ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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メリークリスマース!
クリスマスっぽい小話やイラストなんも間に合わなかったすみません!
申し訳程度ですが後書きに落書き1点あります。


93_消息不明(イラストあり)

「ブラス殿、大変世話になった。

娘のみならず私どもにまで手を差し伸べてくださり感謝の言葉もない。

この御恩はまたあらためて、必ずや返させて頂く」

「ブラスさん、ありがとうございました!」

「なんの、大した事はしておりませんわい。

…ドラの事、どうかよろしくお願いいたしますですじゃ。

是非、親子三人でまたデルムリン島に遊びに来てくだされ。

それが何よりのお礼ですじゃ」

「うん、必ずディーナを連れて一緒に帰るね! 約束するよ!!」

「…ああ、必ず。親子三人でまた来ると誓おう」

 

たった一晩世話になっただけだが、ディーノはすっかりブラスに懐きデルムリン島の怪物(モンスター)達とも仲良くなったようだった。

ブラスの後ろで大勢の怪物(モンスター)が名残惜しそうにディーノに手を振っている。

バランとブラスが固く別れの握手を交わし合う横で、ザムザがドラキーやホイミスライムに泣いて縋りつかれ迷惑そうな顔でそれらを引き剥がしていた。

そんなザムザのもとに島に駐留しているロモス王国の騎士達が近づいて声をかける。

 

「ザムザ殿、勇者殿の救援に向かわれるとか…ご武運をお祈りします」

「非力な我らに変わり、どうか勇者殿のお力になってあげてください」

「ザムザ殿ほどの知者が勇者殿に加勢してくださるなんて…心強いです!!」

 

突然そんな言葉をかけられたザムザは絡みつく触手を引き剥がしてホイミスライムを遠くへ投げるとまるで意味がわからん、という顔をして騎士達を見た。

それもそのはず、ザムザはロモス王国の騎士達と積極的に交流した事など無かったからだ。

だというのに何を思ったか見当違いな事を言う人間達に対して、ぞんざいな態度で間違いを指摘した。

 

「なんだお前らは? 俺はドラを助けに行くのではない。ハドラー様が窮地だと言うから駆けつけるのだ。

ハドラー様は父上を魔王軍へと導いてくれた大恩あるお方だからな…俺は勇者の小娘ではなく魔王であられたハドラー様を助けに行くのだぞ!

期待が外れて残念だったなぁ?! キィ~ヒッヒッヒッ!

 

…おい、なんだその『まったく素直じゃないなぁ』という表情は!?

やめろ! そんな顔で俺を見るなこの無礼者どもッ!!」

 

手短に挨拶を済ませ、ブラス老、ロモス王国の騎士達、大勢の怪物(モンスター)に見送られてバランとディーノ、ザムザはデルムリン島を出発した。

南の果てから北の果てへと…いくつもの大陸を跨ぎ急ぎ帰還した彼らであったが、つい昨日までそこにあったはずの死の大地の面影は無く、それどころかあの荒涼と続いていた岩原の一欠片すらも残ってはいなかった。

 

「あれは…!?」

「バーンパレス…?!!」

「………ッ!?」

 

海上に大きな影を落とし、大空の支配者のような顔をして悠然と浮かぶ巨大要塞…

バーンパレスからビリビリと伝わってくる異様な存在感から、あそこに大魔王バーンがいるのだという事がバランには一目で見てとれた。

しかし今、重要なのは大魔王の所在ではない、娘の安否である。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)の共鳴を利用して気配を探り思念波で呼びかけてみるが返ってくる声は無く、消えた死の大地と同様痕跡さえも発見する事は叶わなかった。

最悪の事態がバランの脳裏を過り、かつて妻ソアラを失った時と同じ絶望感がバランを襲おうとした時だった。

 

「大丈夫だよ父さん、ディーナはきっと無事だよ!

俺、感じるんだ…ディーナの生命力を…!

それにディーナから預かったこの剣もまだ輝きを失ってない。

探し続けよう! そうすればまた見つかるよ、絶対に!!」

「貴様の娘がたかが大地が吹き飛ぶ程度の爆発で死ぬほど繊細なわけがなかろう。

心細さに泣き伏すような殊勝な神経でもしていればまだ可愛げがあるものを…

あの小娘の事だ。今頃どこかでのうのうと生きているに決まっているわ!」

「ディーノ…然様であった。親である私が諦めかけるなどあってはならない事であったな…

世界中を探し続け、一度は見つけたのだ。

また必ず見つけてみせる…!!」

「おい、俺の言葉は無視か貴様」

 

傍らのディーノが手にしている剣を握りしめながら、力強い瞳でバランを見つめた。

息子の激励に、心中を読み取られたバランが一瞬だけ気まずそうに顔を顰め…しかし絶望の中で一縷の望みを捨てなかった過去を思い起こして力強く頷く。

再び何か手がかりは無いかと海上を彷徨い続け数時間が経過した頃であろうか。

 

「………バラン様ーーーッ!!」

 

遠くの視界から大きなスカイドラゴンが高速で近づいてくる。

 

「ご無事でしたかバラン様!?」

「ガルダンディー! お前も無事であったか!」

「ハッ、竜騎衆は皆無事です! ディーノ様もご無事なご様子で…んん!?

