01_プロローグ
「うぅ…こんな最期ってないよぉ…ぐすっ」
誰かが泣いてる…
「バランさんすごく頑張ったのに…
不器用だったけど、すごく頑張って家族を守ろうとしたのに…」
うん、うん…
そうなんだよ…
「ラーハルトだって、一回死んじゃって、父のように慕っていた人を失って、
ひっく、その息子であるダイ君も結局行方不明のままで…」
もっと一緒にいてほしかったよ…
もっと家族としての時間を過ごしてほしかったな…
「勇者ダイも…うぅ…ぐすっ…
地上からいなくなっちゃった…
続編も出てないから結局どこにいるかもわからない〜!
うぁ〜〜〜〜ん!」
嬉しいな、そんなに彼らのために悲しんでくれて
ねえ、ならさ
お願い
助けてあげてよ
「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「おお、ドラや。
いきなりどうしたんじゃ。
よしよし、良い子じゃから泣きやむんじゃよ」
そう言って近づいてきた人影は優しく頭をなでてくれた。
先ほどまで感じていた悲しい気持ちが幾分柔らいで、固く閉じたまま涙を流していた瞼をそっと開ける。
頭をなでてくれた人は自分とそんなに変わらない大きさで。
人間ではない、鬼面道士のフォルムといかつい顔面を真近で見た私は驚きで一瞬泣き止んだものの
次の瞬間にはまた大声で泣き出してしまったのだ。
「ふぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜ん!」
「ド、ドラや、どうしたんじゃ? どこか痛いのか?怖い事でもあったのか?
大丈夫じゃ、ブラスおじいちゃんがついておるからな??」
「ピィー」
ここ、どこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜???!!!!
私さっきまで部屋で『ダイの大冒険』読んでたのに〜〜〜〜〜〜〜!!!!
前世は日本に住む普通の会社員だったと記憶している。
性別は女。
まあまあオタク。子供の頃からアニメや漫画が大好きで、成人してからもいろんな作品を楽しんでいた。
特にファンタジー作品。
その中でも『ダイの大冒険』は愛読書で何回も読み返していた。
登場人物全員好きだけれど私の推しはなんと言っても『
勇者ダイ
正統な
陸戦騎ラーハルト
勇者ダイの成長と活躍を描いた作品のはずなのに彼らが辿る運命は非情だ。
作品の主人公、勇者ダイ。まだ12歳なのに世界の運命を背負い、大魔王を死闘の末打ち破る。
そこで大団円になれば良かったのだが脅威を取り去るため地上から姿を消し、そのまま消息不明に…
結局行方がわからないまま物語は完結してしまう。
前述の主人公の父親。戦いに明け暮れた人生を送った人で、作品の“業”をこれでもかと詰め込んだキャラクター。
戦いに明け暮れる運命の「竜の騎士」。しかし彼はその人生で真に愛する女性と出会う。
愛する人との間には息子も生まれるが幸せな時間も長くは続かず…
最愛の女性は人間の手によって儚く散り、愛する我が子も行方不明。
彼は人間を強く憎むようになり悲しい復讐の鬼と化す。
そして最期は戦いの最中に息子の目の前で命を落としてしまう。
陸戦騎ラーハルト
バランに拾われて育てられた半魔族の青年。
魔族の父親と人間の母親の間に生まれたハーフで、彼もまた人間に迫害され母親を失った過去を持つ。
バランを父のように慕うも主人公サイドとの戦闘で死亡。
バランの手により蘇るがその時にはバランはすでに息絶えており、
新たなる主人と定めた主人公とも最終戦闘後には離れ離れとなってしまう悲しい宿命を背負っている。
何この一家悲しすぎる…
せめてもう少し救済は無かったのだろうかと思わずにはいられない。
現代日本の目まぐるしい日々の中で、久しぶりにゆっくりと「ダイの大冒険」を読み返していた。
最後まで読みきって、子供の頃とは違う視点で物語を考察して何度目かわからない感動と感傷に浸っていた。
ただそれだけだったはずなのだが…
気がついたら(推定)デルムリン島にいた。
な、なんで??? Why???
最初の大混乱の波が落ち着いてきた時に思った事は「ダイの大冒険好きすぎて頭おかしくなったのかな」である。
確かにファンタジー作品が大好きだった。
転生・転移・チート系etc…満遍なく楽しんでいたし「もし自分がこの作品の世界の中に生まれていたら…」と妄想することだってしょっちゅうだった。
今見ているのは自分が作り出した幻覚か白昼夢か…
そう思って数日寝て起きてを繰り返したが、一向に目覚める気配が無かったので諦めて現実として向き合う方向へシフトした。
「夢を見ている」と安易に片付けるにはリアリティが有りすぎたのだ。
自分が前世住んでいた地球の、日本、あるいはどこかの国に転生したのなら夢でも説明が付いたかもしれない。
だって自分の知識を元にして細部までリアルに想像可能だ。
しかしここは(推定)デルムリン島。見たこともないモンスターや動植物のオンパレードで自分の想像力のはるか外の部分まで全てが緻密で本物としか思えないのだ。
ちなみになぜ(推定)なのかというと、
・主人公のダイ君がいないから
である。
主人公のダイ君がいない「ダイの大冒険」って…???
