ドラの大冒険〜魔法特化の竜の騎士〜   作:紅玉林檎

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謎時空、本編ではあり得ない登場人物の揃い方してます。
フワッとした感じで読んでください。


 閑話_クリスマス小話

「みんなで映画を見よう!」

 

「…映画?」

「映画って、何?」

 

突然ドラの口から出た意味不明な単語にポップとマァムは首を傾げた。

 

『ダイの大冒険』の世界に来てからというものドラは季節ごとのイベントに触れる機会が一切無かった。

それもそのはず。この世界に『季節ごとのイベント』などというもの自体が存在しないからだ。

北と南で環境の差はあれど、どの地域も基本的に一年を通して気候はさほど変わらない。

要するに四季が無いから季節の移ろいを感じるなんて風流な習慣は無いし、季節の節目の行事なんかも生まれない。

 

村や町ごとに祝祭日はあれどそれがいつ催されるかはバラバラだし、なんならほとんどの村が一年に一度、収穫祭という形でその日にお祝い事をまとめてしまっている。

誕生祝いや長寿に対する祝いといった個人に対する祝福もやってたりやってなかったりまちまちで、要するに『全員がその日を祝って過ごす日』というものが極端に少ないのだ。この世界は。

加えて続け様に起きた魔王軍による侵攻のせいで物資も手に入りにくいから、ますます祝祭ムードは遠のいている。

 

大切な人にプレゼントを贈り合わないか? と提案したかったが、文化的な素地が無いし準備する時間も足りない。

ならばせめて「クリスマスの定番映画を全員で見よう!」というのがドラの出した精一杯の案であった。

 

『映画』とは、前世日本で広く楽しまれていた娯楽で物語を人々が演じてそれをいつでも見れるようにしたものである。

要するに記録された演劇や歌劇だと大雑把な説明だけして、百聞は一見にしかずとさっそく観てもらう事にした。

 

アバンの使徒はもちろん、バランとディーノも一緒に見よう!とドラが強引に誘い、バランが見るなら我々も…と芋づる式で竜騎衆も参加した。

クロコダイン、三賢者、メルル、獣王遊撃隊…とどんどん部屋の中に人が集まってくる。

ある程度席が埋まったところでドラがリュミベルに映画の再生を命じた。

 

大きな壁一面にプロジェクションによって『ホーム・ア○ーン』と大きく映画のタイトルが映し出される。

クリスマス映画の定番中の定番。最強の自宅警備員が家に泥棒に来た悪者をやっつける話である。

これならクリスマスが何なのか知らなくても話の大筋はわかるし、老若男女関係なく楽しめるだろう。

 

映画が始まり、まずガルダンディーとボラホーンが不思議そうに首を捻った。

 

「家の中のものが欲しいってんなら殺してから全部持っていけばいいじゃねぇか。なんでこそこそ空き巣なんかしてんだこいつら」

「見るからに弱そうな人間どもだ。正面から行く勇気が無い小物なのだろうよ。フン、性根が浅ましい上に度胸も無いとは軽蔑するな」

 

ナチュラルに強奪する側の視点で喋る二人に周囲の冷たい目線が突き刺さる。

次にクロコダインが眉を顰めた。

 

「むぅ…懸命に歌う少年を揶揄い笑うなど、許せんな。まわりの大人はなぜ止めないのか」

 

と保護者の視点で唸り声を上げた。

結局兄と仲違いをした主人公が屋根裏部屋行きになったところでマァムが

 

「ちょっと、この子に対して厳しすぎるんじゃないの!? 可哀想よ!!」

 

と憤慨。

続くシーンでも

 

「な…!? 我が子を忘れて旅に出ただと!? 信じられん…どこか、まともな里親に引き取られたほうが良いのではないか!?」

 

とヒュンケルが少年の身の上を心配し出す。

 

しかし一人置き去りにされた主人公はへこたれる事なく一人暮らしをエンジョイ。

全員がホッと胸を撫で下ろしたところで、少年に差し迫る魔の手が…

 

そこからはもう、全員大興奮だった。

 

「あの罠…! 相手の心理をよく読んだ非常に上手い手だな。是非魔王軍にスカウトしたい」

 

とザムザ。

獣王遊撃隊は捕まりそうになる主人公をハラハラと心配し、あと一歩のところで悪者達が罠に嵌った瞬間全員で拍手喝采した。

チウは映画の間中、熱心にメモを取って主人公が仕掛けた罠の数々を食い入るように見ている。

レオナやエイミ、マリンなどはあまり楽しめていないかなと心配したが、ところどころ映る豪華なクリスマスツリーや出演女優の着ている洋服やアクセサリー、イルミネーションされた街などをキラキラとした目で見つめていた。

罠にかかった悪者が股間を強打したシーンでは、ポップが涙目になりながら「もうそのへんで勘弁してやってぇ…」と訴えていた。

 

やがて物語も終盤に差し掛かり、少年とその母親が再会出来たところでバランとディーノ、ラーハルトが目に涙を浮かべた。

ハッピーエンドを迎え、エンドロールが流れ出すと全員が満足そうな顔で口々にドラに礼を述べる。

 

「いや~面白かった!! 映画ってすげえな!!」

「ドラの中にいる精霊が住まう世界を垣間見れた、他にもあれば見せてくれ。興味がある」

「ワッハッハ!! 最初はどうなるかと思ったが勇気ある少年だったな!

あの小さい体で大人二人に立ち向かうとは、良い根性だ!!」

「ねね、ドラちゃん。もっと素敵な服やアクセサリーがたくさん見られる映画が見たいわ!」

「あの街並み…素晴らしかったですね。街の作りがわかるような映画があれば見せていただきたい」

「孤独で素っ気ない態度の男性を愛する女性がやがて結ばれるような恋物語があれば是非!!」

「家族がまた再会出来たのは何よりであった…」

「あの子、お家で一人きりだったのに凄い勇気だったね! …俺とは大違いだ」

「母の愛というものは、どの世界でも変わりないのですね…」

「獣王遊撃隊の諸君!! 彼を見習い、これから敵を撃退するための罠を研究するぞ~!!」

「「「ギュオォーン!!」」」

 

「みんな、楽しんでくれたくれたみたいで良かった~!

また映画みんなで見ようねっ!」

 

ニコニコと笑いながら部屋を後にするドラの後ろ姿に、口には出さなかったが全員が心に同じ感想を思い浮かべた。

 

((((あの主人公の太々しさと容赦の無さ…ドラ(ちゃん)にそっくりだったな…))))

 

 




ドラ「ぷぇっくしょい! 風邪かな…?
次はどんな映画観てもらおうかな〜♪ やっぱ続編(より殺意の高い罠満載)がいいかな?」
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