もしや、お嬢はバラン様とご一緒ではないので?」

「…うむ、その様子ではお前達のもとにも娘はいないようだな」

「はい、人間どもも必死になって行方を探していますが未だ見つかってません。

我ら竜騎衆はバラン様とご一緒である可能性が高いと判断し、俺は空の上から。ボラホーンは何か手がかりが無いか海中を中心に捜索を、ラーハルトは地上をくまなく探しておりました」

「そうか…」

「何はともあれ一度拠点にお戻りを。ラーハルトが今にも発狂しそうな按配でして…一睡もせずにお二人を探し続けてます」

「ああ、わかった。

拠点に着いたら人間どもの話も聞いてみよう。

何か手がかりが掴めるやもしれん」

「…!! 承知しました」

「父さん…」

 

かつてあれだけ人間を憎んでいたバランが、人間の意見も聞きたいと言い出した。

人間への憎悪が未だ冷めやらぬガルダンディーは言葉では従ったが、納得はしていないのか表情で難色を示す。

一方ディーノはその顔を少し綻ばせて、人間へと歩み寄る姿勢を見せ始めた父の姿に胸の奥が温かくなるのを感じた。

 

そうしてガルダンディーに案内された拠点に到着すると、まるで蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

 

「バラン!! おお、ディーノも無事であったか!!」

「クロコダインさん、心配かけてごめん。俺も父さんも大きな怪我はしていないよ」

「良かったわディーノ君…!」

「朗報、と言いたいところだが…」

「おい、バランの親父さんよぉ! ドラはどこだよ!? まさか一緒じゃねえのかよ!?」

「ポップ、落ち着きなさいよ! 二人が無事帰ってきただけでも奇跡なのよ!?」

「すまねえ、けどよぉ…!」

「ポップさん…」

「ポップ…」

「………」

 

バランとディーノが帰還した時、森の中に隠されるようにして築かれた砦の中は歓声で沸き返った。

しかし肝心の勇者がいないとわかると段々とその声は沈んでいき、誰の顔にも落胆の色が浮かび上がる。

ポップ達はバランから爆発の瞬間にドラの瞬間移動魔法(ルーラ)によってデルムリン島に飛ばされていた事を伝えられると、ドラも瞬間移動魔法(ルーラ)でこの広い世界の何処かに移動したかもしれないと心当たりのある場所を上げ始めた。

しかしもともと世界中を瞬間移動魔法(ルーラ)によって移動可能なドラの行動範囲は果てしなく、ポップ達が知るだけでも地図の上には大量のバツ印が並ぶ。

 

「これは…いよいよ各国の指導者に伝令を送るしか無さそうね」

 

静まり返った部屋の中、ポツリと呟いたレオナの声が響く。

 

「伝令って…」

「私達だけではなく、世界中の人達にも協力してもらってドラちゃんの行方を探すのよ。

ドラちゃんは絶対に生きてる。この世界のどこかには必ずいるはずよ。

けど範囲が広すぎて私達だけでは探すにも限界があるわ…

こうなれば残った手段は、世界中の人間全員の力を借りて探すしかないじゃない!」

「ごめんなさい、こんな時にお役に立てなくて…!」

「あっ、いや、メルルが役立たずだなんて誰も言ってないって!

事実、占いでバランが生きてるって出たのは当たってたじゃねぇか」

 

レオナはエイミを引き連れて早速各国の指導者達の協力を取り付けるために部屋を出た。

残されたアバンの使徒も瞬間移動魔法(ルーラ)を使えるポップが中心となりドラが行きそうなところ…これまで旅してきた場所をしらみ潰しに探してみると言って飛び出していく。

そしてその日の午後には各国の指導者達の協力のもと、世界中の人々に向け『勇者捜索』のお触れが出された。

 

  『勇者ドラを見つけ、保護した者には報奨金10,000G』

 

シンプルにして破格の報酬に世界中の人々が血眼になってドラの行方を探した。

当然大量の偽物が「私が勇者ドラです」と名乗り出てきたが、「ならば額の紋章を光らせてみよ」という一言で皆あっけなく撃沈した。

そうして世界中が行方不明となった勇者ドラの捜索に明け暮れたが勇者発見の報は一向に告げられる気配がない。

日が経つに連れて、大魔王に立ち向かっていった勇者が消えたという事実だけが徐々に人々の心に暗い影を落としていったのであった…

 