かなり混乱が深くなってきたので数日間ゆっくりと現状の確認に勤しんでいたわけである。
で、現状を箇条書きすると
・今自分がいる場所は「ダイの大冒険」の世界にあるデルムリン島
・島にいるのは自分とブラス老とゴメちゃん。他はすべてモンスターのみ
・自分はブラス老に拾われて育てられた、島で唯一の人間
・名前は「ドラ」
・性別は女の子で年齢は3歳くらい
これで性別が男の子なら主人公成り代わり系転生だと思ったんだけど…
性別も名前も違うし、顔も全然「ダイ君」じゃないし、となると原作「ダイの大冒険」ともはやどれだけ乖離してるのか想像もできない。
まず島の外の情報がわからないから確かめにも行けないし…
ちなみになんで「ドラ」って名前なの?とブラス老に聞いたら
「昔お前を拾った時にゆりかごに付いていたネームプレートに「D」という字だけ残っておってな…
Dで始まる名前のほうがお前のご両親も喜ぶと思い
ドラゴンのように強くたくましく育つように「ドラ」と名付けたんじゃよ」
ブラス老、わかってたけどあんまりネーミングセンス無…
いやしかし
…ただなんとなく前世日本の国民的キャラクターの猫型ロボットが頭を掠めるけれど
名前を呼ばれるたびに連想してしまうけれど
前世故郷を忘れないという意味でも今では気に入っているのでなかなかに良い名前だと思う。
「
「
「
「
「おお…!一度教えただけで魔法が使えるとは…!?
ドラは魔法の天才じゃ…!!」
「えへへ、ありがとおじいちゃん」
自分が「ダイの大冒険」の世界に転生したと気づいた時から少し経過した。
ドラちゃん4歳です。
前世の記憶が日を追うごとにぼんやりとしてきてだんだんとこの世界に精神が馴染んできたように思う。
この体の本来の性格に前世の魂が馴染んでいっているという感覚だ。
性格は女の子らしく甘えん坊で寂しがりや。
そこに前世の知識と性格が合わさって『甘えん坊だけどおしゃまでしっかりした女の子』って感じで落ち着いた。
そして魔法の基礎訓練として教わった【瞑想】をしていて分かったのだが自分は『
魔力とは違う力の奔流が自分の中に眠っているのを感じたのだ。
ブラス老から少しずつ魔法を習っているが、おおざっぱな説明でも頭の中で瞬時に仕組みが理解できるし
一度覚えたことは忘れない、練習すればするほどどんどん体に馴染んでぐんぐん上達する。
人間を育てるのが初めてのブラス老は「天才」の一言で片付けてしまっているがこんな幼児はっきり言って異常だ。
原作でも「
今の暮らしは気に入ってる。
南の島だから食べるものには困らないし、特にする仕事もない。
ブラス老から魔法を習って、料理や掃除の手伝いをして、たくさん食べて、たくさん寝て、島のモンスター達とたくさん遊ぶの繰り返し。
「ゴメちゃん!海岸に貝殻拾いに行こう!」
「ピィ!」
「夕飯までには帰ってくるんじゃぞ〜」
「はーい!」
「ねぇゴメちゃん」
「ピ?」
「私に生まれる前の記憶があるって言ったら信じてくれる?」
「ピッ!」
「ほんと!?」
「ピッ!」(こくこく)
「あのね、私デルムリン島が大好き。おじいちゃんも、ゴメちゃんも、島にいるモンスターのお友達もみんな!
けどね、もしかしたら近い将来大変なことが起きてみんなが傷ついちゃうかもしれないんだ。
私、みんなを守れるように強くなりたいの。
ゴメちゃん協力してくれる?」
「ピィ〜!♪」
「ありがとう!ゴメちゃん大好き!」
よし、この世界がどれだけ原作と乖離してるかわからないけどもしもの時のために今から全力でレベルアップ目指そう。
せっかく剣と魔法の世界に転生したんだから目一杯楽しみたいし!
ゴメちゃんと島のみんなにも協力してもらって「地獄のレベリング大作戦。作戦名はガンガンいこうぜ」を始めるぞ〜。
ふっふっふ…
もしもこの世界が私の知っている「ダイの大冒険」だとして…
・ダイ、バラン、ラーハルトの絶対生存ルート
・超竜軍団の進軍阻止(出来れば)
・大魔王バーンの地上消滅計画阻止(出来れば)
を当面の目標としよう。
「がんばろうね、ゴメちゃん」
「ピ、ピィ…」
あれ?なんでゴメちゃん引いてるの?
連載小説初挑戦。
ゆっくり更新予定。