「クックククッ…フハーッハッハッハッハッハ…!」
広間に大魔王バーンの笑い声が響き渡る。
大口を開けて笑う大魔王の姿がよほど珍しいのか、ザボエラにキルバーン、ドラに侍っていた魔族達までもが揃って目を点にした。
「クックックッ…、あ、愛と来たか…
極めて曖昧で不合理な…! そのような世迷言で余に歯向かうとは、見上げた精神力…
いや、盲信力とでも言うべきかな?
根拠の無い理屈をそうも胸を張って突きつけられては、さしもの余も反論の余地が無いではないか!」
ククッ…
と、何がおかしいのかいつまでも笑いが引かない様子のバーンを頬杖をつきながら眺めていたドラが気だるげに口を開いた。
「ねえ、もう帰っていい〜?
お腹いっぱいになったし、話も終わったし、私地上に戻りたいから帰るよ?
みんな連れてまた来るから、今日はもう解散でいいよね?」
「良いワケがなかろうッ!! おい、お前達!!
その小娘を引っ捕えよッ!!!」
「「「ハッ!!」」」
ザボエラの命令でドラに侍っていた給仕達の姿がぐにゃりと歪んで変化した。
アークデーモン、アンクルホーン、シャドーサタン…
細身の美青年らの姿からはかけ離れた巨体がドラを捕らえんと掴みかかって来る。
「わ〜〜〜んっ!! イケメンに囲まれて気分良かったのに〜〜〜っ!
ディティールが雑! 最後までちゃんとイケメン保ってよ〜〜〜ッ!!!」
言いつつも
キルバーンが大鎌を一振りして爆煙を払うと後に現れたのは床に倒れ伏す
微笑を崩す事なく豪奢な椅子に座す大魔王バーンをミストバーンは暗黒闘気による結界で守り、ドラを抹殺する許可を視線一つで主君に求めた。
「そう急くでない、ミストバーンよ。
余の魔力で編んだ結界によりこのバーンパレスから脱出する事は不可能なのだ。じわじわと獲物を追い詰めていくのも狩りの楽しみ方の一つよ。
バーンパレスにいるすべての戦闘員に伝えよ。
勇者ドラを生捕りにせよ、とな…」
「だっ、大魔王バーン様! ここまで来てあの小娘を生かす必要などどこにもありますまい!
どうかこのワタクシめに勇者討伐の任をお与えください!!
我が妖魔士団の威信にかけて彼奴を討ち取ってご覧にいれましょうぞッ!!
何卒ッ!!!」
床に這いつくばって懇願するザボエラだったが、バーンはザボエラをちらとも見ずに「ならぬ」とぞんざいに言葉を落とした。
「勇者ドラは余に歯向かった咎として、人間どもが見ている前で大々的に処刑を執り行い首を晒す。
ドラの言葉を信じるならば生き延びているバランと小倅もそれで釣れるであろう。
殊の外、楽しめたがな…
いつまでも引き伸ばしていると
人間どもとの余興もそろそろ終いにせんとな」
「そ、そんな…」
誘惑を仕掛ければ簡単に釣れそうな
妖魔士団は魔力に優れ人員も多いがバーンパレスに数多存在している戦闘員達に比べると屈強とは言い難い。
総出で出撃したところでドラを捉える前に他の魔族や
頭の中で勇者生捕りに参戦するメリットと軍団の人的資源が消耗するデメリットを天秤に掛けた結果、ザボエラは黙って従うしかないとの結論に達した。
「狩りならばボクの得意分野です。このバーンパレスのそこかしこに仕掛けられている
あのお嬢さんはいくつ突破できますかねぇ」
「キルバーンのトラップなら勇者を生捕りにするなんて朝飯前だよぉ〜っ!」
部屋を飛び出したドラはバーンパレスの通路を一直線に駆け抜けていく。
バーンパレスはどこまで行っても一本道。空中を駆け抜けつつも前から後ろから、わらわらと姿を現す魔物達めがけて呪文を放つ。
全て倒し切りながら進むのは非効率なのでドラの体一つ通る空間さえ確保出来れば後はどうとでもなる。
結果、ドラの後ろには大量の
「どこまで行っても外に繋がる窓や扉が無い…っ!
え〜んっ、あんな雑魚どもに構ってる場合じゃないのに…!!
魔力炉がある『天魔の塔』ってどう行けばいいの〜〜〜っ!!?」
「ピィィっ!!」
涙目になりながらも襲い来る敵を千切っては投げ千切っては投げ…
紆余曲折を経て主人公である勇者ダイがレオナ姫とともに大魔王バーンへと辿り着くために駆け上がって行った『天魔の塔』。
原作では経過地点でしかないが魔力炉を壊したいドラは必死になってバーンパレスの内部をひた走った。
バーンパレスは用心深いバーンが念入りに作っただけあり侵入した敵の動向をある程度定められる作りになっている。
さらにその上、眼に魔力を集中させて魔力視を怠らないようにしておかないと「え!? こんなところに!??」という位置にキルバーンのトラップが仕掛けられているのだ。
通路の曲がり角にトラップが仕掛けられており直前でそれを回避した矢先、床から次々飛び出す氷の刃を回避して体を支えようと壁に手をついたら第二のトラップが発動した。回避不可能な数の毒矢が四方八方から発射される二段構えのトラップに
「『ダイの大冒険』じゃなくて『人生オワタの大冒険』か!? クソ死神があぁああッ!!!」
と見ている側からは爆笑ものだが自分でプレイするとなると殺意しか湧かない懐かしのゲームタイトルをあげて絶叫した。
そこからはもう、ドラは遠慮なく最大級の呪文をぶっ放し縦横無尽に設置されている死神のトラップと敵をまとめて吹き飛ばしていった。
オリハルコンには劣るが頑強さでは地上に存在しない強度を誇るバーンパレスにいくつもの風穴が開いていく。
ドラが荒らした広間とは別の部屋に整えられた卓の前で、遠くから響いて来る爆発音と振動の数に比例して大魔王バーンの眉間の皺が深くなっていった。
「ぜぇ〜っ…はぁ〜っ…
や、やっと着いた…天魔の塔…!」
髪はぐしゃぐしゃ、ドレスも汗と埃に塗れ散々な様子でお目当ての場所についたドラは深呼吸を一つ。
胸元から出てきたゴメちゃんに向けて真剣な表情で語りかけた。
「魔力炉さえ壊しちゃえばバーンパレスは動かすことは出来ない…『ピラァ・オブ・バーン』も落とす事が出来なくなる!
…お父さん、お兄ちゃん、地上のみんな、ゴメちゃんも! 何があっても、私が守るよ!!」
「ピィ、ピイィ!」
「うん、行こう!!」
自分も、何があってもドラを守ると答えたゴメちゃんの言葉を笑顔で受けて…
ドラはバーンパレスの心臓部、『魔力炉』に繋がる天魔の塔の階段へと一歩、足を掛けたのだった。
少し間が開いてしまいました。短いですが、取り急ぎここまで。
あとで改稿するか文章量が増すかもしれません。
立て続けに色々あり首を痛めてしまい両腕がロン・ベルク状態でした…
寝たきりの状態で痛みに悶えながら「首一つ痛めただけで全身激痛で動けなくなるのに全身微細骨折の上にHP1で戦闘してたのヒュンケル…あいつやっぱ人間じゃない…!!」と再確認した作者です。
筋肉を痛めただけでも動けなくなるのが人間です。
気合いでどうにか出来るのは魔族と人外とヒュンケルだけです。
みなさんも体調にはくれぐれもお気をつけて…!