 

さて、時は少し遡る。

ドラが意識を取り戻した時、目を開いてまず入ってきた光景に思わず「知らない天井だ…」と呟きそうになった。

正確には天井ではなく、前世の知識のみで知っている天蓋…それもこの世界の王侯貴族ですら贅沢すぎて天蓋には使用しないような光沢のある絹を幾重にも重ねた帷帳が目に入ってきた。

姿勢はそのままに体に異常が無いか、着ている服の状態などを神経を張り巡らせて調べる。

 

(あいたたた…大きな怪我はしてないけどあちこち打ち付けちゃったみたい。

さすがに竜闘気(ドラゴニックオーラ)で黒の核晶(コア)を覆いつつ自分の体も覆ってさらに呪文を同時発動は無理があった…

どれくらい気絶してたんだろ。

服は…あ、良かった。あちこち破れてるし汚れてるけどちゃんと着てる。

リュミベル…はそばにはいない。

 

というかここ、何処…?

体にかかってる上掛けもシーツも全部絹…こんな贅沢な寝室、王族以外に使えないよね…?)

 

ゆっくりと起き上がってあたりを見回すと、自分が寝かされていたのはだだっ広い部屋の中央に置かれたキングサイズのベッドの上だった。

高い天井から吊り下げられた豪奢な天蓋。他に調度品はほぼ無く、天井から床に至るまで全てが真っ白。極限まで無駄を省いた機能美が醸し出す上品さ…と言えば聞こえは良いが無機質で温もりが一切感じられず、なんだか薄ら寒くて居心地が悪い部屋だった。

 

「勇者が目を覚ました~っ!」

「おや、ようやく眠り姫がお目覚めかな?」

「ピッ?!」

 

部屋に誰かいるとは思っていなかったドラがすぐそばから聞こえてきた声に素っ頓狂な声をあげた。

 

「キルバーン?!!」

「グッモーニ~ン♪ 今の気分はどんな感じだい? 自分が今どんな状況か、わかるかな?

爆発に巻き込まれた君は丸一日意識を失っていたんだけど…ここは一体何処だろうねえ?」

「…バーンパレス」

 

キルバーンがわざとらしく手を叩いて拍手する。

 

「正解。さて、君の処遇についてだけど…」

「…キルバーンならいいや。もう少し寝よ」

「…は?」

「おやすみなさーい」

 

そう言って起こしていた上体をころりと横にしてドラは上掛けを被り直した。

やがて寝息を立て始めた少女にピロロがそっと近寄る。

 

「こ…こいつ本当に寝始めやがった…ッ!?」

 

狸寝入りではない事を確かめたピロロが声色を作るのも忘れ思いがけず素の口調で喋る。

生まれてこの方数百年、見かけで侮られる事はあれど人形(キルバーン)を使役するようになってからは恐怖と絶望、もしくは敵意に満ちた表情しか向けられる事がなかったピロロは二度寝を始めたドラを信じられない表情で見つめた。

 

「どういう神経してんだこのクソガキ…!?

 

ん゛んっ…

起きろ! 起~き~ろ~っ!!

キルバーンが喋ってる最中に寝るんじゃな~い!!」

「う~ん…うるさいなぁ…

すぐに殺す気無いんならもう少し寝かせてくれたっていいじゃん~。

総シルク製の寝具なんてこの機会逃したら二度と使えないんだから堪能させてよ~」

 

ギャンギャンとけたたましく叫ぶピロロに向かって枕を頭に乗せて耳を塞いだドラが持ち前の図太さを発揮する。

 

(牢屋に入れられてないところ見ると寝室に寝かせたのはバーンの指示かな…

ミストバーンかキルバーンだけの判断なら寝てる間に殺すか良くて牢獄に入れるでしょ。

なら逆に私の事は勝手に殺せないはず、今のうちに対策考えとかないと…

 

…にしてもこのシーツ、地上なら王族が着るドレスに使われるくらい上等な生地使ってるなぁ。

やっぱりバーンってすごいお金持ち…大魔王って自分で名乗るくらいはあるわ〜)

 

変なところで大魔王バーンの莫大な資産力に感心するドラ。

その時地上ではバランとディーノ、そしてブラスにデルムリン島の怪物(モンスター)達が爆発に巻き込まれ消息不明となったドラの無事を一心に祈っていた。その祈りが通じたおかげかどうか…ドラは敵地のど真ん中で絹のシーツの感触をじっくりと堪能したのであった。

 

 

 




クロコダイン&バラン「「無事でいてくれ…ドラ(ディーナ)よ!」」
ザムザ「何を言っているのだこいつらは…無事に決まっている。
あやつが死んだのなら魔王軍がここぞとばかりに世界中に触れ回るだろうに…阿呆か」

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