

テマリは急速に後退する。それを追う影の槍。

 

「逃がすかよっ!」

 

「(まさか上着をパラシュートにして足りない影作るとは・・・!大した奴だ!影の攻撃で下に注意を引き付け上のパラシュートを気付かせにくくし、上のパラシュートに気付けば今度は下への注意が散漫になる!!・・・スキを突くいやらしい手だ。しかしこれでハッキリした!!影真似の術とは・・・自分の影を表面積分自由に形を変え、影の中にあればその影を自由に切り離して移動できるとりもちの様なもの!!)食らえっ!!」

 

テマリは後退しながらカマイタチの術を放つ。

 

「(掛かってきたな・・・)土遁・土陸返し!」

 

シカマルが印を組み、手で地面を叩いて畳返しのごとく大地を立ち上がらせ、即席の壁を作る。それを見たテマリは影の攻撃を辞めたと思い笑みを浮かべる。

 

「はっ、そんな壁であたしの風が防げるかあっ!!」

 

テマリは構わず風を叩きつけ、辺り一体に土煙が立つ。煙が引くとそこには、ボロボロに崩れた土の壁の後ろにいるシカマルが現れる

 

「フン!まだ無事みたいだな、だがいつまで待つかな?・・・ん?」

 

自身の優位を確かめたテマリだったがシカマルの様子に違和感をおぼえる。注意深くシカマルを観察して更に後ろに目を向ける。

 

「(何だ?あいつの後ろに・・・土の山?何であんな物が)」

 

テマリが考察していると、地面から無数の触手の様な影が飛び出してくる。

 

「なっ!?(地面の下からだとっ!!)」

 

シカマルが捉えようとするが、テマリは何とか捕まらないで後退できた。

 

「影掴みの術ってんだよ」

 

「まさか地面を進んでくるとはな・・・だが、残念だったな」

 

「・・・この手も躱すか」

 

シカマルは避けられたのを確認すると前後の土壁を完全に崩す。

 

「ツメが甘かったわね」

 

「う〜ん、相手もかなりの分析派だな、先をよく読んでやがる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ちんたらやってると会場の影が広がって、奴のテリトリーが増えていく・・・次で決める!)」

 

 扇子を開き、地面に突き立てるテマリは扇子の影で印を組んでいく。

 

「(・・・陽動作戦をやるか。扇子で体を隠し、分身で二人に。一人が飛び出し、注意を引き、その隙にチャクラを最大に練り込んだ最大風力のカマイタチでバラバラにしてやる)分身の・・・ッ!?」

 

 テマリが分身の術の最後の印を組み上げた瞬間、一瞬痙攣したような様子を見せテマリの動きが止まった。

 

「な・・・何っ?」

 

「ふう・・・ようやく、影真似の術成功」

 

シカマルの術成功の言葉を受けて、ナルト達や俺と共にいる下忍・担当上観客達は何故成功したのか驚きながらもタネに気付く。だが影真似の術が当たり、全く動けないテマリは混乱するばかりだ。

 

「なぜ、体が動かない!?ここまで影は届かない筈!?」

 

「後ろ、見してやるよ」

 

「・・・!!(こ、この穴は!!?)」

 

「ああ、さっき俺の術で開けた穴だ。手前の大穴と繋がったな」

 

「まさか、トンネルの中の影を・・・」

 

「御名答、さっきは一瞬だったがな」

 

「(まさに計算ずくの詰め将棋・・・テマリに影の限界線をわざと何度も計らせたのもこの穴を使った最後の罠への伏線だったってわけか・・・日に映る影だけを追いかけ限界線を常に計算しその外側で戦うテマリを計算外の目に見えぬ影で追い詰めしかも、背後から捕まえるとはな。これは逃げようが無い・・・)」

 

「(ま、まさか・・・あの上着の影を使った攻撃はアタシをこの場所に誘導する為に仕掛けていたのか・・・あれも伏線っ!!コ、コイツっ!?)」

 

「皆、シカマルの試合に魅せられてるな」

 

「ああ、中忍試験でここまでの頭脳戦はお目に掛かれないからな」

 

観客達も固唾を呑んで勝敗を見守っている。

 

「次で、詰みだな」

 

アスマが次の動作で終わる事を予期し、同時にシカマルが歩いてテマリに向かって歩いていき、テマリが影によって同じ動きを強制される。

 

「だ、だがお前にはこの状況でアタシを倒せる程の術は無い筈!ならば、このまま術の効果時間が切れればその瞬間、お前は終わりだっ!!」

 

「・・・確かに、俺はあんま破壊力のある術は無えけどな、やりようは幾らでもあるんでな・・・影寄せの術!!」

 

そう言ってシカマルは、触手の様にした影で手元から起爆札などを掴みながらテマリをミイラの様に巻いていく。

 

「くっ、離せっ!」

 

「離さねぇさ、今の影寄せの中に起爆札なんかを巻き込んでんだ。お前さんはそのままボン!って訳だ」

 

「なっ!?」

 

「テマリっ!!」

 

シカマルの説明にテマリは必死に抜け出そうとするが影に全身くまなく包まれてしまっている。あれは出られないな。そのまま10数秒経ち、影が爆発し辺り一面に煙が拡散した。同時にテマリの絶叫が響き渡った。

 

「ああああっ!!!」

 

煙が徐々に晴れていくと、テマリが大の字で倒れており気絶している様だった。

 

「ばーか、今のは影煙幕の術っつーんだよ。起爆札は全部偽物で今回は唯の煙幕と閃光玉だ。そんなにダメージは無えよ・・・忍びってのは二手も三手も先を読むもんだろ?」

 

「勝者、奈良シカマル!!」

 

「ふぃ〜、終わったぁ」

 

ゲンマの勝者宣言で大歓声が起こる。皆からの賞賛を受けて、シカマルは一気に気が抜けた顔になっていた。

 

「まさかここまでやるとはな・・・」

 

「やりやがったな、あいつ。大したもんだ」

 

「流石はシカマルだね」

 

下忍組が乗り出しながら声を掛けている中、再不斬やアスマ、俺が話す。見事な策士だよ、シカマル!




次回はオリジナル回、香燐対白です。
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